公開日:2025-06-30
民泊の始め方を5ステップで分かりやすく解説|民泊経営を成功させるポイントも
2018年に施行された民泊新法により個人・企業の民泊開業が増加し、宿泊先の選択肢の1つとして認知を高めつつあります。
民泊は旅館やホテルより開業のハードルが低く、自宅や所有するアパート・マンションで副収入を得たり、本格的な民泊施設で観光・インバウンド需要を狙ったり、さまざまなビジネスモデルが登場しています。
しかし、いざ民泊開業を検討するとなると、何から始めたら良いのか分かりにくいですよね。
そこでこの記事では、民泊の始め方を5つのステップに分け、やるべきことを分かりやすくまとめます。
民泊を始めるためにかかる初期費用、よくある質問にもお答えしますので、ぜひ参考にしてみてください。
・民泊はホテルや旅館より開業のハードルが低く、アパート・マンション・一戸建てなどさまざまな物件で始めることができます。
・物件購入、リノベーションなど、民泊経営を始めるためにかかる初期費用の内訳や相場を紹介します。
・民泊経営を成功させるためには、商圏内の分析や需要に合わせた施設づくりが必要です。
■民泊とは?基礎知識をおさらい
民泊の始め方について具体的に掘り下げるまでに、まずは制度の概要や種類などの基礎知識をおさらいしておきましょう。
実際に民泊を始めるときに必要となる知識ですから、把握しておくと計画をスムーズに進められますよ。
そもそも民泊とはどんな制度?
民泊とは、住宅の一部または全部を旅行者などに貸し出す宿泊サービスのことです。
一般的なホテルや旅館より民泊は開業のハードルが低く、自宅や所有物件を貸し出して収入を得たい個人や、事業者による本格的な民泊施設まで規模やビジネスモデルはさまざまです。
日本国内では訪日外国人観光客の増加や空き家の増加といった社会問題を背景に、2018年の民泊新法(住宅宿泊事業法)が施行され、徐々に増加しています。
民泊の種類
一口に民泊と言っても種類はさまざまで、管轄する法律によって主に次の3種類に分かれています。
|
簡易宿所 (旅館業法) |
特区民泊 (国家戦略特区法) |
民泊 (住宅宿泊事業法) |
所管省庁 |
厚生労働省 |
厚生労働省(内閣府) |
国土交通省 厚生労働省 観光庁 |
許認可等 |
許可 |
認定 |
届出 |
住居専用地域での営業 |
不可 |
可能(条例による制限あり) |
可能(条例による制限あり) |
営業日数 |
上限なし |
2泊3日以上の滞在が条件(上限はなし) |
年間提供日数180日以内 |
最低床面積 |
33㎡(宿泊者数10人未満の場合3.3㎡/人) |
原則25㎡以上/室 |
3.3㎡/人 |
それぞれ許認可や届出などの開業手続き、営業可能エリアや日数の上限といった違いがあります。
3種類の中で最も開業のハードルが低く、一般的に「民泊」と呼ばれているのは住宅宿泊事業法によるものです。
簡易宿所や特区民泊は営業日数の上限がないのがメリットですが、開業エリアの制限や許認可のハードルがやや高めです。
住宅宿泊事業法における民泊は年間営業日が180日に制限されているものの、住居専用地域でも営業できるため競合との差別化をしやすく、開業にかかるハードルが低いため多くの方に選ばれています。
本記事では、「民泊=住宅宿泊事業法」と定義して、開業に必要な情報をまとめていきます。
民泊運営するための建物の要件
実際に民泊を運営するためには、次の建物の要件を満たす必要があります。
※居住要件(次のどれかを満たしていること)
- 「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」
- 「入居者の募集が行われている家屋」
- 「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」
※設備要件
- 「台所」「浴室」「便所」「洗面設備」
