公開日:2025-09-15
お寺の庫裏改築・リフォーム計画のポイント|間取りの考え方や費用相場も解説
お寺の住居部分である庫裏の老朽化や暮らしづらさを感じたら、改築やリフォームを検討するタイミングです。
しかし、庫裏の改築やリフォームは一般住宅と異なる点が多く、利用状況に合わせた間取り、本堂とのバランス、費用など、さまざまな配慮が求められます。
そこでこの記事では、お寺の庫裏を改築・リフォームする際に考えるべきポイントや費用相場を分かりやすく解説します。
- ・暮らしにくさ・老朽化・性能不足など、庫裏の改築や建て替えを検討すべきタイミングをご紹介します。
- ・庫裏は住居とお寺の施設の2つの役割を持っているため、リフォーム計画の際に一般住宅とは異なる点に配慮が必要です。
- ・庫裏の改築・リフォーム費用相場は建物の規模や内容によって異なり、500~3,000万円が目安です。
■庫裏の改築・リフォームを検討すべきタイミング
築年数が経ち、庫裏で次のような課題や不満を感じている場合、改築やリフォームによる解決を検討すべきタイミングです。
ご自身のライフスタイルや庫裏の状態に照らし合わせて、改築やリフォームの必要性について考えてみてください。
間取りがライフスタイルに合わず暮らしにくい
庫裏の間取りが昔のままで現代のライフスタイルに合わないと感じている場合は、改築やリフォームを検討すべきタイミングです。
近年私たちのライフスタイルは大きく変化しており、数十年前の間取りだと暮らしにくいと感じることが少なくありません。
例えば、台所・食堂・居間が分かれている昔ながらの間取りだと、家事効率が悪く家族のコミュニケーションも取りづらいです。
また、家事や生活に関する動線効率が悪く、余計な負担や時間がかかっているケースもあります。
このように、庫裏の間取りについて暮らしにくさを感じている場合は、間取り変更などによる改善を検討してみましょう。
建物や設備の劣化が進んでいる
庫裏の建物本体や水回り設備などが劣化している場合も、改築やリフォームを検討した方が良いタイミングです。
外壁や屋根など建物本体の劣化が進むと、雨漏りやシロアリ被害のリスクが高くなり、重大なトラブルにつながる可能性があります。
適切な方法でメンテナンスをすることで庫裏の寿命を延ばし、余計な費用がかかるのも防ぎやすくなります。
また、台所・お風呂・トイレ・洗面などの水回り設備が古いと使いづらいだけでなく、配管の劣化により水漏れが発生するケースも。
電気配線やコンセントなどが劣化し、漏電による火災が発生するリスクも高くなります。
庫裏の築年数が経っており、建物や設備の老朽化が進んでいる場合は、改築やリフォームで刷新しトラブルのリスクを軽減させましょう。
断熱性能の不足で暑いor寒い
庫裏の築年数が古く、夏の暑さや冬の寒さを感じている場合は、断熱改修を検討すべきタイミングです。
2025年4月の建築基準法改正により断熱性能の基準が設けられましたが、古い庫裏は断熱材が使われておらず冷暖房効率が低いケースが多いです。
断熱性能が低いと余計な光熱費がかかり、冷暖房を付けても暑さや寒さで快適に過ごすことができません。
断熱改修は壁・天井・床などを一度はがして断熱材を入れる必要があるため、庫裏全体の改修やリフォームと同時に計画するのがおすすめです。
現行の耐震基準に適合していない
庫裏が建築基準法改正以前に建てられていて、現行の耐震基準に適合していない場合は、耐震改修も検討しましょう。
1981年の建築基準法改正以前に建てられた庫裏は、現行の新耐震基準を満たしておらず、大きな地震による損壊や倒壊のリスクが高くなります。
せっかく庫裏を暮らしやすくリフォームしても、地震によるダメージを受けると再改修や建て直しが必要になる可能性があります。
庫裏の築年数が古い場合は、耐震診断などを実施して補強や改修の必要性を調査してみましょう。
■お寺の庫裏改築・リフォーム計画のポイント
庫裏の役割は住居だけではないため、改築やリフォームの際に一般住宅とは異なる考え方が求められます。
庫裏の改築やリフォームを成功させるために、考えるべきポイントについて解説します。
目的やコンセプトを明確にする
具体的な庫裏の改築やリフォーム計画を立てる前に、まずは目的やコンセプトを明確にすることが大切です。
前述したように、庫裏の改築やリフォームを検討するタイミング、目的はさまざまです。
建物や設備の老朽化に対策するのか、暮らしにくさを改善するのかなど、目的によってプラン内容やかかる費用は変わります。
また、檀家からのお布施や寄付を資金に充てる場合は、改築やリフォームをする理由を説明して納得してもらう必要もあります。
