公開日:2024-04-28 更新日:2024-12-13
【中古マンションの“買取再販”物件】デメリットと後悔しないためのポイントを解説
中古マンションの購入を検討している方の中には、「買取再販物件」、いわゆる“リノベーション済み物件”をターゲットにしている方もいるでしょう。
最近の空き家問題解決の糸口として政府も推奨しており、新規参入する販売会社も増えています。
メディアでメリットを取り上げることも多いですが、そのデメリットについてはあまり知られていません。
そこで今回は、中古マンションの買取再販物件について、最近の傾向や市場推移、メリット・デメリットを丸ごと紹介します。
買取再販マンションをおすすめするケースとおすすめしないケースも紹介しますので、これからマンション購入を検討する方は、ぜひ参考にしてください。
・買取再販の中古マンションには、新築マンションやリノベーションされていない中古マンションとは異なる、メリット・デメリットの両方があります。
・買取再販マンションを購入する際には、ご自身の考えや理想が叶えられるのかを事前にチェックすることが重要です。
・間取りやデザインにとことんこだわりたい方には、リノベーションされていない中古マンションがおすすめです。
目次
中古マンションの買取再販物件とは?
リフォーム・リノベーション事例を見る:Case74「赤と躯体が映える家」
「買取再販物件」とは、宅地建物取引の資格を持つ会社が中古物件を仕入れ、リフォーム・リノベーションした後に販売する住宅を指します。
物件情報サイトなどでは、“リフォーム・リノベーション済み物件”として紹介される場合もあり、一度は目にしたことがある方も多いでしょう。
戸建て住宅の買取再販は、物件により建物の劣化度合いに大きな差があるため、販売会社・消費者へのリスクが高く、市場はそれほど拡大していません。
一方、都市部を中心とした地域のマンションは、新築マンションが高騰していることもあり、買取再販物件が増えています。
国土交通省の調査によると、買取再販における販売数割合は、戸建て住宅が全体の28%に対して、マンションは「72%」を占めています。(参考:国土交通省|我が国の住宅ストックをめぐる状況について)
「買取再販物件」は、一般的な中古物件と販売形態が全く異なります。
中古物件は多くの場合、不動産会社が売主と買主を“仲介”して契約が成立するのに対して、買取再販物件は不動産会社自体が売主になり、個人と契約を結びます。
この違いによって、一般的な中古物件とは異なるメリットとデメリットがあるため、買取再販物件を購入する際は、しっかり内容を把握しておきましょう。
中古マンションの買取再販市場推移
リフォーム・リノベーション事例を見る:Case169「Growing」
買取再販物件のシェアを占めている上位各社の販売戸数を見ると、2012年度から2018年度で約2倍に増加しています。
特に、中古マンションの買取再販物件市場は急速に拡大しており、購入を希望する方が増えているのが現状です。
その理由として、政府の空き家問題対策としての既存物件活用推進や、新築マンションの高騰、世間全体のSDGs・循環型社会意識が高まっている点が挙げられています。
ある調査によると、2022年の中古物件買取再販市場は、成約ベースで「41,000戸」規模に拡大していることも分かっており、注目の高さがうかがえますよね。(参考:矢野経済研究所|中古住宅買取再販市場に関する調査を実施(2023年))
ただし、注目度の高さから都市部を中心としたマンション物件に需要が集まっています。
また、最近の新築マンション価格高騰に引っ張られ、買取再販の中古マンション価格も値上がり傾向にあります。
買取再販マンションのメリット
リフォーム・リノベーション事例を見る:Case182「Cinematic」
最近、買取再販マンションの人気が高まっている背景には、新築マンションやリノベーションされていない中古マンションにはないメリットがあります。
【買取再販マンションのメリット】
- ・新築物件よりも安い価格で内装の新しいマンションを手に入れられる
- ・新築物件よりも立地や間取りのレパートリーが多い
- ・リノベーションを必要とする中古物件とは異なり、すぐに入居できる
- ・購入後にかかる不明瞭な費用が少なく、完成形を見て購入できる
- ・売主が法人なので、仲介手数料がかからない
- ・新築物件のように長期保証の付いている物件もある
