公開日:2024-03-20 更新日:2024-07-04
実家リフォームで知っておきたい贈与税対策|リフォーム方法や費用負担の注意ポイントを解説
実家リフォームでは、親子世帯が同居するケースであっても、その住まいが親名義のままであれば贈与税がかかる可能性があります。
また実家を譲り受ける際に、子世帯がリフォーム・リノベーションする場合は、贈与税の問題を回避するポイントを押さえて、実家に住み継ぐメリットを最大限に活かしたいですよね。
今回は、実家リフォームの贈与税対策になる方法やリフォーム費用を負担する時の注意点など、事例を交えながら解説していきます。
・贈与税の基礎知識と実家リフォームへの影響について理解しておきましょう。
・非課税枠でのリフォームや贈与税を回避するために有効なリフォーム・リノベーション方法を押さえましょう。
・実家リフォームの贈与税額を抑える方法として、補助金制度や住宅ローン活用のポイントも解説します。
目次
■贈与税とは?実家リフォームの注意ポイント
リフォーム&リノベーション事例を見る:Case158「Meow!」
贈与税は、不動産や金銭などの財産を他人から譲り受ける際、その「金銭的価値」に応じて課される税金です。
実家リフォームのように、親から子といった親族間以外にも他人同士の間で贈与があった場合も同様に、財産を譲り受けた側が税務署に申告して贈与税を支払う必要があります。
(参考)国税庁「贈与税がかかる場合」
実家リフォームにおいては、
- ・親が所有する住まいのリフォーム・リノベーション費を子が負担する
- ・親や祖父母から住まいを取得、またリフォーム・リノベーションで資金援助を受ける
などのケースは、住宅取得等資金の「贈与がある」とみなされ、課税対象になる可能性があります。
ただし、後に紹介する「贈与税の基礎控除額(非課税枠)」や「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」など一定の要件に該当する場合、贈与税の申告義務はありません。
(参考)国税庁「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」
■贈与税を回避する方法とは
実家リフォームを考えるなら、できるだけ贈与税のかからない方法で、効率的にリフォーム・リノベーションを成功させる方法を探りたいですよね。
将来的に実家を譲り受ける場合、子世帯がこれから暮らすための住まいを計画し、リフォーム費用を負担するケースもあり注意が必要です。
まずは、贈与税が発生しない実家リフォームの方法を見てみましょう。
①子が実家を購入してからリフォーム
はじめに、子世帯が実家を購入して「名義変更」することで、実家リフォームにかかりうる贈与税を回避する方法が有効です。
建物の購入費だけで済むため、戸建てで実家リフォームをお考えの際にもおすすめです。
古い建物であれば譲渡所得税を支払う必要がなく、また固定資産税評価も低くなっている可能性が高く購入費も抑えられます。
(参考)国税庁「土地や建物を売ったとき」
②子が実家の贈与を受けてからリフォーム
一般的な実家リフォームで扱う古い住宅は、固定資産評価が低くなっているため、贈与税が「想像していたよりも低額」なケースが多く、あれこれ手を打つよりも、贈与を受けて税金を払う方が得策な場合もあります。
他にも、不動産取得税や登録免許税などの税負担もそこまで大きいものにはなりません。
③贈与税の課税方式「暦年課税」・「相続時精算課税」の非課税枠
贈与税の「暦年課税方式」では、親や祖父母など直系尊属から贈与を受けた場合「基礎控除110万円」以上の財産に対して、110万円(非課税枠)を差し引いた額に税率をかけて贈与税を計算します。
令和6年度の税制改正で、暦年課税の生前贈与の加算期間は3年から7年に延長されていますが、この4年間の延長期間に受けた財産の合計から100万円までについては相続財産に加算されません。
また、この改正は令和6年1月1日以後に受けた贈与にかかる相続税として適用されます。
・直系尊属の特例の延長
直系尊属から贈与を受けた場合、一定額まで贈与税が非課税になる「住宅取得等資金の贈与税非課税特例」が3年の延長で令和8年12月31日まで適用されます。
非課税額は住宅の性能によって異なりますが、省エネ等基準(断熱・耐震・バリアフリーの等級)を満たす住宅では最大1,000万円・それ以外の住宅では最大500万円です。
また、対象となる住宅は1982年以降に建築、あるいは新耐震基準に適合した住宅であることが要件になります。
