公開日:2026-10-28
民泊を開業できる用途地域は?民泊新法・旅館業法の違いと条例による規制強化も解説

用途地域による制限だけで見ると、民泊を開業できるのは、民泊新法(住宅宿泊事業法)なら工業専用地域を除く12種類、旅館業法の簡易宿所なら6種類です。
ただし、最近はゴミ出しや騒音などの苦情を受け、自治体の条例で営業日が制限されるエリアも増えています。
用途地域はあくまで開業するための最低条件であり、民泊経営を成功させるには立地や建物の条件もあわせて見極める必要があります。
そこで本記事では、制度別に民泊を開業できる用途地域の一覧にくわえ、物件選びで確認したい条件や、自治体による規制強化の動向を解説します。
- ・民泊を開業できる用途地域は、民泊新法なら工業専用地域を除く12種類、旅館業法の簡易宿所なら6種類です。
- ・用途地域の条件をクリアできても、自治体の上乗せ条例によっては開業できない地域もあります。
- ・用途地域はあくまで開業するための最低条件であり、開業を成功させるためには立地選びやリノベーションプランの策定なども必要です。
■民泊を開業できる用途地域一覧【民泊新法・旅館業法別】

用途地域とは、都市計画法にもとづき建てられる建物の種類や規模をエリアごとに定めたルールのことです。
民泊を開業できる用途地域は、選ぶ制度によって変わります。
ここでは、民泊新法(住宅宿泊事業法)と、旅館業法による簡易宿所の2つの制度ごとに、開業できる用途地域を一覧でまとめました。
|
用途地域 |
概要 |
民泊新法 |
簡易宿所 |
|
第一種低層住居専用地域 |
低層住宅が中心の閑静な住宅地 |
○ |
× |
|
第二種低層住居専用地域 |
低層住宅に小規模な店舗が混じる住宅地 |
○ |
× |
|
第一種中高層住居専用地域 |
マンションなど中高層住宅が中心 |
○ |
× |
|
第二種中高層住居専用地域 |
中高層住宅に一定規模の店舗・事務所が混じる |
○ |
× |
|
田園住居地域 |
農地と低層住宅が共存 |
○ |
× |
|
第一種住居地域 |
住宅が中心で、中規模の店舗・事務所も建つ |
○ |
△(3,000㎡以下) |
|
第二種住居地域 |
住宅にくわえ、大きめの店舗や娯楽施設も建つ |
○ |
○ |
|
準住居地域 |
幹線道路沿いで、住宅と自動車関連施設が共存 |
○ |
○ |
|
近隣商業地域 |
周辺住民向けの商店街など |
○ |
○ |
|
商業地域 |
駅前や繁華街 |
○ |
○ |
|
準工業地域 |
小規模な工場と住宅が混在 |
○ |
○ |
|
工業地域 |
工場が中心で、住宅も建てられる |
○ |
× |
|
工業専用地域 |
工場専用で、住宅は建てられない |
× |
× |
※○:用途地域の制限上は開業可、△:床面積などの条件を満たせば開業可、×:原則として開業不可
※用途地域による制限のみを整理した表です。文教地区などの特別用途地区や自治体の条例、住宅宿泊事業法の「住宅」の要件、建築・消防の基準によって開業できない場合があります。
民泊新法における民泊施設は、建築基準法上は住宅や共同住宅として扱われるため、用途地域の制限は旅館業法より緩やかになります。
用途地域の条件だけで見ると、工業専用地域以外のエリアでは開業可能です。
ただし、台所・浴室・便所・洗面設備を備え、人が住んでいる、入居者を募集している、所有者が随時使っているといった居住の要件を満たす「住宅」でなければ届出できません。
居住の実績がない民泊専用の新築投資用マンションなどは対象外となるため注意しましょう。
一方、旅館業法の簡易宿所は、建築基準法の用途制限ではホテル・旅館と同じ区分になるため、開業できる用途地域が限られます。
住居専用地域や工業地域などでは開業できませんが、民泊新法のような年180日の営業日数の上限はありません。
民泊新法と旅館業法の違いについては、〈民泊新法(住宅宿泊事業法)とは?〉もご覧ください。
なお、民泊の制度として特区民泊もありますが、実施している自治体は東京都大田区など一部に限られるため、本記事では扱いません。
■用途地域で開業できても、条例で営業が制限される場合がある

民泊新法、簡易宿所どちらで開業する場合でも、用途地域とあわせて確認したいのが特定地域での営業制限です。
住居専用地域などの用途地域でも開業できるのが民泊新法のメリットですが、生活環境の悪化を防ぐため、自治体が「上乗せ条例」によって営業できる区域や期間を制限しているケースが増えています。
上乗せ条例による制限の例
- ・特定地域での営業を事実上禁止(営業日数ゼロ)
- ・特定地域での営業曜日や期間を制限
- ・家主不在型の営業期間を制限
- ・苦情などへの駆けつけ要件
本来民泊を営業できる用途地域であっても、物件が上乗せ条例で新規の営業を認めない区域にあると、開業はできません。
また、開業自体は可能でも、営業曜日や期間が厳しく制限されていると、収益の確保や運営自体が難しくなる可能性が高いです。
さらに、最近はゴミ出しや深夜の騒音などの苦情を受けて、家主不在型の営業制限や駆けつけ要件を条例で定める自治体も少なくありません。
上乗せ条例は民泊新法の施設が対象ですが、近年は旅館業法の条例を改正し、簡易宿所に従業員の常駐を求める自治体も出てきています。
特に東京23区や横浜市では、住居専用地域などで平日の営業を認めない区や市が多く、表で○の地域でも営業できるのは週末などに限られる場合があります。
自治体ごとの上乗せ規制の事例は、〈民泊規制が経営に与える影響とは?規制強化によるデメリットと対策を解説〉でご確認ください。
さらに、2026年7月15日、観光庁などは自治体に対し、住宅宿泊事業の営業日数を実質的にゼロにする「ゼロ日規制」などについて技術的助言を通知しました。
技術的助言では、自治体が条例で営業日数を実質ゼロと定め、特定エリアでの民泊を事実上禁止することも可能と示されました。
通知では、民泊が集中して住環境が著しく損なわれ、ほかに適切な対策がない場合には、猶予期間を設けたうえで既存施設を規制することも可能とされています。
技術的助言は自治体に規制を義務付けるものではありませんが、条例の見直しが進む可能性もあるため、購入前に最新の条例を確認しておきましょう。
民泊のゼロ日規制については、〈民泊の180日ルールとは?数え方・罰則からゼロ日規制の最新動向まで解説〉で解説しています。
■民泊開業では用途地域以外も確認すべき

