公開日:2026-05-03
2026年4月施行の「区分所有法改正」とは?中古マンション購入・リノベーションへの影響を解説

2026年(令和8年)4月1日から、区分所有法、マンション再生法、マンション管理適正化法などの「マンション関係法」が改正され、マンションの管理や大規模修繕、再生(一棟リノベーション)に向けた住民の合意形成や手続きなどがよりスムーズに進むように法律が整えられました。
このコラムでは、中古マンションの購入やリノベーションを検討している方へ向けて、区分所有法をはじめとするマンション関係法の改正が、東京・千葉・神奈川の物件選びや将来の資産価値へどう影響を与えるかについて解説します。
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・2026年4月に施行された区分所有法・マンション再生法などの改正によって、マンションの管理がよりスムーズに進めやすくなり、さらに、老朽化したマンションの再生を後押しするための制度が整えられました。
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・建替えの多数決要件が緩和されたり、老朽化マンションで「一棟リノベーション」を選択したりできるようになったことで、築古物件が再生によって資産価値を維持・向上できる可能性が高まったと言えます。
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・これからの中古マンション選びでは、長期修繕計画や修繕積立金の状況だけでなく、改正法への管理組合の対応姿勢や耐震診断の有無など、管理状況をより細かく知ることが大切になってきます。
※本記事の情報は2026年4月時点のものです。法改正・税制改正により内容が変わる場合があります。個別の税務・法律判断については専門家にご相談ください。
目次
■2026年4月「区分所有法」などの改正でマンションの管理・再生の円滑化が進む

マンションのリノベーション事例を見る:Case232「One and Only」
2026年(令和8年)4月1日に、分譲マンションなどの「区分所有建物」の権利や管理、建替えなどのルールについて定められた法律である「区分所有法」が改正されました。
正式名称は「建物の区分所有等に関する法律」と言います。
区分所有法に加え、マンションの管理や再生を円滑化するための法律である「マンション再生法」「マンション管理適正化法」などの関連法も同時に改正されました。
(※マンション再生法の正式名称は「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」と言います。)
〈2026年(令和8年)4月1日施行のマンション関係法の主な改正内容〉
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目的 |
関連法 |
主な改正内容・新たに創設されたもの |
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①管理の円滑化
(日々の維持・管理を止めない) |
区分所有法 |
・所在不明者の除外…裁判所の認定(決定)を受けることで、連絡がつかない所有者を決議の母数から除外できる仕組みを創設
・専有部分の工事の円滑化…共用部の配管更新等と一体で行う専有部の工事を集会決議で実施可能に
・保存請求の明確化…隣室からの漏水など緊急時に、他人の専有部の修繕を請求・実施できるルールを整備 |
|
②再生の円滑化
(マンションの建替えや更新をしやすくする) |
マンション再生法
(マンション再生円滑化法) |
・決議要件の緩和…耐震不足など行政の認定(要除却認定等)を受けた場合に限り、建替えや敷地売却の決議要件を『5分の4』から『4分の3』へ緩和
・「建物更新(一棟リノベーション)」決議の新設…建替えずに性能を大幅向上させる改修を、多数決で行えるよう法的に位置づけ
・団地型マンションへの対応…棟ごとの合意形成をスムーズにするための仕組みを整備 |
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③地方公共団体の取組
(行政によるマンション管理のバックアップ) |
マンション管理適正化法 |
・助言・指導の強化…管理不全の兆候があるマンションに対し、自治体が早期に介入・支援できる体制を構築
・所在不明者の特定支援…自治体が所有者情報を把握しやすくし、管理組合の合意形成をサポート
・管理計画認定制度の活用…適切に管理されているマンションを公的に認定し、市場価値を支える |
