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この記事の見所ポイント
- 解消できない床の段差をスキップフロアとして活用。
- コーナー窓のあるサンルームを居心地のいいヌックに。
- キッチンと洗面スペースは2人で同時に使える広さに。
- 在宅勤務が快適にできるよう、2人分のワークスペースを確保。
- くつろぎの場を点在させて、オンとオフを上手に切り替え。
Iさまご夫妻の新居は都内のヴィンテージマンション。レトロでかっこいい外観やエントランスにほれぼれしながらお部屋へと向かいます。
お邪魔してみると、シックにリノベされた玄関は生花でいっぱい!宙に浮くようなデザインの靴箱の上に、さまざまな一輪挿しに飾られたお花たちが並んでいます。
「花器を買ったお店はバラバラなんですよ。通りがかりに手に取ることが多いので」と奥さま。どれもお花のシルエットを引き立てる繊細なデザインばかりです。
メインのリビングはシックでありながら、想像以上の明るさと開放感。右奥のコーナー窓からたっぷりと光が入り、視線の抜けも抜群です。実はこのコーナー窓が、この物件を選んだ決め手だったのだとか。
もともと都内にお住まいだったIさまは、コロナ禍でお2人とも在宅勤務になったのを機に、郊外の賃貸アパートへ転居。その後もリモートワークが定着したため、便利な都内に戻って持ち家を、と考えるようになったそう。
「新築マンションは高額だし、リフォーム済みマンションは自由度がないし…と考えたとき、自然と中古マンションリノベに行き着きました。こちらの物件はコーナー窓が唯一無二と感じて、ほぼ一目惚れでしたね。
リノベ会社は3社を検討しましたが、いちばんイメージに合っていたのがSHUKEN Reさんでした。ナチュラル系やインダストリアル系などに偏っていなくて、作風が幅広いという印象。設計・施工が一貫なのも安心感がありました」
スキップフロアでLDをゾーニング
広々としたリビングダイニングで真っ先に目を引くのは、床に段差がついていること。実はこの物件はもともと廊下側の床が高く、LD側が下がっている構造で、その段差を解消できないのが悩みどころだったといいます。
「元の構造のまま、LDの入り口を段差にする手もありましたが、どうしても違和感が残りそうだなと。それなら思い切って部屋の真ん中に段差をつければ、あえて作ったスキップフロアみたいになるかも?と考えたんです」
廊下からダイニングまで床をフラットにつなげ、リビングとの間に段差を設定。DKとリビングがさりげなくゾーニングされ、ちょっと腰掛けるのにもちょうどいいスキップフロアが生まれました。
「友達を招くと自然とここに座る人が多いですね。ずらっと4 人並んでゲームをしたことも(笑)。“仕方なく段差がある”のではなく、“空間に変化がついて積極的に使える段差”になって大成功でした」
“変えられない部分をあえて生かす”アイディアはほかにも。壁面にあった撤去できない梁は、間接照明を組み込むことでモダンなインテリアに。
床の段差の下に採用したフットライトとともに、ホテルのようにくつろげる雰囲気を醸し出しています。
インテリアのイメージはノルディックモダン。明るいナチュラルカラーの床と柔らかなグレージュの壁をベースに、黒を差し色に使って空間を引き締めました。
壁の一面に使ったのは「サンゲツ」のクロス。一見すると織物のように見える個性的なデザインです。
「バタフライチェア」は新居でぜひ使いたかったアイテムだそう。見た目に美しく、ゆったりリラックスできる名作家具です。
ソファは「クラスティーナインターファニチャー」。リビングの入り口に配置すると決めていたため、圧迫感が出ないよう、片側のアームレストがないタイプを探しました。
モダンな黒のテーブルは「EcoSmart Fire」。中央にエタノールオイルのタンクがあり、本物の火を楽しむことができる製品です。
「マンションでも暖炉のある暮らしを楽しめるのがいいなと思って。炎を見ていると癒されます。私たちはキャンプも好きなのですが、自宅で焚き火をしている感覚も味わえます」
ヌックで日向ぼっこや読書を満喫
リビング奥のヌックは、明るく伸びやかなサンルーム風の空間。ゆったりくつろげるよう、シングルベッドほどの高さ×奥行きのベンチを造作しました。ベンチの下は引き出し収納。キャンプ用品などのかさばるものも丸ごとしまえます。
「横になったとき、周囲の建物は壁に隠れて、空だけが見える高さにしてもらったんです。おかげで気持ちよく日向ぼっこができて、仕事中の休憩にもぴったり。夜はここで本を読むのが至福の時間です」
壁面には存在感のある黒のシェルフを造作。レコードや観葉植物の鉢など、収めたいものに合わせてグリッドを決めたことで、飾ったものが絵になる収納スペースが完成しました。
「ベンチもシェルフも造作なのでコストはかかりましたが、いちばんのお気に入りスペースができたので、しっかり予算を割いて正解でした」
2人で立ってもゆとりのある水回りを
スキップフロアを一段上がったダイニングも北欧モダンな雰囲気。驚くのは家具のブランドで、「カリモク」のチェアに「ニトリ」のテーブルと「IKEA」の照明を組み合わせているのだそう。このおしゃれな空間にあるとプチプラには見えません!
