公開日:2024-06-09 更新日:2024-07-04
【マンションの修繕積立金】相場と築年数別の値上げ目安を解説|不足・残高・運用チェックポイント付き
マンションの建物性能を維持して、住民の快適で安心な生活を維持するために欠かせない修繕積立金ですが、「高い」「値上がりが心配」という方も多いでしょう。
また、これからマンションを購入予定の方は、どのくらいの金額を想定しておくべきか分からない方も少なくないはずです。
そこで、今回はマンションの修繕積立金について、使い道や管理費・共益費との違い、築年数ごとの相場、値上がりの条件を詳しく解説します。
これから中古マンションを買う方に押さえていただきたい修繕積立金に関するチェックポイントも紹介しますので、今のお住まいからの住み替えを検討している方も、ぜひ参考にしてください。
・修繕積立金は高すぎても安すぎてもよくないため、購入前に適正額かどうかチェックすることが重要です。
・マンションの物件選びは、1998年創業以来、東京・千葉・神奈川で8,000件を超えるリノベーションを手がけ、多くのマンション購入をサポートしてきたSHUKEN Reへご相談ください。
目次
■マンションの修繕積立金とは|使い道や管理費・共益費との違い
マンションのリノベーション・リフォーム事例を見る:Case177「Full Life」
分譲マンションを所有している方が毎月管理組合へ納めなくてはいけないのが、修繕積立金です。
そのほかにも、管理費や共益費などの支払いも発生します。
どれもマンション管理に必要なコストですが、意味合いや使い道は異なります。
【修繕積立金】
マンション共用部をメンテナンス・点検・大規模修繕するための費用を、全区分所有者から毎月少しずつ徴収して積み立てる費用です。
主に以下の用途で使用されます。
- ・共用部(外壁や屋上など建物に関わる部分)の定期点検・調査費用
- ・外壁の再塗装や防水改修
- ・屋上防水の改修
- ・共用廊下やバルコニーの床メンテナンス
- ・窓や玄関ドアの修理や交換
- ・給排水管のメンテナンスや定期清掃、交換
- ・エレベーターの修理や交換
- ・共用ポストや宅配ボックスなどの修理、交換
- ・植栽の定期的な剪定(大掛かりなもの)
- ・その他、共用部にある設備の修理、交換
共用部に関する点検や工事のうち、まとまった費用が必要な項目については、基本的に修繕積立金より支払われます。
では、同じく毎月支払う管理費・共益費とはどのように違うのでしょうか。
【管理費・共益費】
管理費・共益費は日々のマンション運営に必要となる比較的安価な出費をカバーするものです。
主に以下の用途で使用されます。
- ・管理会社への委託費(管理人の人件費・共用部清掃費など)
- ・管理室の諸経費(光熱費・消耗品費・通信費など)
- ・共用部分の電気代や水道代などの光熱費(共用部の照明、エレベーターなど)
- ・共用部分の維持に必要な消耗品費(電球・掃除用品など)
- ・管理組合運営に必要な諸経費(文房具などの消耗品費や通信費)
- ・消防設備やエレベーターなど共用部設備機器の点検や軽微なメンテナンス
- ・部分的な植栽剪定費用
- ・その他、共用部の軽微な補修費用
そのため、管理費と共益費の両方を徴収されることはありません。
最近は「管理費」で統一している物件が一般的で、「共益費」と呼んでいるのは古いマンションもしくは賃貸マンションが多いようです。
管理費(マンションの事務を処理し、設備その他共用部分の維持及び管理をするために必要とされる費用をいい、共用部分の公租公課等を含み、修繕積立金を含まない。)
共益費(借家人が共同して使用又は利用する設備又は施設の運営及び維持に関する費用をいう。)
(引用:不動産公正取引協議会連合会|不動産の表示に関する公正競争規約施行規則)
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■修繕積立金は毎月いくら払う?築年数・総戸数ごとの相場や目安
マンションのリノベーション・リフォーム事例を見る:Case184「Bowwow!」
マンションの修繕積立金は、建物の維持管理に必要なコストを賄うための資金なので、規模や築年数、総戸数によって相場や適正額は異なります。
国土交通省が全国1,688棟のマンションへ行った最新のアンケート調査によると、修繕積立金平均額は「11,243円(駐車場使用料等からの充当額を含む場合は12,268円)」です。
では、詳細なデータを詳しく紹介します。
完成時期 | 築年数
※調査時点 |
修繕積立金
平均額 (㎡平均) |
1985〜1989年 | 築29〜33年 | 12,154円
(182円) |
1990〜1994年 | 築24〜28年 | 12,760円
(257円) |
1995〜1999年 | 築19〜23年 | 13,447円
(191円) |
2000〜2004年 | 築14〜18年 | 12,649円
(153円) |
2005〜2009年 | 築7〜13年 | 12,386円
(150円) |
2010〜2014年 | 築4〜8年 | 9,846円
(126円) |
2015年〜 | 〜築3年 | 6,928円