区分所有法・マンション再生法・マンション管理適正化法の概要は以下の通りです。
〈区分所有法・マンション再生法・マンション管理適正化法の概要〉
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法律名 |
概要 |
定められている主な事項 |
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区分所有法(建物の区分所有等に関する法律) |
区分所有建物の権利や基本的な管理ルールを定めた法律 |
・区分所有権と区分所有者について ・専有部分と共用部分について ・区分所有者の権利と義務について ・管理者の選任・解任、集会の招集について ・区分所有建物の規約について ・共有部分の管理方法や変更、建物の建替え、更新(一棟リノベーション)、売却、取壊しなどの決議の多数決要件について |
|
マンション再生法(マンション再生円滑化法) |
老朽化したマンションの建替えや更新、再建を円滑に進めるための特別措置を定めた法律 |
・建物の建替え・更新・売却・除却事業を進める手続きのルール |
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マンション管理適正化法 |
行政による指導や、管理計画の認定制度などを定める法律 |
・管理の指針や管理組合の遵守事項について ・国や地方公共団体の支援について ・管理計画認定制度について ・マンション管理士の資格・マンション管理業者の登録制度について |
〈参考〉
法務省ウェブサイト「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律について」
国土交通省ウェブサイト「マンション関係法令」
国土交通省ウェブサイト「マンションの再生等について」
国土交通省「マンション管理・再生ポータルサイト」
上記のようなマンションの管理・再生に関係する法律がセットで変わることで、「直したくてもルールがなくて直せない」「建替えたくても手続きが複雑すぎる」といった、これまでの築古マンションが抱えていた構造的な課題の解消が期待されています。
大規模なマンション関係法改正がされた理由
2026年4月にマンション関係法が大規模に改正された背景にあるのは、日本のマンションが直面している「建物の老朽化」と「所有者の高齢化」という、いわゆる「2つの老い」という深刻な社会課題です。

〈出典〉法務省ウェブサイト「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律について(改正の概要(2)(全体・詳細版)【PDF】 (令和8年1月更新))」より一部抜粋して作成
上記のように、築40年超のマンションは2024年末時点で148万戸にのぼり、20年後には約3.3倍の483万戸に増えると推計されており、今後ますます老朽化マンションが増えていく見込みです。
建物が古くなる一方で、住み続ける所有者も高齢化し、将来の修繕や建替えに向けた合意形成が難しくなっています。
このまま放置すれば、適切なメンテナンスが行われない「管理不全マンション」が増え、街全体の安全性や資産価値が損なわれかねません。
こうした課題に対応するため、マンションの新築から再生までのライフサイクル全体を見通し、管理・再生の円滑化等を図るべく、今回のマンション関係法の改正が行われました。
法改正によるリノベーション検討者へのメリット
中古マンションを購入してリノベーションをしようと考えている方にとって、この法改正は「追い風」となっています。
なぜなら、これまでは建替えのハードルが非常に高かったため、築年数が古いマンションは将来性が不透明でした。
しかし今回の改正で、例えば耐震性不足のマンションの建替え決議要件が現在の「5分の4」から「4分の3」に緩和されるなど、再生に向けた道筋がつけやすくなりました。
これにより、「築年数は古いが、立地は良い」といったマンションが、将来的に新しい建物に生まれ変わる可能性を秘めた「お宝物件」になることも考えられます。
「今は古くても、将来的には建替えられて資産価値が維持・向上するかもしれない」という新たな視点で物件を評価できるようになり、納得感のある中古マンション選びがしやすくなると考えられます。
■リノベーション検討者が知っておくべき法改正のポイント

マンションのリノベーション事例を見る:Case231「Growing」
2026年4月の区分所有法をはじめとするマンション関係法の改正内容で、現在マンションを所有していてリノベーションを検討している方や、これから中古マンションを購入してリノベーションしたい方が知っておきたいポイントを詳しく解説します。