宗派によっては庫裏の改築やリフォームに檀家の許可が必須になるケースもあり、そういった面でも目的やコンセプトを明確にすることが大切です。
住居としての暮らしやすさ
住職と家族が暮らす庫裏の改築やリフォームでは、住居として暮らしやすくすることが大前提です。
ただ外観や内装、設備を新しくしただけだと、間取りが現代のライフスタイルに合わず暮しやすさは改善されません。
また、昔ながらの日本の建築物は断熱性能が低いため、断熱改修で快適性や省エネ性を高めることも大切です。
現在の庫裏が抱えている課題や不満をリストアップし、改善するための改築・リフォーム計画を立てましょう。
ライフスタイルの変化や代替わり
お寺の施設の一部である庫裏を改築・リフォームする際は、住職と家族のライフスタイルの変化、将来の代替わりなども想定することが大切です。
例えば、年齢を重ねて足腰が弱ってきたとき、段差をなくしてバリアフリー化しておかないと安全・快適に暮らし続けることはできません。
また、身内の後継者に代替わりをする場合、引退した住職や家族がそのまま同居するのか、住み替えをするのかといった選択も見据えて間取りを考える必要があります。
改築やリフォームが完成した直後のことだけ考えるのではなく、次の代まで含めた長期的な視点で考えてみましょう。
庫裏と本堂の動線と距離感
庫裏の改築・リフォームでは、本堂との動線や距離感を考えることも大切です。
庫裏は住職や家族の住居であると同時に、お寺の一部として檀家が利用するケースもあります。
例えば、法要の会食や相談などで庫裏を使用する場合、本堂からスムーズに移動できる動線をつくるのが理想的です。
檀家が庫裏を利用する場合は、住居スペースと共用スペースを明確にして、間取り変更で適切な距離感を取ることも大切です。
■お寺の庫裏改築・リフォームの費用相場
庫裏の改築やリフォームにかかる費用は、建物の規模や状態、工事内容などによって変動します。
今回は戸建て住宅の費用相場を参考にしてみましょう。
改築・リフォーム内容 |
費用相場 |
躯体以外の部分を全面リフォーム |
500~2,500万円 |
古民家再生 |
1,200~3,000万円 |
戸建て住宅の基礎や柱などの躯体部分を残し、全面リフォームする場合の費用相場は500~2,500万円です。
ただし、お寺の庫裏は築年数が古く、日本古来の伝統工法でつくられているケースも少なくありません。
古民家再生にかかる費用相場は1,200~3,000万円と一般住宅より高いため、庫裏の場合も予算を少し多めに考えておく必要があるでしょう。
例えば、庫裏の瓦や外壁などを改築する場合、本堂とデザインを統一する必要があり、一般住宅より建材の価格や工事費用の相場は高くなります。
上記の費用相場はあくまで目安として、お寺の改築やリフォームに詳しい専門店に正確な見積もりを依頼しましょう。
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■お寺の庫裏改築・リフォームでよくある質問
庫裏の改築やリフォームを検討する際、よくある質問をまとめました。
Q.建て替えとどちらがいい?
A.庫裏の改築と建て替えどちらがよいかは、予算や建物の状態などさまざまな条件によって変わります。
一般的には改築の方が費用を抑えられますが、雨漏りやシロアリ被害の補修、大規模な耐震補強が必要な場合は建て替えより費用がかかるケースもあります。
また、庫裏は一般住宅と異なり、文化的価値や檀家の意見なども踏まえて改築と建て替えを比較することも重要です。
こちらのコラムでお寺の改築と建て替えについて詳しく解説しています。
〈関連コラム〉
寺リノベーションとは?改修や建て替えとの違い、費用の考え方やアイデアを解説
Q.使える補助金はある?
A.境内の中に建っている庫裏は寺社の一部とみなされるため、改築やリフォームに補助金を活用するのは難しいです。
宗教法人である寺社は税制面で優遇されている半面、政教分離の原則により国や自治体からの補助は基本的に期待できません。
ただし、文化財の指定を受けている場合など、特定の条件を見たせば文化庁などの補助金を使える可能性は考えられます。
■まとめ
庫裏の改築やリフォーム計画を立てる際は、住居としての暮らしやすさや快適性、お寺の施設としての役割のバランスを取ることが大切です。
一般住宅とは異なるさまざまな点に配慮が必要となりますので、お寺の改築やリフォーム実績がある施工会社に相談しましょう。
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