- 居室の床面積は、宿泊者1人当たり3㎡以上を確保する
居住要件は自宅・所有するアパートやマンション、賃貸住宅など、さまざまな建物が対象になります。
設備要件は水回り4点を備えていて、宿泊者1人あたり3.3㎡以上の床面積を確保すればOKなので、こちらも一般的な生活を送れる住宅ならほとんどクリアできそうですね。
自治体によって独自の要件が設定されているケースもありますが、住宅宿泊事業法における民泊ならかなりハードルは低いです。
■民泊を始めるために必要な5ステップ
実際に民泊経営を始めるためには、次の5つの取り組みが必要です。
順番は前後してもOKですが、①から順番に取り組むとスムーズに進めやすいのでおすすめです。
①物件を決める
まずは、民泊を始めるための物件を決めましょう。
※民泊物件の例
- 自宅の一部で始める
- 賃貸住宅を転借する
- アパート・マンションを民泊にリノベーションする
- 空き家を民泊にリノベーションする
前述したように民泊の対象となる住宅は広く、自宅や賃貸住宅、アパート・マンションや空き家など幅広い物件で経営を始めることができます。
ただし、日本ではオーナーの自宅に宿泊するニーズはあまり多くないため、どちらかというとアパートやマンション、一戸建ての空き家をリノベーションするケースが増えています。
また、賃貸住宅を転借して民泊運営することも法律上は可能ですが、オーナーの許可を得る必要があり難易度は高めです。
本格的な民泊経営で収益を狙うなら、自己所有のアパートやマンション、中古物件などのリノベーションで始めるのがおすすめです。
〈関連コラム〉
賃貸アパートで民泊経営するメリット|営業許可や成功のポイントも解説
マンション民泊はワンルームより一棟がおすすめ|メリットや施工事例を紹介
②行政への申請・届出
住宅宿泊事業法における民泊を始めるためには、保健所と消防署への申請や届け出が必要になります。
行政への申請と届出の基本的な流れは下記の通りです。
- 届出書を作成する
- 添付書類を用意する
- 消防署で「消防法令適合通知書」を取得する
- 必要な書類を所轄の保健所に提出する
- 立入検査を受ける
- 届出が受理されたら民泊ポータルサイトに登録する
保健所へ提出する届出書には、民泊を行う建物の所在地や所有権などさまざまな項目の記入が必要です。
また、消火器や火災報知器などの設置基準を満たし、消防署から消防法令適合通知書を取得したり、ほかにも必要な書類をそろえたりする必要もあります。
所轄の保健所や消防署によって判断が異なることもあるため、なるべく早めに事前相談しておくのが確実です。
必要な書類や建物の要件を確認したうえで、③のリフォームやリノベーション計画を同時進行し、漏れややり直しがないように進めましょう。
参照:民泊制度ポータルサイト 住宅宿泊事業者の届出に必要な情報、手続きについて
③リフォームやリノベーションをする
民泊の運営基準を満たすだけでなく、宿泊客に選ばれるサービスを提供するために、リフォームやリノベーションで魅力的な施設をつくりましょう。
アパートやマンションなどの集合住宅、一戸建てなどは軽微なリフォームで民泊営業も可能ですが、ただ泊まれるだけの施設だと価格競争になってしまう可能性が多いです。
利用者の人数や属性、地域を訪れる目的などを想定し、需要にマッチする間取りやデザインにリノベーションするのが理想的です。
民泊施設のリフォーム・リノベーションについてはこちらのコラムもあわせてご覧ください。
〈関連コラム〉
民泊リノベーションの費用相場&施工事例|物件選びや補助金で費用を抑えるコツも
④料金や利用ルール、管理方法の設定
実際に民泊運営を行うにあたり、料金や利用ルール、建物の管理方法などを設定しましょう。
利用料金は、物件の取得費用やリフォーム・リノベーション費用といった初期費用、管理にかかるランニングコストなどを踏まえて設定する必要があります。