①マンション管理・再生に関する決議がスムーズになる

〈出典〉法務省ウェブサイト「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律について(改正の概要(2)(全体・詳細版)【PDF】 (令和8年1月更新))」より一部抜粋して作成
中古マンション購入後の最大のリスクは、決議に参加しない無関心な区分所有者や所在不明者の存在によって、必要な修繕や再生計画がストップしてしまうことです。
今回の法改正により、集会の決議を円滑化するための2つの重要なルールが導入されました。
1つは、大規模修繕の実施など、建替えなどの処分行為を伴わない決議について、規約にあらかじめ定めておくことで、集会出席者の多数決で可決できるようになった点です(建替え決議には適用されません)。
なお、法改正の一部は管理規約を変えなくても自動的に適用されますが、出席者多数決の活用など、メリットを最大限享受するためには管理規約の更新が推奨されています。
これにより、集会に無関心な欠席者が事実上の反対として扱われる問題が解消されます。
もう1つは、裁判所の選任や認定といった法的ステップを経ることで、所在不明者を建替え決議を含む全ての決議の母数(分母)から除外できる制度が創設された点です。
裁判所の認定を得て所在不明者を決議の母数(分母)から除外できるようになるため、「連絡がつかない所有者がいるために、必要な賛成率に届かず修繕が進まない」といった事態を解消しやすくなり、住まいの健康状態・資産価値を維持しやすくなります。
また、マンション購入を検討している方にとっては、築古物件の懸念点である「管理の停滞」リスクが法的に軽減されたため、資産価値が守られる物件をより主体的に選べるようになりました。
②専有部の一斉配管更新などを決議出席者の多数決で実施可能に
これまでは、マンション全体の給排水管の更新などを行う際、配管が「専有部分(お部屋の中)」を通っていると、その部分の工事には各所有者の個別の同意が必要でした。
一部の所有者が拒否したり、連絡が取れなかったりすると、強制力が弱いために建物全体の更新がストップしてしまうという課題がありました。

〈出典〉法務省ウェブサイト「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律について(改正の概要(2)(全体・詳細版)【PDF】 (令和8年1月更新))」より一部抜粋して作成
区分所有法の改正によって、あらかじめ規約を定めておけば、共用部分(共用配管など)の工事を決議する際、それと一体的に行うべき専有部分の工事も、集会決議出席者の多数決でまとめて実施できるようになりました。
配管などを一度にまとめて更新ができることでコスト削減につながるほか、更新後の性能が統一されることで漏水などのトラブルリスクが減り、資産価値の維持も期待できます。
また、他の所有者の専有部分に不具合があり、自分の部屋などに被害が及ぶ恐れがある場合、その専有部分の修理(保存行為)を請求したり、必要最小限で実施したりする権限も明確化されました。
「上の階から水漏れがしているのに、所有者が不在で連絡がつかない」「空き家になっていて中に入れず、被害が拡大している」といった、専有部分を原因とするトラブルが起きた場合、連絡がつかない所有者を待たずに緊急修理ができ、被害拡大を防止できます。
建物全体の長寿命化が進みやすくなり、長期的な視点で安心して住み続けられる環境が整うことが、最大のメリットと言えるでしょう。
マンション購入を検討している方にとっては、これらの法改正を規約に反映しているかを確認することで、管理がしっかりしているかをチェックできるようになった点がメリットと言えます。
③一棟リノベーションによる耐震補強なども多数決で可能になる
これまでは、老朽化のために建替え(再生)をしたいマンションでも、区分所有者の大多数の賛成が必要だったためハードルが高く、さらに、建物・敷地全体の売却、取壊しなどは、区分所有者全員の賛成が必要で、実質不可能だったという現状がありました。
今回の区分所有法改正では、老朽化したマンションの建替えや売却、取壊しの多数決要件が緩和され、さらに、建替えや取壊し以外の再生方法である「更新(一棟リノベーション)」という考え方が創設され、多数決で実施できるようになりました。
具体的な要件緩和の内容を解説します。
建替え決議の要件緩和
老朽化したマンションの建替えには、原則として区分所有者および議決権の各「5分の4」以上の賛成が必要であり、この高いハードルが再生の妨げになるケースがありました。
今回の法改正では、この原則は維持しつつ、耐震性の不足や外壁の剥離・落下の危険など、行政が認定した一定の客観的な理由がある場合に限り、この要件が「4分の3」に緩和されることになりました。
