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"SHUKEN Re"

INTERVIEW
お客様インタビュー|リノベのその後

Gentle Harmony

この記事の見所ポイント

  • デザイン美と機能的視点が融合した空間づくり
  • 大胆なタイルの貼り方や潔い設備の選択が、住まい独自の個性を演出
  • ガラスブロックや異素材の床材でゆるやかにつなぐ、光と余白を活かした間取り
  • デザインのアクセントとなる造作家具は、見た目だけでなく「用の美」を体現したしつらえ

 

下町情緒が漂う、東京都墨田区の一角。Iさまご夫妻が新たな住処として選んだのは、以前から親しみのあるこの地域でした。

「前もこのすぐ近くに住んでいたんですが、すごく暮らしやすかったんです。下町ならではの温かみが残っていて落ち着くし、買い物などの生活利便性も高くて。これから子どもを育てていく街としても、なじみのあるこの環境が安心だねと話していました」とご夫妻。

 

住み慣れたエリアでの物件探しをおこなう中、数軒の内見を経て出会った今のお住まいは、内見2軒目に訪れた場所でした。

その後もいくつかのお部屋を見て回ったものの、「やっぱりあの物件がいいね」と再び足を運び、購入を決めたといいます。

 

「景色と日当たりの良さ、心地よく抜ける風。あと、なんとなく気の巡りが良さそうな雰囲気が決め手でした」と奥さま。

実際に入居してみると、マンション内で顔を合わせる住人の方々も温かい人ばかりだったそう。

「結果、あのときの直感は正しかったね」と顔を見合わせて笑い合うおふたりの表情から、この住まいへの満足感が伝わってきます。

 

物件購入と並行して進めたリノベーション会社選びでは、自社工場を持ち、自由度の高い空間づくりが叶う当社にご依頼いただくことに。

デザインやトーンは奥さま、使い勝手や収まりはご主人と、互いに得意な視点を活かす役割分担で、ご夫妻の理想を形にする住まいづくりがスタートしました。

 

 

住まいの顔となる、ミッドセンチュリーテイストのLDK

 

そんなおふたりの連携がわかりやすく見て取れるのが、ご家族の暮らしの中心であるLDKです。

 

 

ご実家がナチュラルテイストだったこともあり、そうした雰囲気の雑貨にも親しみがあったという奥さま。ですが今回は、ご夫妻ふたりが心から寛げる空間を目指し、ご主人の好みも尊重しながらあえて甘さを抑えたスタイリッシュなトーンを選択しました。

もの選びで迷ったときにはご主人に問いかけ、テーマからブレない選択を重ねていったといいます。

 

一方でご主人は、そのデザインを快適な暮らしに落とし込む機能面を担当。設備や家具のサイズ感、動線など、暮らしやすさに関わるディテールを細かく詰めていきました。

 

その空間の大きな見せ場となっているのが、キッチン背面に採用した「名古屋モザイク」のタイルです。

 

 

「タイルは絶対に使うと決めていたんです。ちょこちょことポイントで使うよりも、どこかに潔さを出したくて」と奥さま。

ただ、全面に貼るとコストが高くなるので、範囲をどう絞るかが検討のポイントに。

どこまで貼るかはご主人にとっても悩みどころだったようですが、キッチン背面だけに留めずリビング側の壁面まで大胆に貼り伸ばして施工したことで、空間全体に美しい奥行きが生まれました。

 

このタイル壁の上下には、ステンレスのシステムキッチンと造作の吊り戸棚が配されています。

 

 

システムキッチンのセレクトに関しては、当初はアイランドキッチンも検討されたものの、リビング・ダイニングの広さを十分に確保するため壁付けレイアウトに。

「どうせ壁付けにするなら、インテリアとしてもかっこいいものを」と選ばれたのが、側面まで美しく、シャープな角のラインが際立つ「ミラタップ」のグラッド45でした。

日頃から料理を楽しむご主人に合わせて、高さは90cmのタイプを採用したのも、Iさまご夫妻らしい選択です。

 

 

