公開日:2024-02-25 更新日:2024-07-04
賃貸リフォームの基礎知識|原状回復リフォームとリノベーションを使い分けて空室対策を
アパートやマンションなどの賃貸経営において、リフォームは原状回復や空室対策など複数の重要な役割を持っています。
適切なタイミングで、建物の状態に合わせてリフォームやリノベーションをすることが、入居率や家賃収入の確保につながるのです。
しかし、賃貸リフォームは物件によって必要な内容やかけるべき費用が異なり、決まった型が無いのが難しいポイント。
せっかくリフォームしても入居率が改善しなかったり、費用をかけすぎて回収に時間がかかったりしては本末転倒です。
そこでこの記事では、オーナーさんが知っておくべき賃貸リフォームの基礎知識を分かりやすくまとめます。
リフォーム・リノベーションを上手に活用して、安定した賃貸経営を目指しましょう。
・築年数ごとに必要となる賃貸リフォームの種類と費用相場をチェックしましょう。
・賃貸リフォーム/リノベーションを検討するときは、利回りを考えることが大切です。
■賃貸オーナーが考えるべきリフォームとは?
賃貸物件の改修は、大きく分けると原状回復としてのリフォーム・空室対策としてのリノベーションの2種類になります。
安定した賃貸経営をするためには、それぞれの目的や内容を把握して適切に使い分けることが大切です。
原状回復としての「リフォーム」
汚れた内装の張り替えや壊れた設備の交換など、原状回復を目的とする改修はリフォームに分類されます。
リフォームの目的は、「新築時の機能や意匠性を取り戻す」ことです。
古くなったり壊れたりした部分を新品に交換するだけなので、大がかりな手間や費用はかかりません。
新築物件や築浅物件で間取りや設備がそれほど古くないなら、原状回復目的のリフォームでも次の入居者を見つけるのは難しくないでしょう。
しかし、賃貸物件の築年数が経ってくると、間取りや設備が現代のライフスタイルやニーズにマッチしなくなり、次に紹介するリノベーションが必要になるケースが増えてきます。
空室対策としての「リノベーション」
近年目や耳にすることが多くなったリノベーションは、新築時よりも機能や意匠性を向上させる改修のことを指します。
賃貸物件におけるリノベーションは、空室対策が主な目的になります。
例えば、和室の畳をフローリングに変えるリノベーションは、対象ユーザーが広がり空室率改善効果が期待できるでしょう。
3点ユニットバスをそのまま新品に交換するのではなく、バストイレ別に変更するのもリノベーションの一種です。
前述した原状回復目的のリフォームでは入居率が改善できない物件は、リノベーションで需要にマッチする魅力的な間取りやデザインにつくりかえる必要があります。
リフォームとリノベーションの違いはこちらのコラムでも解説しています。
〈関連コラム〉
リノベーションとは?リフォームとの違い・メリットデメリットも徹底比較!
■賃貸リフォーム・リノベーションを検討すべきタイミングと費用相場
賃貸物件でリフォーム・リノベーションどちらを実施すべきかは、物件の状態によって変わります。
築年数ごとに、検討すべきリフォーム・リノベーションの内容と費用相場をチェックしていきましょう。
新築~築10年
アパート・マンション・一戸建てどのような賃貸物件でも、新築直後から築10年ぐらいまでは、退去時の原状回復リフォームで十分でしょう。
リフォーム内容 | 費用相場 |
畳の交換 | 6~12万円 |
壁クロスの張り替え | 6~30万円 |
設備の故障や内装の汚損など突発的な修繕がなければ、大きなリフォーム費用は発生しない時期です。
競合物件の状況やエリアの賃貸需要が変化しなければ、大がかりな空室対策リノベーションは必要ないはずです。
築10年前後
賃貸アパートの場合、築10年前後で外壁・屋根塗装や給湯器交換など、基本的なリフォーム内容が増えてきます。
リフォーム内容 | 費用相場 |
ガス給湯器の交換 | 20~50万円 |
外壁塗装 | 50~150万円 |
屋根塗装 | 20~80万円 |
築10年前後のタイミングも、大がかりな修繕や空室対策リノベーションはまだ必要ないはずです。
オーナーチェンジなどで中古物件を購入する場合でも、軽微な原状回復やリフォームで十分経営できるでしょう。
築20年前後
築20年を超えてくると、水回り設備の交換リフォームなど必要な項目が増えてきます。