※政令指定災害による被災の場合は、被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法に基づき、多数決要件が「3分の2」に引き下げられます。
客観的事由とは、以下の①~⑤のいずれかに該当する場合を指します。
- ①耐震性の不足
- ②火災に対する安全性の不足
- ③外壁等の剥離・落下により周辺に危害を生ずるおそれ
- ④給排水管等の腐食等により著しく衛生上有害となるおそれ
- ⑤バリアフリー基準への不適合
例えば、旧耐震基準のマンションで耐震性や安全性が不足していると認められた場合は、所在不明者を除く4分の3が賛成すれば建替えが可能になりました。
この認定を受けるためには、耐震診断の実施と、自治体への「要除却認定」申請が前提となります。
マンション管理適正評価制度の評価項目にも「耐震診断の実施」が含まれているため、購入検討物件が耐震診断を済ませているかは重要なチェック事項です。
多数決による建物・敷地一括売却や建物の取壊し等が可能に
これまでは、建物の取壊しや一棟リノベーションを行うには区分所有者全員の同意が必要で事実上困難でした。
また、敷地の一括売却も要除却認定が条件の限られた制度にとどまっていました。
区分所有法改正によって、建替えと同じ多数決要件で建物や敷地の一括売却や取壊しなどが可能になりました。
多数決による一棟リノベーション工事(建物の更新)が可能に
既存躯体を維持しながら全ての専有部分を含む建物全体を更新して、実質的な建替えを実現する「一棟リノベーション工事」は、技術的には可能ですが、売却・取壊しと同様に区分所有者全員の同意が必要なため、事実上困難でした。
区分所有法改正で、原則として区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成(耐震性不足など客観的事由がある場合は4分の3)で一棟リノベーション工事(建物の更新)が実施可能になり、「旧耐震基準なのに合意形成ができず補強ができない」といった問題が解決できる可能性が広がりました。
このほかにも、団地の一括建替えや一部建替えの承認決議の要件も緩和されています。
④建替え・一棟リノベーション時の高さ制限の緩和

〈出典〉法務省ウェブサイト「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律について(改正の概要(2)(全体・詳細版)【PDF】 (令和8年1月更新))」より一部抜粋して作成
今回改正された「マンション再生法」では、マンションの建替え・更新(一棟リノベーション)を円滑にするため、耐震性不足などで「要除却認定」を受けたマンションの建替え・更新をする場合、現行の容積率の特例制度に加え、「高さ制限の緩和特例」も追加されました。
これまでは、耐震性の不足した危険なマンションを建替える際、容積率の緩和特例があっても、建築基準法上の斜線制限や絶対高さ制限がネックになって、特例をうまく生かせない場合がありました。
マンション再生法改正によって、特例で緩和された容積率を活用して増築し、新たに生まれた住戸を売却することなども可能になりました。
売却益を工事費用に充てることで、区分所有者が負担する修繕積立金の値上がり抑制や、一時金の負担軽減が期待できます。
■購入前にチェックしたい「マンション管理」のポイント

マンションのリノベーション事例を見る:Case230「GOOD FLOW」
2026年4月の区分所有法・マンション再生法などの改正を踏まえた、中古マンション購入時に知っておきたい「マンションの管理状態」のチェックポイントを紹介します。
客観的な「管理状態の評価」をチェックする
これまでマンションの管理状態を知るためには、現地に行ってみないと分からない部分が多かったですが、現在は「管理計画認定制度」などによって、客観的な評価をオンラインで確認できる物件も増えています。
マンションの管理状態の客観的な評価を知れる2つの認定制度を紹介します。
マンション管理計画認定制度
「マンション管理計画認定制度」は、マンションの管理組合が作成した管理計画を自治体に申請し、一定の基準を満たしていれば認定を受けられるという制度です。
この認定制度は、「マンション管理適正化法」によって定められていて、管理の良好なマンションにお墨付きを与えると同時に、問題のある管理組合を指導するための法的な裏付けとなっています。
マンション管理計画の認定基準は「管理組合の運営」「管理規約」「管理組合の経理」「長期修繕計画の作成、見直し等」「その他」の5つがあり、さらに16項目と自治体独自の基準に細分化されています。
