実家を住み継ぐ
高い天井が開放的で、ロフトからたっぷり光が差し込む明るいLDK。この日おじゃましたのは、千葉県に暮らすM様ファミリーのお住まいです。
こちらは現在30代の奥様が小学1年生のときに新築したご実家とのこと。以前の様子を知っている人はみんな、この吹き抜けとロフトのあるLDKにびっくりするそうです!
立派な梁が行き交う吹き抜け空間ですが、以前はここが天井板でふさがれ、ごく一般的な天井高の部屋でした。
天井裏には、はしごで上り下りする屋根裏収納があり、「重い物は持って上がれないし、すごく使いづらくてほとんど使っていない状態だったんです」と奥様。
天井板を撤去して、既存の屋根裏収納をロフトにするという大胆な工事で、現在の吹き抜けのLDKが生まれたというわけです。
奥様のご実家の2階をリノベ
もともと二世帯住宅のつくりで、1階におじい様&おばあ様が、2階にご両親と独身時代の奥様&妹さんが暮らしていたこちらのお宅。
ご結婚を機に一度はこちらの家を離れた奥様でしたが、おじい様&おばあ様が施設に入ることになり、1階をご両親、2階を奥様のご一家の住まいにすることにしたそうです。
奥様が小学生の頃から暮らしていたなじみ深いご実家を、ご自身の家族と暮らすためにリノベーションする――。とても素敵なことですね!
そうそう、オーソドックスなフォルムとチェック柄がかわいいソファは、おじい様&おばあ様が使っていたものだとか。お孫さん一家が引き継ぐことになり、おふたりも喜んでくれたに違いありません。
以前の住まいは床や建具などが濃いブラウンで、部屋が暗く感じられたそう。「リノベでは絶対に明るい色の床材にしたかった」と奥様。
最終的に選んだのは、キッチンの側面部分の仕上げに使ったモルタルと相性のいい色味の床材。「プランナーさんが見つけてくれたのですが、ほかではあまりない感じの微妙な色合いが気に入っています」。
キッチンは奥様のこだわりがたっぷり詰まったスペースです。「パナソニック」のシステムキッチンは、「横並びの三口コンロ」が決め手になってチョイスしたもの。
「料理中に下の子が鍋やフライパンの持ち手に触れてひっくり返しそうになったことが何度かあって、鍋やフライパンの持ち手がカウンターからはみ出さない三口コンロを採用したかったんです」。
当初はキッチンカウンターに手元を隠す立ち上がりをつける予定だったそう。
でも、「新築した友人から『掃除がすごくラクで、机を拭くみたいスーッと拭けるよ』『立ち上がりの側面部分を掃除しなくていいんだよ』って言われて(笑)、フラットに変更しました」。ご友人の言葉、説得力ありますね!
モルタルでクールなキッチンに
ナチュラルなテイストが好みの奥様でしたが、インスタグラムなどでさまざまな施工事例をチェックするなかで、ハードな雰囲気も気になるように。
「モルタルをどこかに使いたい」という希望は、キッチンの側面部分をモルタル仕上げにすることで実現できました。
側面にはご家族4人の手形をペタッ!「一戸建てを新築した人のブログを見て、わが家でもやりたかったんです(笑)」。
キッチン背面のカップボードも奥様のお気に入り。「キッチンというより家具っぽい雰囲気のものを置きたくて、プランナーさんが『ウッドワン』のものを提案してくれました」。
ちなみに、白い引き戸の奥は家族の寝室です。「LDKの隣に寝室があるので、朝起きたらすぐにアクセスできるし、夜、子どもたちが寝ていても、引き戸を開けておけば様子がわかります」と奥様。
ご主人は仕事で帰宅が遅いことが多いそうですが、お子様たちが先に寝てしまっても、寝顔を見ながら夕食をとれるところも気に入っているとか。
「どこかに採用したかった」というアーチ開口は、パントリーの出入り口に実現。入るたびにワクワクするようなパントリーになりましたね!
パントリーの内部はこんな感じです。とってもきれいに整頓されていました~。右手の窓は玄関ホールの吹き抜けに面していて、1階のご両親と2階のM様で玄関は共用しています。
回遊動線+パントリーが便利!
