公開日:2025-05-02
「マンションの最上階は暑い」って本当?|原因と対策、物件選び・リノベのポイントを解説
これからマンションを買うために物件を探していると「最上階の部屋は暑い」という情報を見かけます。
「間取りや価格の条件は合っているが、最上階なのが気がかり」という方もいらっしゃるかもしれません。
そこで今回は「マンションの最上階は暑い」と言われる原因と、新築・中古・低層・タワーマンションそれぞれの断熱性能、最上階に住むメリットとデメリットを解説します。
角部屋や最上階に住む際の暑さ対策、物件選び・リノベーションのポイントについても紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
- ・「マンションの最上階が暑い」と言われる原因は、建物の断熱性能にあります。
- ・最上階の暑さを軽減したい方は、物件選びとリノベーションのポイントを押さえましょう。
- ・リノベーション前提の中古マンション探しは、物件探しから“リノベのプロ”がワンストップでサポートするSHUKEN Reにお任せください。
目次
■「マンションの最上階は暑い」原因|夏以外も要注意
結論から言うと、「マンションの最上階は暑い」という情報は間違いではありません。
物件によっては、真夏だけではなく、晴れた日の春や秋でも暑さを感じる可能性があります。
ただし、それが全てのマンションに当てはまる訳ではなく、いくつかの原因が揃う場合に限ります。
屋上の日射熱が伝わる
最も大きな暑さの原因は、屋上が受ける日射熱です。
マンションは周囲に日陰を作る背の高い建造物がなく、屋上は日中多くの日射熱を吸収します。
屋上断熱や室内の天井断熱が十分でないと、それが室内に伝わって室温を上げてしまうのです。
窓から日射熱が入る
最上階の部屋は眺望や日当たりを強みとしている物件が多く、必然的に窓から多くの日射熱が入ります。
窓は建物の中で最も熱の出入りが多い部分なので、窓の断熱性が低いと室温の変動は避けられません。
窓サッシやガラスの断熱性が高ければ日射を遮断できますが、築年数の経ったマンションでは断熱・遮熱効果のないガラスが入っているのが通常です。
窓からの日射熱を屋外の庇やシェードでブロックする方法もありますが、最上階は風の影響が大きいので、原則として屋外にそのような造作物は設置できません。
ルーフバルコニーの照り返しによる熱が窓から入る
最上階の部屋はルーフバルコニーを使える物件が多く、それを目的に購入する方も少なくありません。
しかし、ルーフバルコニーの床仕上げ材によっては、照り返しの熱が窓から入り、暑さを助長する可能性もあります。
また、ルーフバルコニーの方角と窓の位置によっては、反射光が気になる物件もあるので、内覧の際に確認が必要です。
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■最上階の部屋は暑さだけではなく“寒さ”にも要注意
マンションの最上階が暑くなる原因は、主に建物と窓の断熱性にあります。
断熱性能の低いマンションは、暑さだけではなく寒さにも注意が必要です。
最上階の部屋は、寒い冬でも日射熱によって室内が暖かくなる側面もありますが、上に部屋がないため、天気の悪い日や日没後は、放射冷却によって寒くなる可能性があります。
放射冷却とは、物が溜め込んだ熱を外に放出して温度が下がる現象を指し、全ての物質がもつ性質です。
(参考:気象庁|はれるんライブラリー|放射冷却(ほうしゃれいきゃく)って何?)