- ・一般的な中古物件よりも住宅ローン減税の条件がいい
- ・登録免許税の特例措置を受けられる
では、それぞれ詳しく解説します。
「新築物件よりも安い価格できれいなマンションが手に入る」
新築マンションよりも購入費用を抑えて、内装・設備がきれいなマンションを手に入れられる点が一番のメリットです。
そのため、新築マンションの購入を検討していた方が買取再販物件を購入するケースは少なくありません。
また、「中古マンションをリノベーションする時の設備や内装材選びが面倒」「間取りやデザインはプロに任せたい」という方の需要もあります。
「新築物件よりも立地・間取りのレパートリーが多い」
新築マンションは空いている土地に建てられるため、人気のエリアでは立地をあまり選べません。
また、多くの新築マンションは間取りがパターン化しており、選択肢はそれほど多くないでしょう。
一方、買取再販物件は数多い中古マンションから仕入れてリノベーションするため、立地や間取りは新築マンションよりもレパートリー豊富です。
「買取再販物件」は、新築マンションと比べると立地や間取りのレパートリーが多いかもしれませんが、一般的な中古マンションと比較すると、選択肢はかなり狭まるので注意しましょう。
「すぐに入居できる」
一般的な中古マンションは、大なり小なりどこかリノベーションしなくてはいけない物件が多く、購入してすぐに入居できるとは限りません。
一方、買取再販物件は、既にリフォーム・リノベーションが済んでいるため、引き渡し翌日にでも引っ越せます。
そのため、入居時期を読みやすくスケジュールを立てやすいため、転勤に伴う購入を検討している方からも人気です。
「購入後にかかる費用が少なく完成形を見て購入できる」
築年数の経っている中古マンションを購入すると、引き渡しを受けてからリノベーション費用がかかります。
一方、再販買取マンションは新築マンション同様に購入後にかかる費用が少なく、完成形を見てから買えるため、予算をはっきりさせたい方に人気です。
「仲介手数料がかからない」
買取再販マンションは、売主が不動産会社などの法人で、そこから直接購入するため、仲介手数料はかかりません。
具体的には以下の手数料が削減できます。
物件価格 | 仲介手数料上限 |
200万円以下の部分 | 物件価格5%+消費税 |
200万円を超えて400万円以下の部分 | 物件価格4%+消費税 |
400万円を超える部分 | 物件価格3%+消費税 |
例えば、1,000万円の中古マンションを個人から買う場合は、最高で約40万円の仲介手数料がかかります。
「買取再販物件」は、法人からマンションを直接購入するため、別途、消費税(物件価格10%分)が課税されます。
そのため、一概に「諸費用が削減できる」とは言えないため、注意してください。
「長期保証が付いている物件もある」
宅地建物取引業法では、消費者保護のために、不動産会社へ「契約不適合責任(瑕疵担保責任)」が課せられます。
簡単に言うと、「売却した物件に明らかな欠陥が見つかれば、それを修繕する義務が売主にある」という決まりです。
これに加えて、他社との差別化をはかるため、大手会社では独自の長期保証サービスを設けているところもあります。
また、キッチンなどの設備機器へオプションで保証延長できる物件もあるため、契約の際に詳細を売主へ確認しましょう。
「一般的な中古物件よりも住宅ローン減税の条件がいい」
令和6年度税制改正によって、住宅ローン減税の制度が見直されました。
改正内容を見ると、一般的な既存住宅と買取再販住宅では、条件が異なります。
(住宅の種類) | (借入限度額) | (最長控除期間) | (所得上限) |
【新築・買取再販】
長期優良住宅 低炭素住宅 |
4,500万円 | 13年 | 2,000万円 |
【新築・買取再販】
ZEH水準省エネ住宅 |
3,500万円 | 13年 | 2,000万円 |
【新築・買取再販】
省エネ基準適合住宅
|
3,000万円 | 13年 | 2,000万円 |
【新築・買取再販】
その他の住宅 |
2,000万円
(2023年までに建築確認した物件のみ) |
10年 | 2,000万円 |
【中古住宅】
長期優良住宅 低炭素住宅 ZEH水準省エネ住宅 |
3,000万円 | 10年 | 2,000万円 |
【中古住宅】
その他の住宅 |
2,000万円 | 10年 | 2,000万円 |