〈マンション管理計画認定制度の認定基準〉
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認定基準 |
審査項目 |
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①管理組合の運営 |
・管理者等及び監事が定められている ・集会(総会)が定期的に開催されている |
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②管理規約 |
・管理規約が作成されている ・管理規約にて下記について定めている ・緊急時等における専有部分の立入り ・修繕等の履歴情報の保管 ・管理組合の財務・管理に関する情報の提供 |
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③管理組合の経理 |
・管理費と修繕積立金の区分経理がされている ・修繕積立金会計から他の会計への充当がされていない ・修繕積立金の滞納に適切に対処されている |
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④長期修繕計画の作成、見直し等 |
・長期修繕計画(標準様式準拠)の内容及びこれに基づき算定された修繕積立金が集会(総会)で決議されている ・長期修繕計画が7年以内に作成又は見直しがされている ・長期修繕計画の計画期間が30年以上かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれている ・長期修繕計画において将来の一時金の徴収を予定していない ・長期修繕計画の計画期間全体での修繕積立金の総額から算定された修繕積立金の平均額が著しく低額でない ・計画期間の最終年度において、借入金の残高のない計画となっている |
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⑤その他 |
・組合員名簿、居住者名簿が適切に備えられている ・都道府県等マンション管理適正化指針に照らして適切なものである |
〈出典〉国土交通省ウェブサイト「管理計画認定制度(管理計画認定の基準)」
管理計画認定制度の認定物件は、管理組合が共用部の修繕資金を借りる際に金利優遇を受けられるため、将来の修繕積立金の急激な上昇を抑えやすい傾向にあります。
また、認定を受けたマンションは、申請者の同意があればマンション管理センターの「管理計画認定マンション閲覧サイト」や「不動産情報サイト アットホーム」内の「建物ライブラリー」で公表されるため、オンラインでだれでも確認できます。
〈参考〉
国土交通省ウェブサイト「管理計画認定制度(管理計画認定マンション 閲覧サイト)」
不動産情報サイト アットホーム「トップページ>建物ライブラリー」
ただし、認定を受けていても閲覧サイトで公表されていないマンションがある可能性もあるため、まずは認定自体を受けているかどうかを確認することをおすすめします。
マンション管理適正評価制度
マンション管理に関するもう1つの評価制度として、マンション管理業協会による「マンション管理適正評価制度」があります。
マンション管理適正評価制度は、マンションの管理状態や管理組合の運営状態を評価し、その情報をインターネットで公開するというものです。
マンションの購入検討者が物件を選ぶ際に管理状態を確認する目安となり、売主や管理組合にとっては良好な管理状態をアピールする材料になります。
運営元が自治体ではなく民間団体という違いがあり、法律に基づくものではなく、あくまで民間による任意の制度です。
審査項目は30項目で、マンション管理計画認定制度の2倍近くあります。以下の表は主な評価項目の抜粋です。
判定方法も認定の合否ではなく、それぞれの項目について6段階評価されます。
〈マンション管理適正評価制度と管理計画認定制度の違い〉
| 評価制度 |
運営 |
審査項目 |
判定 |
有効期間 |
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マンション管理適正評価制度 |
マンション管理業協会 |
30項目 ・管理体制 ・建物・設備 ・管理組合収支 ・耐震診断関係 ・生活関連 |
6段階評価 |
1年間 |
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管理計画認定制度 |
地方公共団体 |
16項目+自治体独自の基準 ・管理組合の運営 ・管理規約 ・長期修繕計画 ・管理組合の経理 ・その他 |
認定(〇×) |
5年間 |
〈マンション管理適正評価制度の評価項目(主な評価項目の抜粋)〉
