公開日:2023-12-24 更新日:2024-07-04
アパート建て替えの費用相場はいくら?解体費用・建築費用・立ち退き料の相場を解説
築年数が経ち修繕費や空室が増えてきたアパート、建て替えるべきかどうか悩みますよね。
アパートを建て替えれば収益性が高まり長く経営できますが、入居者の立ち退き交渉や多額の費用など心配な点も少なくありません。
そこで今回は、アパート建て替えのメリット・デメリットや費用相場について具体的に解説します。
・賃貸需要と収益性が高いアパートは、建て替えして長く経営を続けるのが向いているでしょう。
・建物の状態や今後の経営計画によっては、一棟リノベーションで費用を抑えて投資回収を早めたほうが良いケースもあります。
■アパート建て替えのメリット
まずは、アパート建て替えで得られるメリットについて1つずつチェックしていきましょう。
入居率と家賃を新築時の水準にリセットできる
築年数が経って低下した入居率と家賃を、新築時の高い水準にリセットできるのは建て替えの大きなメリット。
築年数によって変動しますが、平均すると1年あたりの家賃相場低下率は1%が目安と言われています。
新築時の家賃が8万円のアパートは、30年経つと5.6万円まで低下する計算です。
仮に10室のアパートだと毎月の家賃収入は24万円減り、年間だと288万円もの損失になってしまいます。
新築時の家賃設定が高く戸数が多いアパートほど、建て替えによる収益性アップ効果も大きくなります。
建物のトラブルリスクを軽減できる
建て直しで新築アパートに生まれ変わることで、雨漏りや地震による損壊などのトラブルリスクを減らせるのも経営上のメリットです。
木造・鉄骨造など、どの構造で建てられたアパートも築年数が経つとトラブルの発生リスクが高くなります。
もし、雨漏りが発生して入居者に迷惑をかけてしまうと、損害賠償を求められるケースも。
築年数が古く旧耐震基準で建てられているアパートは、地震の揺れによる壁の剥落やひび割れが発生しやすく、雨漏りリスクにもつながります。
建て直しならこのようなリスクもリセットできるため、入居者の安心感が高く長期入居も期待できます。
経営データを活かして収益性を高めやすい
ご自身が所有するアパートを建て直す場合、それまでの経営データを活かしてよりニーズに合う物件をつくれるのも意外なメリットの1つ。
土地を購入してアパートを新築する場合、地域人口や競合物件などの綿密な調査を1からやらなければいけません。
しかし、経営期間中の入居者の属性や空室率の変化などのデータを参考にすれば、より収益性の高いアパートを建てられる確率が上がります。
節税効果が高くなる
建て替えにより築年数がリセットされると、減価償却費による節税効果が高くなるのも魅力的なポイントです。
築年数が経ち法定耐用年数を超えたアパートは、減価償却費を計上できなくなり、帳簿上の利益が大きくなり所得税が増えてしまうのです。
木造アパートは22年、鉄骨造の場合は19~34年を経過すると、節税効果がなくなります。
建て替えにかかった費用は法定耐用年数に応じて経費計上でき、新たに節税効果を得ることができます。
■アパート建て替えのデメリット
アパートの建て替えには、費用や手間のハードルが高いなどのデメリットもあります。
建て替えの良い部分だけでなく、注意すべきポイントもしっかり把握しておきましょう。
高額な費用がかかる
具体的な相場は後述しますが、アパートの建て替えには数千万円単位の費用がかかるのが大きなデメリットです。
建て替えに使えるアパートローンには年齢制限はありませんが、完済時年齢によっては審査が通らないケースも考えられるでしょう。
少子高齢化が進み賃貸需要が変化していくこれからの日本では、高額な初期費用を長期ローンでまかなうリスクは高いかもしれません。
建て替え中の家賃収入が途絶える
アパートの建て替え中は家賃収入がゼロになるのも大きなデメリット。
入居者の立ち退きから解体、建築期間から完成後の入居者募集も含めると、1年以上家賃収入が途絶えると考えるべきでしょう。
入居者の立ち退きが難しい
日本の借地借家法では借主の権利を強く保護しているため、立ち退き交渉が難しい点も建て替えの大きなハードルとなります。
借主が住み続けたいと希望して交渉が難航した場合、高額な立ち退き料が必要になるケースも。
■アパートの建て替え費用相場
アパート建て替えにかかる費用を、項目別にチェックしてみましょう。
単身者~カップル向けの2K×10室のアパートという設定で、延床面積300㎡(約90坪)の建築費用相場を木造と鉄骨造で試算してみます。
解体費用 360~540万円
建て替えにあたって、まずは既存アパートの解体費用が必要になります。
アパートの解体費用は状況によっても変動しますが、木造・鉄骨造の相場は次の通りです。
構造 | 費用相場/坪 | 300㎡(90坪)の相場 |
木造 | 4万円/坪 | 360万円~ |
鉄骨造 | 6万円/坪 | 540万円~ |
300㎡(90坪)のアパートの解体費用は、木造の場合360万円、鉄骨造の場合540万円が相場となります。
ただし、これはあくまで目安であり、重機やトラックが入れないなど状況が悪いと相場より費用が高くなるケースもあります。
建築費用 5,400~8,100万円
アパートの建て替えにかかる建築費用は、国道交通省が実施している建築着工統計調査の工事費予定額を参考にしてみましょう。
構造 | 1㎡あたり工事費予定額 | 300㎡(90坪)の相場 |
木造 | 18万円 | 5,400万円~ |
鉄骨造 | 27万円 | 8,100万円~ |
木造・鉄骨造では1㎡あたり9万円の差があり、300㎡(90坪)のアパートだと2,700万円の開きになります。
立ち退き料 120~240万円
アパートの倒壊リスクが高いなど緊急性が高い場合を除き、入居者に退去してもらうためには立ち退き料を支払う必要があります。
立ち退き料の内訳には、引っ越し費用・新しい家の仲介手数料や敷金・礼金、今の家賃との差額などが含まれます。
立ち退き料の相場は賃料の3~6か月程度と言われていて、月額8万円なら一戸あたり24~48万円が必要です。
仮に10戸のうち半分の5戸入居中の場合、120~240万円が立ち退き料の相場となります。
ただし、入居者との交渉が難航した場合、相場より高額な立ち退き料が必要となるケースもあります。
10戸300㎡アパートの建て替え費用相場 5,880~8,880万円
解体費用・建築費用・立ち退き料の相場を合計すると、合計金額は5,880~8,880万円となりました。
木造・鉄骨造でかなり開きはありますが、アパートの建て替えにはかなりの費用がかかることが分かります。
また、この数字はあくまで相場であり、建物や入居者の状況によって大きく変動する可能性があります。
賃貸需要と資産価値が高いエリアのアパートなら、高額な建て替え費用をかけても、回収できる可能性は高いでしょう。
しかし、日本はすでに人口減少が始まっており、今後数十年で企業の撤退や閉校などで賃貸需要が変化するリスクも考えられます。
建て替え費用をかけるべきか悩んだら、リフォーム・リノベーションで費用を抑えるのも1つの考え方です。
■アパートの建て替えが厳しいならリフォームも検討しよう
前述したように、10戸程度のアパート建て替えでも5,000万円以上の費用がかかります。
高額な初期費用による赤字リスクを軽減するには、リフォーム・リノベーションでコストを抑える方法もあります。
一棟丸ごとのリフォーム・リノベーションなら、一千万円単位で費用を抑えつつ、新築同様に仕上げることも可能です。
建て替えとリノベーションの費用相場については、こちらのコラムで詳しく解説しています。
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