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この記事の見所ポイント
- バスケットウィーブやチェッカーなど遊び心溢れるタイル床
- 細部までこだわったオーダーメイドキッチン
- 個室の用途に合わせて壁や床材に変化を与える
- 床を底上げしても目立たせない工夫
- ドアノブやストッパーなど真鍮を使い空間を上品に
SHUKEN Reでは不定期にリノベ物件の見学会を開催しているのですが、参加した皆さまが「住みたい!」とおっしゃっていたのが、今回お邪魔したKさま邸。全体的なプランニングだけでなく、細部にもこだわったつくりは必見です!
Kさまのご自宅は、ご両親が住まわれているマンションの一室。ご実家であるマンション上層階にご両親が住み、1階の空き物件にお住み替えされました。
リノべーションのきっかけはコロナ禍で起こった生活の変化でした。「リモートワークとか生活が簡単に変わることを目の当たりにして、今を生きなきゃダメだと思って」とKさま。
そこで、まずは夢だった山中湖にセカンドハウスとして平家を建てられたそう。
「家を建てたというより、どちらかというと、自然豊かな土地の神様に許可を頂いて、森の中に一時的に仮住まいをさせて頂いている」
そんな感覚を手がかりに、平家はすべて自然素材を使用。
これが今回のリノベのテーマにつながります 。
家プロジェクト第二弾はマイホーム。
「山中湖の家とはぜんぜん違ったアプローチでいこうと思ったんです 。文明を取り込むというか。タイルや塗装、カーペットなど。 あと、幼少期をアメリカで過ごした影響からか、居心地が良いと感じる空間の原点が少しアメリカに寄っていると思います」。
外資系企業でスペースプランニングのお仕事をされているKさまは、その経験を活かし友人の方と一緒に平面図や配線図を弊社に来る前に完成させていました。すごい!
「SHUKEN Reの担当された方の人柄が良くて、気持ちよく一緒にやってくれるだろうなと思ってSHUKEN Reに決めました。プランを実現させるための提案など、忍耐力を持ってやってくれて。私と友人と担当者の方3人チームで作ったと思っています」。
床の変化を楽しめる多彩な空間
MARAZZI社のチェッカータイル床がダイニングキッチンを飾ります。
「将来自分が年齢を重ねていくことを念頭に空間づくりに向き合ったつもりです。どんなおばあちゃんになりたいかなって。おばあちゃんがチェッカータイルの上で料理していたらかっこよくないですか?」
かっこいいです!!
取り替えたL型キッチンと今回新たに設けたアイランドキッチンは全て特注。「配線上動かせないので、キッチンが目立つことがわかっていました。目立つなら、こだわろうかなと」。
チェッカータイルに合うキッチン家具の色選びから始まり、引き出しの配置、ハンドルの材質や位置などこだわり満載!
アイランドキッチンの天板・壁に取り付けられた大判タイルは制作したサンタ通商も初めての試みで、タイルの重さに構造上耐えられるか何度も話し合いがもたれたそうです。
シンクはKOHLER社のもので、経年変化を楽しめるホーロー製。独特のフォルムが美しい蛇口もKOHLER社製です。
Kさまはアイランドキッチンのハイスツールに座って見える景色を眺めながら朝食を取るのがお気に入り。私たちも勧められ実際に座ってみると、真っ直ぐに伸びる一枚板のアイランドキッチンを軸に、床のチェッカータイルやリビングへの視界の広がりがとても気持ちがいい!
お気に入りだとおっしゃる気持ちがわかります。
くつろぐためのリビングの床はカーペットに。海外から取り寄せたソファカバーを取り付けて自分好みにしたソファで横になって読書をされるそうですが、居心地良すぎて寝ちゃいそうです(笑)
Kさまが幼少期を過ごしたアメリカでは、フロアランプやテーブルランプが家の明かり取りとしては一般的だったようで、天井のダウンライトも必要最低限の明るさに抑えられるよう、明るさを調整できるようになっています。リビングの中心にあるフレイム社製のペンダントライトも素敵!
床材の変化を楽しめるKさま邸ですが、見切りはあえて取り付けていません。
「SHUKEN Reさんのようにしっかり施工してくれるなら、あえて境目を隠さなくてもいいかなって」と嬉しいお言葉をいただきました!
そんな癒しの空間で一際目立つのが、リビングからダイニングキッチンに枝を伸ばしている巨大なウンベラータ。
「ここにくる前に購入した初めての観葉植物で、樹齢が私と同い年くらいということもあり大切にしています」。
そんな運命を感じてしまうウンベラータを、ここに置くことを想定して天井付けのピクチャーレールを設置し枝を固定しています。
ダニングキッチンから寝室へ。東南の角部屋かつ2面彩光。家の中で一番明るい部屋です。床はリビング同様くつろげるようにとカーペット。壁の色はグレーがかったオフホワイト。外光が三分艶の壁に反射し、やわらかな光が室内に広がります。
お仕事柄、海外とのやりとりも多いとのことで、寝る直前にPC作業ができるように部屋の大きさに合わせた特注サイズのデスクを設け、壁にはLANケーブルの差し込み口などを取り付けました。
扉の色は壁に合わせていて、外側と内側で色を変えているのも一体感があっていいですよね。
クローゼットスペースには今の時期に着る服を収納し、季節に合わない服はストレージに収納することで、すっきりさせています。衣替えも簡単にできて便利。
仕事とプライベートの間に余白を置く
ダイニングキッチンに戻りましょう。アンティークのウェグナーの椅子に座るとワークスペースとストレージの間にある廊下へと真っ直ぐ空間が広がります。
「空間には抜けが大切だと思っていて、あえて意図的に作られた何も目的をもたない空間にしたかったんです」。廊下の奥には北欧のビンテージ家具や、額装された奈良美智さんのポスターが飾られています。
そんな廊下の左側はワークスペースになっていて、寝室同様、壁の塗装にはアメリカのベンジャミンムーア社製のペンキが使われています。Kさま邸は白を基調としていますが、この部屋はオリーブ色を使用。気持ちの切り替えにも効果があるそうです。
海外のお家は部屋ごとに色を変えることが珍しくなく、Kさまのご自宅も個室であるワークスペースと寝室は色を変えています。
幅1.5mもある仕事用テーブルは一目惚れして購入されたもの。
「プランがまだ固まっていないときに、こんなに天板が大きい作業デスクはなかなかないと思って買っちゃたんです。なので、このデスクが入るようにワークスペースは設計しています」。運命を感じた家具に合わせて壁の位置を決められるのもリノベーションの魅力の一つですよね!