(93円) |
(出所:国土交通省|平成30年度マンション総合調査結果をもとに弊社にて作成)
修繕積立金は、築10年・20年・30年・40年と年数が経つほど高くなるのが通常です。
なぜなら、築年数とともに劣化が進み、補修箇所が増え、メンテナンス周期が短くなるためです。
では、総戸数と修繕積立金の関係を見てみましょう。
総戸数 | 修繕積立金
平均額 |
31〜50戸 | 12,952円 |
51〜75戸 | 10,581円 |
76〜100戸 | 11,535円 |
101〜150戸 | 10,775円 |
151〜200戸 | 12,698円 |
201〜300戸 | 12,883円 |
301〜500戸 | 14,496円 |
501戸〜 | 13,719円 |
(出所:国土交通省|平成30年度マンション総合調査結果をもとに弊社にて作成)
修繕積立金は、総戸数が増えると1戸当たりの費用負担が減るように感じますが、そうとは言い切れません。
戸数の多いマンションは建物規模が大きくなり、その分工事費が高くなるからです。
また、総戸数が多いマンションは、共用部のサービス(事務やライブラリー、カフェ、パーティールームなど)が充実し、その面積のメンテナンス費用も修繕積立金で賄わなくてはいけません。
実際に、タワーマンションの多い東京区部では、修繕積立金・管理費は全国平均よりも高めです。(参考:公益財団法人東日本不動産流通機構|首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金)
これまで適切な大規模修繕工事が行われてこなかった物件は、ある時点から急激に修繕積立金が値上がりしている可能性もあるため要注意です。
中古マンションを購入する際は、事前に修繕積立金額を確認して物件を選びましょう。
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■修繕積立金額の決め方や計算方法
マンションのリノベーション・リフォーム事例を見る:Case182「Cinematic」
マンション修繕積立金額は、「長期模修繕計画」に基づき算出されます。
長期修繕計画とは、今後発生が予測される修繕工事を長期にわたって計画し、その必要な費用をシミュレーションするための資料です。
長期修繕計画とは
分譲マンションは、専有部分と共用部分で建物等が構成されており、共用部分については、区分所有者全員で団体(管理組合)を構成し管理を行うこととなります。
建物等については、経年により劣化していきますので、それに対処するためには適時適切に修繕工事等を行う必要があります。
ただし、修繕工事等の費用は多額であり、修繕工事等の実施時に一括で徴収することは、区分所有者に大きな負担を強いることとなります。
場合によっては、費用不足のため必要な修繕工事等が行えず、建物等の劣化を進行させることとなり、それにより、あとで大きな負担が発生するおそれもあります。
長期修繕計画は、そのようなことがないように、将来予想される修繕工事等を計画し、必要な費用を算出し、月々の修繕積立金を設定するために作成するものです。
(引用:国土交通省|長期修繕計画作成ガイドライン )
長期修繕計画は、25年もしくは30年スパンで立てられ、必要に応じて見直されます。
特に近年は、建築資材や人件費高騰に伴い、計画時点での工事費用と実際の工事費用に乖離が出てきているため、計画の見直しを行うマンションは少なくありません。
国土交通省では、適正な修繕積立金額の算出方法を紹介しています。
Y=AX(+B)
- Y:マンションの修繕積立金目安
- A:占有部床面積当たりの修繕積立金額(下表※①)
- X:マンションの占有部床面積(㎡)
- B:機械式駐車場がある場合の加算額(下記式)
B=CDZ
- C:機械式駐車場1台当たりの修繕工事費(下表※②)
- D:台数
- Z:延床面積に対する専有部分面積の割合
※①「A」に関する参考資料
建物の階数・延床面積 | 修繕積立金 平均値 |
|
15階未満 | 5,000㎡未満 | 月218円/㎡ |
5,000〜10,000㎡未満 | 月202円/㎡ | |
10,000㎡以上 | 月178円/㎡ | |
20階以上 | 月206円/㎡ |
※②「B」に関する参考資料
機械式駐車場
機種 |
修繕工事金への
加算目安 |
2段(ピット1段) 昇降式 |
月7,085円/台 |
3段(ピット2段) 昇降式 |
月6,040円/台 |
3段(ピット1段) 昇降横行式 |
月8,540円/台 |
4段(ピット2段) 昇降横行式 |
月14,165円/台 |
(参考:国土交通省|「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の概要 )
(計算例:8階建て・建築延床面積が6,000㎡・専有部分床面積70㎡)
①機械式駐車場がない場合
70㎡×202円=14,140円
②機械式駐車場2段(ピット1段)昇降式が5台(車10台分)ある場合
70㎡×202円+(7,085円×10台×75/6,000)=15,025円