用途地域は民泊を開業するための最低条件にすぎず、収益を左右する立地や建物の事前確認も欠かせません。
例えば、簡易宿所を開業できる商業地域の物件でも、駅や観光地から遠ければ予約が埋まらず、通年営業の強みを活かせません。
民泊で失敗しやすいケースについては、〈民泊は儲からない?具体的な理由とリスク、失敗を防ぐ対策を解説〉で詳しく紹介しています。
物件選びでは、次の視点もあわせて確認しましょう。
- 立地:駅や観光地へのアクセス、周辺の競合施設の数など
- 建物:定員を確保できる間取り、民泊新法や旅館業法、消防法などの基準を満たすための改修費用
消防設備の基準は〈民泊の消防法ガイド|用途判定と必要設備、物件選びの注意点まで解説〉を、許可や改修にかかる費用は〈民泊許可に必要な費用の内訳と相場を解説〉を、資金計画の考え方は〈民泊のローンはどう組む?融資の種類・審査の流れ・成功のポイントを解説〉をご覧ください。
用途地域を確かめたら、同じ住所が条例の制限区域に入っていないかも確認し、区分マンションなら管理規約で民泊が禁止されていないかも確かめましょう。
契約前に確認する項目は〈民泊物件の探し方完全ガイド〉にまとめています。
私たちSHUKEN Reでは、物件探しの段階から用途地域や法令上の制限を確認し、収益性を考えた民泊施設の一棟リノベーションをサポートしています。
東京・千葉・神奈川を中心に民泊リノベーションを手がけてきたノウハウを活かし、収益性まで含めて物件購入判断のアドバイスが可能です。
千葉県浦安市の築30年超の建物1棟(19戸)を民泊施設にした事例は、〈パルテラス富士見〉でご紹介しています。
民泊開業エリアをご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
■民泊の用途地域に関してよくある質問

最後に、民泊用の物件探しで多い、用途地域に関する質問にお答えします。
■まとめ
民泊を開業できる用途地域は、利用する制度によって変わります。
ただし、民泊新法、旅館業法における簡易宿所どちらの場合でも、自治体の上乗せ条例や旅館業法の条例改正による規制強化の影響を受ける可能性があります。
用途地域だけでは開業の可否を判断できないため、購入前に同じ住所で条例の制限区域や、区分マンションなら管理規約まで確認しましょう。
また、用途地域は最低限確認すべき条件の一つであり、収益を上げるには立地やリノベーション計画も欠かせません。
SHUKEN Reでは、多くの民泊施設づくりを手がけた実績をもとに、開業物件探しからリノベーション計画、施工までトータルサポートが可能です。
用途地域や消防法をはじめとする関連法規の確認はもちろん、収益性まで考えた立地や物件選び、魅力的なリノベーションプランをご提案いたします。
マンションやアパートの一棟リノベーションで、魅力的な民泊施設をつくることも可能です。
ぜひお気軽にご相談ください。
Q 用途地域の調べ方は?
自治体の都市計画情報や窓口で調べられます
民泊開業の候補物件の用途地域は、各自治体の都市計画情報マップなどで調べることができます。
例えば東京都の場合は、都市整備局の「都市計画情報等インターネット提供サービス」にて、マップ上で用途地域を確認可能です。
ホームページで都市計画情報を公開していない自治体は、市区町村の窓口などで確認するのが確実です。
Q 学校の近くでも民泊は開業できますか?
開業できるケースもありますが、状況によって制限を受ける可能性があります
簡易宿所の場合、学校や児童福祉施設などの周囲おおむね100m以内でも一律に不可ではありません。
しかし、学校などの清純な施設環境が著しく害されるおそれがあると判断されると、許可が下りない場合があります。
民泊新法でも、学校などの敷地から一定の範囲で営業できる期間や曜日を制限している自治体があります。
Q 敷地が2つの用途地域にまたがる場合はどうなりますか?
原則として面積が大きい用途地域のルールが適用されます
建築基準法の用途制限では、原則として敷地の過半が属する用途地域のルールが敷地全体に適用されます。
例えば、6割が近隣商業地域、4割が第一種中高層住居専用地域なら、面積の大きいほうの制限がかかり、用途地域上は簡易宿所も開業可能です。
ただし、条例による営業制限の区域は、用途地域と判定方法が異なる場合があります。
用途地域がまたがる物件を検討する際は、自治体の窓口で扱いを確認しましょう。









