Public&Private
この記事の見所ポイント
- パブリックとプライベートのゾーニングを分けたレイアウト。
- メインカラーは3色に絞り、家全体に統一感を。
- ご主人がデザインした造作家具で、やりたいイメージを実現。
- リビング隣のプレイルームは、壁を設置し子供部屋にできる仕様に。
- 家族だけが使うプライベートエリアには既製の収納も活用してコスト削減。
Aさまご一家が暮らすのは、緑豊かな住宅街の低層マンション。東南2面の大きな窓から光あふれるLDKは、広々として開放感いっぱいです。男の子2人の成長とともに以前のマンションに手狭さを感じ、住み替えを検討したAさま夫妻。条件としたのが“100㎡以上の広さ”と“エリア”でした。
「10年以上暮らす愛着のある街なんです。都心へのアクセスがいいのに落ち着いていて、両家の実家どちらにも近いのもよくて」とおふたり。そんな中、条件をクリアしたのがこの物件でした。「窓枠のサッシも変更できるなど、リノベの自由度が高いことも決め手になりました」
インテリアデザインのご経験があるご主人と北欧インテリアの愛好者である奥さまだけに、リノベで叶えたい要素はたくさん。当初は別のリノベ会社とプランニングを進めていましたが、デザインや価格で折り合わず、当社にご依頼くださいました。
SHUKEN Reを勧めてくださったのは、奥さまのお姉さま! 「姉もリノベーションへの関心が高くて。“ここならあなたたちの意図を汲んで要望を聞いてくれそうだよ”って」と奥さま。「フランスのインテリア様式を再現するなど細かくこだわられた事例を見て、“ここならば”と納得してお願いしました」とご主人もうなずきます。
オープンなLDKを、造作テレビボードで緩やかに区切る
3LDKだった間取りを2LDKに変更したAさまのお宅。玄関を入って右側がLDKとトイレ、洗面室の“パブリックゾーン”。左側はバスルームと洗濯室、WTCと寝室の“プライベートゾーン”というレイアウトです。
早速パブリックゾーンから拝見しましょう! まずLDKは、「家族が集まる広々とした空間」がご希望だったAさま夫妻。キッチンはオープンな造りに変更し、リビング隣の洋室の壁を取り払ってプレイスペースにしました。
リビングとプレイスペースを区切るのは、造作のテレビボード。このほかも造作家具はご主人みずからデザインされたのだとか! 「僕はイメージをスケッチしただけ(笑)。それをSHUKEN Reさんが、驚くほど細かく図面に起こしてくださって。造りもしっかりしているし、造作家具のクオリティの高さには本当に感激しました」と嬉しいお言葉をいただきました。
このテレビボード、当初は天井から配線を通す必要があるとの予想のもと、上下を貫通する柱のある造りでした。「でも天井からの配線は必要ないと判明して。それならどうしても抜け感のあるデザインにしたくて、図面を変更していただいたんです」と奥さま。
その甲斐あって、空間を緩やかに区切りつつ開放感も感じられるように。テレビ下の通気口付き扉の中にはレコーダーやWi-Fiルーターを収納しつつ、各機器のコードがすっきりと収まっています。
テレビボードの裏側は、マグネット対応のチョークボードになっています。プレイスペースは、以前から愛用のルイスポールセン「PH5」がシンボル。ここならお子さまたちもキッチンやリビングにいるご家族の気配を感じながら安心して過ごせますね。
お子さまが大きくなってそれぞれの部屋が必要になったときに、間仕切りを入れて独立した部屋にできるよう、天井下地を補強してあるのもポイントです。
1枚の写真を造作家具で再現したフォーカルポイント
Aさま夫妻が最もこだわったのが、DKの窓辺のコーナー。奥さまが「Pinterest」で見つけた1枚の写真がイメージソースになっています。「ブルックリンのタウンハウスのキッチンの写真でした。オープンシェルフの下段が長く窓辺に伸びていて、そこにグリーンが置いてあって。“これを再現したい!”と心ときめいたんです」と奥さま。
元の写真も見せていただきましたが、キャビネットもタイル壁も驚くほどの再現度! 「イメージに近い『クリナップ』の突板扉のシステムキッチンを選び、そのキッチンと同じ『デクトン』のワークトップを使ってサイドキャビネットを造作していただきました。タイルは『名古屋モザイク』です」
オープンシェルフには「イデーショップ」で購入したグリーンやお気に入りの小物をディスプレイ。常夜灯として、このコーナー専用のスポットライトをつけているのだそう。昼は光と緑に癒やされ、夜には優しい明かりが灯るこの一角が、Aさま宅のフォーカルポイントになっています。
そばに置いたダイニングテーブルは、以前からご愛用のものに白い天板を足して幅を広げた造作家具。お子さまたちも座り心地がお気に入りというハンス・J・ウェグナーのYチェアを合わせています。