幅広の引き戸という個性的なデザインが目をひく吊り戸棚は、当社・プランナーの提案。

「壁とタイルの境界線を自然になじませるためにと考えてくれたものなんですが、この大きさとこの位置がグラスやカップの収納にちょうどよくて、実用的にもすごく助かっています」と、ご主人。

 

 

このステンレスキッチンや造作吊り戸棚、そして壁面のタイルが描く直線的なラインに対し、空間に程よいやわらぎをもたらしているのが、ダイニングに置かれたラウンドテーブルです。

さらにその頭上には、円筒形のメタルシェードが目を引くスタイリッシュなペンダントライトが存在感を放っています。

 

 

これらはご主人の出張に合わせて福岡県のヴィンテージショップで購入されたもの。

シャープなキッチンの直線美と調和しながらも、角のない丸テーブルとミッドセンチュリーを彷彿とさせる照明の佇まいが、クールな空間に華やかさを添えています。

 

また、調理スペースのすぐ隣には、あえて扉を設けないオープンなパントリーをレイアウト。

 

 

「家電類を調理台の上に並べたくなかったんです」という奥さまの希望から生まれたこの空間。調理家電やストック類をひとまとめに収めることで、キッチン周りをすっきり保ちながら、スムーズな調理動線も同時に実現。

さらに、ここはコストを抑えるポイントと割り切り、棚板をホームセンターで調達して施工を依頼。譲れないこだわりと抑える部分を明確にした、メリハリのある工夫が光ります。

 

なお、水気や汚れが気になるキッチンとパントリーの足元にはモルタル風のフロアタイルをセレクト。

一方、ダイニング側にはブラックチェリーのフローリングを敷き詰め、異素材の床材でゆるやかに空間をゾーニングしています。

 

 

この床の切り替え位置もご夫妻が頭を悩ませたポイントでしたが、当社プランナーからの提案でアールの切り替えラインに。まっすぐに区切るのではなく、やわらかな曲線でつなぐことで、空間にやわらかな表情が加わりました。

 

さらに、LDKをひとつにつなぐ、重要な要素となっているのが、窓から届く「光」です。

 

調光しやすいブラインドの機能性と、レースカーテンのやわらかな風合いを兼ね備えたバーチカルカーテンが、窓からの光をふんわりと透過。繊細な生地を通して広がる光が、くつろぎの空間にあたたかな表情を与えています。

 

 

天井については、躯体現しにする案も上がっていましたが、調光式のダウンライトなどの照明計画を実現するため、クロス貼りを選択。

そのかわりに、できるだけソファの高さを低くして、空間を広々と魅せる工夫を凝らしました。

 

そうした条件のもとで選ばれたのが「フランネルソファ」のBRICK。

もともと座面の低いモデルですが、さらに脚を外すカスタマイズを施すことで、より低い目線で過ごせるロースタイルを実現。座面は広々としていながら、視線を遮ることなく部屋全体を見渡せる開放感を叶えています。

 

 

また、テレビを壁掛けにしたのも空間を広く魅せるポイント。

このテレビが収まる壁は、隣接する子ども部屋との間仕切り壁を活用したもの。壁面にすっきりと埋め込むことで、無駄な凹凸を削ぎ落としたノイズレスなリビング空間が完成しました。

 

 

 

お子さまの成長を見守る、オープンでフレキシブルな子ども部屋

 

LDKと子ども部屋を壁で空間を区切ってしまわず、「間仕切り」にとどめたのは、まだお子さまが小さく、独立した個室を必要としていないため。

 

 

リビング(窓)側を開放した設計にすることで、お子さまがのびのびと部屋を行き来しながら遊べるオープンな空間に仕上げました。

さらに、将来お子さまが増えた際には中央で区切って独立した2部屋に分割できるよう、あらかじめコンセントや照明の配置まで緻密に計算されています。

 

 

そんな、お子さまの成長と暮らしの変化をあたたかく見守るこの部屋で、パッと目を惹く愛らしいアクセントになっているのが、「George Sowden」のペンダントライトです。

