公開日:2026-05-27
民泊新法(住宅宿泊事業法)とは?【2025年改正対応】|一棟まるごと民泊事業参入の前に知っておくべき全知識

2018年の民泊新法(住宅宿泊事業法)施行により、旅館業の許可を取得せず届出だけで民泊事業を始められるようになり、参入ハードルが大きく下がりました。
訪日外国人旅行者数が過去最高水準で推移するなか、遊休物件や空き家を民泊施設に転換して収益化するチャンスも大きくなっています。
ただし、チャンスをつかむためには民泊新法のルールを正確に理解しておくことが重要です。
「とりあえず届け出れば良い」という思い込みのまま進めると、収益が伸びず、経営リスクにつながります。
アパート・マンション・一戸建てなど、どのような物件で民泊を開業する場合でも、民泊新法の要件を踏まえた事業計画やリノベーションが必要です。
そこでこの記事では、民泊新法の基本的な仕組みやルール、リノベーション時に注意すべきことなどをまとめました。
※本記事の情報は2026年4月時点のものです。法令・条例・行政の運用は変更される場合があります。最新情報は国土交通省・観光庁・各自治体の公式サイトにてご確認ください。
- ・民泊新法による参入は手軽ですが、年間180日の営業上限や自治体独自の規制を正しく把握することが重要です。
- ・2025年1月の消防設備基準の緩和措置を賢く活用し、設計段階からコストを抑えたリノベーションを計画しましょう。
- ・将来的な365日営業(旅館業法への転換)を見据えた設備設計を行うことも、一棟民泊運営を成功させる鍵となります。
■民泊新法(住宅宿泊事業法)とは

民泊新法とは、2018年6月15日から施行された「住宅宿泊事業法」の通称です。
従来の旅館業法では想定されていなかった、一般住宅を活用する新しい宿泊の形について定めています。
民泊新法は、Airbnbをはじめとする民泊サービスの急速な普及を受け、安全面・衛生面の確保と近隣トラブルの防止を目的として制定されました。
施行以前は旅館業法の許可なしに有償で宿泊者を泊める行為は違法でしたが、民泊新法により、旅館業法の「許可制」に比べて簡易な「届出制」で民泊事業を始めることができるようになりました。
民泊新法と旅館業法の違いや基礎知識については、こちらのコラムでも詳しく解説しています。
〈関連コラム〉
民泊の始め方を5ステップで分かりやすく解説|民泊経営を成功させるポイントも
■民泊新法の主要ルール【2026年最新版】

