公開日:2023-02-19 更新日:2024-12-19
中古住宅の売却で税金はかかる?計算方法や3,000万円特別控除を解説
中古住宅を売却したときにかかる主な税金は印紙税、消費税、登録免許税、譲渡所得税が挙げられます。
今回は、中古住宅売却でかかる税金を、必ず支払う税金と、ケースバイケースで支払う税金に分けて詳しく解説します。
また、不動産売却で売却益が発生したときにかかる「譲渡所得税」の仕組みや計算方法についても解説。
譲渡所得税の負担を軽減できる「マイホーム売却時の3,000万円特別控除」などの特例も紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
・中古住宅売却時にかかる主な税金は、印紙税、消費税、登録免許税、譲渡所得税があります。
・不動産を売って売却益が出た際に課税されるのが「譲渡所得税」で、不動産の所有期間に応じて税率が決まっています。
・マイホームなど、特定の要件を満たす不動産を売却した場合は、3,000万円特別控除などを活用することで譲渡所得税額を大きく軽減できます。
目次
中古住宅の売却にかかる税金の種類
印紙税(必須)
印紙税は、印紙税法で定められた課税文書の対象となる文書に対してかかる税金です。
不動産の売却の場合は「不動産売買契約書」が、印紙税法の課税文書の対象になっています。
印紙税は、契約書に記載されている金額によって税額が変わり、印紙購入費用に含まれています。
POINT
令和6年3月31日まで、契約書に記載された契約金額が10万円を超えるものについては軽減税率が適用されます。
記載された契約金額 印紙税額 印紙税額(軽減税率適用時) 1万円未満 非課税 非課税 10万円以下 200円 200円(軽減なし) 10万円を超え50万円以下 400円 200円 50万円を超え100万円以下 1,000円 500円 100万円を超え500万円以下 2,000円 1,000円 500万円を超え1千万円以下 10,000円 5,000円 1,000万円を超え5,000万円以下 20,000円 10,000円 5,000万円を超え1億円以下 60,000円 30,000円 1億円を超え5億円以下 100,000円 60,000円 5億円を超え10億円以下 200,000円 160,000円 10億円を超え50億円以下 400,000円 320,000円 50億円を超えるもの 600,000円 480,000円 (参考)国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」
国税庁「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」
消費税(必須)
消費税の課税対象は、国内で事業者が事業として対価を得て行う取引です。
売却する不動産が個人のマイホームであれば非事業用不動産とみなされるため、売却そのものには消費税はかかりません。
ただし、不動産業者に払う仲介手数料など、消費税が発生するものもあります。
<中古住宅売却で消費税がかかる費用例>
- ・不動産会社への仲介手数料
- ・司法書士に支払う報酬
- ・住宅ローンの融資手数料
マイホームではなく、投資用のマンションなどを売却した場合は、消費税の課税対象となるので注意しましょう。
登録免許税(場合によってかかる)
中古住宅を売却するとき、物件に対してローンが残っていた場合、売却前にローンを完済して住宅ローンを借りるための担保になっている不動産の抵当権を抹消しなければなりません。
抵当権抹消の登記手続きにかかる費用(登録免許税)は、不動産1物件につき1,000円です。
また、不動産が土地と建物で構成されている場合、それぞれ別の不動産として数えられるため、不動産が2件で登録免許税は2,000円となります。
登録免許税に加えて、登記手続きを司法書士に依頼するための委託料・報酬として10,000~15,000円程度を合わせて見込んでおきましょう。
譲渡所得税(場合によってかかる)
中古住宅などの不動産を売却して売却益が出た場合(購入時より高い金額で売却した場合)は、売却した翌年の確定申告のタイミングで、住民税と所得税を納税する必要があります。
また、2037年までは所得税に対して徴収される「復興特別所得税※」もかかります。
※復興特別所得税は、2011年に起きた東日本大震災における被災者支援を目的とした税金で、基準所得税額に2.1%を掛けて計算します。
