公開日:2024-10-14 更新日:2024-12-13
旧耐震基準マンションの購入|物件選びの注意点、建て替え・倒壊リスクや住宅ローンについて
1981年5月以前に建築確認を受けたマンションは「旧耐震基準」と呼ばれ、一般的には「地震に弱い」「買わない方がいい」とされています。
しかし、旧耐震基準マンションの中にも性能面で問題のない物件もあります。
そこで今回は、旧耐震基準マンションの市場動向やデメリット・注意点とその対策、メリット、物件選びのコツを紹介します。
中古マンションの購入やリノベーションを検討している方はぜひ最後までご覧ください。
● 旧耐震基準マンションを買う際には、注意しなくてはいけないデメリットがあります。
● 物件選びのポイントを押さえれば、旧耐震基準マンションの購入を失敗しません。
● 築年数の古いマンションを購入したい方は、物件価格とリノベーション費用のトータルコストを踏まえて資金計画を立てられるSHUKEN Reの「ワンストップリノベーション」がおすすめです。
目次
旧耐震基準のマンションとは|どのくらい現存している?
旧耐震基準マンションのリノベーション事例を見る:Case172「Quotes」
旧耐震基準建物とは、1981(昭和56)年5月31日までに建築確認を受けた建物を指し、昭和56(1981)年6月1日以降に建築確認された建物は「新耐震基準建物」と呼ばれています。
旧耐震から新耐震へ建築基準法が改正されたきっかけは、1978年に発生した宮城県沖地震による建物への甚大な被害です。
この地震被害を受けて、建物の耐震基準を大きく見直す必要性が出ました。
旧耐震基準と新耐震基準では、耐震性に明らかな違いがあります。
旧耐震基準 | 「震度5程度の中規模地震に際し、倒壊あるいは崩壊しない」性能を持つ |
新耐震基準 | 「震度6強~7程度の大規模地震で倒壊・崩壊しない」性能を持つ |
その後、2000年には新耐震基準における耐震性能がさらに強化されて「2000年基準」ができましたが、こちらは木造住宅に関する変更が主で、マンションに関する大きな規定変更はありません。
ちなみに、全国のマンションストック数(既存マンション戸数)約694万戸のうち約103万戸、マンション数の多い東京都内では全体の約22%が旧耐震基準であるというデータもあります。(参考:東京都住宅政策本部|マンションストックの状況)
また、新耐震基準であっても建築基準法改正から既に40年以上経っていることから、新耐震基準マンションであってもメンテナンス不足によって構造躯体が劣化して耐震性に問題のあるマンションが増え始めている現状は否めません。
旧耐震基準マンションは最近建てられたマンションと比べると耐震性の低い可能性があります。
1995年に発生した阪神淡路大震災では、122棟のマンションに建て替えなくてはいけないほどの被害があったと報告されています。(参考:大阪市|地震によるマンションの被災)
また、2011年に発生した東日本大震災では、東北6県で倒壊など建て替えを要する規模の被害はなかったものの、外壁材の脱落や亀裂など大規模修繕しなくてはいけないマンションが26棟にも上りました。
地震による建物被害は震源地との距離や地盤の性質によって左右されるため、被災マンションが全て旧耐震基準とは言い切れません。
しかし、近年大規模な地震が多発しており、南海トラフ地震や首都直下型地震などの発生も懸念されていることから、中古マンションを選ぶ際は必ずその耐震性も確認しましょう。
旧耐震基準マンション購入のデメリット・注意点
旧耐震基準マンションのリノベーション事例を見る:Case100「ノーブル・ブルックリン」
旧耐震基準マンションは「買わない方がいい」と言われるのが通常です。
その理由は、いくつかのリスクにあります。
地震被害が大きくなる可能性がある
旧耐震基準は現行の建築基準よりも耐震性が低いため、建物そのものが地震被害を受ける可能性があります。
過去の大地震では旧耐震基準マンションを含め、倒壊被害を受けたマンションはほとんどありません。
しかし、万が一全壊や半壊を免れても、以下のような被害を受けやすい可能性があります。
- ・高架水槽や受水槽の破損による長期的な断水
- ・屋外埋設管の破断によるライフラインの断絶(電気・ガス)
- ・揚水ポンプや雨水排水ポンプ故障による水害
- ・エレベーターや共用階段の故障、玄関ドア枠の歪みによる閉じ込め
住宅ローンの審査に通らない可能性がある
旧耐震基準マンションを購入しようとしても、住宅ローンの審査に通らない可能性があります。
ローン審査は主に契約者の状況(年収・年齢・勤務先・勤続年数・健康状態など)と、物件の担保価値(資産価値)が審査されます。
担保価値とは、債務者の返済が滞った場合に対象物件の売却益で残債を補填できるかどうかの判断材料です。
旧耐震基準マンションは一般的に担保価値が低いと判断され、融資可能額が極端に低く見積もられてしまう可能性が高いでしょう。
住宅ローン控除を受けられない可能性がある
住宅ローン控除は、マイホーム購入者の負担を減らして持ち家率を高めるための減税制度です。
中古マンション(既存住宅)の購入で住宅ローンを利用すると、以下の条件で所得税もしくは住民税が年末時点のローン残高「0.7%分」減額されます。
