公開日:2022-10-09 更新日:2024-12-19
中古住宅の諸費用は高くてもフルローンに入れるのは危険?
土地込みで購入できる住宅には新築分譲住宅と中古住宅がありますが、購入費用を比較すると、中古住宅の方が安く購入できます。
その一方、住宅購入時にかかる諸費用は新築住宅より嵩む傾向にあります。
中古住宅の購入時にはその価格だけに意識が行きがちですが、諸費用の中で現金で用意しなくてはならない費用がどのくらいあるのかということを把握しておくことも大切です。
・中古住宅の諸費用には住宅ローンの融資が始まる前に支払わなくてはならない費用があります。
・本来、中古住宅の諸費用は新築より高いのですが、令和6年 3月31日までは軽減税率が適用されている為、新築住宅とそれほど差がありません。
・融資前に諸費用を用意できない場合、フルローンや諸費用ローンなどの方法がありますが返済金額が膨らむため、物件購入・リノベーションの計画段階から専門家に相談しながら進めることが重要です。
目次
住宅ローンの借り入れ前に支払わなくてはならない諸費用
諸費用によって全体の予算が変わるということもありますが、諸費用の額を把握しておかなくてはならないのはそれだけではありません。
それよりも、諸費用の中には住宅ローンの借り入れ前に現金で支払わなくてはならない費用が多いという切実な理由があります。
住宅ローンの借り入れ前に支払わなくてはならない諸費用の内容についてタイミング別に確認していきましょう。
中古住宅を購入する契約を締結するタイミングで支払う諸費用
このタイミングでは仲買手数料と売買契約書の印紙代、登録免許税、所有権移転登記を依頼する司法書士への報酬が必要です。
仲介手数料
不動産会社を通して中古住宅の持ち主(売主)から中古住宅を購入する場合、不動産会社に支払う手数料のことです。
この仲買手数料の金額は宅地建物取引業法によって上限が定められていますが、下限額には決まりがない為、不動産会社によって金額に差が出ます。
仲介手数料の上限
- 売買価格が400万円以上 取引物件価格(税抜)×3%+6万円+消費税
- 200万円~400万円以下 取引物件価格(税抜)×4%+2万円+消費税
- 200万円以下 取引物件価格(税抜)×5%+消費税
第四十六条 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。
2 宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない。
3 国土交通大臣は、第一項の報酬の額を定めたときは、これを告示しなければならない。
4 宅地建物取引業者は、その事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、第一項の規定により国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示しなければならない。
出典:宅地建物取引業法
ただし、不動産会社がもともと所有している中古住宅を購入する場合には、中古住宅の持ち主(売主)から中古住宅を購入することになるので、仲買手数料を支払う必要は生じません。
また、中古住宅からリノベーションまでをまとめて行う会社では、多くの中古住宅を所有しているので、仲買手数料が発生しないケースがほとんどです。
売買契約書の印紙代
中古住宅を購入する際に納付しなくてはならない税金は、印紙を貼ることで支払います。
契約書に貼らなくてはならない印紙代は、契約する中古住宅の購入価格によって変わります。
令和6年3月31日までは不動産購入に対する税率を引き下げる為、不動産の譲渡に関する契約書について、印紙税の軽減措置が講じられています。
契約金額 本則税率 軽減税率 10万円を超え 50万円以下のもの 400円 200円 50万円を超え 100万円以下のもの 1千円 500円 100万円を超え 500万円以下のもの 2千円 1千円 500万円を超え1千万円以下のもの 1万円 5千円 1千万円を超え5千万円以下のもの 2万円 1万円 5千万円を超え 1億円以下のもの 6万円 3万円 1億円を超え 5億円以下のもの 10万円 6万円 5億円を超え 10億円以下のもの 20万円 16万円 10億円を超え 50億円以下のもの 40万円 32万円 50億円を超えるもの 60万円 48万円
出典:国税庁 不動産売買契約書の印紙税の軽減措置
登録免許税
中古住宅を購入する際には、売り主から購入した側に中古住宅の持ち主が移ったことを証明する為に、土地と建物の所有権移転登記をしなくてはなりません。
そして、土地と建物の所有権移転登記をする為には、登録免許税を支払う必要があります。
