公開日:2025-03-02
「2025年建築基準法改正」とリフォームの関係性をわかりやすく解説|マンション・戸建の注意点
いよいよ2025年4月より改正建築基準法が施行されます。
2025年の改正点は住宅の新築に大きな変化をもたらすと同時に、リフォームに関する変更点がいくつもあるので、これから中古住宅・中古マンションを購入する方は事前に内容をチェックしておきましょう。
そこで今回は「2025年・建築基準法改正」に関して、その目的からリフォームに関する変更点を詳しく解説します。
建築基準法改正後に中古マンション・中古住宅それぞれを購入したりリフォームしたりする際の注意点も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
- ・2025年に脱炭素化の実現を目的に建築基準法と建築物省エネ法が改正されます。
- ・建築基準法と建築物省エネ法の改正によって、中古住宅のフルリノベーションで規定が厳しくなる点と特例で緩和される点があります。
- ・マンションと戸建て住宅のリノベーションは物件探しからワンストップで任せられるSHUKEN Reにご相談ください。
目次
■2025年建築基準法改正の目的
リノベーションの事例を見る:Case202「Like a one-room」
建築基準法は1950年に制定されて以後、災害や社会の変化を受けて何度も改正を繰り返してきました。
2025年の建築基準法改正には、重要な2本の“軸”があります。
①建築物分野の省エネ対策を通じた二酸化炭素排出量削減
②木材利用拡大による二酸化炭素吸収量増大
どちらも建物分野における脱炭素化が目的です。
その背景には、政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル・2030年度温室効果ガス46%削減(2013年度比)」実現に向けた目標設定が関係しています。
では、2つのポイントについてもう少し詳しくお話しします。
建築物分野の省エネ対策を通じた二酸化炭素排出量削減
建物利用に関わる二酸化炭素排出量は総排出量の約32%にも及びます。(参考:全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)|日本の部門別二酸化炭素排出量の割合-各部門の電気・熱配分前排出量-)
つまり、日本全体の脱炭素化実現に向けて、建物の省エネ化は欠かせない課題であるということです。
木材利用拡大による二酸化炭素吸収量増大
木材の利用率、つまり、建物の木造化や内装木質化が進むと、森林の木が継続的に伐採・再植林されて“森林循環”が活発になると期待されています。
森林循環とは、「植林・間伐・主伐・木材利用・再植林」のサイクルを指し、地球温暖化対策の有効な手段のうちの1つです。
(引用:林野庁|健全な森林づくり)
森林循環が活発になると、森が定期的に若返って木の成長過程で吸収する二酸化炭素量が増えます。
「木を間伐したり伐採すると木が減ってむしろ二酸化炭素が減るのでは」と思うかもしれませんが、間伐は木の健やかな成長に欠かせない作業で、長年放置された森に生える老齢化した木は、若い木と比べるとあまり二酸化炭素を吸収しないことがわかっているのです。(参考:林野庁|よくある質問)
■改正建築基準法の施行はいつ|建築物省エネ法改正との関係
リノベーションの事例を見る:Case193「Public&Private」
改正建築基準法は2022年6月17日に国会を通過して交付され、その施行期限を「3年以内」としました。
そのため、改正の項目によっては既に2022年・2024年に一部施行されています。
2025年の建築基準法改正を知る上で重要なポイントは、「建築物省エネ法の改正」です。
建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)とは、建築物のエネルギー消費性能向上を目的に2015年に制定された法律で、建築物のエネルギー消費性能基準への適合義務などを定めています。
建築基準法と建築物省エネ法を併せて改正することで、法的な障壁を解消して、建物の省エネ性をトータル的に向上させる計画です。(参考:国土交通省|令和4年度改正建築物省エネ法の概要)
■2025年建築基準法・建築物省エネ法の主な改正点|リフォームとの関係
リノベーションの事例を見る:Case198「Easygoing」
では、建築基準法・建築物省エネ法の2025年改正点について、リフォームに着目して要点を紹介します。
【規制強化】審査省略対象の縮小(4号特例の廃止)
