公開日:2024-03-31 更新日:2024-07-04
ペット可賃貸の原状回復トラブルを防ぐ方法|火災保険・ペット特約などで対策
最近はペット可賃貸の需要が高まっており、空室対策として取り入れる賃貸オーナー様も増えています。
しかし、ペット可賃貸は退去時の原状回復費用が高額になるケースが多く、入居者とオーナー様でトラブルになるリスクがあるため注意が必要です。
そこで今回は、ペット可賃貸の原状回復費用に関する基礎知識を分かりやすくまとめます。
ペットの原状回復に保険を使えるケース、入居時のペット特約の結び方など、トラブルを防ぐためのポイントをご紹介します。
・一般的なペットの飼育で発生した傷や汚れの原状回復費用は、保険の対象にはなりません。
・ペット可賃貸のトラブルを防ぐには、原状回復費用の相場を把握する、特約で費用負担割合を明確にしておくなどの対策が効果的です。
目次
■ペット可賃貸の原状回復費用のトラブルは多い
ペット可賃貸は、一般的な物件より原状回復費用が高額になる傾向があり、トラブルに発展するケースが多いようです。
クリーニングや原状回復費用が高額になり、入居者と折り合いがつかず裁判になるケースも報告されています。
具体的な判例を1つ紹介しましょう。
※ペット可賃貸の原状回復費用の判例
概要:ペット可賃貸の退去時に、原状回復費用(クロス・クッションフロア張り替え、クリーニング費用)として50万745円の支払いを求めたところ、賃借人が通常損耗以上の損害を与えた事実はないとして敷金全額の返還を求めて提訴した。
判決:クロスについてはペット飼育による張り替えの必要性が認められず、クッションフロアのタバコの焦げ跡、クリーニング費用の5万9,460円のみ賃借人負担とされた。
上記の判例では、約50万円の原状回復費用について、賃借人の負担が認められたのは約6万円。オーナー側が約44万円もの費用を負担することになります。
ペット可賃貸の原状回復費用や負担割合は、飼育状況や契約内容によって変動します。
しかし、原状回復費用がかなり高額になることもあり、オーナー側の負担割合が大きくなるリスクも考えられるのです。
費用負担の折り合いがつかず裁判沙汰になれば、かなりの時間と手間もかかります。
ペット可賃貸の原状回復費用にまつわるトラブルを防ぐためには、保険適用の可否や費用相場などの基礎知識を、しっかり把握しておくことが大切です。
■ペットの原状回復費用に火災保険は使える?
ペットによる傷や汚れの原状回復について、入居時に加入する火災保険が使えるケースもあります。
上手く保険を活用して原状回復費用を抑えられれば、退去時のトラブルを防ぎやすくなります。
ペットの原状回復に火災保険が使えるケース
ペットによる突発的な事故が原因で破損した部分の原状回復には、火災保険が適用できる可能性があります。
- ペットが家具を倒して壁や床を傷つけてしまった
- 電源コードをペットが噛んで火災が発生した
- コンセントにペットが尿をかけて漏電した
上記のように、予測するのが難しい突発的な事故は、火災保険の補償範囲に含まれる可能性が高いです。
このような事故による原状回復は費用が高額になる可能性が高いため、火災保険で負担を軽減するメリットは大きいでしょう。
ただし、火災保険の請求期限は3年なので、事故が発生してから退去までの時間がかかると適用できない可能性もあります。
また、室内の傷は放置すると被害が大きくなり、原状回復費用が高額になる傾向もあります。
ペットを飼育する予定の入居者と契約するときは、このような事故が発生した際なるべく早めに連絡を入れてもらい、保険適用できるか確認するのが良いでしょう。
〈関連コラム〉
火災保険が退去時の原状回復に使える?不動産オーナー必見の新基礎知識
火災保険が使えないケース
ペットによる日常的な汚損・破損には、火災保険は適用できません。
- 猫や犬の引っかき傷
- 壁や床の汚れ
- 室内の臭い
上記のような、ペットを飼育することで日常的に発生する傷・汚れ・臭いの原状回復は、火災保険が適用できない可能性が高いです。
室内の汚損や破損はペットを飼うことで十分予測できるものであり、「不測かつ偶発的な事故」ではないため火災保険の対象にならないのです。
このような、ペットを飼うことで発生し得る汚損・破損の原状回復については、入居時に特約を結んで負担割合を決めておく必要があります。
ペット特約については後半で詳しく解説します。
■ペット保険の賠償責任特約は原状回復に使える?
