公開日:2023-06-03 更新日:2024-07-04
アパートリノベーションの費用相場|建て替えとどっちがお得?
アパートの築年数が経ち空室が目立ってくるタイミングでは、リノベーション・建て替えどちらが良いか悩む大家様が多いですよね。
今回は、施工事例や平均価格などのデータから、アパートリノベーションと建て替えの費用相場を詳しく比較してみます。
アパートリノベーションでどんなことをするのか基礎知識も解説しますので、ぜひ建て替えとの比較検討にお役立てください。
・アパートリノベーションは建て替えの50~70%の費用に抑えられる可能性がありお得です。
・アパートリノベーションに活用できる補助金制度も紹介します。
目次
■アパートリノベーションとは?
アパートリノベーションは原状回復や部分リフォームとは違い、物件の価値や魅力を高めるのが目的です。
ただ新築時の性能や意匠に戻すのではなく、現代の賃貸ニーズに合わせて内装や設備をつくり替えるのがリノベーションの特徴です。
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具体的にどんな内容の工事を行うのか詳しく見ていきましょう。
間取りをつくり替える
築年数が古く現代のライフスタイルに間取りが合わなくなっているアパートは、リノベーションでつくり替えることで入居率アップにつながります。
※アパート間取りリノベーションの例
- 和室をフローリングに変更
- 押入れをクローゼットに変更
- 独立キッチンを対面レイアウトに変更
- 3点ユニットバスを独立洗面台に変更
畳の和室は家具やベッドを置くと凹んでしまい、退去費用が高くなるイメージが強いため敬遠される傾向があります。
リノベーションでフローリングの洋室に変更することで検討してもらえる確率が高くなり、内検時の印象アップ効果も。
押入れ・独立キッチンなど昔ながらの間取りも、クローゼットや対面キッチンなど現代の賃貸ニーズに合わせることで空室対策効果が期待できます。
人気設備の導入
賃貸物件で人気の高い設備をリノベーションで導入するのも、空室対策効果につながります。
※アパートの人気設備例
- オートロック
- モニター付きインターホン
- 宅配ボックス
- エアコン
- 無料インターネット回線
- 追い炊き機能
- 洗浄機能付き便座
- ペアガラス
- 浴室乾燥機
オートロック・エアコン・追い炊き機能など昔から人気の高い設備に加えて、宅配ボックスやペアガラスなど近年需要が高まっているものもあります。
これらの設備は、アパートのターゲットユーザーに合わせて効果の高いものを導入するのが基本です。
例えば女性の単身者が多いエリアのアパートなら、防犯性の高いオートロックやモニター付きインターホンなどの効果が高いでしょう。
逆に単身者メインのアパートは、追い炊き機能をつけてもあまり効果は期待できないかもしれません。
エリア内の賃貸ニーズをもう一度確認して、費用対効果の高い設備を見極めてから導入しましょう。
共用部分を一新
アパート丸ごと一棟リノベーションでは、玄関エントランスや階段廊下など共用部分を一新することも可能です。
専有部分をきれいにリノベーションしても、外観や共用部分が古いと印象が悪く入居率に悪影響を与えるケースがあります。
共用部分をリノベーションすることでアパート全体の印象が良くなり、大きな空室対策効果を得られる可能性があるのです。
外壁塗装や共用廊下の床材の変更など、意匠性をアップすることで内見時の印象が良くなります。
また自転車置き場を整備して、乱雑な印象をなくすのも効果的な施策です。
築年数が経って全体の印象が古くなってきたら、共用部分を含めた一棟リノベーションも検討してみましょう。
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■アパートリノベーションの費用相場
アパートの内装や設備を丸ごとフルリノベーションする場合の費用相場を、一般社団法人リノベーション協議会ポータルサイトの事例を参考にチェックしてみましょう。
※賃貸物件のリノベーション事例
- 木造アパート 床面積:96㎡ 費用:3,800万円(16.38万円/㎡)
- 木造アパート 床面積:31㎡ 費用:1,000万円(9.9万円/㎡)
- 鉄骨鉄筋コンクリート 床面積:24㎡ 費用:355万円(79万円/㎡)
床面積や建物の状態によっても変わりますが、アパートリノベーションの費用相場は1㎡あたり10~15万円が目安となりそうです。
仮に30㎡×8室で延床面積240㎡のアパートをフルリノベーションする場合、2,400~3,600万円が費用相場になります。
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■アパート建て替えの費用相場
アパート建て替えにかかる費用は、2021年の建築着工統計調査によると以下のように推計されます。
※構造別建築費用
- 木造 6万円/㎡
- 鉄骨造 1万円/㎡
- 鉄筋コンクリート造 75万円/㎡
出典:建築着工統計調査を基に弊社集計
上記のように、構造によって1㎡あたりの平均建築費用が変わります。
先ほどと同じ240㎡のアパートを木造で建て替えると、4,224万円の建築費用がかかるということです。
さらに建て替えの場合、今の建物の解体費用がかかります。
木造アパートの解体費用目安は1㎡あたり1~2万円と言われているため、さらに240~480万円必要になるということです。
また、解体の手続きや建築確認申請などの諸経費もリノベーションより多くかかるため、少し余裕を見て5,000万円前後は必要になるでしょう。
■結論:リノベーションと建て替えどっちがお得?