施行日:2025年4月1日
4号特例とは別名・審査省略制度と呼び、建築基準法上で4号建築物(下記「建物区分」参照)に該当する建物は、建築確認する際に「構造計算」や「構造関係規定」などを“簡略化”できるという特例です
2025年の建築基準法改正では、この審査省略制度の対象となる建築物の区分が変更されて、4号建築物はなくなります。
【改正前】
建物区分 | 階数・構造 |
---|---|
2号建築物 | ①木造3階建て以上 ②木造2階建て・延べ面積500㎡超 ③木造平屋建て・延べ面積500㎡超 →審査省略制度の「対象外」 |
3号建築物 | ①非木造2階建て以上 ②非木造平屋建て・延べ面積200㎡超 →審査省略制度の「対象外」 |
4号建築物 | ①木造2階建て以下・延べ面積500㎡以下 ②非木造平屋建て・延べ面積200㎡以下 →審査省略制度の「対象」 |
【改正後】
建物区分 | 階数・構造 |
---|---|
新2号建築物 | ①木造・非木造の2階建て以上 ②木造・非木造ともに平屋建て・延べ面積200㎡超 →審査省略制度の「対象外」 |
新3号建築物 | ①木造および非木造の平屋建て・延べ床面積200㎡以下
→審査省略制度の「対象」 |
(参考:国土交通省|改正建築基準法について)
今回の改正後も審査省略制度は継続されますが、その対象となる建物区分が変更されて、多くの住宅が制度の対象から外れるのです。
建築確認申請は新築のみならずリフォームでも求められる可能性があるため注意しましょう。
建築基準法では、大規模な修繕・模様替えを伴うリフォームでは建築確認申請が義務付けられています。
※建築確認申請が必要なリフォーム・リノベーションの条件については「リノベーションに「建築確認申請」は必要?費用と注意点は?」をご覧ください。
【規制強化】新築・増改築は省エネ基準適合が義務
施行日:2025年4月1日
建築基準法・建築物省エネ法が改正された後は、全ての建築物において新築および増改築する際に「省エネ基準」へ必ず適合する必要があります。
改正前は省エネ基準適合が義務付けられている建物は、非住宅・中規模以上のみでしたが、義務の対象範囲が大きく拡大したのです。
具体的には、建築確認する際に構造規定に関する適合審査と併せて省エネ審査も実施されます。
省エネ基準の適合義務とは、以下2つの条件を満たすことです。
- ①一次エネルギー消費量が基準値以下になること=省エネ性が基準を超えていること
- ②外皮(外壁・窓などの開口部・床・屋根など)における表面積当たりの熱損失量(外皮平均熱貫流率)が基準値以下になること=断熱性が基準を超えていること
※①は住宅・非住宅どちらも対象で、②は住宅のみ対象
ただし、リフォームで省エネ基準への適合が求められるのは「増築した部分」のみで、大規模な修繕・模様替えをした場合でも対象から外れるのが原則です。
※詳しくは所管の行政庁へ事前にご確認ください。
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【規制緩和】木造建築物の構造計算に関する規定変更
施行日:2025年4月1日
木造建築物の構造計算に関する規定が合理化され、簡易的な構造計算(許容効力度計算)で建築できる建物の対象範囲が拡大します。
この背景には、近年の木造における構造材・施工技術の進化によって、開放的な大空間のある住宅が増えたことが関係します。
一定の規模までは建築確認申請の際に高度な構造計算が要求されず、二級建築士でも設計できる点がポイントです。
【改正前】
「高さ13m以下かつ軒高9m以下かつ延べ面積500㎡超」は高度な構造計算が必要
【改正後】
→「階数3(高さ16m以下)・階数2以下(高さ16m以下かつ延べ面積300㎡超)」は高度な構造計算が必要
【規制強化】小規模木造建築物の構造基準変更
施行日:2025年4月1日
住宅の省エネ性が高まる中で、外壁・屋根などの断熱性能向上や、トリプルサッシの採用、太陽光発電設備の屋上設置などの導入事例が増え、従来よりも建物荷重が大きくなっています。
この現状を踏まえて、地震などに耐えられる建物にするために、木造建築物の最低限守るべき仕様が見直されることになりました。
【壁量基準】
- ・個別の建築物荷重に応じて必要壁量を算定する
- ・耐力壁に加えて準耐力壁・高耐力壁も含めた構造設計が可能になる
【筋交い(すじかい)基準】
- ・木材や鉄筋以外の材料や、K型・多段筋交いなど、建築基準法上で認める筋かいの対象を拡大
- ・国土交通大臣の材料個別認定によって、建築基準法に明記した材料と「同等以上の耐力を有する材料」を使用可能にする