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■「新築・中古・低層・タワーマンション」断熱性能の違い
リノベーションの事例を見る:Case193「Public&Private」
マンションの最上階が暑い・寒い原因となる断熱性能は、物件によって異なります。
ここでは、新築・中古・低層・タワーマンションそれぞれの断熱性能について特徴を紹介します。
新築(築浅)マンション
新築から築15年以内のマンションは、比較的断熱性が高く、最上階の暑さ・寒さもそこまで気になりません。
なぜなら、新しいマンションは断熱材であるウレタンフォームをコンクリート躯体に吹き付ける湿式工法が用いられているため、隙間なく外気温の影響を遮断できるためです。
また、近年建てられたマンションには高断熱複層ガラスや断熱玄関ドアが標準仕様になっています。
実際に、一定の断熱性能をもつ「省エネ基準適合」新築マンションの割合は81%(2019年時点)で、さらに断熱性の高い「ZEH-M(※)」は新築マンションの7.4%(2021年時点)にまで増えています。
(参考:国土交通省|【参考】住宅における外皮性能)
(参考:経済産業省資源エネルギー庁|省エネポータルサイト|ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス))
※ZEH-M(ゼッチ・マンション):省エネ基準よりも高い省エネ性・断熱性を持ち、太陽光発電などの創エネ設備によって、年間の一次エネルギーを“プラスマイナスゼロ”にすることを目指すマンション
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中古マンション
築年数の経ったマンションは、建築時期によって断熱性能に差があります。
1992年(※)よりも前に建てられたマンションは、屋上・外壁・窓の断熱性能をあまり重視していない可能性が高いので注意しましょう。
※1992年:省エネルギー基準が改正され、新省エネ基準(断熱等性能等級3相当)が初めて作られた年
そのため、築30年以上経っている中古マンションを購入する際には、断熱性能についてもチェックしましょう。
総マンションストック数(中古マンション戸数)約600万戸のうち、(2013年時点)のうち、団地型マンションは約1/3を占め、その1/2以上が築45年を超えているというデータも出ており、これらの物件は断熱性能が低い点は否めません。
ただし、UR都市機構が管理する公団(団地)では、2003年から「省エネ等級4」を満たす断熱仕様が適用されています。
(参考:UR都市機構|住まいづくりのこれまで)
古いマンションでも、既に屋上や外壁の断熱改修工事が終了している可能性があります。
断熱改修工事とは屋上・外壁などの共用部に断熱材をプラスする工事で、新築時よりも暑さや寒さの影響を受けにくくなることから、近年大規模修繕工事として実施するマンションは少なくありません。
低層マンション
住宅地の中に建つ2〜3階建て程度の低層マンションは、周囲に日陰を作る建物や木がある場合も多く、古い物件でも暑さがそれほどひどくない場合もあります。
ただし、低層マンションの建つエリアは、都市計画法で定められた用途地域のうち、「第一種低層住居専用地域」や「第二種低層住居専用地域」に該当する可能性が高く、建物の高さが制限されます。
つまり、周囲の建物も低いということです。
そのため、「低層マンションの最上階=暑くない」訳ではないので注意しましょう。
また、周囲に高い建物や樹木があって部屋が日陰に入る場合、冬の寒さが気になる可能性もあります。
低層マンションは閑静な住宅地に建ち、比較的ハイグレードな物件が多いことから、中古物件市場でも人気です。
ただし、日当たりや風通しが悪いマンションもあるため、物件探しの際は周辺環境ももれなくチェックしましょう。
タワーマンション
タワーマンションが建設ラッシュを迎えたのは1990年代後半(※)からなので、中古物件でも断熱性能が極端に低いことはありません。
※1997年の建築基準法大改正によって、日照権や容積率の規制が緩和され、駅前など人気のエリアにタワーマンションの建設が可能となりました。
ただし、中古市場に出回るタワーマンションの約10%程度は築30年を超えていると言われているため、購入の際には屋上・外壁の仕様や窓ガラスの種類を確認しましょう。
また、眺望を売りにしているタワーマンションは南面に大開口を設けている部屋が多く、高断熱ガラスでも暑さが室内に伝わる可能性があるので注意が必要です。