ワークスペースから廊下を隔ててあるストレージは収納棚が3列もあり大容量。必要なものは各部屋の収納に収め、それ以外をここに集約しています。
動線も余裕があって圧迫感がありません。既製品の棚のサイズに合わせ壁を設置し、上部も天井までの隙間を埋めるように造作棚を設けました。手すりは持ち込みの真鍮で造作のよう。
洗濯物を干すため、南側の扉はガラス張りにし彩光を確保し、玄関から伸びる廊下とつながっているため風が通るようになっています。真ん中の棚裏面は鏡を設置していて無駄がありません。
洗濯機がストレージにあるのもKさま邸ならでは!洗濯をして、干して、造作のアイロン台でシワを伸ばせばワンストップで済みます。
これを実現させるため、洗濯機の排水ができるよう全体的に床を上げています。
お施主さまの想いが見える場所
玄関が2段框になっているのも床を全体的に上げているため。バスケットウィーブタイルが段差を柔らかく見せます。ホールをなくした分、奥行きを感じさせる玄関は訪れた人の心を鷲掴みにすること間違いなし!
玄関扉はキッチンも手がけた輸入メーカーのサンタ通商によるオーダーメイド。自宅に仕事関係の書類が届くこともあるため、ドアポストは設けず玄関に落ちるようになっています。海外映画やドラマで帰宅した人が床に落ちた郵便物を拾うシーンを見ますよね。
玄関廊下のフローリング材はKさまが通うお気に入りの家具屋さんの床材と同じものを選ばれました。リノベーションをすることになった際にお店の方に教えてもらったんだそうです。
サンプルで選ぶのを苦労される方が多いですが、素敵だなと思ったお店で実際使われているのを見て建材を決めるっていいですよね!
ドアストッパーやノブなどにもこだわり、真鍮を素材としたオリジナルデザインの金物ブランドPASSAGE DUVEのものを採用。ところどころに使われており、真鍮が好きなKさまならではのこだわり。
空間を上品に演出するだけでなく経年変化も楽しめます。
当初、廊下に面していた個室のトイレと浴室、オープンだった洗面室を、壁を設けて一つの空間にまとめました。トイレを個室にするのを避けたかったKさまは、洗面室と一体化させて圧迫感のない場に。
トイレと洗面室を隔てていた壁をなくしたため1つの空間に窓が2つになり明るい印象も与えます。床や壁面のタイルはもちろんMARAZZI社。
造作洗面台は空間に軽さを持たせるため、洗面台やオープン棚は浮かせて生活感を感じさせないおしゃれな場になっています。
浴室の壁もMARAZZI社のタイルを採用し、グレーを基調とした落ち着いた雰囲気に。洗面所との境は扉ではなくカーテンにしたことで掃除も楽ちんです。
水回りの入り口を一つにし、一体感のある空間にしただけでなく、廊下側もまっすぐ奥に伸びすっきりとした印象を与えます。
玄関から見て突き当たりに飾られた絵はKさまが一目惚れしたというマックス・ローレンスの作品。
「人生で初めて買ったアート作品で。この家のために購入しました。
玄関はお客様が最初に目にする大事な場所なので」
作品を照らすのはフレーム社のコットン生地のランプシェードです。
ストレージに洗濯機を置いたり、照明の使い方、意図せず海外の建材が多く使われていたりなど、
「原体験はアメリカにある」とご自身もおっしゃるように思春期を過ごしたアメリカの影響を感じられるKさま邸。様々な表情を見せて、ワクワクさせるパワーを感じます!
このリノベーションで新たな発見があったと話してくれました。
「奈良美智さんが描く女の子にどこか共感するところがあって。理由は分からなかったんです。このリノベをすることになって実家に帰っていたときに、私が幼い頃の写真を両親から受け取って。その中の1枚の写真に写っていた幼い時の私の不機嫌顔が奈良さんの描く女の子にそっくりだったんです。そうか、奈良美智さんのアートは、あの不機嫌顔から歴史を積み重ねてきた人生の軸跡の象徴なんだと。人生を見つめ直した結果始めたリノベーションにもつながっていますよね」。
Kさまの原点を再発見するお手伝いができて私たちもとっても嬉しい気持ちになりました!
お忙しい中、取材にご協力いただき、ありがとうございました!
取材・文/ライター淺見良太
撮影/カメラマン清永洋