不動産の売却益に対してかかる所得税・住民税・復興特別所得税を合わせて通称「譲渡所得税」と呼びます。
譲渡所得税は、不動産を所有していた期間で税率が変わり、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下か5年以上かどうかが1つの区切りになります。
所有期間 | 区分 | 税率(所得税) | 税率(住民税) | 合計税率 |
5年以下 | 短期譲渡所得 | 30% | 9% | 39% |
5年以上 | 長期譲渡所得 | 15% | 5% | 20% |
(参考)国税庁「土地や建物を売ったとき」
税率を掛ける金額(課税譲渡所得)は、400万円を超える場合は以下の速算法がよく使われます。
課税譲渡所得の計算方法
譲渡所得 = 譲渡価格 -(取得費 + 譲渡費用【購入・売却時の諸経費】)- 特別控除
<用語解説>
・取得費
売却する土地や建物を取得したときの購入代金(建物は減価償却費相当額を控除)や仲介手数料などの合計額です。
実際の取得費の金額が譲渡価額の5%に満たない場合は、譲渡価額の5%相当額を取得費として計算できます。
・譲渡費用
仲介手数料、測量費など土地や建物を売るために直接要した費用、貸家の売却に際して支払った立退料、建物を取り壊して土地を売ったときの取壊し費用などです。
・特別控除額
一定の要件を満たすと受けられる控除です。
マイホーム売却の3,000万円特別控除の特例などがあります。
この計算で出された譲渡所得に、税率を掛けることで譲渡所得税の金額が分かります。
譲渡所得税のシミュレーション
例えば、所有期間が5年以上の中古住宅を売却して譲渡所得が1,000万円だった場合の譲渡所得税を計算してみましょう。
①所得税 = 1,000万円 × 15% = 150万円
②復興特別所得税 = 150万円 × 2.1% = 3.15万円
③住民税 = 1,000万円 × 5% = 50万円
譲渡所得税合計(①+②+③) = 150万円 + 3.15万円 + 50万円 = 203.15万円
売却損が出た場合は他の所得と損益通算できる
逆に、売却によって損失(マイナス)が出た場合は、譲渡所得税がかからないだけでなく、
マイナス分を売却した年の事業所得や給与所得などの所得から控除して、所得税や住民税を減らすこと(損益通算)ができます。
さらに、売却した年で控除しきれない場合は、翌年から3年間の所得まで繰り越して控除できる特例があります(譲渡損失の繰越控除)。
「損益通算」と「繰越控除」はどちらも適用条件があり、確定申告も必要になりますので、要件をしっかり確認しましょう。
(参考)国税庁「No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
国税庁「No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
このように、譲渡所得税は、売却額によっては諸費用の中でも特に負担が大きくなる可能性がある項目です。
そこで、次に紹介する特別控除などを賢く使うことで税金の負担を軽減できます。
中古住宅売却時の譲渡所得税を節税する方法
譲渡所得税は、譲渡所得が多くなるほど金額も多くなります。
そのため、
- ・購入価格(取得費)や購入時、売却時の諸経費をできるだけ正確に出すこと
- ・特別控除を活用すること
が節税に有効です。
特に、マイホームの売却では後述の3,000万円特別控除を活用すればほとんどのケースで譲渡所得税はかかりません。
3,000万円特別控除などの特例活用方法
譲渡所得金額から控除が受けられる特別控除について、主要な制度をいくつかご紹介します。
①売却する物件がマイホームの場合に使える「3,000万円特別控除」
土地・建物の所有者がマイホームとして住んでいた不動産を売却した場合は、譲渡所得金額から3,000万円の控除を受けられるという特例です。
(参考)国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
例えば、取得費+譲渡費用が5,000万円の一戸建てを売却額6,000万円で売却できた場合、譲渡所得は6,000万円-5,000万円=1,000万円となりますが、
この一戸建てに売却した本人が住んでいた場合は、譲渡所得1,000万円に3,000万円までの控除を受けられるので、
1,000万円 - 3,000万円(控除) = 譲渡所得なし となり、
結果的に譲渡所得税がゼロになります。