対象借入額 | 長期優良住宅など省エネ性の高い住宅:3,000万円まで
その他の住宅:2,000万円まで |
最長控除期間 | 10年間 |
物件の条件 |
|
対象者の条件 |
|
(参考:国土交通省|住宅ローン減税)
注意すべきは「1981年以降に建築されていること」、つまり新耐震基準建物が対象という点です。
そのため、耐震補修や耐震改修をしていない旧耐震基準のマンションを購入しても、住宅ローン控除は受けられません。
修繕積立金が高い
マンションの修繕積立金は共用部、ひいてはマンション全体の性能や価値を維持するために欠かせません。
全国平均額は「13,300円/月(単棟型・駐車場使用料等からの充当額を含む)」ですが、築年数が経つほど金額は値上がりしていくのが通常です。(参考:国土交通省|令和5年度マンション総合調査結果)
なぜなら経年劣化によって修繕範囲は拡大していくからです。
ところが、国土交通省の調査では築年数の古いマンションほど住民の高齢化などにより未回収率が高い傾向も見られます。
修繕積立金の慢性的な未回収状態が続いていると、共用部のメンテナンスが行き届かず、劣化が進んでいる恐れもあるため注意してください。
共用設備が不十分な物件も多い
旧耐震基準マンション、つまり築40年を超えているマンションは、以下の共用設備が整っていない物件も少なくありません。
- ・24時間ゴミ置き場
- ・オートロック
- ・エレベーター(あっても台数が少ない物件も)
- ・宅配ボックス
- ・電気自動車充電設備
「あるのが当たり前」と思っていても設置されていない可能性があるため、必ず内覧の際などに共用設備も確認しましょう。
専有部の配管・電線が劣化している可能性がある
共用部のメンテナンスが行き届き劣化がそこまで進んでいなかったとしても、専有部分も同様とは限りません。
壁内や天井裏、床下にある設備配管や配線が既に寿命を迎えている可能性があります。
種類 | 耐用年数(寿命) |
---|---|
給排水管 | 15〜25年 |
ガス管 | 30年程度 |
電気配線 | 20〜30年 |
LANケーブル | 20〜30年 |
そのため、一見きれいに見える部屋でも隠蔽部までフルスケルトンリノベーションしなくてはいけないかもしれません。
断熱性が低い
旧耐震マンションの中でも1979年までに建てられた物件は、断熱性が特に低いかもしれません。
なぜなら、1980年に省エネルギー基準(旧省エネ基準)が初めて制定されたからです。
1979年に住宅金融公庫の仕様書に「断熱工事」という言葉が初めて明記されるまでは、建物の断熱性能はあまり重視されてきませんでした。
そのため、旧耐震基準マンションの中には窓周りの結露がひどいなどの現象が起こっている物件も珍しくありません。
建て替え計画が始まっている可能性がある
マンション建て替え計画が始まってから実行されるまで10年以上かかるケースも少なくありません。
そのため、購入したい物件が既に計画途中の可能性もあります。
2002年のマンションの建替え等の円滑化に関する法律(通称:マンション建替法)制定を機に、法的なハードルが減り建て替えを計画し始めるマンション管理組合が増えています。
2004〜2024年で既に累計308棟ものマンションが建て替えられており、その大半は旧耐震基準マンションです。(参考:国土交通省|マンションに関する統計・データ等)
将来売れない可能性がある
旧耐震基準マンションは、耐震性が低く修繕積立金が高い物件が多いため、マンション購入希望者から敬遠されがちです。
そのため、新耐震基準マンションと比べるとどうしても売りにくくなってしまう可能性があります。
また、国土交通省の資料によると鉄筋コンクリート造(RC造)のマンションは平均寿命が68年とされており、購入してから20年30年と住み続けられない可能性がある点も懸念されます。(参考:国土交通省|期待耐用年数の導出及び内外装 設備の更新による価値向上について)
旧耐震基準マンションにはいくつものデメリットや購入時の注意点があります。
ただし、全ての旧耐震基準マンションにこれらが当てはまる訳ではありません。
「購入してもよい」旧耐震基準マンションもあり、メリットは少なくありません。
「購入してもよい物件も」旧耐震基準マンションのメリット
旧耐震基準マンションのリノベーション事例を見る:Case93「収納☆大充実」
旧耐震基準マンションはそのデメリットばかりが着目されますが、購入するメリットもあります。
価格・税金が安い
マンション価格は築年数が経つほど安くなります。
首都圏の中古マンション市場における築年帯別平均価格を見ると、築41年以上の旧耐震基準マンションは築浅物件より大幅に値段が低いことは明白です。
(「公益財団法人 東日本不動産流通機構|築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2023年)」のデータをもとに弊社にて作成)
また、物件価格が低いということは、購入後にかかる固定資産税や都市計画税も安くなるということです。
そのため、性能面で問題がなければ築40年50年の物件を選択肢に入れてみるのもおすすめです。
好立地な物件が多い
