公開日:2025-12-31
民泊開業で用途変更が必要なケース・不要なケース|建築基準法における手続きも解説

この記事では、民泊開業にあたり用途変更が必要なケース・不要なケースをそれぞれ詳しく解説します。
民泊開業における用途変更の要否は、選択する制度や建物の種類などさまざまな要素で変わるため判断が難しいです。
そこで今回は、民泊の用途変更が必要かどうか判断するために必要な情報を分かりやすくまとめました。
民泊開業で必ず把握しておくべき情報ですので、ぜひ最後までごらんください。
- ・住宅宿泊事業法における民泊、旅館業法における簡易宿所、どちらで開業するかによって用途変更の要否が変わります。
- ・用途変更の手続きについて、建築確認申請が必要なケース・不要なケースの判断基準も解説します。
- ・用途変更が必要ない場合でも、専門家に相談し関連法令やルールを満たすことが大切です。
■民泊と建築基準法の用途の基礎知識をおさらい

まずは、民泊の用途変更について理解するために必要な基礎知識をおさらいしておきましょう。
民泊とは
民泊とは、住宅や空き家などを活用して旅行者に宿泊場所を提供するサービスのことです。
民泊には2つの制度があり、どちらを選ぶかによって必要な手続きや用途変更の要否が変わるため、違いを把握しておきましょう。
|
項目 |
民泊(住宅宿泊事業法) |
簡易宿所(旅館業法) |
|
営業日数 |
年間180日以内 |
制限なし、通年営業可能 |
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建物用途 |
住宅・共同住宅・寄宿舎など |
旅館やホテルなどの宿泊施設扱い |
|
手続き |
住宅宿泊事業の届出 |
旅館業法に基づく許可申請 |
一般的に民泊と呼ばれるのは、住宅宿泊事業法(民泊新法)による宿泊サービスです。
民泊は年間営業日数が180日以内に制限されますが、住宅用途のままで開業でき、設備や手続きのハードルが低いため採用されるケースが増えています。
一方、旅館業法による簡易宿所も民泊サービスの一種に分類されます。
簡易宿所は年間営業日数に制限はなく通年営業が可能ですが、旅館やホテルと同じ宿泊施設扱いになるため、建物用途が住宅のままでは開業できません。
どちらも民泊サービスとして扱われることがありますが、この記事では「住宅宿泊事業法=民泊」、「旅館業法=簡易宿所」として表記します。
民泊の基本的な仕組みや制度の違いは、こちらのコラムでも詳しく解説しています。
〈関連コラム〉
民泊の始め方を5ステップで分かりやすく解説|民泊経営を成功させるポイントも
建築基準法における建物の用途とは
民泊開業において用途変更が必要かどうかを判断するために、建築基準法における建物の用途についても把握しておきましょう。
建築基準法では建物の利用目的に応じて用途が分類されています。
|
ジャンル |
主な用途 |
|
住宅系 |
一戸建ての住宅 長屋 共同住宅 寄宿舎 下宿 |
|
宿泊施設系 |
ホテルまたは旅館 |
|
商業施設系 |
物品販売業(百貨店・ホームセンターなど) 飲食店または喫茶店 サービス店(エステサロン・ペットケアなど) |
|
事務所系 |
事務所 市役所や町役場 無認可の塾や学校 |
上記は一例ですが、すべての建物は使用目的に応じて用途が決められています。
建物の用途によっては、民泊開業にあたり用途変更の手続きが必要になるケースもあるのです。
民泊開業の用途変更の要否にはさまざまな要素が影響するため、次の章から必要なケース・不要なケースをそれぞれ見ていきましょう。
■民泊で用途変更が不要なケース

次のようなケースでは、用途変更なしで民泊を開業することができます。
住宅で民泊として開業する
元の建物の用途が住宅系で、住宅宿泊事業法における民泊として開業する場合は用途変更は不要です。
一戸建て住宅、マンションやアパートなどの共同住宅など、住宅系の用途なら変更せずそのまま民泊施設を開業できます。
また、誰も住んでいない実家や中古の空き家なども、元の用途が住宅系なので用途変更は不要です。
ただし、あくまで用途変更が不要なだけであって、民泊の基本的な要件は満たさないと開業できません。
住宅での民泊開業については、こちらのコラムも参考にしてみてください。
〈関連コラム〉
空き家×民泊ビジネス最前線|メリット・デメリットや成功のポイントを解説
賃貸アパートで民泊経営するメリット|営業許可や成功のポイントも解説
マンション民泊はワンルームより一棟がおすすめ|メリットや施工事例を紹介
旅館やホテルなどを簡易宿所として開業する
元々旅館やホテルなど宿泊施設として使われていた建物で、旅館業法における簡易宿所として開業する場合も用途変更は不要です。
また、旅館業法における宿泊事業として運営していた貸別荘なども、用途が旅館やホテルなど宿泊系なら用途変更せず簡易宿所を開業できます。
ただし、こちらのケースでもあくまで用途変更が不要になるだけで、旅館業法の基準を満たしたうえで営業許可を受ける必要がある点に注意しましょう。
■民泊で用途変更が必要なケース