リフォーム内容 | 費用相場 |
洗面化粧台の交換 | 20~50万円 |
トイレ全体の改装(タンク式) | 20~100万円 |
システムキッチン(Ⅰ型)の交換 | 40~80万円 |
システムバスの交換(マンション) | 50~100万円 |
畳→フローリングに変更 | 15~60万円 |
2室を1室にまとめる | 50~80万円 |
トイレ・洗面化粧台・システムキッチン・ユニットバスの水回り設備は、20年前後経つと劣化が進み、入居検討者の心証が悪くなります。
まだ使える状態でも、入居率が低下しているようなら新しいものに交換する必要があるかもしれません。
また、築20年前後間取りが古い賃貸物件を購入する場合は、畳からフローリングへの変更や間取り変更によるLDK化なども検討しましょう。
築30年前後
賃貸物件は築30年前後になると入居率や家賃相場が低下してくるため、経営を続ける場合は本格的な空室対策リノベーションが必要になります。
場所ごとの単品リフォームではなく、間取りやデザインも含めた一棟リノベーションで空室対策を検討しましょう。
賃貸物件のリノベーション費用は建物の状態によっても変わりますが、1㎡あたり10~15万円が費用相場となります。
1人暮らし向きの30㎡×10室、延床面積300㎡のアパートをリノベーションする場合は、3,000~4,000万円前後の費用がかかります。
アパートリノベーションの費用についてはこちらのコラムで詳しく解説しています。
〈関連コラム〉
■賃貸リフォームの利回りとは?
賃貸経営でリフォームやリノベーションを検討するときは、「リフォーム利回り」という指標で費用と収益性のバランスを確認しましょう。
リフォーム利回りは「1年間の家賃上昇額 ÷ リフォーム費用 × 100」で求められます。
具体的な例で考えてみましょう。
- リフォーム前の家賃:4万円
- リフォーム後の家賃:7万円
- リフォーム費用:300万円
300万円リフォームをかけて家賃が3万円上昇した場合、年間の家賃上昇額は36万円、リフォーム利回りは12%になります。
このパターンでは、8年経営するとリフォーム費用の元が取れる計算です。
リフォーム利回りが高いほど費用の回収期間が短くなり収益性がアップします。
しかし、適切なリフォーム・リノベーションをしないと想定した家賃で入居者を集められず、かえってキャッシュフローが悪化してしまう可能性も。
リフォーム利回りで費用対効果を確認しつつ、空室の原因を把握して適切な対策を取ることも大切です。
こちらのコラムで賃貸物件の空室対策の考え方やアイデアを解説しています。
〈関連コラム〉
空室対策リノベーションの基礎知識|具体的なアイデアや成功のポイントも解説
■賃貸リフォームに補助金/助成金が使える?
国や自治体の住宅系補助金の中には、賃貸リフォームに使えるものもあります。
補助金名 | 対象リフォーム | 補助額の上限 |
先進的窓リノベ2024事業 | 窓の断熱改修 | 200万円/戸 |
子育てエコホーム支援事業 | 省エネ改修や子育て対応など | 20~60万円/戸 |
賃貸集合給湯省エネ2024事業 | 省エネ給湯器の設置 | 5~7万円 |
※各補助金の内容は2024年1月時点のものです。
これらの補助金は、賃貸物件のオーナーも対象になり、個人・法人どちらでも活用できます。
ペアガラスや省エネ性の高い給湯器などはリフォーム費用が少し多めにかかりますが、補助金を使えば負担を軽減して導入可能です。
省エネ設備や子育て対応設備は入居者にとってもメリットがあるため、空室率改善効果も期待できるでしょう。
賃貸物件のリフォームを検討するときは、使える補助金がないか確認してみてください。
■まとめ
賃貸リフォームは、原状回復・空室対策など目的に合わせて、適切なタイミングで実施することが重要です。
また、事前にしっかり費用相場を把握し、リフォーム利回りで投資金額と収益性のバランスもしっかり考えましょう。
特に築年数が経っているアパートやマンションを賃貸経営する場合は、ノウハウが豊富な施工会社に相談してアドバイスを受けるのがおすすめです。
SHUKEN Reは、多くの住宅改修で得たノウハウを活かし、お客様の賃貸物件にピッタリなリフォーム・リノベーションプランをご提案いたします。
築年数が経った所有物件、購入検討中のアパート・マンションなど、どんな物件のこともお気軽にご相談ください。