公開日:2025-11-23
マンション一棟リノベーションか、建て替えか?失敗しない再生事業の進め方とリスク回避の必須ポイント

全国で老朽化したマンションが増加し、空室率の上昇、家賃下落、修繕費の増大などが課題になっています。
従来は築年数が古くなったマンションは建て替えるのが一般的でしたが、実際には費用・工期・入居者の退去などのハードルが高く、スムーズに進められないケースも少なくありません。
そこで注目されているのが 「マンション一棟リノベーション」 です。
一棟リノベーションは、既存の建物を活かしながら外観・共用部・専有部・設備を刷新することで、費用と工期を抑えてマンションの資産価値や収益性を再生できる新たな手法です。
一棟リノベーションは、自己所有マンションを賃貸経営するオーナー、中古物件を仕入れて再販する不動産会社どちらにとっても老朽化対策の選択肢となります。
本記事では、マンションの老朽化対策として、一棟リノベーションと建て替えとを比較しながら、事業を成功させるためのヒントを解説していきます。
- ・マンションの一棟リノベーションは、建て替えより費用を抑えて新築同様の収益性や商品力を持たせられるのがメリットです。
- ・賃貸マンションの一棟リノベーションは、ニーズに合わせた間取りやデザイン変更で入居率や家賃収入を高めることができます。
- ・資金調達や事業計画の精度など、マンション一棟リノベーションの成功・失敗に関わる重要なポイントをチェックしましょう。
目次
■【徹底比較】一棟リノベーション vs. 建て替え

従来は、築年数が古くなったマンションは建て替えによってリニューアルするのが一般的な選択肢でした。
しかし、マンションの建て替えには次のようにさまざまなハードルがあり、スムーズに計画が進まないことも少なくありません。
※マンション建て替えのハードル
- 費用負担が大きい:解体~再建築費用が数億円規模になるケースが多い
- 工期が長い:2〜3年かかることもある
- 法規制の壁:容積率や建築基準法の制約で、同規模の建物を建てられない場合がある
そこで、建て替えに変わる手段として、マンションの一棟リノベーションが注目されています。
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比較項目 |
一棟リノベーション |
建て替え |
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費用 |
抑えられる (解体費不要・躯体再利用可能) |
高額 (解体費+廃材処分費+新築費用) |
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工期 |
短い (家賃収入が途絶える期間を短縮できる) |
長い (2~3年かかることもあり、長期間家賃収入が途絶える) |
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法規制 |
影響を受けにくい (現行法規制への対応が不要なケースが多い) |
現行法に準拠 (容積率減による延床面積の減少リスクあり) |
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合意形成 |
緩和傾向 (改正区分所有法により進めやすい) |
難易度が高い (区分所有者の4/5以上の賛成が必要) |
鉄筋コンクリート造のマンションの建て替え費用は数億円規模になり、工事期間中は家賃収入が途絶えてしまいます。
しかし、解体が不要で躯体を再利用できる一棟リノベーションなら、費用を大幅に抑えて家賃収入が途絶える期間も短縮可能です。
また、マンションが現行の法基準に適合していない場合、建て替えによって規模が小さくなったりプランに影響を受けたりするリスクもあります。
一方、既存の建物を活かす一棟リノベーションは、法改正による制限を回避しやすい傾向があります。
また、区分所有マンションの建て替えは住民の合意形成がハードルになることが多いですが、一棟リノベーションは改正区分所有法により緩和傾向にあります。
このように、費用や工期などのハードルで建て替えが難しい場合でも、一棟リノベーションなら課題を解決しつつ資産価値や収益性を回復できる可能性があるのです。
こちらのコラムで一棟リノベーションの基礎知識について詳しく解説していますので、あわせてごらんください。
〈関連コラム〉
一棟リノベーションのメリット・デメリット|費用相場と事例も紹介
■マンション一棟リノベーションの3つのパターンとメリット