民泊新法に基づいて事業を行うには、以下の5つの主要ルールを遵守しながらリノベーションや事業計画を進める必要があります。
特にマンションやアパート一棟を民泊運営する場合は、これらの制約が収益性や初期コストに直結するため必ずチェックしておきましょう。
①年間180日ルール
民泊新法では、年間の営業日数が「180日以内」(毎年4月1日正午から翌年4月1日正午まで)と定められています。
180日を超えて営業した場合、住宅宿泊事業法の範囲を超え、旅館業法上の無許可営業(6月以下の懲役または100万円以下の罰金)に該当する可能性があります。
さらに住宅宿泊事業法に基づく業務改善命令・業務停止命令の対象にもなり得るため、180日を厳格に管理することが重要です。
通年で稼働させて収益を最大化したい事業者にとって、この制限は大きなボトルネックになります。
180日を超えた運営を想定しているなら、後述する旅館業法(簡易宿所)の許可取得も検討しましょう。
②住宅の要件
民泊新法で届け出られる物件は「住宅」でなければならず、以下の4設備が備わっている必要があります。
- 台所
- 浴室
- 便所
- 洗面設備
設備要件については一般的な住宅や賃貸物件ならクリアできるケースが多く、それほどハードルは高くありません。
オフィス・テナントビルなど住居用途ではない事業用物件の場合、リノベーションで条件を満たした上で建物の用途を住宅に変更する必要があります。
なお、用途変更する部分の床面積が200㎡を超える場合は、建築基準法に基づく確認申請が必要です。
一棟まるごとのコンバージョンではこの閾値を超えるケースが多いため、設計段階で用途変更の必要性を確認しましょう。
また、一棟まるごとリノベーションで民泊施設をつくる場合は、各部屋に4つの設備が必要です。
民泊開業における用途変更については、こちらのコラムもご覧ください。
〈関連コラム〉
民泊開業で用途変更が必要なケース・不要なケース|建築基準法における手続きも解説
③家主の滞在と管理委託の義務
民泊新法における民泊事業は、家主(オーナー)が宿泊中も現地に滞在するかどうかで「家主居住型」と「家主不在型」に分かれます。
- 家主居住型:オーナーが住宅内に居住し、一部を貸し出す形態。
- 家主不在型:オーナーが現地に住まず、物件をまるごと貸し出す形態。
アパートやマンションを一棟まるごと民泊として運営する場合、原則として「家主不在型」に該当します。
家主不在型の民泊では、国土交通大臣の登録を受けた「住宅宿泊管理業者」への業務委託が法律で義務付けられています。
管理手数料(売上の15〜25%程度が目安)を、あらかじめ事業計画に織り込んでおくことが重要です。
④消防設備要件
民泊として住宅を使用する場合、一般的な住宅よりも厳しい消防基準が適用されます。
リノベーションで民泊施設をつくる際は、設計段階で消防設備の導入を組み込んでおかないと、追加工事で多額のコストが発生するリスクがあります。
主な設備義務(規模・形態により異なる)
- 自動火災報知設備または特定小規模施設用自動火災報知設備
- 誘導灯
- 消火器
- 漏電火災警報器(規模による)
- 避難経路図の掲示(外国語対応含む)
消防法上の『特定小規模施設』に該当する民泊施設(原則として延べ面積300㎡未満)では、配線工事不要の簡易な『特定小規模施設用自動火災報知設備』の設置が認められています。
さらに、2025年1月の消防庁通知および住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)の改正により、小規模な民泊施設における消防設備要件が緩和されました。
これにより、宿泊室の床面積の合計が50㎡以下などの一定の条件を満たす場合、自動火災報知設備の設置が免除され、住宅用火災警報器の設置で済むようになるなど、導入コストを大幅に抑えられるケースが増えています。
詳細は総務省消防庁および所轄消防署の最新情報をご確認ください。
ただし、自治体によって追加の要件を設けている場合があるため、着工前に所轄の消防署との事前協議が必要です。
⑤自治体条例による上乗せ規制
民泊新法は全国一律のルールですが、各自治体による独自の条例で追加規制が設けられるケースも増えています。
以下は代表的な上乗せ条例の例です。
※自治体による上乗せ条例の例
- 区域規制:住居専用地域での営業禁止
- 期間規制:特定曜日・期間の営業制限
- 学校周辺規制:学校・児童福祉施設から一定距離内の営業日を制限
- マンション規制:集合住宅での民泊禁止
民泊新法のルールに則った施設でも、上記のような自治体独自のルールを満たしていないと届出が受理されません。
開業予定エリアにおける上乗せ条例の有無を事前に確認し、事業計画やリノベーションプランに反映させる必要があります。
自治体独自の上乗せ条例についてはこちらのコラムもご覧ください。
〈関連コラム〉
民泊規制が経営に与える影響とは?規制強化によるデメリットと対策を解説
■一棟運営を前提にした制度選択|民泊新法or旅館業法

一棟まるごと民泊施設として活用する場合、民泊新法と旅館業法(簡易宿所)のどちらを選ぶかは事業収益の根幹に直結するポイントです。
旅館業法(簡易宿所)には営業日数制限がなく365日営業が可能なため、民泊新法(年間180日)と比べて営業可能日数が約2倍となり、収益機会を最大化できます。
初期費用や許可取得の手間はかかりますが、投資として考えた場合、旅館業法の方が回収期間が短く、利回りも高くなる傾向があります。
一方、民泊新法のメリットは「届出制の手軽さ」と「原則として住居専用地域でも営業できる(※自治体条例により制限される場合あり)」点です。
旅館業法で許可が下りない住居専用エリアでも営業できるため、物件の用途地域次第では民泊新法しか選択肢がないケースもあります。
実務上、民泊新法で小さく始めて稼働実績を積み、旅館業法許可取得にステップアップするという進め方も有効です。
ただし、この場合も建物の設計・設備が旅館業法の基準(消防設備・用途変更等)を後から満たせるかどうかを、リノベーション設計の段階で先読みしておく必要があります。
後から「旅館業に切り替えたいが建築基準法の用途変更が必要で大規模追加工事が発生した」というケースは珍しくありません。
最初の設計段階で将来の法的選択肢を担保しておくことが、民泊における一棟リノベーション投資の失敗を防ぐ最大のポイントです。
民泊新法・旅館業法どちらの民泊施設づくりにも対応できる専門家に相談し、適切なアドバイスやサポートを受けながらリノベーション計画を立てるのが理想です。
私たちSHUKEN Reは、東京・千葉・神奈川の首都圏エリアを中心に、これまで多くの宿泊施設や民泊づくりをサポートした実績がございます。
開業予定エリアのニーズや環境、ご予算や事業計画などを踏まえて、制度選択の判断や収益性を高めるためのリノベーション計画までトータルサポートが可能です。
ぜひお気軽にご相談ください。
■民泊新法に関してよくある質問