(出所:「国土交通省|住宅ローン減税の制度内容が変更されます!~令和6年度税制改正における住宅関係税制のご案内~|(別紙1) 令和6年度住宅税制改正概要」をもとに弊社にて作成)
上の表を見ると、“条件がそろえば”一般的な中古マンションよりも買取再販マンションの方が、住宅ローン減税額が多いことになりますよね。
一般的な中古マンションよりも買取再販マンションの方がより多く減税される条件は、「省エネ性の高さを証明できる場合」に限られます。
ところが、実際に買取再販マンションで長期優良住宅などの認定を受けている物件はあまりないため、中古マンションの方が好条件となる可能性もあるので注意しましょう。
「登録免許税の特例措置を受けられる」
政府は空き家対策として買取再販の促進に取り組んでおり、「買取再販で扱われる住宅の取得に係る特例措置」が設けられています。
要件を満たした買取再販物件に対して、売主・買主双方のメリットとなるよう、「買取再販住宅を購入した人が所有者移転登記をする際に納める登録免許税」と「売主である宅地建物取引業者が物件を仕入れる際に払う不動産取得税」が減額されます。(参考:国土交通省|買取再販で扱われる住宅の取得に係る特例措置)
ただし、対象は2024年3月31日までなので、同年4月1日以降は適用されません。
買取再販マンションのデメリット・注意点
リフォーム・リノベーション事例を見る:Case143「光あふれ、風に寄り添うワンルーム」
買主にとってコスト面でメリットの多い買取再販の中古マンションですが、購入前に知っておいた方が良いデメリットもあります。
【買取再販マンションのデメリット】
- ・隠蔽部の劣化や不具合が分かりづらい
- ・リフォームやリノベーションされた範囲が分かりづらい(保証範囲も不明瞭)
- ・物件価格が割高な可能性がある
- ・安い物件は心理的瑕疵物件(事故物件)の可能性がある
- ・管理規約に違反した間取りや仕様の可能性がある
- ・保証範囲が不明瞭な可能性がある
では、それぞれ詳しく解説します。
「隠蔽部の劣化・不具合が分かりづらい」
買取再販マンション最大のデメリットは、表面がきれいに直されていて、見えない部分の劣化や不具合を確認できないという点です。
築年数によっては、表向きリノベーションされていても、隠蔽部(設備配管や電気配線など)が寿命を迎えていたり、外壁に面した壁内が結露していたりする可能性もあります。
一方、中古マンションを購入してからリノベーションする場合は、見えない部分の不具合や劣化を、ご自身の目で直接確認できます。
「リフォーム・リノベーションされた範囲が分かりづらく保証内容が不明瞭」
「買取再販マンションはフルリノベーションされている」と思われがちですが、そうとも限りません。
物件によっては、既存の設備や内装を部分的に生かしている可能性もあります。
そのため、購入前にリノベーションに関する資料を取り寄せ、「いつ・どこを・どのくらい」改修したのか確認しましょう。
これらを正確に確認すると、あと何年ぐらい使えるのかを把握できます。
売主によっては、ビフォーアフターの写真を見せてくれるところもありますので、聞いてみてください。
そして、必ずチェックして欲しいのが、工事保証の範囲です。
どの範囲・どの設備が保証範囲なのか、購入前に必ず確認しましょう。
「物件価格が割高な可能性がある」
買取再販会社は中古マンションを仕入れリノベーションして、そこに“利益”を上乗せします。
そのため、個人で中古マンションを買ってリノベーションするよりも、トータルコストが高くなる可能性は高いです。
「物件相場価格 +リノベーション価格+利益」に加え、さらに“付加価値”としての費用が上乗せされた価格設定の物件も少なくありません。
都心部のマンションをフルリノベーションする費用は、「15〜20万円/㎡」が目安なので、同じエリア・広さの中古マンション相場を確認し、売り出し価格が過剰に高くないか事前に確認しましょう。
中古マンションの価格相場を知りたい方は、国土交通省の「不動産取引価格情報検索」サイトがおすすめです。
ちなみに、不動産取引における平均利益率は「30〜35%」程度と言われています。
「安い物件は心理的瑕疵物件(事故物件)の可能性がある」
買取再販マンションを探していると、たまに特別リーズナブルな物件を見つけることがあります。
買取再販マンションの価格には、仕入れ価格・リノベーション費用・利益が含まれるため、極端に安い物件は何かしらの懸念点があるかもしれません。