最近の新築マンションは既存建物の間を縫うように建てられるため、好立地な物件はそれほど多くありません。
対して旧耐震基準マンションが新築された1980年代初頭はまだまだ首都圏でもマンション戸数はそれほど多くなく、1973〜1982年の供給戸数が約83万戸なのに対して、1983〜2002年は約263万戸ものマンションが新築されています。
そのため、古いマンションほど歴史ある街や人気のある街に溶け込んだ利便性の高い物件が多い傾向が見られます。
建て替えによって資産価値がアップする可能性も
通常、マンションが建て替えられると資産価値は上がります。
旧耐震基準マンションを購入して数年住み、建て替えられた後に高値で転売できれば売却益が得られる可能性もあるということです。
ただし、「マンション標準管理規約」では修繕積立金を建て替え費用に充当することは認められておらず、建て替え費用は所有者で分担して負担しなくてはいけません。
その費用は1,000〜3,000万円と高額なので、建て替え後にかかった費用以上の売却益を得られるかがポイントになります。
リノベーションにより多くの予算を充てられる
物件価格の安い旧耐震基準マンションを購入して理想の間取りやデザインにフルリノベーションする方が増えています。
築20年など比較的築年数の経っていない物件でも、キッチンなどの設備機器を交換しなくてはいけない点は旧耐震基準マンションとそれほど違いがありません。
そのため「デザインや仕様にとことんこだわりたい」「海外製のキッチンや造作の洗面台を設置したい」と理想のイメージを膨らませている方は、リノベーションのプロに物件探しをサポートしてもらいましょう。
▶︎中古マンション探しから相談できるワンストップリノベーションはこちらから
「後悔しない」旧耐震基準マンションの物件選びポイント
旧耐震基準マンションのリノベーション事例を見る:Case98「マンチェスター・テイスト」
旧耐震基準マンションを選ぶ際は、築浅物件を選ぶときよりもより慎重になる必要があります。
以下のポイントを踏まえて、夢のマイホームを探しましょう。
- □これまでに耐震診断とその結果に基づく耐震補強や耐震改修が済んでいるか
(現行の建築基準法に適合していることを示す「適合証明書」があれば、住宅ローン審査のハードルにならずローン控除も利用できる)
- □修繕積立金や管理費がきちんと全所有者から回収されており、管理組合による金融機関からの借入がない
(未回収率が高く借入があると、今後の大規模修繕が正しく実施されない可能性も) - □月々の支払いが負担にならない修繕積立金の物件を選ぶ
(今後の値上がりも視野に入れる) - □共用部の断熱改修が済んでいる
(玄関ドアや窓サッシは共用部に当たるため、その部分の断熱改修が終わっているか確認) - □耐震面で弱い形状ではないか
(構造バランスの悪いマンション※は地震力で部分的な負荷がかかりやすく被害を受けるリスクが高い) - □地震に比較的強いとされている「鉄筋コンクリート造(RC造)もしくは鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の壁式構造※」かどうか
(壁式構造のマンションは過去の大地震でも大きな被害を受けたものが少ない)
※構造バランスの悪いマンション:平面・断面形状が不整形なL字型やコの字型などのマンション、上層部と下層部で構造形式が異なるマンション(下層階がSRC造で上層階がRC造など)、縦に細長いマンション、奥行きが薄いマンション、ピロティ構造(1階が駐車場などで壁ではなく柱のみで形成されている)のマンション
※壁式構造:床スラブ・天井スラブと壁により建物強度を確保している構造で、それに対して壁ではなく梁や柱で強度を維持している構造をラーメン構造と呼ぶ
(参考:国土交通省|マンション耐震化マニュアル )
このように、築40年を超える旧耐震基準マンションであっても物件選びのポイントを押さえれば、安心して住める我が家を手に入れられます。
ただし、物件の見極めには建築知識が必要になるため、物件探しからリノベーションまでまとめて相談できる会社がおすすめです。
SHUKEN Reは1998年創業以来、数多くのお客様へ中古物件探しや資金計画、リノベーションを提供してきた実績があります。
ワンストップで物件探しからリノベーションまでまとめてご相談いただけるからこそ、「物件価格+リノベーション費用」のトータルコストを早い段階で把握できます。
「まだマイホーム計画を始めたばかり」という方も、どうぞお気軽にご相談ください。
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まとめ:「旧耐震基準マンション=買ってはいけない」は間違い
旧耐震基準マンションには注意しなくてはいけないデメリットがいくつもあります。
しかし一方で、築浅物件と比べてメリットになる点も少なくありません。
ただし、旧耐震基準マンションを含む古い中古マンションを購入する際は、様々な視点で物件を選ぶ必要があります。
また、リノベーション費用を含めたトータルコストを踏まえた資金計画も重要です。
そこでおすすめなのは、リノベーションに適した中古マンション探しからリノベーションまでまとめて相談できるSHUKEN Reのワンストップリノベーションです。