最後に、東京・千葉・神奈川エリアで約25年にわたり8,000件超のリノベーション設計・施工実績があるSHUKEN Reが、民泊新法における開業時によくある質問についてお答えします。
■まとめ
民泊新法は、届出だけで合法的に民泊事業を始められる画期的な制度です。
しかし、年間180日の営業上限や自治体の上乗せ条例など、収益性に直結する制約も多く、「とりあえず届け出れば良い」という感覚で進めると思わぬ経営リスクにつながります。
一棟まるごとの民泊運営を投資として成立させるには、民泊新法と旅館業法のどちらで進めるかの制度選択から、用途地域・条例・消防設備・リノベーション設計まで、開業前に一貫して検討しておくことが重要です。
SHUKEN Reでは、東京・千葉・神奈川エリアを中心に、法令要件の整理から収益を最大化する空間設計、行政手続きのサポートまで一貫してご支援しています。
「どの制度で進めるべきか迷っている」「物件を取得したがどう設計すれば良いかわからない」という段階からでも、まずはお気軽にご相談ください。
Q 180日の営業日数はどのようにカウントするのですか?
「正午から翌日の正午まで」を1日とし、宿泊者が1人でもいればカウントされます
民泊新法における営業日数のカウントには、以下の具体的なルールがあります。
- カウントの単位: 正午から翌日の正午までを「1日」として計算します。
- 人数の定義: 1日の間に宿泊者が1人でもいれば、営業日としてカウントされます。
- 算定期間: 毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までの1年間で合計します。
例えば、1泊2日の予約が1件入った場合、実際に宿泊を提供した夜数に応じて「1日」営業したとカウントされます。連泊(2泊3日)の場合は「2日」となります。
また、同じ日に複数のグループが宿泊していても、一つの届出番号(届出住宅)につき「1日」という扱いです。
マンションやアパートの一棟リノベーションで、部屋ごとに届出を行う場合は、各部屋それぞれで年間180日まで営業が可能です。
「いつからいつまでが1日なのか」という定義を誤ると、意図せず上限を超えてしまうリスクがあるため、管理ソフトや住宅宿泊管理業者と連携して正確に記録することが重要です。
Q 年間180日の営業日数でも投資回収はできますか?
年間180日という上限は確かにネックですが、インバウンド需要が高い都心部や観光エリアでは、稼働期間を週末・繁忙期に集中させ、単価を上げることで収益を確保することが可能です
また、営業できない残りの期間を「マンスリーマンション(定期借家)」として貸し出す「ハイブリッド運営」を取り入れることで、年間を通じた投資回収の最大化を図る事例も増えています。
ただし、民泊とマンスリーを併用するには、どちらの利用客にも選ばれる機能的な間取りやデザイン、そして耐久性を備えたリノベーション設計が鍵となります。通年稼働による収益最大化を最優先するなら、旅館業法(簡易宿所)の許可取得を見据えた設備投資を検討するのも一つの手です。
Q 家主不在型の場合、管理業者への委託費用はどれくらいかかりますか?
一般的には売上の15〜25%程度が目安です
この手数料には、24時間のゲスト対応や宿泊名簿の管理、行政への定期報告代行などが含まれます。
ただし、「清掃費用」については手数料とは別に、1回あたりの固定費(または宿泊客から徴収する清掃費を充当)として設定されるケースが一般的です。一棟運営の場合、清掃の頻度やリネンサプライの運用によってランニングコストが大きく変動します。
表面利回りだけで物件を判断すると実収益を大きく見誤るため、管理手数料、清掃費、消耗品費などを細かく織り込んだ収支シミュレーションを事業計画の段階で行うことが不可欠です。私たちSHUKEN Reでは、こうした運営コストを考慮した上でのリノベーションプランのご提案も可能です。
Q 自治体条例の確認はどこでできますか?
国(観光庁)が運営するポータルサイトや、自治体のホームページで確認できます。
観光庁の「民泊制度ポータルサイト(minpaku.mlit.go.jp)」では、全国の自治体ごとの上乗せ条例の有無や、相談窓口の一覧が公開されています。
ただし、条例は頻繁に更新されるため、最終的には物件所在地の自治体の民泊担当窓口(保健所や観光課など)へ直接問い合わせるのが最も確実です。
また、リノベーションを伴う場合は、民泊条例だけでなく「消防署」での消防設備確認や、「建築指導課」での用途変更の要否確認も並行して行う必要があります。エリア特有の規制によって設計が制限されることもあるため、現地調査と行政協議に慣れた専門家へ相談することをおすすめします。