キッチンは既存から大きくレイアウトを変更しています。担当プランナーは、「パントリーからキッチンに入る動線を確保できると使い勝手がよくなりそう」と考え、現在のレイアウトを考えたとか。
キッチン隣接のパントリーは、そのままホールにも抜けられるウォークスルー型。キッチン→パントリーという動線だけでなく、2階ホール→パントリーという動線も確保されているので、スーパーなどから戻ったときにとても便利です。
こちらは、先ほどチラッと出入り口だけご紹介した寝室です。ご主人からリクエストのあった本棚は、この部屋の奥に実現することができました。
リノベはほぼ奥様主導でしたが、ご主人からのリクエストを叶えた部分がもう1つ。家族みなで使えるワークスペースです。LDKから子ども部屋やWICにつながる廊下の途中に設けました。
ここで、ワークスペースの床にご注目! 曲線デザインをとり入れたステップがついているんです。リノベの計画前にM様は新築物件を内見したことがあり、その家がスキップフロアの間取りだったそう。
そのイメージがどこかに再現したいと考えた奥様。2段分のステップの形で実現することができました。
ワークスペースのデスクまわりはこんな感じ。昼はお子様がお絵描きや宿題に使って、夜はご主人が持ち帰り仕事をしたり、奥様がリースやハーバリウムなどのクラフトに取り組んだりと、1日中大活躍しているそうです(よかった♡)。
左手には、クラフトの道具や材料をたっぷりストックしておける収納スペースも。
ワークスペースの背面側の壁には、お子様のお絵描き作品などを素敵にディスプレイ。「ホールからLDKに入ったときに視界に入りにくい場所なので、多少ごちゃごちゃしてもいいかなと飾るスペースにしました」。
こちらは、LDK隣接のランドリールームです。奥様念願のスペースで、特にガス乾燥機と洗い物専用のシンクが欲しかったのだとか。
ランドリールームで家事ラク!
洗濯物はほぼ乾燥機で乾燥して、使用NGのものはここに部屋干ししているため、洗濯がすべてこの空間で完結するという、夢のようなスペースです!!
「子どもがまだ小さくて目が離せないので、洗濯物を干すために屋外に出なくてよく、安心です」と奥様。造り付けのカウンターは、洗濯物をたたんだり、アイロンがけをするのに重宝しています。
こちらは洗い物用のシンクです。ゴールドの水栓が、クラシカルな感じで素敵ですね♡ デンマークのインテリアブランド「HAY(ヘイ)」のタオルハンガーもいい味出しています。
ランドリールームは、ドアの代わりに目隠し用のカーテンをつけて出入りしやすくしました。右手の白いドアの奥はトイレで、既存のブラウンの室内ドアを真っ白にペイントして再利用しています。
トイレはヘリンボーン柄のフロアタイルが素敵な空間。LDの床をヘリンボーンにしようかと迷った奥様でしたが、コストが上がってしまうため、そのイメージをトイレで実現することにしたそう。コストを予算内におさめるためには、そんな発想も大事かもしれませんね!
トイレとランドリールームの延長線上には、浴室、洗面室、WICがあります。こちらは洗面室の出入り口。隣接するWICへ2wayの動線が確保されているのが便利です。
「洗面室は“異空間”みたいな感じにしたかったんです」と奥様。造作の洗面台のカウンターは石の質感がリアルに表現された人造大理石製、ミラーは真鍮製。ナチュラル系でまとめたほかにスペースにくらべて少しハードな内装が、ホテルみたいでカッコいいです。
隣接のWICから洗面室を見るとこんな感じに。身支度がスムーズな間取りになっています。ミラーを掛けた部分の壁には、奥様がどこかに使いたかったという「ウィリアム・モリス」の壁紙を採用。
「誰も見ないんですけどね」と笑いますが、おかげでご自身の気分が上がるクローゼットになったのではないでしょうか~。
WICは、コスト調整のためにハンガーパイプと棚板だけのシンプル&オープンなつくりにしたそう。ファミリークローゼットとして家族の衣類をすべてまとめているので、ランドリールームから洗濯済みの衣類を戻す作業がスムーズです。
リノベで住まいの悩みを無事解決!
リノベ中、印象的なことがあったという奥様。「既存のキッチンのタイル部分に、数枚だけ私と妹が描いた絵をあしらったタイルがあって、キッチンの撤去の過程で割れてしまっても仕方ないと思っていたんです」。
「でも、職人さんがキレイに残しておいてくれて、枠まで付けてくれて母と私に返してくれて……。感動でした。それだけでも、SHUKEN Reさんにお願いしてよかったと思いました(笑)」。
入居からおよそ半年。「住み心地はすごくいいです」とおっしゃってくださった奥様。
「特に気に入っているのはキッチンと洗面室です。料理をするときに必要なものを広げておきたいタイプなので、キッチンの作業台が広くて全部出しておけるのがうれしくて」。
リノベ前は廊下がとても寒かったのが悩みのタネで、「廊下が最小限の間取り」を希望。「検討していたリノベ会社の中で、最初からそれをしっかり反映したプランを出してくださったのがSUKEN Reさん」。
「2階のホールに階段からの冷気をシャットアウトできる引き戸や、家じゅうの窓に追加したインナーサッシのおかげで、今年の冬は暖かく過ごすことができました」。
今後は、収納スペースになっているロフトを整えて、大人がのんびり過ごしたり、子どもが秘密基地のように遊んだりできるスペースにしたいと考えているそう。1階に暮らすご両親も、今回の工事がきっかけでリノベに興味津々とか。
1軒の家を、その時々の家族の状況にフィットするように手直ししながら住み継いでいく――。M様邸の10年後、20年後が楽しみです。
お忙しい中、取材・撮影にご協力いただき、ありがとうございました。
取材・文/ライター志賀朝子