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マンションの断熱性能など、専門的な仕様まで一般の方がチェックするのは簡単ではありません。
そのため、広さや間取りだけではなく住宅性能や管理状況など細部にまでこだわりたい方には、物件探しから“リノベのプロ”がサポートするワンストップリノベーションをおすすめします。
■「最上階の部屋」のメリット
マンションの最上階は暑い・寒いと言われるものの、最上階でしか得られないメリットもあります。
- ・眺望が良く、開放的
- ・日当たりと風通しがいい
- ・ルーフバルコニー付きの物件が多い
- ・ペントハウスタイプのハイグレードな物件が多い
- ・メゾネットタイプの物件が多い
- ・他の階より天井が高い可能性がある
- ・交通音や人の話し声など周囲の騒音が聞こえにくい
- ・上階の足音や生活音が聞こえない
- ・虫が室内に入ってこない
- ・防犯性が高い(外部からの侵入リスクが低い)
- ・プライバシーを守りやすい(外部からの視線が気にならない)
このように、最上階の部屋には低層階や中間階では体感できない魅力があります。
■「最上階の部屋」のデメリット
最上階の部屋を購入する際には、暑さ・寒さに関するポイントに加えて、以下のデメリットや注意点にも着目しましょう。
- ・断熱性能が低い物件は、冷暖房の効率が悪い(光熱費が高くなる)
- ・窓の向きによっては高断熱窓でも暑さを感じる(カーテンなどの工夫も必要)
- ・エレベーターに乗らないと帰宅や外出が大変
- ・引越しは全ての荷物や家具をエレベーターで搬入出しなくてはいけない
- ・タワーマンションだと地震で大きく揺れる可能性がある(室内の被害が大きくなる)
- ・災害時や停電時にエレベーターが使えなくなる(毎日の上り下りが大変)
- ・物件価格は他の部屋より高め
このように最上階の部屋には思わぬ欠点もあるので、住んでから後悔しないように事前に日々の生活ルーティンなどをイメージしておきましょう。
ちなみに、マンション価格は階が高くなるにつれて0.5〜3%(※)ほど坪単価が上がるのが一般的です。
※1階の価格を基準とすると、5階建ての最上階は「2〜12%アップ」、10階建ての場合は5〜27%程度価格が高い可能性があります。
「最上階は魅力的だが、暑さ・寒さや価格が気になる」という方には、最上階の“1階下”にある部屋もおすすめです。
階段上のマンションでは最上階以外にもルーフバルコニーを使える部屋もありますし、最上階とあまり変わらない開放感や眺望を楽しめます。
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■最上階だけではなく角部屋にも要注意
築年数の経っている中古マンションでは「最上階が暑い・寒い」物件も少なくありませんが、それに加えて人気の高い“角部屋”にも注意が必要です。
断熱性能の低いマンションでは、2面が外部に接する角部屋も暑さや寒さが気になる可能性があります。
【南西向きの角部屋】日差し(日射熱)が多く差し込み、暑くなりやすい
【北東向きの角部屋】窓が日陰に入る時間が長く、寒くなりやすい
ただし、角部屋には開放的で日当たり・風通しが良く、バルコニーが2面になるなどのメリットもあります。
そのため、物件探しの際には最上階の部屋を選ぶ時と同様に、建物の断熱性能を確認しましょう。
■暑い・寒い部屋の対策|物件選びのポイント
リノベーションの事例を見る:Case180「Maisonnette」
マンション最上階の暑さや寒さを解決する方法は、購入する物件選びのコツにあります。
築30年未満のマンションを選ぶ
1990年代後半以降に建てられたマンションは、断熱性能が極端に低い可能性はあまりなく、窓が高断熱仕様になっている物件も珍しくありません。
ただし、比較的新しいマンションでも南向き・西向きに大きな窓が開いている場合は、日中に室内が上昇する可能性があります。
そのため、このような物件を内覧する際は、晴天の昼間を選びましょう。
夏以外でも晴天時であればどのくらい室温が上がるか体感できます。
外断熱・屋上断熱の改修済み物件を選ぶ
築30年以上のマンションでも、外壁や屋上を断熱改修している物件は最上階がそれほど暑くない可能性もあります。
実際に、高経年化した団地型マンションを断熱改修する事例が増えており、その大半が「外壁・屋上・床・開口部(サッシやガラス)・玄関ドア」を高断熱仕様に変えています。
省エネ性の高いマンションを選ぶ
2010年代後半から、省エネ性の高いマンションの新築事例が増えており、まだ数に限りはあるものの徐々に中古物件市場にも売り出され始めています。
省エネ性の高いマンションとは、以下の性能認定を取得しているか同等の性能をもつマンションです。