マンションの一棟リノベーションは、物件の種類や目的によって大きく3パターンに分かれます。
- 賃貸マンションを一棟リノベーションする
- 中古物件を一棟リノベーションして再販する
- 社宅やオフィスビルなどを一棟リノベーションで用途変更する
それぞれのパターンで、一棟リノベーションをすることでどのようなメリットがあるのかチェックしていきましょう。
①賃貸マンションの一棟リノベーション
築年数が経過した賃貸マンションを所有しているオーナーや不動産会社にとって、一棟リノベーションは空室率の改善や収益性向上の有効な手段となります。
前述したようにマンションを一棟丸ごとリノベーションすることで、意匠や機能を新築同様に回復し、空室率の改善や賃料アップなどを見込むことができます。
また、入居者のニーズに合わせた間取り変更やブランディング、トレンドの設備の導入なども収益性の向上につながるポイント。
例えば、マンション一棟まるごとのリノベーションなら、追い炊き機能付き浴槽や3口ガスコンロ、オートロックなど、トレンドの賃貸ニーズに合わせた最新設備の導入も可能です。
また、滑りにくく傷や汚れに強い内装材を使ったペット共生型賃貸、ワークスペースやフリーWi-Fiなどを完備したリモートワーカー向け賃貸など、ターゲットユーザーに合わせた差別化戦略も取りやすくなります。
大規模な間取り変更で、身者やファミリーなど賃貸ニーズの変化に対応できるのも、一棟リノベーションならではのメリットです。
また、耐震補強や断熱改修などを実施することで、マンションの資産価値を向上させ寿命を延ばすことにもつながります。
②買取再販の一棟リノベーション
中古マンションを仕入れて再販する不動産会社にとっても、一棟リノベーションで商品価値を高めるメリットは大きいです。
築古のままで販売が難しい物件も、一棟リノベーションで新築マンションと同様の商品力を持たせることができます。
一棟リノベーションでデザイン性や機能性を高めることで、物件の販売スピードが上がり収益性の改善につながるのも大きなメリット。
魅力的なマンションに一棟リノベーションすることで、在庫回転率の向上や保有コストの削減が期待でき、投資資本の回転率アップにもつながります。
また、複数の物件でデザインや仕様を統一すれば、自社ブランドの確立やシリーズ展開なども可能になります。
③一棟リノベーションによる用途変更
古い寮や社宅、稼働率が低いオフィスビルなどを、一棟リノベーションで用途変更し賃貸マンションにつくり変えるのも近年増えているパターンです。
例えば、入居率が低くなったり使われなくなったりした社宅を分譲マンションに用途変更(コンバージョン)すれば、現代のニーズにマッチさせて収益性や資産価値を高めることができます。
自社保有の古い社宅や中古物件を一棟リノベーションで分譲マンションにすることで、安定した家賃収入を得られるケースも多いです。
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また、企業の撤退や移転などで稼働率が低下したオフィスビルを用途変更し、立地を活かした希少性の高い住居として収益性を向上させる方法もあります。
東京などの都市部ではビルに住みたいという賃貸ニーズが強く、競合との差別化により入居率や収益性が高い物件に生まれ変わらせることも可能です。
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ニーズの変化により収益性が低下した物件でも、用途変更によって家賃収入や販売価格を高めることが可能です。
■一棟リノベーションのリスクと失敗しない施工会社選びのポイント