民泊を開業する建物の元の用途や選択する制度によっては、用途変更の手続きが必要になる可能性があります。
用途変更の手続きについては次の章で詳しく解説しますので、ここでは代表的な2つのケースについて詳しく解説します。
住宅以外の建物で民泊を開業する
もともと事務所や店舗など住宅以外の用途で使われていた建物で、住宅宿泊事業法における民泊を開業する場合は用途変更が必要です。
住宅宿泊事業法における民泊は建物の用途が住宅に限定されるため、ほかの用途の場合はそのままでは開業できません。
住宅以外の建物をリノベーションして民泊施設に転用する場合は、基本的に用途変更が必要になると覚えておきましょう。
住宅で簡易宿所として年間180日を超えて営業する
元の用途が住宅の建物でも、旅館業法における簡易宿所として年間180日を超えて営業する場合は用途変更が必要です。
住宅宿泊事業法における民泊は、特区民泊を除き年間営業日数が180日以内に制限されているため、通年営業するためには旅館業法における簡易宿所として営業許可を受ける必要があります。
簡易宿所は旅館やホテルなど宿泊系の用途でないと営業許可を受けられないため、住宅からの用途変更が必須となります。
住宅系から宿泊系への用途変更は建築基準法や消防法などの基準が厳しくなるため、建物の改修が必要になるケースがほとんどです。
民泊施設づくりに詳しいプロに相談し、適切なアドバイスを受けながらリノベーション計画や用途変更の手続きを進めましょう。
SHUKEN Reは、多くの民泊施設づくりで培ったノウハウを活かし、リノベーションプランのご提案から手続きまでトータルサポートする専門店です。
民泊・簡易宿所の両方に対応可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
■民泊開業における用途変更の手続き

前述した用途変更が必要なケースに当てはまる場合は、民泊開業の申請をする前に手続きが必要になります。
用途変更の手続きは、大きく次の2パターンに分かれます。
- ①変更後の用途が特殊建築物に該当し、床面積が200㎡超:建築確認申請が必要
- ②類似用途への変更、または床面積が200㎡以下:自治体や消防への届出のみ
住宅から旅館やホテルなどの特殊建築物へ用途変更し、該当部分の床面積が200㎡を超える場合は建築確認申請の手続きが必要です。
用途変更の建築確認申請では、建築士などの専門家に相談して既存の検査済証や設計図書などを用意し、建築基準法や消防法などの基準を満たす改修工事を実施するなど多くの工程が発生します。
一方、ホテルから旅館など類似用途への変更、または該当する床面積が200㎡以下の場合は、確認申請は不要で自治体や消防などへの届出のみで用途変更可能です。
〈関連コラム〉
200㎡以下の用途変更は建築確認申請が不要?条件や注意点について詳しく解説
ただし、確認申請が不要なケースでも、各種法令への基準に適合しないと違反となり、民泊を開業できないリスクがあります。
どちらのパターンでも、用途変更が必要な場合は必ず専門家に相談し、必要な手続きや法基準を満たすリノベーション計画を立てましょう。
SHUKEN Reは民泊施設づくりのプロフェッショナルとして、自治体との事前協議や手続き、プランづくりから施工までトータルサポートいたします。
用途変更の建築確認申請が必要な一棟リノベーションによる民泊施設づくりの実績もございますので、ぜひお気軽にご相談ください。
■民泊に関するQ&A
最後に、お客様からよく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。
Q. 民泊の用途変更は誰に相談すべき?
A. 自治体への事前相談が基本ですが、専門家の意見も重要です
民泊開業に伴う用途変更の判断は自治体によって異なるケースもあるため、建築指導課や都市計画課への事前相談が基本です。
ただし、自治体の窓口や担当者によっては民泊への対応に慣れていないケースもあるため、法令に詳しい専門家にも事前相談するのが望ましいです。
SHUKEN Reは民泊施設づくりに関する法令や事前準備についてもアドバイスいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。
Q. 用途変更の費用はどれくらいかかりますか?
A. 建築確認申請による用途変更の場合は、建築士による図面作成や申請手続きの費用がかかります。
民泊開業に伴う用途変更の判断は自治体によって異なるケースもあるため、建築指導課や都市計画課への事前相談が基本です。
費用相場は依頼先や用途変更する建物の規模、内容によって変動し、数十万円~が一般的です。
Q. 用途変更せず民泊開業するとどうなる?
A. 違反となり罰金や中止命令を受ける可能性があります
用途変更の手続きをせずに民泊を開業した場合、建築基準法・住宅宿泊事業法・旅館業法などの違反となり罰金や営業中止命令などを受ける可能性があります。
用途変更しないとそもそも民泊施設として営業許可を受けることはできませんが、虚偽の申請をした場合は罰則が重くなる可能性も高いです。
Q. 市街化調整区域で民泊開業はできる?
A. 用途変更が必要な場合は難しいです
市街化調整区域は新たな開発許可を受けるのが難しく、用途変更を伴う民泊開業は基本的にできません。
既存の用途が住宅の建物で用途変更が不要なら、住宅宿泊事業法における民泊として開業できる可能性はあります。
ただし、市街化調整区域での民泊開業は管轄する自治体によって判断が異なるケースもあるため、必ず専門家に事前相談しましょう。
■まとめ
民泊開業では、利用する制度や建物によって用途変更の要否が変わります。
用途変更の手続きが必要な場合、時間や費用がかかるケースもあるため事前に把握しておくことが大切です。
なるべく民泊施設づくりに詳しい専門家に相談し、適切なアドバイスを受けながら計画を進めましょう。

SHUKEN Reは、多くの民泊施設づくりで培ったノウハウを活かし、法令のチェックから自治体との事前相談、リノベーションまでトータルサポートいたします。
民泊のことならなんでもお気軽にご相談ください。