出典:国税庁「令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」
「相続時精算課税方式」では、受け取り財産の合計額から特別控除額の2,500万円を差し引いた額に対して贈与税が発生します。
この財産は、将来相続が必要になった場合には「相続税として課税の対象」になることを留意しておきましょう。
・基礎控除110万円の新設
相続時精算課税における、令和6年1月1日以降の贈与についても、毎年贈与財産の課税価格から110万円の基礎控除が受けられるようになりました。
改正後は、年110万円までの贈与には贈与税だけでなく相続税もかからないため、相続時精算課税後でも申告は不要です。
④実家を「共同所有」にする
実家の「共同所有」により、贈与税の課税対象となる財産の割合を減らして、節税あるいは贈与を回避する方法もあります。
ただし、この方法は契約時の注意点が多く複雑な手続きも必要になるため、税理士など専門家のサポートを受けながら進めていくのが安心です。
〈関連コラム〉
【実家を相続】リノベーション・賃貸・売却はどうする?メリットデメリット比較で対策を
■実家リフォームの贈与税額と負担の減らし方
リフォーム&リノベーション事例を見る:Case65「じっくり こっくり 味わい深く」
実家リフォームで贈与税を回避するのが難しいケースも考えた場合、贈与税がどれくらいかかるのかを知っておくことも大切です。
一般税率では、例えばリフォーム500万円の資金援助がある場合、基礎控除額110万円を差し引いた390万円に該当する税率20%が適用されます。
390万円×税率20%=78万円
78万円―控除額25万円=53万円
500万円の資金援助にかかる贈与税額は53万円という計算になります。
さらに、1,000万円を超える1,200万円(仮)の資金援助がある場合も同様の計算方法で、贈与税額は以下のようになります。
1,200万円-基礎控除額110万円=1,090万円
1,090万円×税率45%=約490万円
約490万円-控除額175万円=贈与税額約315万円
つまり、実家リフォームで資金援助がある場合は、基礎控除や特例が利用できないと援助を受けた側の贈与税負担が大きくなってしまう点に注意が必要です。
課税額 | 200万円以下 | 300万円以下 | 400万円以下 | 600万円以下 | 1,000万円以下 | 1,500万円以下 | 3,000万円以下 | 3,000万円超え |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
税率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | ― | 10万円 | 25万円 | 65万円 | 125万円 | 175万円 | 250万円 | 400万円 |
※課税額は、年間110万円までの「基礎控除」分を差し引いた後の額を示します。
贈与税は、さまざまな条件により税率や制度が変化するため、詳しくは国税庁のHPなどで確認することをおすすめします。
(参考)国税庁「相続・贈与」
続いて、贈与税がかかる場合に知っておくべき負担軽減のポイントも押さえておきましょう。
①補助金制度の活用
自治体や政府が提供する補助金や助成金を活用することで、リフォームにかかる負担を減らせます。
バリアフリーや断熱、耐震、長期優良住宅化リフォームなどが補助の対象で、リフォーム後の確定申告により所得税や住宅ローン、リフォームローンの一部が控除されます。
ただし、地域や制度によって条件や金額が異なるので、具体的な情報は事前によく確認しておきましょう。
②住宅ローンの活用と注意ポイント
住宅ローンを活用する際には、無理のない返済計画のための金利や返済条件をよく比較検討し、担保価値や審査基準を事前に確認することが大切です。
親世帯の年齢を考えると住宅ローンの審査が厳しくなる可能性もあるため、子世帯に名義変更してから住宅ローンを組むのがいいでしょう。
また名義変更後は、住宅ローン減税に申請するのもおすすめです。
(参考)国土交通省「住宅ローン減税」
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■【事例】実家リフォームの種類と暮らし方
最後にSHUKEN Reが手掛けたリフォーム事例を参考に、実家リフォームのタイプ別間取りポイントと理想の暮らし方について紹介します。
実例① 親子世帯が心地よく暮らせる二世帯住宅リフォーム