「実は、これ、シリコン製なんです。子どもが万が一ボールなどを投げて当ててしまっても大丈夫なように」と、奥さま。

ダイニング同様、空間に個性を添える照明のセレクトに、感性が光ります。

 

 

 

「コンパクトさ」を強みに変える、工夫が詰まった寝室とトイレ空間

 

LDKから廊下へ出て、すぐ左手に位置するのがご夫婦の寝室です。

 

室内はクイーンサイズのベッドと手持ちのタンスが心地よく収まる、必要最小限の広さに設計。

「その分、隣接するウォークインクローゼットの方にスペースを割り当てました」と、ご主人。

また、壁面に組み込んだガラスブロックが、空間の心地よいアクセントに。視線が程よく抜けることで、コンパクトなお部屋特有の圧迫感をやわらげています。

 

 

その寝室の向かいには、少し遊び心を効かせたインテリアが楽しいトイレ空間が。

壁面には石目調のクロスをあしらい、落ち着きのある上品な雰囲気に。

 

 

「掃除が楽しくなる空間にしたかったんです」という奥さまの言葉通り、壁に設けたニッチにはお気に入りのフレグランスや季節のお花が飾られ、毎日の気分を高めてくれるような空間に仕上げています。

 

そして、トイレの扉を出てすぐの廊下の一角(生活動線を邪魔しない絶妙な位置)には、小さなサブ洗面がすっきりと納まっています。

 

 

こちらは、奥さまが韓国・済州(チェジュ)島のホテルを参考に取り入れたインテリア。丸い鏡と可憐なペンダントライトの組み合わせが、何気ない手洗いの時間を特別なひとときにしてくれそうです。

 

 

異素材と「余白」で魅せる、ギャラリーのような廊下と玄関

 

このサブ洗面と同じく、個性的な空間の使い方がもうひとつ。それが、廊下に設けられた「余白」のスペースです。

 

 

あえて低い位置に吊るされたペンダントライト。その下にぽつんと置かれたアフリカのヴィンテージチェアが静かに佇み、まるでギャラリーの一角のような雰囲気を漂わせています。

 

この洗練されたコーナーをさらに美しく見せているのが、背景となる壁と足元のあしらいです。

あたたかみのあるラワン板の壁面を際立たせるために、廊下のブラックチェリー材からモルタル風のフロアタイルへと床材を切り替えました。

 

 

「木材どうしで組み合わせるより、異素材を加えたほうが壁が引き立ち、空間にメリハリが出ると思ったんです」という奥さまのアイデアが、この空間の完成度をぐっと高めています。

 

この「余白」の美しい空気感を損なわないよう、玄関周りの収納計画にも配慮がなされています。

広めに設計された玄関には大容量の収納を2か所設置。扉はあえて取っ手をつけず、壁と同化したフラットな白色のものを採用することで、存在感を消しています。

また、土間部分には廊下の余白とはあえてトーンを変えた、まだら模様の少し濃いモルタル風フロアタイルをセレクト。汚れが目立たないだけでなく、同じグレー調でも質感と濃淡に差をつけることで、空間にメリハリをもたらしています。

 

 

 

WICとワークスペースをひと部屋にまとめて、無駄のない間取りに

 

玄関を入って正面には、ご夫婦のウォークインクローゼット(WIC)とワークスペースが。

 

あえて扉を設けず、入り口の壁にガラスブロックをあしらうことで、抜け感のある設計に。廊下の「余白」と同じフロアタイルがそのまま地続きで広がる、開放的な空間となっています。

 

 

内部は、入り口を挟んで右側に洋服収納、左側にワークスペースが広がり、その間の窓際に作業カウンターを配置したレイアウト。

 

窓の高さに合わせて据え付けた造作カウンターは、玄関側から見える左側を「見せるスペース」とし、花瓶やレコードをディスプレイ。一方で、壁に隠れる右側のエリアは荷造りやアイロン掛けをする実用的な作業台として使い分け、すっきりとした印象をキープ。

 

 

壁際に設けたワークスペースは、包まれるようなこじんまりとしたサイズ感が落ち着く場所。

 

 