商圏内のホテルや旅館、競合となる民泊施設などを調査しながら、確実に集客しつつ、利益も確保できる料金を設定しましょう。
また、設備の使い方やゴミ出し方法など、利用ルールを設定して運営中のトラブルを防止することも大切です。
家主不在型の民泊施設では、運営代行会社などへの委託が必須となっているため、管理料やサービス内容を踏まえて早めに探しておきましょう。
⑤集客の準備
建物やサービスの準備とあわせて、予約を取るための集客方法も早めに準備しておきましょう。
民泊の集客は、ポータルサイトへの登録やSNSでの情報発信などさまざまな方法があり、適切な方法を選ぶ必要があります。
例えば、外国人観光客が多いエリアで集客するなら、Airbnbといった民泊予約プラットフォームを活用するのが一般的です。
また、中国をはじめとしたアジアからの観光客が多いエリアなら、途家(Tujia)や携程(Ctrip)などのエリアに特化した予約サイトに登録するのも1つのアイデアです。
予約サイト、SNSなどどの集客方法においても、クオリティの高い写真を用意するのがポイントです。
リフォームやリノベーションを計画する際に、室内写真の見栄えなども考慮し、アイキャッチポイントなどをつくるのも効果的です。
■民泊を始めるのにかかる初期費用
実際に民泊を始めるまでにかかる初期費用を把握しておくことも、経営を成功させるための大切なポイントです。
初期費用を4つのジャンルに分けて、それぞれの内容を把握しておきましょう。
物件購入費用
自宅で民泊を開業する場合を除き、物件の購入費用は初期費用の大きな割合を占めます。
不動産投資として民泊を開業する場合、新築より初期費用を抑えて高い利回りを狙える中古物件を購入するのが一般的です。
より高い利回りを狙うなら、中古アパート・マンションの一棟買いで、複数の部屋を民泊運用するのが理想的です。
民泊物件選びでは、需要を見据えたエリア選定、購入金額と利用料金のバランスなどさまざまなポイントに配慮する必要があります。
こちらのコラムでアパート・マンションの一棟買いについて解説していますので、参考にしてみてください。
〈関連コラム〉
アパート一棟買いの注意点|失敗しやすいパターンと対策をチェック
マンション一棟買いのメリット・デメリット|区分投資とどっちが狙い目?
リフォーム・リノベーション費用
宿泊者にとって魅力的な民泊施設をつくるためのリフォーム・リノベーション費用も、初期費用の中で大きなウエイトを占める部分です。
民泊施設にはホテルや旅館のようなフロント、ロビーは必要ないため、リフォーム・リノベーションの費用相場は一般的な住宅とほとんど変わりません。
例えば、木造アパートを民泊施設としてリノベーションする場合、1㎡あたりの費用相場は10~15万円が目安です。
仮に30㎡×8室の中古アパートをフルリノベーションする場合、費用相場は2,400~3,600万円となります。
こちらのコラムでリノベーションの費用相場について、さらに詳しく解説しています。
〈関連コラム〉
行政への申請費用
民泊の申請は旅館業法の営業許可取得よりハードルは低いものの、時間が取れない場合は行政書士や代行サービスに依頼するケースも多いようです。
専門家に申請を代行してもらう場合、手続きにかける時間を省けるため、物件選びやリノベーション、経営計画に専念できるのがメリットです。
また、手続きに慣れている専門家に依頼すると、1つずつ確認しながら申請するより営業開始までの期間も短縮できます。
依頼料は相談先によって変動しますが、一般的な相場は民泊1件あたり20万円~が相場のようです。
備品購入や運営費用
実際に民泊を運営するために必要な備品の購入、運営代行を依頼するための費用なども初期費用として用意する必要があります。
ベッドやテーブルなどの家具、タオルやトイレットペーパーなどの消耗品、民泊運営に必要な備品は多いため、リストアップして購入費用を把握しておきましょう。