よくあるのは、心理的瑕疵物件(事故物件)であるケースです。
これらの物件は販売価格が安くなり、一般の方では購入を躊躇するため、買取再販会社が仕入れることがよくあります。
宅地建物取引業法(第47条)では、心理的瑕疵物件を売る場合は、買主へ告知しなくてはいけない義務があるものの、自然死や家庭内事故死の場合は該当しません。
過去にどんな人が住んでいたか気にならない方にとっては、“お得物件”としておすすめですが、気になる方は「なぜ安いのか」を売主へ確認してください。
安い物件は、心理的瑕疵物件でなくても騒音や臭いなどの問題を抱えている可能性もあるため、相場と比較して原因を事前に確認しましょう。
「管理規約に違反した間取り・仕様の可能性がある」
稀なケースですが、リノベーションした間取りや仕様が管理規約違反である可能性はゼロではありません。
管理規約によって禁止されているリノベーション例は、以下のとおりです。
【マンション管理規約によって禁止されている可能性のあるリノベーション例】
- ・水回りの移動
(水漏れリスクの防止) - ・床材の張り替え
(騒音トラブル防止のために、遮音等級や素材が指定されている物件も) - ・リビングなどの移動
(騒音トラブル防止のため) - ・ベランダやルーフバルコニーの床タイルや人工芝を張る工事
(共用部なので、床材などを固定する工事は基本的に禁止) - ・ベランダやルーフバルコニーに物置を設置する工事
(共用部かつ避難経路なので、通行を妨げるものを置くのは基本的に禁止) - ・その他、床スラブや躯体壁、梁、柱型など構造体を傷つける工事
(共用部なので、一切手をつけてはいけない)
規約違反が見つかると、将来売却しにくくなったり、買主の住宅ローンが通りにくくなったりする恐れがあります。
そのため、心配な方は事前に管理規約の内容を確認しておきましょう。
「ライフスタイルに合う間取りでない可能性も」
買取再販マンションは、新築マンション同様に、一般的・汎用的な間取りにリノベーションされています。
そのため、ライフスタイルや家族構成に合わないかもしれません。
購入後、自分好みにリノベーションすると、さらに費用がかかってしまいます。
〈おすすめコラム〉
リノベーション済み物件のデメリットとは|オリジナルリノベと徹底比較
▶︎中古マンション購入に伴うFP(ファイナンシャルプラン)相談はこちらから
買取再販中古マンションをおすすめするケースとしないケース
リフォーム・リノベーション事例を見る:Case182「Cinematic」
買取再販の中古マンションには、メリットとデメリットの両方があり、一般的な物件とは特色が異なります。
そのため、どなたにもおすすめできる訳ではありません。
【買取再販物件をおすすめするケース】
- ・間取りやデザインにはこだわらない
- ・購入後すぐに入居したい
- ・立地にこだわりはない
- ・購入の手続きを減らしたい
- ・きれいな部屋で新生活を始めたい
【買取再販物件をおすすめしないケース】
- ・間取りやデザインにこだわりたい
- ・家づくりのプロセスも楽しみたい
- ・豊富なレパートリーから物件を選びたい
- ・初期コストを抑えて少しでも長く住みたい
- ・無駄なコストはできるだけ減らしたい
買取再販マンションとリノベーションしていない中古マンションのどちらを買うか迷っている方は、まず上のチェックポイントを確認してみてください。
〈おすすめコラム〉
中古マンション購入は“リノベーション済み”と“未リノベーション”どっちがいい?
まとめ:買取再販の中古マンションを買う際はメリット・デメリットの両方をチェック
買取再販の中古マンションは、市場が拡大しており、多くの方から注目されていますが、メリットだけではなくデメリットもあるので注意しましょう。
また、リフォーム・リノベーションされていない中古マンションと比べると、物件の選択肢は少なく、トータルコストが高くなる可能性は否定できません。
そのため、まずはご自身が買取再販マンションを購入するケースに該当しているのかを確認し、場合によってはリノベーションされていない中古マンションも視野に入れてみてください。
そこで頼りになるのが、物件探し、資金計画からリノベーションまでまとめて相談できる“ワンストップリノベーション”です。
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