2011年時点と2024年3月時点の消費者物価指数を比べると「+13%」であるため、修繕工事にかかる費用も値上がりしていることが予測できます。
そのため、さらにリアルな修繕積立金を試算したい場合は、「基準額+10〜15%」程度を想定しておくと良いでしょう。
逆に、物価上昇が加味されていない物件は、いざ大規模修繕工事をする際に、費用が足りなくなる恐れがあります。
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■マンション購入時の修繕積立金チェックポイント|不足・残高・運用・値上げ
マンションのリノベーション・リフォーム事例を見る:Case161「BOOKSHELF」
これから中古マンションを購入する方は、物件選びの時点で修繕積立金についてしっかりチェックしておきましょう。
では、特に知っておいていただきたいポイントを紹介します。
修繕積立金額はいくらか
物件を選ぶ際は、必ず修繕積立金額を確認しましょう。
管理費と合わせて月々の支払いがいくらになるか知っておくことが重要です。
その際、「〇〇円〜〇〇円」と金額が開く場合もありますが、購入を検討している物件ではいくらになるのか、具体的な金額を確認してください。
1階で専用庭がある物件や、最上階でルーフバルコニー付きの物件は、管理費が割り増しされるケースもあるので注意しましょう。
修繕積立金が不足・未回収ではないか
修繕積立金額と合わせて必ずチェックすべき点が、修繕積立金総額と未回収率です。
修繕積立金を回収できない空室が多いマンションには注意しましょう。
国土交通省の調査によると、現時点での積立金総額が長期修繕計画で必要となる工事に比べて不足しているマンションが「34.8%」、不足割合が20%以上のマンションが「15.5%」もあることが分かっています。(参考:国土交通省|平成30年度マンション総合調査結果)
築年数の経っているマンションほど、修繕積立金の遅延率が高くなる傾向もあるため、事前のチェックが欠かせません。
これでは、いざ大規模修繕工事をする際に、追加金を徴収される可能性や、管理が行き届かず建物の寿命が縮まってしまう恐れがあります。
空室率や修繕積立金の回収状況や積立金総額は、管理会社へ「重要事項に関わる調査報告書」を取り寄せると確認できます。
修繕積立金の運用方法や残高が適切かどうか
修繕積立金の残高がいくらあり、それをどのように運用しているかも重要なチェックポイントです。
国土交通省の調査によると、修繕積立金残高の平均額は「1億650万円」で、最も多い割合を占めるのは「2,000万円〜5,000万円(27.2%)」です。(参考:国土交通省|平成30年度マンション総合調査結果)
多くのマンションは、修繕積立金の残高を銀行やゆうちょ銀行へ預けていますが、一部を国債や投資へ充てる物件もあります。
(出所:国土交通省|平成30年度マンション総合調査結果をもとに弊社にて作成)
それ自体が間違いではありませんが、運用状況をこまめに確認できる体制が整っているかが重要です。
修繕積立金値上げのタイミングはいつか
「マンション修繕積立金は購入してから30年後にどこまで上がる?」「どのくらいの値上げを覚悟しておけばいいか分からない」と心配な方も多いでしょう。
国土交通省の調査によると、段階的に修繕積立金を値上げする増額積立方式をとっているマンションのうち、過去に修繕積立金を値上げしたことのあるマンションは「81.6%」にものぼります。(参考:国土交通省|平成30年度マンション総合調査結果)
築15年を超えるマンションは80%以上の割合で値上げしている点もポイントです。
値上がりの時期は築年数にもよりますが、5〜10年ごとに見直すマンションが多く、値上げ額は「平均65.1円(単棟型の場合)」と、じわじわ値上げされていきます。
「長期修繕計画書」には、今後の修繕積立金値上げ計画が記載されていますので、購入前にチェックしておくのがおすすめです。
過去に住民の反対によって値上げが否決されたことのある物件は、修繕積立金不足になっている可能性があるため注意しましょう。
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■まとめ
マンションに住む上で必ず支払わなくてはいけない修繕積立金は、建物全体の性能を維持して資産価値を守る上で欠かせないコストです。
ただし、高くて住んでから家計の負担になるようでは、気持ちよく住み続けられません。
また、逆に修繕積立金が安いと、適切なメンテナンスができず、構造まで劣化が進んでしまう恐れがあります。
中古マンションを購入する際は、修繕積立金が“適正額”かどうかを必ず確認しましょう。
そこで頼りになるのが、マンション探しからリノベーションまで安心して任せられる会社です。
不動産的知見と建築的知見の両方を持つ会社でしたら、長期修繕計画の内容と修繕積立金の適正額をチェックできます。
SHUKEN Reは、1998年創業以来、東京・千葉・神奈川で8,000件を超えるリノベーションを手がけてきた実績がありますので、どうぞお気軽にご相談ください。
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