※240㎡のアパート改修工事の費用相場
- リノベーション費用 2,400~3,600万円
- 建て替え費用 5,000万円
あくまで平均価格での比較ですが、アパートリノベーションは建て替えの50~70%前後の費用に抑えることができそうです。
雨漏りやシロアリ被害など建物に大きなダメージがない場合、建て替えよりリノベーションの方がお得になりそうですね。
■アパートリノベーションの注意点
費用面のメリットが大きいアパートリノベーションですが、注意すべき落とし穴もあります。
築年数が古いアパートは追加費用の可能性がある
築年数が古いアパートの場合、耐震性不足や雨漏り・シロアリ被害など、リノベーション以外の追加費用がかかる可能性が考えられます。
例えば1981年以前に建築確認申請を受けているアパートは、旧耐震基準で建てられていて耐震補強が必要になるケースがあります。
木造住宅の耐震補強の平均費用は一般住宅でも189万円で、床面積が広いアパートの場合さらに多くかかる可能性が高いです。
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中古で購入したアパートなど、過去のメンテナンス履歴が分からない物件は注意したほうが良いでしょう。
着工後に不具合が発覚して追加費用が発生しないよう、アパートリノベーションの施工実績が多い会社に相談してください。
リノベーション中は家賃収入が発生しない
アパートリノベーション完了後は入居率アップが期待できますが、工事中は家賃収入が発生しないのも注意すべきポイント。
共用部分も含めた一棟リノベーションの場合、数か月単位で家賃収入がゼロになる期間が発生することもあります。
購入・新築時のローンが残っている場合、経営資金が足りなくなる可能性も。
アパートリノベーション計画では工事期間を確認し、無理のない資金計画を立てましょう。
費用対効果と回収期間を考える
アパートリノベーションはお金をかければその分収入が増えるわけではないため、費用対効果をしっかり考えましょう。
大規模なリノベーションで入居率と家賃収入が大きくアップしても、所有期間中に回収できなければトータルでは赤字になってしまいます。
リノベーションにかかる費用と、家賃収入アップ効果のバランスを考え、何年で回収できるのかシミュレーションしてみてください。
■アパートリノベーションで収益アップするコツ
アパートリノベーションで収益アップするためには、次の2つのポイントを押さえることが大切です。
- ユーザーニーズを再確認する
- 競合物件と差別化する
アパートリノベーションはメインターゲットとなるユーザー層に合わせて、効果の高い施策を組み合わせる必要があります。
入居者が住まいに求めることは時代とともに変化するため、人口動態や周辺環境などを再調査しましょう。
さらに競合調査を行い、ほかの物件にない魅力や付加価値をリノベーションで追加することも大切です。
同じようなリノベーション内容だと、競合に埋もれてしまいます。
ユーザーニーズを把握し、競合と違う手法で差別化し、魅力あるアパートをつくるのが収益アップのコツになります。
■アパートのリノベーション事例
19戸の鉄骨造アパートをフルリノベーションし、おしゃれな民泊施設に生まれ変わった事例です。
アパートとして空室が目立ってきた場合でも、観光需要が期待できるエリアなら民泊にした方が高い回転率と家賃収入が期待できるケースがあります。
そのままアパートとしてリノベーションするだけでなく、民泊や社宅などほかの選択肢も検討してみましょう。
■アパートリノベーションに使える補助金はある?
リノベーション補助金の中には、アパートなどの集合住宅も対象になるものがあります。
※アパートリノベーションに使える補助金の例
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業 補助限度額:100万円/戸
- 先進的窓リノベ事業 補助限度額:200万円/戸
長期優良住宅化リフォーム推進事業は、アパートの省エネ化や耐震補強などが対象です。
先進的窓リノベ事業はペアガラス交換や内窓の設置など、窓の省エネ化が対象になります。
アパートの安全性や省エネ性を高めることで価値が上がり、入居者に優先的に検討してもらえる可能性が高くなります。
■火災保険で原状回復&リノベーション費用を抑えらえるケースも?
退去時の原状回復には火災保険が適用できるケースもあり、結果的にリノベーション費用を抑えられる可能性があります。
火災保険を適用できれば入居者の費用負担も減り、敷金でまかないきれない費用の回収などの手間もかかりません。
申請代行するリフォーム店や工務店の知見によって、保険が適用されるかどうかは変わります。
一度火災保険の約款を見直してみて、管理会社や原状回復を依頼する施工会社に相談してみるのがおすすめです。
■アパートのDIYリノベーションとは?
最近はライフスタイルと賃貸ニーズの多様化に応えるため、借主自身がDIYできるアパートも登場しています。
※「DIY型賃貸借」とは
- ・借主(入居者)の意向を反映して住宅の改修を行うことができる賃貸借契約や賃貸物件です。
- ・借主自ら改修する場合や専門業者に発注する場合など、工事の実施方法は様々です。
国土交通省では上記のようにDIY型賃貸借を規定して、国を挙げて推進しています。
DIY賃貸は借主がライフスタイルや好みに合わせた住まいをつくることができ、オーナーとしては費用を抑えられるため両方にメリットがあります。
築年数が古くあまり費用をかけたくない場合、DIY賃貸化するのも一つの考え方と言えるでしょう。
ただしどこまでリノベーションできるのか、退去時に原状回復するのかなど、事前にしっかり取り決めておかないとトラブルに発展するリスクもあります。
一つの選択肢として、リノベーションと比較検討してみてください。
■まとめ
アパートリノベーションは、建て替えの50~70%程度の費用に抑えられる可能性があります。
築年数が経っていても、新築同様の入居率や家賃収入にリセットできる可能性がありますので、空室が目立ってきたらリノベーションを検討してみてください。
私たちSHUKEN Reは東京・千葉・神奈川の首都圏エリアを中心に、アパートのリノベーションをサポートしています。
ご予算や物件の状況に合わせて適切なリノベーションプランをご提案いたしますので、どんなこともお気軽にご相談ください。