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大項目 |
評価項目 |
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①管理体制 |
・管理者等及び監事が選任されているか ・集会(総会)が年1回以上開催されているか ・直近5年分の総会議事録が保管されているか ・管理規約の有無 ・管理規約への規定の有無 ・標準管理規約に準拠して、主要な改正項目が規定されているか |
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②建物・設備 |
・法定定期点検・検査等の実施及び報告書の保管 ・長期修繕計画の有無 ・直近5年間の共用部分の修繕等の竣工図書の保管があるか |
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③管理組合収支 |
・管理費と修繕積立金の区分経理 ・修繕積立金会計から他の会計(管理費会計等)への充当がされていないか ・修繕積立金の資金計画の設定 ・管理費滞納額 ・修繕積立金滞納額 ・修繕積立金の額 |
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④耐震診断関係 |
・耐震性(耐震診断の実施) |
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⑤生活関連 |
・設備等の警報発報による緊急対応の体制 ・消防訓練の実施状況 ・名簿の整備状況 ・防災対策 |
評価項目は項目ごとに数値化され、最後に点数を合計し、星の数で0から5まで評価が付きます。
評価を受けたマンションの星の数は、マンション管理業協会の「マンション管理適正評価サイト」で閲覧できます。
認定や評価を受けていないマンションでも、上記の審査項目を参考にして管理状況を調べることで、より具体的な管理組合の現状や将来性を知ることができますので、参考にしてください。
【購入前確認】管理組合は法改正に対応して規約を更新しているか
前章で解説した通り、2026年のマンション関係法改正によって、管理組合には管理や修繕、再生をスムーズに進めやすい環境が整いました。
検討しているマンションが、法改正に伴う規約改正を進めているかを確認するには、不動産仲介会社を通じて総会議事録(直近2〜3年分程度)を取り寄せるのがおすすめです。
議事録で所在不明者の除外規定の整備や、専有部内の配管一斉更新のルール化など、規約のアップデートが議論されているかをチェックしましょう。
建替え以外の選択肢「一棟リノベーション」への意欲
今回の法改正(マンション再生法)で、建物を壊さずに性能を刷新する「建物更新(一棟リノベーション)」が多数決で実施できるようになりました。
前章の通り、耐震不足などで「要除却等認定」を受けたマンションは、一棟リノベーション時に容積率や高さ制限の緩和が受けられる特例があります。
「容積率を増やして増築し、その売却益で修繕費を賄う」など、前向きな再生案が検討されている場合は、個人の金銭負担(一時金など)を抑えながら、マンション全体の価値を上げられる可能性を秘めている物件と言えます。
【まとめ】マンション管理のチェックポイント17項目
評価制度の審査項目や2026年法改正を踏まえて、これから中古マンションを購入する場合にチェックしたい管理状態の主なチェックポイントをまとめました。
購入後に専有部分のフルリノベーションを検討する場合も、管理状態や管理組合の運営状況、長期修繕計画、修繕積立金などの状況を把握することは、その物件で長く安心して住み続けられるかを判断する指針になりますので、ぜひ参考にしてください。
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大項目 |
チェックポイント |
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建物・設備の利用状態 |
・エレベーターは定期的に点検しているか ・駐車場はフルに利用されているか、空いたらすぐに埋まっているのか ・所有者が住まずに、賃貸にしている住戸が増えていないか ・専有部分を含めた電気の容量、インターネット環境に不満はないか |
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資産価値と資金力 |
・周辺のマンションと比較し、同程度の住戸の価格は低くなりすぎていないか ・災害などに備える共用部分の火災(地震)保険の補償内容・保険金額は十分か ・管理費・修繕積立金の滞納者がいて困っている話を聞いたことはないか ・修繕積立金が不足気味で、一時金の徴収などが検討されていないか |