家全体のカラートーンを揃え、統一感ある空間に
広々としたAさまのお宅に、いっそう軽やかな印象をもたらしているのが全体のカラートーンです。「ベースとした色は白と黒、そしてこのフローリングのホワイトウォッシュの木の色。家全体のトンマナ(デザインに一貫性を持たせるルール)をこの3色に揃えたことで統一感が出ました」とご主人。
奥さまも「目指したのは北欧っぽいけどほっこりしていない、クリーンでモダンなテイスト。好きな色やテイストはいろいろあるけれど、ここはぐっと我慢して色を絞りました」と振り返ります。
淡い色のフローリングは「望造」のBrush Oak (White Wash)。「幅の広さがイメージにぴったりでした。無垢材のような風合いも気に入っています」と奥さま。
ダウンライトを中心とした照明も空間をすっきり見せるポイント。照明プランもご主人のこだわった部分で、折り上げ天井には間接照明も仕込んであります。「ペンダントライトも好きなので最後まで迷いましたが、ごちゃごちゃしないほうがいいなと」と奥さまも納得。
白いバーチカルブラインドは、「カーテンは重い印象になるから」とご主人がチョイス。腰高窓に沿って造作したベンチは、ちょっとした腰掛けや荷物置きになり、たくさんお客さまがいらしたときにも便利なのだそう。
ご夫婦ともに使いやすいオープンキッチン
キッチンは、独立型からオープンキッチンに変更。おふたりとも料理をされるAさん夫婦の「こうしたい」が盛り込まれています。
特に念願だったのが、ご家族やお客さまと料理しながら会話が楽しめるアイランドカウンター。おふたりとも快適に使えるよう、90cmと高めを選択。「HAY」のハイチェアにもこの高さがぴったりなのだそう。
冷蔵庫を隠せるパントリーも検討しましたが、「アスコ」のブラックステンレスの冷蔵庫に出逢い、「こんなにかっこいい冷蔵庫なら隠さなくてもいいね」と現在のプランに。パントリー代わりにシステムキッチンの収納庫をたっぷり設置。ゴミ箱も隠してキッチンをすっきりと見せています。
「コンロをアイランドカウンターに設置することも考えましたが、開放感を優先して壁側にしました」と奥さま。斜め形状のレンジフードは「クリナップ」のバジェーナ。背の高いご主人も頭をぶつけにくいデザインです。
奥さまが「あってよかった」と感じているのが、カウンター横の収納庫。「クリナップ」のもので、作業台も内蔵されています。「キッチンで子どもたちのお勉強を見ることも多いので、前の家はダイニングが子どものプリント類などであふれがちで。だからキッチンには散らかったものをとりあえずしまえるスペースが絶対に欲しかったんです」
「この収納庫があるおかげで、カウンターでやりかけの宿題も開いたまましまえて、そのまままた出せるので助かっています」。カウンターとの動線がスムーズなのもポイントのよう。キッチンのプランの参考になりますね。
オリジナルデザインの洗面台が印象的
LDKの隣には洗面室とトイレがあります。こちらの洗面台は主に奥さまとお子さま用。「玄関からリビングへの動線の途中にあるので、子どもたちも無理なく帰宅後の手洗い習慣がつきました」と奥さま。
造作洗面台は、間接照明の光が大きな月を思わせる円形ミラーが印象的です。こちらもご主人のデザイン! 光沢のあるグレーのアクセントクロスも夜空のよう。「お客さまも使うパブリックなスペースとして飾り棚のようにしたかったんです」とご主人。
洗面台や収納は、LDKのキャビネットに合わせた色で造作。コストを考え、適材適所で化粧板も使っています。
夜空に浮かぶ星のような「NEW LIGHT POTTERY」のペンダントライトは奥さまのチョイス。2個の位置や長さも試行錯誤を重ねたそう。
白い壁紙と黒いタイルでシンプルにまとめたトイレ。トイレ内には収納棚を造らず、トイレ用品も洗面台収納にまとめています。ペーパーホルダーの背後はパイプスペースだそうですが、浮き上がった白い矩形がモダンな意匠のようですね。
隠し扉で、プライベートエリアをゾーニング
こちらは玄関。構造壁が入っていたこともあり、もとのままの広々としたスペースを活かしています。こちらの造作キャビネットもご主人のデザイン。「玄関からウッディな空間だと重すぎるなと思って、ここは白を中心にまとめました」。軽やかなフロートタイプの収納に間接照明を付けて、帰宅後にほっと和める空間を演出しているのもさすがです。
玄関ドア横にはご自身で「Muuto」のフックを取り付けたコートクロークも。帰宅したらここにコートをかけてカバンを置いて、カギなどの小物類はニッチに置くという動線も機能的ですね。
壁は質感のある紙布壁紙。よーく見ると境目があるのがわかりますね。実はここ、扉なんです!