リフォーム&リノベーション事例を見る:Case138「ビールがおいしい大空間」
実家リフォームで、親子世帯が快適に暮らせる二世帯住宅をつくるプランでは、プライバシー空間の確保や生活の利便性に考慮するのがポイントです。
共同所有で贈与税の節税やバリアフリー補助金など、リノベーション費用を抑えるのにもおすすめです。
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マンションとは思えない天井高を最大限に活かしたリノベーションで、二世帯が集まっても開放的なリビングダイニングに仕上がりました。
回遊性のある広いキッチンは、収納も備えた便利な空間に一新。
実例② 安全性と快適さのためのバリアフリー・断熱リフォーム
リフォーム&リノベーション事例を見る:Case115「ほっこり古民家リノベ」
バリアフリーおよび断熱リフォームは、実家リフォームでぜひ採用したい、住まいの安全性と快適さを向上させるために有効な方法です。
段差の解消や手すりの設置など、小さなお子様や高齢のご家族がいる住まいでも安心して暮らせるよう工夫しましょう。
また、断熱リフォームでは省エネ効果が高まりランニングコストにも貢献します。
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長く住んだ和室のある間取りを、温かみのある古材の梁や柱、足場を使って「古民家風」の内装にリノベーション。
実家リフォームでは、使い勝手が気になっていたデッドスペースを収納に活用して、すっきりと広い間取りを完成させました。
実例③ 子世帯が実家を引き継いで暮らすフルリフォーム
実家リフォーム事例を見る:Case121「「温」を感じる家」
子世帯が実家を引き継いで暮らすなら、大幅な間取り変更も可能なフルリフォームで、子世帯の家族構成やライフスタイルに合わせた改修がおすすめです。
贈与税の負担を軽減できれば、間取り変更以外にも水回りや設備の更新など、気持ちよく生活するためのリフォームに費用をかけやすくなります。
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親族から譲り受けた築38年のマンションの一室を親子3人家族にぴったりの、のびのびと暮らせる間取りにフルリノベーション。
和室をなくして広くなったリビングは、寝そべっても心地いい優しい肌ざわりのフローリング材を採用しました。
実例④ 築50年ほどの平屋をゆったり広々リフォーム
柱だけを残したスケルトンリノベーションならではの自由度を活かした「平屋」の住まい。
平屋の物件にスキップフロアを採用して、ゆったりとした開放感と立体的なデザイン性を楽しむリノベーションがおしゃれです。
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築50年ほどの平屋の実家を受け継ぎ、ワークスペースや収納、ルーフバルコニーもある自由な夫婦二人暮らしの住まいが完成しました。
スキップフロアでゾーニングしたリビングダイニングは、インテリアにもこだわった平屋とは思えない遊び心のあるリズミカルな空間です。
実例⑤ 実家を住み継ぐ戸建てリノベーション
二世帯住宅として、祖父母世帯も暮らした戸建ての実家を孫世帯がリノベーションした実例。
馴染みある実家では、個室移動のたびに寒い廊下に出るのが苦痛でしたが、現在はファミリーが住まうのにちょうどいいアクセスしやすい間取りに変更しました。
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LDKの天井板を取り除いて、ロフトのある広々とした吹き抜けを実現。
また、ウォークスルータイプのパントリーや作業スペースが充実のキッチン、乾燥機のあるランドリールームなど、家事楽仕様の間取りにもこだわりました。
■まとめ:実家リフォームで大切な贈与税対策ポイント
実家リフォームを検討するなら、贈与税対策を含めた改修・資金計画が、将来のご家族の暮らしにも影響する大切なポイントです。
贈与税の節税効果を最大限に活用できれば、希望予算の範囲内で理想のリフォーム・リノベーションの実現に大きく近づきます
補助金や住宅ローンの活用など、専門家のアドバイスも参考にしながら、計画的なリフォームを進めていきましょう。
SHUKEN Reは、東京・千葉・神奈川エリアで約20年にわたり8,000件超のリノベーション施工実績がある専門会社です。
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