ペットの病気やケガに対する保険の中の、「賠償責任特約」が原状回復費用に使えないかと考える方も多いようです。
しかし、残念ながら、ペット保険の賠償責任特約は賃貸物件の原状回復には使えません。
ペット保険の賠償責任特約とは、ペットが他人にケガを負わせたり、物を壊したりして損害を与えたときに保険金が支払われる仕組みです。
ご自身で借りているアパートやマンションは対象とならず、保険適用が認められないのです。
■ペット可賃貸の原状回復の費用相場
ペットの原状回復費用に関するトラブルを防止するためには、相場を把握しておくことも大切です。
入居時に原状回復の費用相場をしっかり説明しておけば、退去するときトラブルになる可能性を抑えられるかもしれません。
傷や汚れの補修
ペットが付けてしまった傷や汚れの補修は、内容によって費用相場が変わります。
補修内容 | 費用相場 |
クロス・クッションフロアの部分補修 | 2~3万円 |
クロスの張り替え(8帖) | 5~8万円 |
フローリングの部分補修 | 4万円~ |
フローリングの張り替え(8帖) | 6~8万円 |
壁下地の張り替え | 3万円~ |
例えば、壁や床の引っかき傷の程度が浅ければ、部分補修で済む可能性があります。
しかし、傷の範囲が広かったり、下地まで達したりしている場合は、全面クロスや下地の張り替えが必要になるケースも。
これらの費用相場を入居時に説明し、なるべく傷や汚れを付けないようなしつけや飼育方法を検討してもらうのも、トラブル防止につながります。
ペットの臭い消し
ペットの体臭や尿の臭いは人間より強い傾向があり、一般的なハウスクリーニングより費用が高額になります。
ペットの臭い消しを含めたハウスクリーニングの費用相場は、8畳程度の部屋で3~5万円です。
ただし、臭いの強さや状況によって費用は変動し、入居期間が長かったり床や壁の内部まで染みこんでしまったりしていると、高額になる可能性もあります。
■ペット可賃貸のトラブルは原状回復特約で予防
ペット可物件のトラブルを未然に防ぐには、契約時に原状回復特約を結び、オーナー様・入居者の負担割合を明確にしておくことも大切です。
原状回復特約とは
原状回復特約とは、賃貸借契約時に原状回復の負担割合を決めておくことを指します。
原状回復ガイドラインでは、貸主と借主の負担割合を次のように定めています。
- 貸主負担:経年変化、通常の使用による損耗等の原状回復費用
- 借主負担:通常使用以外による損耗、故意・過失による破損の原状回復費用
参照:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について
しかし、ペットによる傷や汚れは通常使用なのか、過失なのかなど判断が難しく、トラブルになるケースが多いです。
ペット飼育を許可する場合は、通常の原状回復とは異なる特約を結び、費用負担を明確にしておく必要があるのです。
ペット可賃貸の原状回復特約の考え方
ペット可の賃貸契約では、さまざまなトラブルを想定して原状回復特約を結んでおく必要があります。
一般的には、通常のペット飼育の範囲を超えたことによる破損・汚損は、賃借人が全額負担する特約を結ぶことが多いです。
このような特約を結んでおけば、しつけ不足による室内の破損、トイレを設置しなかったことによる汚れや臭いなどの原状回復は、賃借人に負担してもらえる可能性が高くなります。
ただし、ペットによる破損や汚損でも、経年劣化を考慮すると全額請求はできないため、築年数や入居期間による負担割合も定めておく必要があります。
また、敷金を多めに預かっておく、トイレの設置やしつけを義務付けるなどの対策も大切です。
■ペット可賃貸のトラブル防止はリノベーションも検討
ペット飼育を許可して空室対策をする場合は、リノベーションで原状回復のトラブルを未然に防ぐのも1つの考え方です。
例えば、引っかき傷や汚れに強い壁紙を使えば、原状回復費用とトラブルのリスクを抑えることができます。
フローリングも、ペットの尿に強いコーティングを施したものを使えば、臭いや染みが付きにくいです。
ペットが滑りにくい機能の床材などもあるので、入居者へのアピールにもなり空室改善効果も高まります。
空室対策としてペット許可を検討する場合は、ぜひリノベーションによる強化も検討してみてください。
SHUKEN Reは、多くの住宅改修で培ったノウハウをもとに、収益性の高い賃貸物件づくりのリノベーションをお手伝いしています。
ペット飼育物件のリノベーション実績も多数ございますので、入居者に選ばれる魅力的な賃貸づくりもお任せください。