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管理組合の運営状態 |
・管理組合の総会の出席率(委任状・議決権行使書含む)は毎年、平均8割を超えているか ・管理規約や使用細則について、これまで見直したことがあるか ・マンション関係法の改正に伴う管理規約や使用細則の見直しをしているか ・理事会や総会の議事録は、開催後1か月以内に管理組合員に開示されているか ・管理組合は地域の自治会、町内会にも参加し、連携しているか |
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管理会社のサービス |
・管理費等の滞納者への催促や、新規入居者への説明などは十分か ・災害時・緊急時などの連絡方法、対応では頼りになるのか |
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住民コミュニティ |
・マンション内の防災訓練は居住者の半数以上が参加しているか ・管理組合が開催するイベントは毎年、最低でも1回以上あるか |
法改正によって建替えや再生の決議や手続きがスムーズになることで、「自分の買った部屋が建替えになったら困る」と心配される方もいるかもしれません。
しかし、リノベーションを専門とする私たちSHUKEN Reは、この改正はポジティブに捉えられると考えています。
なぜなら、「いつ建替えになるか分からない、いつまで住めるか分からない」という不透明な状況こそが、中古マンション選びの最大のリスクだったからです。
法改正によって再生のルールが明確になれば、「この物件はしっかり耐震補強して、あと40年住み続ける計画があるから、安心してフルリノベーションに予算をかけられる」「この物件は15年後に建替えを検討する合意ができているから、今は表面的なリフレッシュに留めて賢く住もう」など、出口戦略に基づいたリノベーションが可能になります。
■【東京・千葉・神奈川】エリア別の法改正の影響と対策

マンションのリノベーション事例を見る:Case229「Noble」
首都圏でも、エリアによってマンションの構成や住民層は大きく異なります。
この章では、地域ごとのマンション関係法改正の影響について解説します。
なお、エリアのマンションの特徴を踏まえた予測となりますので、あくまで以下のような影響が起きやすい傾向があるという意味で参考にしてください。
世田谷区・杉並区エリア
世田谷区・杉並区エリアは『第一種低層住居専用地域』が多く、容積率に余裕がない、あるいは厳しい高さ制限によって(高く建替えられない)マンションが点在しています。
このエリアでは建替えによる容積増が見込めないケースが多いため、建物の長寿命化と価値向上を両立する「一棟リノベーション」を選択する組合が増えることも予想されます。
耐震補強や配管更新などを適切に行うことで、良質なヴィンテージマンションとして再生されるケースが期待されます。
東京都心・城南エリア(港区、品川区、目黒区など)
都心・城南エリアは、物件価格が非常に高く、区分所有者の権利意識も高いエリアです。
現行の容積率に余剰がある、あるいは行政の許可等による容積率緩和が見込める敷地が広いマンションなどでは、建替えによる事業採算性の向上が期待できます。
そのため、合意形成のハードルを下げる改正法をきっかけに、建替え決議が加速する可能性があります。
リノベーション前提で購入する場合、購入から数年で建替えが決まる「想定外」を避けるため、事前の綿密なヒアリングが必要です。
神奈川エリア(横浜市、川崎市など)
大規模な団地型マンションや、斜面に建つマンションが多いエリアです。
団地型の場合、多数の区分所有者の合意形成が大きな課題でしたが、所在不明者などを決議の母数から除外できる新制度が議論を前進させる大きな追い風となります。
これにより、これまで進まなかった建替えや、建物全体の長寿命化を図る大規模な改修(リノベーション)など、再生に向けた具体的な検討に入る管理組合が増えることが期待されます。
千葉・湾岸エリア(浦安市、千葉市など)
1980年代以降の比較的新しいマンションが多いエリアですが、一部に初期の計画都市の築古マンションも存在します。
埋立地特有の地盤対策や、大規模修繕のコスト高が課題となる中、区分所有法改正によって「修繕か、一括売却か」という議論が活発になることが予想されます。
管理組合のリーダーシップの有無が、物件価格に色濃く反映されることも予想されるため、より詳細な管理状況の把握がポイントになってくると考えられます。