寝室との間の壁に埋め込まれたガラスブロックから優しい自然光が差し込み、コンパクトながら暗さを感じさせません。

デスクはタモ集成材で造作し、空間にジャストフィット。対して収納スペースにはあえて固定棚をつくらず「コンポニビリ」を置くにとどめることで、将来の使い方の変化にも対応できる余白を残しています。

 

 

また、洋服収納にも「IKEA」の既製家具を取り入れ賢くコストカット。造作と既製品をバランスよく使い分けて費用を抑えました。

 

 

 

小技が効いた、機能美あふれる水まわり

 

パブリック空間からいちばん遠くにある水回りは、生活感をすっきりと隠せる独立したプライベートゾーン。

 

なかでも目を引くのが、こだわりを詰め込んだ造作の洗面台です。

「機能的で見た目にも美しい『TOTO』の実験用シンクを主役に、水色のタイルを合わせました」と、奥さま。

タイルは、建築家アルヴァ・アアルトの自邸がヒント。アアルト邸の心地よい空気感を自宅にも取り入れたいという思いから選んだそうです。

 

 

また、「ふたりが並んで作業できる広さにしたかった」というご主人の希望を反映し、洗面台はゆったりとしたサイズに。

 

 

下部には収納をしっかりと設けながら、向かって右側はあえてオープンにしてスツールを置けるようにしました。朝の忙しい時間帯でも、ご夫妻が並んで身支度できる、使い勝手のよさも魅力です。

 

洗面室の奥、脱衣スペースの天井を見上げると、ご主人がどうしても譲れなかったという「懸垂バー」が設置されています。

 

 

奥さまとの相談の末、この場所へ収まった懸垂バーは、日々のトレーニングはもちろん、室内干しハンガーパイプとしても大活躍。結果的に「つくって良かった」と思える設備のひとつになりました。

 

その奥に続く浴室は、明るさと清掃性を最優先に「リクシル」のユニットバスをセレクト。すっきりと清潔感あふれる空間で、一日の疲れを心地よく癒やすことができます。

 

 

理想の住まいを形にした、ムードボードと「不満」のメモ

 

こうして玄関からLDK、プライベートな水まわりまで、隅々にご夫妻それぞれの視点が行き届いたIさまのお住まい。その住まいづくりを語るうえで欠かせないのが、奥さまが用意した「ムードボード」です。

 

きっかけは、結婚式でのちょっとした後悔。

「お花屋さんとの打ち合わせで、インスタの写真を見せながらこんな感じでと話したんですけど、完成品が私の想像とは違って。その経験を踏まえ、今回は初回の打ち合わせの前に、希望する条件とイメージ写真をまとめたムードボードを用意しました。それをお伝えしたところ、初回から上がってきた提案がすごくよくて」

 

ムードボードを通じた的確なイメージ共有は、その後の細かな仕様決めにもしっかりと活かされました。

たとえば、リノベーションの打ち合わせも中盤にさしかかった頃の、洗面室のタイルの目地選びでのこと。
「赤やピンクなど、ちょっと冒険色の強いカラーがいいなと思っていたんですが、プランナーさんから、自分が希望していた方向性の色を提案されて、すごく驚きました」と奥さま。

 

一方、ご主人が大切にしたのは、日々の暮らしの中にある「不満」を見逃さないこと。
そのとき住んでいた家のちょっとしたストレスを細かくメモに書いていたそうで、間取りや設備を検討する際は、その不満が解消されているかをチェック。

「不満」と「こういうふうに便利にしたい」という二つの軸から要望を整理し、暮らしやすさをひとつずつ形にしていきました。

 

奥さまのイメージを伝える工夫と、ご主人の暮らしの実感に基づく機能へのこだわり。ふたりの異なる視点がうまく重なったからこそ、細部まで納得のいく住まいが完成しました。

この住まいで、これからも自分たちらしい心地よい時間を重ねていかれることでしょう。

 

お忙しい中、取材・撮影にご協力いただき、ありがとうございました。

 

 

取材・文/ライター 多田千里

撮影/カメラマン 清永洋