一棟リノベーションは建て替えに比べて費用や工期の面で優れた選択肢ですが、注意すべきデメリットやリスクも存在します。
4つのデメリットやリスクと対策をセットで解説し、最後に失敗しない施工会社選びのポイントをまとめます。
デメリット①:初期投資と資金調達のハードル
一棟リノベーションは建て替えよりは低コストとはいえ、数千万円〜数億円規模の投資が必要です。
築古のマンションは担保評価が低く、融資を受けられなかったり条件が厳しくなったりするケースも。
資金計画を誤ると投資回収が長期化し、経営が厳しくなるリスクもあります。
一棟リノベーションの資金計画では、プロジェクトに合わせて融資先を比較検討することが大切です。
| 金融機関/ローン名 | 特徴 |
| 住宅金融支援機構/マンション共用部分リフォーム融資 | 全期間固定金利で安定した返済計画を立てやすい |
| 日本政策金融公庫/一般貸付 | 比較的高額な融資が可能で金利も低い傾向がある |
| 民間金融機関 | ローン商品のバリエーションが豊富でスピード感に強み |
上記のように、法人名義のマンションの一棟リノベーションで利用できる金融機関やローン商品は複数あります。
金利や返済期間などの条件も踏まえて、プロジェクトに合わせた資金調達方法を比較検討してみてください。
また、マンションの一棟リノベーションが対象となる補助金制度を活用し、費用負担を抑えるのも1つの方法です。
- 先進的窓リノベ2025事業:窓やドアなど開口部の断熱改修が対象
- 給湯省エネ2025事業:賃貸集合住宅の省エネ給湯器導入が対象
- 子育てグリーン住宅支援事業:断熱改修やエコ設備導入など幅広い工事が対象
例えば上記のような国の住宅系補助金は、法人や事業者も対象となるためマンションの一棟リノベーションに活用できる可能性があります。
デメリット②:事業計画の精度不足
一棟リノベーション後の家賃設定や稼働率の見込みが甘いと、想定通りの収益が得られず投資回収が難しくなります。
また、デザインや間取りが市場ニーズと合わなければ、費用をかけてリノベーションをしても空室が解消されない可能性もあります。
リノベーションを検討するマンションのエリアマーケティングを実施し、ターゲットユーザーやコンセプトを明確にしたうえで事業計画やプランニングを進めることが大切です。
例えば、ファミリー層が多いエリアなら部屋数や間取りを増やし、共働き世帯をターゲットにするなら宅配ボックスなどの設備を導入するなどの工夫が効果的です。
マーケティングに基づき精度の高い事業計画を立てることで、想定した家賃収入や売却益を得ることができ、スピーディーかつ確実な投資回収が可能になります。
デメリット③:立ち退き交渉の負担
既存入居者がいるマンションでは、立ち退き交渉や補償が必要です。
交渉が長引けば工期が遅れ、補償や裁判などの追加コストが発生するリスクもあります。
特にマンション一棟全体のリノベーションでは、既存の入居者が多いと立ち退き交渉の期間が長引き、コストも増加するリスクが高くなります。
対策としては、立ち退き料の相場や交渉の進め方を把握したうえで、入居者へスムーズな説明をすることが大切です。
また、マンションの一棟リノベーションの施工実績が豊富な施工会社に相談し、立ち退き交渉も含めたトータルサポートを受けるのも効果的な対策です。
デメリット④:施工会社のクオリティに左右される
マンションの一棟リノベーションは、施工会社の技術力や提案力に事業の成功が左右される点も注意すべきリスクです。
リノベーションはプランの自由度が高い反面、設計・施工の経験値によって成果が大きく変わります。
経験不足の施工会社に依頼すると、工期遅延や品質トラブルが発生するリスクが高まります。
つまり、マンションの一棟リノベーションを成功させるためには、施工実績が豊富な施工会社に相談することが重要です。
失敗しない施工会社を選ぶ3つのポイント
ここまで見てきたように、マンションの一棟リノベーションを成功させるためには、施工会社選びが重要なポイントになります。
一棟リノベーションの失敗を防ぐために、施工会社を選ぶ際は次の3つのポイントをチェックしましょう。
- 法人向け一棟リノベーションの実績は豊富か
- 設計・施工一貫(ワンストップ)体制か
- 建築基準法や消防法など、法規制への対応力は高いか
前述したさまざまなデメリットやリスクに対応するためには、法人向け一棟リノベーションの実績が豊富な施工会社を選ぶことが大切です。
さまざまなマンションの一棟リノベーションでノウハウを持っている施工会社なら、リスクに先回りした対策で失敗を回避することが可能になります。
また、設計から施工まで一貫体制で、スピーディーかつ柔軟な対応が可能な会社を選ぶのも重要なポイント。
建築基準法や消防法など、マンションの一棟リノベーションに関する法規制の知識が豊富で、柔軟に対応できるかという視点もチェックしましょう。
私たちSHUKEN Reは、マンション大規模改修の豊富な実績に基づき、設計・施工一貫体制によるサポート体制を整備しております。
事業計画の作成や資金調達、補助金の申請、立ち退き交渉など、マンション一棟リノベーションのトータルサポートによるリスク回避が可能です。
マンション一棟リノベーションのことならどんなことでもお気軽にご相談ください。
■マンション一棟リノベーションの成功事例
最後に、SHUKEN Reが手がけたマンションの一棟リノベーション成功事例をご紹介します。
築年数23年 総戸数50戸のマンション