登録免許税は不動産の固定資産税評価額×税率で算出します。
登録免許税の税額は所有権が移転する理由によって異なり、売買の場合には、1,000分の20です。
ただし、こちらも令和5年3月31日までの間に登記を受ける場合は、軽減措置が適用されるので、土地に関しては1,000分の15、住宅に対しては1,000分の3に減額されています。
内容 課税標準 税率 軽減税率(措法72) 売買 不動産の価額 1,000分の20 令和5年3月31日までの間に登記を受ける場合1,000分の15
住宅用家屋の所有権の移転登記(措法73) 個人が、令和6年3月31日までの間に住宅用家屋の取得(売買および競落に限ります。)をし、自己の居住の用に供した場合の移転登記 1,000分の3
出典: 国税庁 登録免許税の税額表
所有権移転登記を依頼する司法書士への報酬
司法書士への報酬1万~5万円程度が相場です。
登記所や法務局証明サービスセンターや、オンライン請求を利用して、必要な書類を自分で揃え、自分で登記をすれば数千円でできますが、非常に手間がかかります。
中古住宅購入の為の住宅ローンを契約するタイミングで支払う諸費用
住宅ローンを契約する際には、現金で支払う手数料や印紙税があり、住宅ローンの契約にかかる諸費用を比較すると、新築住宅よりも中古住宅の方が多くかかります。
具体的には、住宅ローンの借入額に対する諸費用は、新築ではローンの借入額およそ3パーセント、中古住宅ではおよそ5%が大まかな目安です。
金銭消費貸借契約書の印紙税
住宅ローンを組む為の契約書である金銭消費貸借契約書です。
この際にかかる印紙税は1,000万円~5,0000万円で2万円、5,0000万円から1億円で6万円です。
融資事務手数料
住宅ローンを借り入れる金融機関に支払う手数料です。
保証料型では3万円、融資手数料型では借入額のおよそ2,2%です。
(保証料型=手数料は抑えられるが保証料が必要・融資手数料型=保証料の支払いは必要ないが手数料が高額)
住宅ローンに上乗せされていることの多い諸費用
印紙代や融資事務手数料とは違い、保険料や保証料に関しては、一般的には現金での支払いはありません。
住宅ローンの金利に含まれているケースがほとんどですが、別途支払う場合は、保証会社や保険会社、又は借り入れをしている金融機関から年度ごとに請求が来ます。
ローン保証料 借入額のおよそ2%
借り入れる側の返済が滞った時や、貸し出す側の金融機関が融資できなくなった時に補償を受ける為に保証会社に支払う手数料です。
諸費用の中で最も高額で、7割弱を占めます。
団体信用生命保険料
不慮の事故や病気で住宅ローンの返済ができなくなった時に備えて加入する生命保険の保険料です。
火災保険料
火災や地震で受ける被害に備える為の保険料です。
中古住宅購入後に支払う諸費用
新しくなった家で暮らし始めてから納める税金は、不動産取得税、固定資産税、都市計画税清算金です。
不動産取得税
不動産を取得した場合に課される1回だけの税金で半年から1年の間に都道府県から通知が来ます。
固定資産税評価額と税率を掛けて算出します。令和6年 3月31日までは本来の4%ではなく、3%の軽減税率が適用されています。
取得日 |
土地 |
家屋(住宅) |
家屋(非住宅) |
平成20年 4月 1日から |
3/100 |
4/100 |
中古住宅に対する不動産取得税額は築年数に応じて控除額が変わります。
自治体によって控除額が変わりますが東京都では次のように定められています。
平成9年4月1日以降に新築 1,200万円 平成元年4月1日 ~ 平成9年3月31日 1,000万円 昭和60年7月1日 ~ 平成元年3月31日 450万円 昭和56年7月1日 ~ 昭和60年6月30日 420万円 昭和51年1月1日 ~ 昭和56年6月30日 350万円 昭和48年1月1日 ~ 昭和50年12月31日 230万円 昭和39年1月1日 ~ 昭和47年12月31日 150万円 昭和29年7月1日 ~ 昭和38年12月31日 100万円
固定資産税と都市計画税
毎年1月1日時点で所有している土地と建物に対して課せられる税金で、税額は固定資産税=固定資産税評価額×1.4%、都市計画税=評価額×0.3%です。
都市計画税は1回だけの納税ですが、固定資産税は毎年度納税する必要がありますので、住宅ローンの返済額を決める際には、固定資産税の税額も併せて考えておくことが大切です。
諸費用が令和6年 3月31日までは新築とそれほど変わらない理由
諸費用のほとんどは新築住宅と同じなのですが、所有権の登録免許税に数十万円の差があり、諸費用の合計が50万円以上変わります。
ただし、令和6年 3月31日までは税率が軽減されている為、諸費用においては、ほとんど新築住宅との差がなくなっています。