※外皮基準:外壁・屋根(屋上)・床や窓などの開口部における表面積あたりの熱損失量(外皮平均熱貫流率等)における基準で、建物の断熱性能を評価する指標
※一次エネルギー消費量基準:空調・換気・照明・給湯などのエネルギー消費量から太陽光発電設備などによる創エネ量を差し引いた基準で、建物の省エネ性能を評価する指標
省エネ性に特化したマンションは2024年7月の時点で37.6%にまで増加しています。
(引用:国土交通省|関連データ等について)
物件購入費用とリノベーション費用を合わせたトータル予算を把握しやすくなります。
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リノベーションの事例を見る:Case57「溶け合うテイスト」
「新しいマンションでも暑さ・寒さが気になる」「所有しているマンションの暑さ・寒さを軽減したい」という方は、断熱リノベーションをご検討ください。
窓ガラスに断熱・遮熱フィルムを貼る
最も手軽な断熱リフォームは、窓ガラスへのフィルム貼りです。
断熱・遮熱フィルムを貼ると、日射を吸収もしくは反射して、室内の暑さや寒さを軽減できます。
ただし、網入りガラスやペアガラスにフィルムを貼ると熱割れするリスクがあり、耐用年数が短いので、効果は一時的です。
ちなみに、国内大手サッシメーカーLIXILでは、どのガラスにもフィルムを貼ることを推奨していません。
(参考:LIXIL|Q&A(よくある質問)|窓や玄関のガラスにフィルムシートを貼っても良いですか?)
窓に断熱カーテンなどをかける方法もあり、リフォームができない賃貸マンションにはおすすめですが、部屋が暗くなり開けていると効果がないため、根本的な解決にはならないので注意しましょう。
窓ガラスを断熱・遮熱ガラスに変える
ガラスフィルムより効果が高い方法は、ガラス交換です。
日射熱を妨げるガラスや高い断熱性能を発揮する複層ガラス(ペアガラス・トリプルガラスなど)へ取り替えると、暑さや寒さが大幅に和らぎます。
ただし、窓ガラスは共用部分に該当するため、区分所有者の一存で勝手にリフォームできません。
そのため、必ず事前に管理組合へ相談しましょう。
古いマンションは修繕積立金を使って、全戸一斉に窓(サッシ・ガラス)や玄関ドアの断熱改修を計画している可能性もあります。
内窓をつける
内窓(インナーサッシ)は、外窓から伝わる暑さや寒さをブロックでき、専有部分のリフォームなので比較的簡単に設置できます。
また、サッシ枠の結露を防止できる点もポイントです。
ただし、部屋にある全ての窓に設置しないと効果は低く、窓の開閉や掃除にかかる手間が二重になる点には注意しましょう。
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バルコニーにウッドパネルや人工芝シートを敷く
バルコニーからの照り返しが気になる場合は、ウッドパネルや人工芝シートなど、光の反射率が低い材料を敷いてみましょう。
ただし、バルコニーやベランダは共用部に当たり、定期的に防水層の点検・メンテナンスが行われるため、パネルやシートは接着剤などで固定できず、すぐに取り外せる必要があります。
また、マンションによっては管理規約でバルコニー・ベランダにパネルやシートを置くことも禁止している可能性があるため、事前のチェックは欠かせません。
壁・天井に内断熱工事をする
外壁や屋上に面したコンクリート躯体に専有部から断熱工事することもできます。
専有部の内側から隙間なく断熱材を充填すると、部屋が魔法瓶のように断熱されて、ヒートブリッジ(※)となる部分を減らせて内部結露も防止できます。
※ヒートブリッジ:熱橋(ねっきょう)とも呼ばれ、建物の中で熱を伝えやすい部分。マンションの天井床スラブ内にある鉄筋や断熱材の切れ目などが該当する。
ただし、壁や天井の断熱工事は内装をやりかえることが前提です。
そのため、フルリノベーションの際に併せて断熱工事することをおすすめします。
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■まとめ
「マンションの最上階は暑い」と言われがちですが、それは建築時期や仕様によって異なります。
最上階の部屋を購入する際は、建物の断熱性能をチェックしましょう。
物件選びやリノベーションのポイントを押さえることで、室内の暑さ・寒さを軽減できる可能性もあります。
中古マンションの最上階を購入したい方は、物件選びの段階から“リノベのプロ”がサポートするSHUKEN Reのワンストップリノベーションがおすすめです。
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