また、民泊の運営を代行業者に依頼する場合、任せる業務の範囲によって費用相場が変動するようです。
予約の受け付けや管理だけ任せる部分代行、清掃などすべての業務を任せる完全代行によって、毎月かかる委託料は変わってきます。
料金体系は毎月固定、売上に対する割合などさまざまですが、完全代行の場合月額10万円~が目安になるようです。
運営代行は民泊経営を続ける間ずっとかかるランニングコストになりますので、サービス内容や料金のバランスを取り委託先を検討しましょう。
■民泊経営を成功させるためのポイント
民泊は開業ハードルが低いものの、利益を上げて経営を成功させるには確実な計画が求められます。
特に、民泊はホテルや旅館とはユーザー層が異なるため、次のポイントについてしっかり検討し、経営を成功させましょう。
商圏内のニーズに合わせてリノベーションする
まずは、民泊を開業するエリアのニーズを把握し、コンセプトを明確にしてリノベーションすることが大切です。
例えば、観光ニーズが高いエリアなら、ワクワクするようなデザインやファミリーで利用しやすい間取りをリノベーションでつくりましょう。
出張客が多いビジネスエリアの場合は、単身者に合わせた間取りや広さの物件を選んでリノベーションする必要があります。
また、商圏内に同じようなコンセプトの民泊施設があると、宿泊客の奪い合いや価格競争になってしまうリスクも考えられます。
商圏内の宿泊需要や競合物件を分析し、リノベーションで宿泊客に選ばれる施設をつくりましょう。
180日の営業日数の中で収益が上がる計画を立てる
住宅宿泊事業法における民泊施設を開業する場合、年間営業日数の上限である180日の中で、確実に収益を上げるための計画づくりも求められます。
例えば、観光需要が多いエリアなら、利用料金を高く設定しやすい週末やハイシーズンだけ予約を受け付けて、効率良く利益を上げるのも1つの考え方です。
需要が高い時期が明確な場合は、民泊として営業しない時期はレンタルスペースとして貸し出すなど、ほかの方法で利益を上げることも可能です。
予約が入りにくい時期に営業すると、管理費用だけかかって経営を圧迫してしまいますので、1年を通した計画を立ててみてください。
■民泊を始めるときによくある疑問
最後に、民泊の開業を検討する際によくある質問をまとめました。
民泊は田舎でも儲かる?
土地代や中古物件価格の相場が低い田舎は、民泊の開業費用を抑えることができるため検討する方が多いようです。
田舎でも観光需要が多いエリアを選んだり、地域の特性を活かした民泊施設・サービスをつくったりすれば、利益を上げられる可能性はあります。
ただし、郊外は都市部に比べると宿泊需要は少ない傾向がありますので、より綿密な市場調査やコンセプトの立案が求められます。
セミナーに参加すべき?
民泊需要の高まりを受けて、最近は開業のためのセミナーや勉強会を開く企業も増えています。
民泊セミナーでは物件選びや経営方法など、今回ご紹介したような開業に必要な情報を得られるのがメリットです。
無料のセミナーも多く、オンライン開催のケースもあるので、時間が取れる場合は活用してみるのもおすすめです。
■まとめ
民泊はホテルや旅館などの旅行業法より開業のハードルが低く、宿泊客からの注目も高まっているため大きなビジネスチャンスがあります。
ただし、競合も多いため、エリアに合わせたコンセプトやサービスで宿泊ニーズとのマッチング度を高めるのが経営成功のポイントです。
ただアパートやマンションを民泊に転用するのではなく、リノベーションで集客力が高い施設をつくることも検討しましょう。
SHUKEN Reは、多くの住宅改修で培ったノウハウを活かし、民泊リノベーションをお手伝いする専門店です。
アパート・マンションを一棟丸ごとリノベーションし、集客力の高い民泊施設をつくった実例もございます。
ぜひお気軽にご相談ください。