シェルフの上にはペットの「ベタちゃん」が。水のろ過装置が要らない観賞魚ということで、筒形のガラス花器でお世話しているそう。優美に泳ぐ姿に癒されます♡
家事を分担されているご夫妻は、お2人で同時に作業しても狭くないキッチンを希望。カウンターと背面収納の間にゆったりした空間があり、リビングとの一体感も味わえるペニンシュラキッチンを実現しました。
キッチンはショールームで一目で惹かれたという「ウッドワン」の製品。シンクやカウンターに丸みがない、角張ったデザインが決め手になったそう。
壁面の白いタイルは「名古屋モザイク」。すっきりとしたシンプルモダンな表情が魅力です。
手持ちのカップボードと冷蔵庫を収めるため、キッチン奥にはパントリーを設けました。電子レンジなどの調理家電もこの中に。生活感を与えがちな要素をすべてパントリーにまとめています。
「洗面スペースも2人で同時に使いやすいように、脱衣室ではなく廊下にプランしました。カウンターとミラーも大きめにしたので、並んで身支度ができて快適です」
カウンターは「アイカ工業」の製品を使って造作。洗面ボウルと水栓、ミラーボックスは「サンワカンパニー」で。
「水回りが廊下にあると、ゲストに使ってもらいやすいのもメリットですよね。生活感のある脱衣室をお客さまに見せなくて済みますから」
こちらが脱衣室兼ランドリールーム。機能性を優先して収納をたっぷりと設け、入浴・洗濯用品からタオル、パジャマ、下着までまとめています。
浴室は「タカラスタンダード」のユニットバス。天井などのポイントに黒を採り入れ、正面の壁は洗面台と同じテラゾー柄に。水回りにさりげない統一感をもたせました。
トイレは「TOTO」。トイレットペーパーのストックなどをしまう棚は、手前に目隠し板を立てたのがポイント。しまったものが丸見えにならず、上から出し入れするだけの賢いアイディアです。
洗面カウンターのお隣には、愛らしいチェスト+照明のコーナーが。チェストは北海道の家具メーカー「柿の木坂 匠」、真鍮のペンダントは「POINT NO.39」で見つけました。
「ここは2人とも毎日かならず使いますし、ゲストの目にも触れる場所なので、ゆとりを感じられるようにしたくて。ペンダントの光がきれいに反射するように、あえて袖壁をつけてコの字型に囲んだんですよ」
一般的には扉つき収納などにしがちな小さなスペースを、ディスプレイに生かしたのが功を奏し、通るたびに目が留まるコーナーに。美しい洗面カウンターとともに、インテリアを堪能できる空間になりました。
オン/オフの切替えができる間取り
お2人とも在宅勤務をされているIさまにとって、新居はお仕事の場でもあります。それぞれがオンライン会議をすることも多いため、2人分のワークスペースはマストだったそう。
ご主人のワークスペースは、元の間取りをそのまま生かした個室。壁に深いグリーンのクロスをあしらい、落ち着いてお仕事に集中できる空間を作りました。
「使いたいデスクが決まっていたので、その高さに合わせて窓際の収納を造作してもらいました。コンセントは天板のすぐ下に設置。コードが床まで垂れ下がることがなく、抜き差しもしやすくて便利です」
奥さまのワークスペースはリビングの一角。なんとソファの裏側に隠れていました。言われなければまったく気づかない、文字通り隠れ家のようなスペースです。
「朝ごはんが終わって身支度したら、『じゃあね、行ってきます』と言って各自のワークスペースに入ります。ランチも一緒にとって、夜になるとどちらかが夕食を作って…というのが、私たちの生活スタイルです」
夕食後や休日には、寝室で映画やスポーツ配信を楽しむことも。「popIn Aladdin」のプロジェクター内蔵シーリングライトと「リリカラ」のプロジェクター用壁紙を採用し、ゆったりと余暇の時間を楽しんでいるそう。
寝室には室内窓も採り入れて、明るさと風通しに役立てています。ちなみに室内窓の裏側は…
玄関の土間収納でした。こちらは寝室の面積を少し削って確保したスペース。現在は自転車を置いているほか、キャンプ後に汚れたギアを一時置きするのにも便利だそうです。
「たまに出社する以外は、2人で朝から夜まで家で過ごす生活。だから住まいに求めるものは多いほうだったと思います。
今はそれぞれのワークスペースでしっかり仕事して、休むときはリビング、ダイニング、ヌック、寝室など、いたるところでくつろげます。オンとオフの切り替えが自然にできることが、今回のリノベで一番満足しているポイントですね」
理想的なワークライフバランスを実現されているIさまご夫妻。素敵なインテリアはもとより、在宅ワーク重視で中古リノベを考えている方にも、ぜひ参考にしていただきたいお住まいでした。
お忙しい中、取材・撮影にご協力いただき、ありがとうございました。
取材・文/ライター後藤由里子
撮影/カメラマン清永洋