■マンションの区分所有法改正・リノベーションに関するよくある質問

マンションのリノベーション事例を見る:Case228「Keep Updating」
最後に、東京・千葉・神奈川エリアで約25年にわたり8,000件超のリノベーション設計・施工実績があるSHUKEN Reが、中古マンション購入前に解消しておきたい、法改正やリノベーションにまつわる代表的な疑問にお答えします。
■まとめ
2026年4月に施行された区分所有法・マンション再生法などの改正によって、マンションの管理がよりスムーズに進めやすくなり、さらに、老朽化したマンションの再生を後押しするための制度が整えられました。
建替えの多数決要件が緩和されたり、老朽化マンションで「一棟リノベーション」を選択したりできるようになったことで、築古物件が再生によって資産価値を維持・向上できる可能性が高まったと言えます。
東京・千葉・神奈川などの首都圏では特に、マンションの管理状態が資産価値の差に直結しやすくなります。
これからの物件選びでは、長期修繕計画や修繕積立金の状況だけでなく、改正法への管理組合の対応姿勢や耐震診断の有無など、管理状況をより細かく知ることが大切になってきます。
管理計画認定制度などの評価制度の公開情報もチェックしながら、将来性や安全性、そして希望の暮らしや資産形成がかなう物件かどうかを総合的に見極めましょう。
SHUKEN Reは、8,000件を超える中古住宅リノベーションの経験を基に、東京・千葉・神奈川で理想の暮らしをかなえるマンションリノベーションを物件選びからワンストップでお手伝いします。
2026年4月の区分所有法をはじめとするマンション関係法改正や物件の将来性も見据えた、トータルな視点での住まいづくりをサポートしますので、お気軽にご相談ください。
Q リノベーションした直後に「建替え」が決まったら、投資した分は損になりますか?
全額が損になるわけではありませんが、注意が必要です。
建替えが決まると、区分所有者には「取壊しに伴う補償(または新しい部屋への入居権)」が与えられます。
ただし、リノベーションにかけた費用が、この補償額に全額上乗せされるとは限りません。
法改正によって建替えの検討がスムーズになるからこそ、物件購入前に管理組合の動向をしっかりと調査し、事前に「今後10〜20年の修繕・建替え計画」を把握することが重要になってきます。
Q 2026年の法改正で「建替え」がどんどん進むようになるのでしょうか?
耐震性不足が認められるなど、一定の条件を満たすマンションにおいて、建替え決議の多数決要件が「5分の4」から「4分の3」へと緩和されたことで、これまで合意形成が難しかった物件でも建替えが検討の土台に乗るようになります。
しかし、建替えには多額の追加費用が発生するため、全ての物件ですぐに決議が通るわけではありません。
むしろ、今回の改正で注目すべきは、これまで実質的に全員の同意が必要だった「一棟リノベーション(建物更新)」が、多数決で選びやすくなった点です。
建替えよりもコストを抑えつつ、建物全体の性能を上げる「現実的な再生」を選択するマンションも増えると予想されます。
Q 所在不明者が除外されることで、管理費や修繕積立金の値上げも決まりやすくなりますか?
その可能性はあります。
区分所有法改正によって、裁判所の決定を得ることで所在不明者などを決議の母数から除外できるようになったため、総会の成立要件(定足数)や賛成率のハードルが下がり、適切な維持管理に必要な決議が通りやすくなります。
管理費や修繕積立金の値上げは一見デメリットに感じるかもしれませんが、「必要な時に必要な修繕ができること」は、将来の資産価値を維持するために不可欠な要素です。
適切な値上げが行われているマンションは、将来の修繕に備えた資金管理がしっかりできている証とも言えます。
Q 古いマンションをリノベーションする際、耐震補強は自分の部屋だけでできますか?
専有部分(お部屋の中)のリノベーションだけで、根本的な耐震補強を行うことはできません。
マンションを支える柱や梁、コンクリートの壁などの構造体は「共用部分」にあたり、個人で勝手に改修することが法律や規約で禁じられているためです。
建物の耐震性を向上させるには、管理組合が主導して建物全体を補強する工事が必要になります。
だからこそ、今回の法改正で「建物更新(一棟リノベーション)」の決議がしやすくなったことは、購入者にとって大きなメリットです。
一棟リノベーションは建物全体を対象とした工事ですが、この決議がしやすくなったことで、老朽化した建物の再生に向けた管理組合の議論が前進しやすくなり(現実味を帯びるようになり)、購入者としての選択肢が広がったと言えます。