入居までに現金で用意する必要のある諸費用のシミュレーション
土地1,000万円+中古住宅2,000万円 合計3,000万円を東京都で購入した住宅の諸費用をシミュレーションしてみましょう。
諸費用の種類 | 算出方法 | 発生する費用※軽減税率適用の場合 |
仲介手数料 | 売買価格が400万円以上 取引物件価格(税抜)×3%+6万円+消費税 | 105万6千円 |
売買契約書の印紙代 | 1千万円を超え5千万円以下のもの2万円 ※軽減税率は1万円 | 2万円 ※1万円 |
登録免許税 土地 |
土地の固定資産税評価額(1,000万円の場合)×2.0%(税率)※軽減税率1.5% |
20万円 ※15万円 |
登録免許税 建物 | 建物の固定資産税評価額(2,000万円の場合)×2.0%(税率)※軽減税率0.3% | 40万円 ※2万円 |
登録免許税 抵当権設定 |
ローン借入額(3,000万円の場合)×0.4%(税率)※軽減税率0.1% |
12万円 ※3万円 |
司法書士への報酬 | 相場1万円~2万円 | 1万5千円 |
金銭消費貸借契約書の印紙税 | 1,000万円~5,0000万円=2万円 | 2万円 |
ローン保証料 | 借入額のおよそ2% | およそ60万円 |
融資事務手数料 | 保証料型では3万円、融資手数料型では借入額のおよそ2,2% | 保証料型と仮定して3万円 |
合計 | 約246万1,000円 ※193万1,000円 |
この結果を見ると、資金計画を立てる際には、200万円前後の現金を用意しておく必要があります。
それではこれらの諸費用を住宅ローンで賄うことができるのでしょうか?
諸費用を住宅ローンに組み入れるフルローンや諸費用ローンはデメリットに注意
施工事例:COLORFUL × STYLISH│詳しく見てみる
注文住宅購入の時点では、引っ越し費用や家具の購入などの為に現金を使いたいと考えた場合、諸費用に掛かる200万円前後の費用は手痛い出費です。
もし、この出費を住宅ローンに組み込めるなら、手元の現金を家具購入や引っ越し費用に充てられます。
この場合、諸費用も込みで住宅ローンを申し込むフルローンという方法と、住宅ローンの他に諸費用ローンを組むという方法があります。
フルローンは頭金を支払わずすべての費用を住宅ローンで賄う方法です。
ただ、フルローンで申し込むと借入額が大きくなる為、審査に通らないことがあります。
そのような場合には諸費用ローンを組むという方法しかなくなってしまいます。
ただ、どちらの場合も購入時には便利だと感じますが、住宅ローンより返済額も金利も高いので、返済が大変になってしまいます。
理想の住まいを手に入れても返済が滞ってしまったり、返済に圧迫され暮らしにゆとりがなくなってしまったりする恐れも出てきます。
そのような事態を避けるためには、無理なく確実に返済できる住宅ローンを組まなくてはなりません。
その為に考えたいことは、中古住宅購入の時点から、専門家のアドバイスを受けるという計画です。
無理のない住宅ローンを計画する為には、専門家のアドバイスが非常に有効です。
そこでおすすめしたい方法は、中古住宅の購入からリノベーションまでをワンストップで行う会社といっしょに、中古住宅探しから始めるという方法です。
あらかじめ予算と、立地条件や家族に必要な住宅の規模などの希望を伝えた上で、中古住宅探しから始めると、費用についても詳細な説明がされます。
中古住宅からリノベーション完成までには中古住宅の購入費用以外に様々な費用が発生します。
中古住宅を選ぶ時点でこの住宅を購入したら全部でどのくらいの費用になるのか…ということを正確にシミュレーションすることが難しいです。
ただ、専門家といっしょなら明確な数字を知ることができ、返済に圧迫されない住宅ローンが組める可能性が高まります。
その結果、理想の住まいでのゆとりのある生活が手に入ります。
中古住宅をリノベーションして新しい住まいを手に入れる計画を進める場合には、中古住宅選びからリノベーションまでをまとめて相談できる会社を選ぶことが、中古住宅購入成功の鍵です。
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家族だけで中古住宅を探してからさらにリフォームを依頼する会社を見つけるという方法は効率が悪い上に、予算オーバーになってしまったり、理想の間取りや内装にならなかったりする恐れがあります。
中古住宅購入とリフォームはセットで依頼するという方法が最も効率が良く失敗のない方法です。
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