扉を開けると、左手はバスルーム。右側は洗濯室→WTC→ご夫婦の寝室へとウォークスルーできるようになっています。「ここから先は家族しか使わないプライベートゾーン。だから扉も、お客さまがぱっと見てわからないくらい存在感を消したかったんです」とご主人。
このゾーニングは、お客さまを招く機会が多いというAさまご夫妻ならではのこだわり。「よそのお宅でトイレを借りたときお風呂場や洗濯室が近いと、そのお宅の日常を見てしまうようで気を遣ってしまいますよね。だからお客さまをお通しするパブリックゾーンとプライベートゾーンをきっちり分けたレイアウトにこだわりました」
ご主人が遅い時間に帰宅したときも、寝静まったお子さまを物音で目覚めさせず、お風呂からそのまま寝室へ行けるわけです! 急な来客の際、見せたくないものを避難させる場所としても重宝しているのだそう。
バスルームにも洗面台があり、こちらはご主人が主に使っています。奥さまが惚れ込んだ「デュラビット」の洗面ボウルとキャビネットに、機能的な「サンワカンパニー」の三面鏡ミラーボックスを合わせています。
バスルームと洗濯室、その向こうのWTCは省スペースできる引き戸を採用。洗濯機の前に、乾燥機が使えないものを干せるラックも設置しました。タオルキャビネットは奥さまがwebで見つけたもの。
主寝室は、カーペット敷きや造り付けのヘッドボード、シックなグレーのカーテンがホテルを思わせます。
照明もホテルライク。ヘッドボード上には間接照明があり、天井照明は通常のダウンライトに加え、顔の真上には開口径を絞ったピンホールダウンライトを採用。「寝室前の廊下にも使っているんですが、明るくなりすぎないのがいいんです。点けたまま就寝もできます」。インテリアに携わっていたご経験があるご主人ならではの照明づかいですね。
既製品の収納家具も、サイズ合わせで造り付けのように
主寝室の隣は子供部屋とWICです。元は一部屋でしたが、壁を設けてお子さま二人のWICを造りました。主寝室のクロゼットもそうですが、このWICも工事段階から「IKEA」のワードローブにサイズを合わせて壁や天井を調整してあります。「コストカットになるし、きちんとサイズを合わせてあるので既製品ぽくないでしょう?」確かにこれは造り付けみたいです!
子供部屋は、今はご兄弟でシェア。奥の本棚は造作かと思いきや、壁のニッチのサイズに合わせてwebで探した既製品なのだそう。空いた上部のスペースはご主人がDIYで塞いでいます。既成の収納家具を美しく見せるこのひと手間、ぜひ真似したいところ。
オリジナルデザインの造作家具の魅力を存分に活かしたパブリックゾーンと、既製品も賢く取り入れたプライベートゾーン。それらがしっかり分かれていることで、家族の時間も、お客さまとの時間も心地よく過ごせる住まいになっています。
最後にリノベーションを成功させるためのコツをうかがうと、「夫婦で納得いくまで目指すイメージをすり合わせること」とAさまご夫妻。「『Pinterest』でグループボードを作って、夫婦でイメージの共有を積み重ねておく。言葉よりビジュアルでコミュニケーションをとるのが絶対におすすめですよ」と教えてくださいました。
お忙しい中、取材・撮影にご協力いただき、ありがとうございました。
取材・文/ライター吉永美代
撮影/カメラマン清永洋
※こちらのリノベーション工事では特注改修がございます。
TOPページの総費用の内、一般的なリノベーション改修(内装改修工事+設備※窓除く)の他に、窓改修(約700万)と床下解体(約300万)が含まれています。