マイホーム売却の特別控除は、何年間所有していたかの期間は関係なく、あくまで売却した住宅に住んでいたかどうかがポイントになります。
居住用(マイホーム)とみなされる詳しい条件や、適用除外の詳しい条件は国税庁の上記ページを参照してください。
②マイホームを売ったときの軽減税率の特例
①の3,000万円特別控除と同様に、自分が実際に住んでいたマイホームを売却した時に受けられる特例です。
この特例は、不動産の所有期間が売却する年の1月1日時点で10年を超えている場合に限り、長期譲渡所得の税率である20%(所得税15%・住民税5%)よりも低い税率で譲渡所得税を計算できます。
この軽減税率は、譲渡所得6,000万円までの部分に適用され、税率は14% (所得税10%・住民税4%)になります。6,000万円を超える部分は税率20%で計算されます。
(参考)国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
この軽減税率の特例と、①の3,000万円特別控除は併用が可能です。3,000万円の特別控除を適用した上でまだ売却益が残っているという場合は、この軽減税率の特例も合わせて利用してください。
③相続空き家の3,000万円特別控除
不動産を相続した人がその家に住んでいない場合、相続人のマイホームではないので①②は使えません。
その代わりに、2016年から導入されたのが「空き家特例」と呼ばれる特別控除の制度です。
空き家特例は、相続によって亡くなった方が住んでいた居住用不動産を取得した相続人が、その不動産を売却した場合、譲渡所得の金額から最高で3,000万円までを控除できるという特例です。
空き家特例は、実際に売却をする本人がその不動産に住んでいる必要はなく、親や祖父母と別居していた相続人でも利用可能な制度です。
ただし、この空き家特例は、適用を受けるための条件が厳しく、様々な条件があるので、ご自身のケースで適用できるかあらかじめしっかりと確認しておきましょう。
(参考)国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
④相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
父母、祖父母から土地・建物を相続によって受け取った相続人が、その相続した不動産を一定期間内に売却した場合、支払った相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算できるという特例です。
具体的には、土地建物を相続して相続税を支払った後、相続発生日から3年10か月以内に相続した不動産を売却した場合、譲渡所得の計算式の取得費の部分に、自分が支払った不動産部分の相続税額を足して計算できます。
<相続財産を譲渡した場合の特例を利用した譲渡所得の計算式>
売却価格 -( 取得費 + 購入時の諸経費 + 不動産の相続税額 + 売却時の諸経費(譲渡費用))- 特別控除
売却価格から引く金額が増えるので、譲渡所得が少なくなり、支払う譲渡所得税も減らせるということですね。
この特例は、売却する際に本人が住んでいなければならない条件はありませんので、該当する場合は制度を適用することで譲渡所得税の節税ができます。
参考HP:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
その他の主な中古住宅売却時の節税対策
・マイホームの買い換えで使える住宅ローン控除
住宅ローン控除は「年末の住宅ローン残債×0.7%」が「所得税」や「住民税」から10年間控除される制度です。
また、住宅の性能によって住宅ローン控除の対象になる借入上限額が異なります。
【中古住宅の住宅ローン控除】
住宅の性能 | 借入上限額 | 控除期間 | 最大控除額 |
ZEH・省エネ・認定住宅 | 3,000万円 | 10年間 | 210万円 |
その他の住宅 | 2,000万円 | 10年間 | 140万円 |
この控除は3,000万円特例控除との併用ができないため、マイホームの買い換えの場合、どちらを利用した方がより有利になるのか、状況に応じて判断する必要があります。
・長期譲渡所得を意識する
譲渡所得税は、売却する不動産の所有期間によって税率が変わります。
売却するタイミングを調整できる状況にあるなら、所有期間が5年超になってから売却することで、税率を「長期譲渡所得」区分で計算できるので、節税になります。