築23年の社宅をマンションに一棟リノベーションした事例です。

外観はもちろん、マンションの第一印象を左右するエントランスも高級感のあるデザインに一新。

専有部分は間取りやデザインにトレンドを取り入れ、さまざまなニーズに対応できる4パターンの空間に仕上げています。
築32年 総戸数59戸のマンション

築32年のマンションが、一棟リノベーションによって魅力的な物件に生まれ変わりました。

間仕切りで可変性を持たせたLDKは、さまざまなライフスタイルの入居者にマッチする間取りです。

数種類のインテリアやオプション工事の選択も可能で、一般的な分譲マンションより自由度を持たせることで商品力を高めています。
■一棟リノベーションに関するQ&A

実際にマンションの一棟リノベーションを検討する際、よくあるご質問をまとめました。
Q.入居者がいる場合でもリノベーションできますか?
A.基本的には退去状態で進めるのが理想的です
入居者がいる状態でもリノベーションを進めることは不可能ではありませんが、基本的にはすべての部屋が退去した状態が理想的です。
入居者がいる状態だと工事の進め方や生活に支障が出てしまい、工期が伸びたりトラブルが発生したりするリスクがあります。
Q.一棟リノベーションで耐震性や省エネ性能を高められますか?
A.新築レベルに性能を高めることも可能です
一棟リノベーションと同時に耐震補強や断熱改修をすることで、新築マンションと同等の性能を高めることができます。
耐震性や断熱性は賃貸ユーザー、分譲マンション購入検討者どちらにとっても重要な要素のため、しっかり計画に盛り込みましょう。
Q.改正区分所有法で具体的に何が変わる?
A.多数決で一棟リノベーションを進めることが可能になります
区分所有法の改正によって、分譲マンションの建物更新を多数決で決議することが可能になります。
従来は分譲マンションの一棟リノベーションは所有者全員の同意が必要で、1人でも反対意見が出ると計画を進めることができませんでした。
今回の法改正により、所有者の5分の4以上の多数決で一棟リノベーションを進められるようになり、耐震性不足など特定の条件を満たす場合は4分の3以上に緩和されます。
この法改正によりマンション一棟リノベーションの合意形成のハードルが下がり、スムーズに計画を進めることが可能になります。
参照:法務省 老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律について
Q.法人案件にも対応できますか?
A.大規模な法人案件のサポートも得意としております
私たちSHUKEN Reは、不動産会社様やデベロッパー様の中古物件仕入れから一棟リノベーションによる再販までトータルサポートした実績がございます。
設計・施工・デザインまでの自社一括体制で、スピーディーに事業を進めることが可能です。
■まとめ
マンションの一棟リノベーションは、老朽化や空室率の上昇といった課題を抱えるオーナーや不動産会社にとって、建て替えに代わる有力な選択肢です。
一棟リノベーションは、建て替えに比べて費用を抑えられ工期も短縮できるため、低リスクで資産価値や収益性を高めることが可能です。
一棟リノベーションにもデメリットはあるものの、綿密な事業計画やリスク管理を前提に計画を立てれば、資産価値を再生させる有効な手段になり得ます。
マンションの一棟リノベーションによって事業を成功させるためには、法人案件の施工実績が豊富で、自社施工体制でトータルサポートできる会社に相談することが大切です。

SHUKEN Reは設計・施工・家具製作まで自社でワンストップで対応し、個人のマンションオーナー様から法人様まで幅広く対応いたします。
これまで多くのマンション大規模改修を手掛けた実績がございますので、設計・施工はもちろん、事業計画や資金調達なども含めたトータルサポートが可能です。
ぜひお気軽にご相談ください。