【柱基準】
- ・現行の建築基準法に記載される「軽い・重い屋根」の区分をなくして、個別の建築物荷重に応じた柱の小径を算定する
【基礎基準】
- ・無筋コンクリート基礎を廃止して、地盤の種別に関わらず、全ての建築物に鉄筋コンクリートの基礎を用いることとする
こちらの規定に影響するリフォームは、主要構造部( 建築基準法第2条5号で定める壁・柱・床・梁・屋根・階段)を変更する場合のみが原則です。
【規制緩和】既存建物リフォームに関する特例追加
施行日:2025年4月1日
増え続ける住宅ストック(既存住宅)の活用を建築基準法の規定で妨げないように、リフォームに関するいくつかの特例が追加されます。
①建築物の構造上やむを得ない場合における建蔽率・容積率に係る特例許可の拡充
既存住宅に屋根断熱改修・省エネ設備の屋上設置・高効率給湯器の設置をしやすくなるように、「高さ制限・建蔽率・容積率」の特例を認める制度が追加されます。
この制度によって、以下のようなリフォームの実現性が高まります。
- ・高断熱な分厚い屋根材への交換
- ・既存外壁への外断熱リフォーム
- ・屋根の上への太陽熱利用設備設置
- ・大きな貯湯ユニットを必要とするヒートポンプなどの設置
②住宅等の機械室等の容積率不算入に係る認定制度の創設
こちらは主にマンションに関する規定変更で、従来の壁掛け給湯器からヒートポンプなどの高効率設備へ変更する場合、貯湯ユニットをおく機械室を容積率へ算入しない制度です。
この制度によって、マンションやアパートにおける全戸一斉省エネリフォームのハードルが下がります。
③用途変更リフォームにおける住宅の採光規定緩和
オフィスなどの非住宅からマンションなどの住宅へ変更する場合、今までは建築基準法で定める有効採光面積(居室床面積の1/7以上確保)がハードルとなるケースが少なくありませんでした。
しかし今回の改正によって、「原則は居室床面積の1/7以上」としつつも、照明の追加など個別にプランを工夫すると、特例として「居室床面積の1/10以上まで」緩和されることになりました。
この制度によって、空きオフィスをマンションや民泊施設として再利用できる可能性が高まり、好立地で住める可能性が高まります。
④既存不適格建築物における増築時等における現行基準の遡及適用の合理化
これまで、既存不適格建築物の改修はリフォームに関連しない部位についても全て建築基準法に適合する計画に変更する必要がありました。
しかし、今回の改正では以下のような特例が認められることになります。
-
- (1)防火規定・防火区画規定
建築物の長寿命化・省エネ化に伴うリフォーム工事をする際、過去に遡ってまで全ての範囲を適合する必要がありません。(遡及適用対象外)
- (1)防火規定・防火区画規定
-
- (2)接道義務・道路内建築制限
旗竿敷地などの接道義務を満たしていない場合や、現行の建築基準法で定める道路に建物の一部がある場合でも、建築物の長寿命化・省エネ化に伴うリフォーム工事をする際は、過去に遡ってまで全ての範囲を適合する必要がありません。(遡及適用対象外)
- (2)接道義務・道路内建築制限
- (3)廊下等の避難関係規定・内装制限
共同住宅などの避難関連規定や内装制限については、増改築等をする部分のみ過去に遡って規定に適合する必要があり、増改築しないその他の場合は建築基準法の規定に適合しなくても良い可能性があります。
※旗竿(はたざお)敷地:道路に接する出入口部分が細い通路状で、通路の先に敷地が広がっている土地。現行の建築基準法では敷地の接道長さが足りず、新築できない。
※内装制限:不特定多数の人が利用する建物において、内壁・天井などに防火性の高い材料を使う規定。
ただし、全ての規定について特例が認められない例外もあるため、詳しくは所管の行政庁へ事前にご確認ください。
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【規制緩和】同一敷地内に建築された団地のリフォーム規定変更
施行日:2025年4月1日
建築基準法では、原則として、団地の土地全体を1つの敷地とみなし法令が適用され、新築や増改築が行われてきました。
しかし大規模修繕はこの原則の対象外であったため、接道していない棟を改修できないなどの問題を抱える老朽化マンションは少なくありません。
この点を解消するために、今回の改正では団地で大規模修繕する際にも、団地の土地全体を1つの敷地としてみなし、団地全体の性能向上を目的としたリフォームを実現しやすくします。
【規制緩和】木材利用促進のための防火規定合理化