ただし、節税のためだけに売却時期を待つのが良いかは、ケースバイケースで物件や個人の事情、状況によっても変わりますので、不動産会社とよく相談しましょう。
・居住用財産の買い換え特例を利用する
直接節税する制度ではありませんが、マイホームを買い換えたとき、一定の要件のもと、譲渡所得に対する課税を将来に繰り延べる制度があります。
(参考)国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」
この制度は、譲渡所得が非課税となるわけではなく、あくまで買い換えたマイホームを将来譲渡したときまで譲渡所得に対する課税が繰り延べられるという制度です。
マイホームを買い換えたために資金に余裕がない場合で、3,000万円の特別控除を利用しても譲渡所得がゼロにならない場合などに、一時的に負担を抑えられるメリットがあります。
この制度はマイホーム売却時の3,000万円特別控除や、マイホームを売ったときの軽減税率の特例、住宅ローン控除と併用ができないので注意が必要です。
買い換え特例を選択する場合は、10年を超えないうちに売却すると、繰り延べた税金と合わせて高額な税金が発生してしまうというリスクもあります。
制度利用は、長期的なライフプランを見据えた上で選択しましょう。
・ふるさと納税による節税
ふるさと納税で任意の自治体に納税(寄付)すると、自己負担額の2,000円を差し引いた金額が所得税や居住地の住民税から控除されます。
例えば、ある自治体に1万円のふるさと納税を行うと、自己負担額2,000円を引いた8,000円が所得税、住民税から差し引かれます。
税金として納めていた金額をふるさと納税として支払うことで、税金が控除される上に、自治体によっては返礼品ももらえるため人気があります。
ふるさと納税には控除上限額があり、上限が決まる所得は、給与だけでなく不動産を売却した譲与所得でも増える可能性があります。
売却益によってふるさと納税の上限額をアップすることで、譲渡所得税を含めた住民税と所得税の直接的な節税になります。
買い換え時に譲渡所得が発生している場合、先ほど紹介したマイホーム売却時の3,000万円特別控除を使うよりも「住宅ローン控除+ふるさと納税」の方が節税効果が高いケースがあります。
ただし、マイホーム売却時の3,000万円特別控除などを使って譲渡所得税をゼロにしている場合はふるさと納税の上限には影響せず、上限額は増えません。
どちらがお得になるかはそれぞれのケースに応じて変わってくるので、専門家のいる不動産会社に相談してみましょう。
中古住宅売却時の税金はいつ払う?
事例を見る:Case31「光の道を辿る家・Trace of Lights」
中古住宅売却時に売却益が出た場合の譲渡所得税(所得税・住民税)は、確定申告をした上でそれぞれ支払うタイミングが決まっています。
確定申告する時期は不動産を売却した翌年の2月16日~3月15日です。
所得税・復興特別所得税は税務署窓口、銀行窓口、コンビニ、口座振替、クレジットカード、キャッシュレス決済などで支払い、納付期限は4月15日前後となることが多いです(口座振替以外)。
住民税は、確定申告した年(不動産を売却した翌年)の5月以降に市町村から納付通知書が送られてきます。
納付回数は一括払いのほかに、6月・8月・10月・翌年1月の4回払いが選べ、会社員の方は毎月の給与から天引きされる特別徴収のケースもあります。
特例を使って税金がゼロになっても確定申告は必須!
最後に覚えておいておきたいポイントは、不動産の売却を行い、各種特例を利用して支払う税金がゼロになったとしても、売却した翌年の確定申告の時期に必ず譲渡所得税の確定申告を行わなければならないということです。
特例を使うことで譲渡所得税がゼロになったからと、翌年の確定申告を忘れてしまうと、特例の適用が受けられなくなります。
特例適用前から譲渡所得税がゼロという場合以外は、必ず翌年の確定申告を行うようにしましょう。
まとめ|中古住宅売却の税金は特例を活用して負担を軽減しよう
今回は、中古住宅を売却したときにかかる税金の種類と、売却益が出たときにかかる「譲渡所得税」の計算方法や節税方法を解説しました。
今回紹介したマイホーム売却の3,000万円控除は、一定の条件があるものの、マイホームを売った人ならほとんどが適用要件に当てはまります。
ただし、自動的に特例が適用されるわけではないので、売却翌年の確定申告を忘れないようにしましょう。
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