施行日:2024年4月1日(施行済み)
これまで、非木造の床面積3,000㎡を超える大規模建築物では、壁・柱・床など全ての部位に耐火性能のある材料を使うことが求められてきました。
しかし、改正後は防火区画された範囲であれば木造にできます。
この改正によって、オフィスビルやホテルなどの戸境壁や床・天井スラブで区画分けした内側を、木造でメゾネットするなどのプランも実現可能となります。
ただし、この規定はあくまでも建築基準法で定める天井高(居室の天井高が2.1m以上)を守ることが大前提なので注意しましょう。
ただし、全てのリフォーム・リノベーションが関係する訳ではありません。
■【マンション・戸建て別】建築基準法改正後の中古物件選び・リフォームポイント
2025年4月に施行される改正建築基準法・改正建築物省エネ法は、マンションや戸建て住宅のリフォームにも関係します。
ただし、リフォームの工事内容によっては影響を受けず、中古物件を選ぶ上で有利になる点もあります。
マンション
マンションの専有部分(区画所有部分)をリフォームする場合、原則として建築確認申請する必要はないため、今回の建築基準法改正点に関係するケースはほぼありません。
ただし、マンション一棟を丸ごと大規模修繕したり共用部のリフォームをする場合は一部の規定とかかわるので注意してください。
そして、専有部分のリフォームには建築基準法とは別に管理規約によるルールを守る必要があります。
プランや材料、工事できる曜日・時間帯などが細かく決められてる物件もあるため、購入する際は事前にルール内容をチェックしておきましょう。
【管理規約によるリフォームに関するルール例】
- ・パイプスペースやメーターボックスは、移動および変更できない
- ・コンクリートスラブ(床・天井)は、軽微であっても工事できない
- ・コンクリート壁(戸境壁およびその他構造壁としている間仕切壁)は、軽微であっても工事できない
- ・コンクリートの梁や柱は、軽微であっても工事できない
- ・給排水管がコンクリート躯体の内部や下の部屋の天井裏にある場合は移動できない
- ・玄関ドアや窓の位置を変えてはいけない(サッシやガラスなどの交換は認められる可能性あり)
- ・ベランダ(バルコニー)の壁や床、その他物干しなどの部品、は軽微であっても工事できない
- ・電気とガス併用からオール電化には変更できない
- ・水回り(キッチン・洗面・トイレ・浴室)を移動してはいけない
- ・使用できる床材(フローリングなど)を制限する
- ・工事できる曜日や時間帯を制限する
これらのルールは、マンショングレードや建築時期、立地を問わず、多くの物件で設けられているため、中古マンションを選ぶ際やリフォームプランを検討する際は、事前にルールを把握しておくことが肝心です。
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戸建住宅
既存住宅において現行建築基準法への適合義務が一部緩和されるため、以下のような物件も選択肢に入れられる可能性があります。
- ・高さ制限や斜線規制の一部が違反している家
- ・建築基準法第42条で定義される幅員4m以上の道路に、間口2m以上で接していない接道義務違反の家
- ・過去に増築していて容積率や建蔽率の規定をオーバーしている家
- ・外壁を外断熱したり、屋根を高断熱にしたりすると、容積率や建蔽率の規定をオーバーする家
- ・太陽熱利用システムを屋根に載せると、高さ制限や斜線規制の違反になる家
- ・ヒートポンプなどの貯湯ユニットを設置すると容積率や建蔽率の規定をオーバーする家
ただし、これらの中古住宅を購入してリフォームする場合、主要構造部を大きく変える必要があれば建築確認申請しなくてはいけません。
建築確認をパスするためには、耐震・断熱など、間取りやデザインを変更したり、設備機器を交換したりする以外の費用がかかります。
そのため、ご予算内で中古物件購入とリフォームを実現させたい方は、物件探しと並行してリフォームのプランや予算配分を検討しましょう。
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■まとめ
2025年の建築基準法改正は、建築業界やこれからマイホーム計画を始める方にとって大きな変化となります。
ただし、既存住宅のリフォームについては規定が緩和される点もあるため、中古物件の購入やリフォームを迷う必要はありません。
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