光溢れるアトリエ
エリア | - |
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物件種別 | マンション |
築年数 | 16年 |
広さ | 76㎡ |
施工期間 | 2か月 |
物件費用 | - |
リノベ費用 | 1100万円台 |
家族構成 | ご夫婦+お子さん(ご予定) |
光溢れるアトリエ
都心からのアクセスも良い最寄り駅から、歩くこと数分。
美しい緑が広がる街に、その家はありました。
玄関を入ると目に飛び込んでくるのは、ともに美術・デザイン系のお仕事をされている夫妻のアトリエ。
廊下に面した大きなガラスの造作パーテーションは、実はショールームも兼ねたハウズライフの事務所スペースを参考にして作られたものだそう。
「一目で気に入って、「これを再現してください!」とお願いしました」と奥様。
ご主人も「実際に建具を見られたことで、具体的な良さを実感できた」と話します。
アトリエは、家づくりの中でも特にこだわりを詰め込んだ場所だそう。
素足でも気持ちの良さそうな無垢材の床に、大きなルーバー扉の収納。
それぞれの作業スペースとして広々使えるデスクと、部屋のまんなかに置かれた共用の作業台。
大きな2面の窓と廊下側のガラスパーテーションにより眩しいほどの光が差し込む、明るい空間が広がります。
I様夫妻が家の購入を考え始めたのは、結婚を機に新たな生活を始める住まいを考えてのことだったそう。
当初は新築も選択肢として考えていたため、展示場なども見て回っていたそうです。
しかし、そこでの感想は「なんだか、キラキラしすぎている」。
デザインを選べる新築物件もあったものの、あくまで決められた数種類の中から選ぶ形式。新しさという魅力はあったけれど、「無機質な雰囲気や光沢のある素材の中で自分たちが暮らす姿を思い浮かべられなかった」と言います。
「なんだか違うね、これは自分たちの生活空間としてあっていないね」と意見が一致。家づくりの選択肢についていろいろと調べていくうちに、「総額が同じくらいなら、リノベーションで自分たちの好きな家に住みたい」との結論に行き着き、中古マンションを購入してリノベーションする方向へと舵を切りました。
住まい作りの条件としておふたりが求めたものは、
「明るい環境と、今後家族が増えたときにも対応できる家」。
職場までのアクセスやご実家との距離、そして採光や駅からの道のりなどさまざまなことを考え、長い時間をかけて納得いく物件を探し出しました。「家の中はリノベーションで変えられるから、変えられない環境を重視した」との言葉通り、周辺には大きな公園や大型スーパーなどもあり、窓からの眺望も最高。晴れた日には富士山も見えるそうです。
howzlifeに依頼する前、何社ものリノベーション会社を調べていたというI様ご夫妻。いくつかの会社では見積もりもとっていたそうです。数多くのリノベーション会社の中からhowzlifeを選んだ理由を聞くと、「決め手となったのは、他社で難しいと言われた要望も「大丈夫、できます」と答えてくれたこと、そしてやっぱり担当の南部さんですね」との答え。
「最初の打ち合わせに伺った時、南部さんは私たちの要望をまとめたイメージを絵で描き表してくれたんです。
視覚化して見せてくださる方はそれまでいませんでしたし、そこに描かれた絵は、まさに今暮らしているこの家そのもの。それまでもたくさんの会社に話を聞きに行きましたが、この人こそ私たちの理想を形にしてくれる人だと思いました。
また、初めてお会いした時から、粘り強く話を聞いてくれる方だと感じていたのですが、その印象は打ち合わせが進むにつれ、より強いものとなりました。打ち合わせ後、家に話を持ち帰って相談するうちに、打ち合わせで話した内容から希望が変わってしまうこともあったのですが、それもすっと受け入れて「ではこんな形では?」と新たに提案してくれます。
さらに、要望を汲み取ってくれるだけでなく、自分たちでは思いつかなかったアイデアもたくさん提案してくれました。たとえば洗面室奥に設置された、洗濯機を収納するスペース。洗濯機を隠すだけじゃなく、スペース内に洗濯物を見せずに干せるような工夫や、収納棚なども機能的にまとめてくださっていて、とても驚きました。
私たちは打ち合わせの時間が長かった方だと思うんです。回数自体も多かったし、本来の打ち合わせ時間をオーバーしてしまうこともありました。ですが、どんなに打ち合わせが長くなっても嫌な顔ひとつせず手厚く聞いてくださいました。そのおかげで、自分たちのイメージ通りに作ることができたと思います」
リビングに面した2つの大きな窓を開けると、部屋の中を風が一気に吹き抜ける。
「明るい家に住みたい」と話していた2人の希望を叶えたのは、すべての部屋に備えられた室内窓やガラスパーテーション。インテリアのアクセントとしても効いているこれらは、同時に光と風の通り道にもなっています。
実はリビング横の個室は、もともと引き戸で区切られた和室だったそう。壁を抜いて大きなリビングにするリノベーションが流行している中、Iさん夫妻は敢えて壁を作り、独立した個室を作るプランを採用。既存の「リノベーション」の枠にはまることなく、本当に暮らしやすい形を考えての提案でした。
「子供が増えた時のことを考えると、やっぱり部屋数は確保しておきたいなと思っていたんです。この先家族構成が変わっても使いやすい、本当に自分たちが暮らしやすい間取りを考えて作ってくださったなと思います」とご主人。
「扉の開き方や動線は、あれこれ悩みました。廊下とキッチンを隔てる扉は造作棚よりもアトリエ寄りに置きたかったんですけど、そうするとアトリエや廊下の扉が立て込んできてしまう。南部さんも「いかに不自由を感じず動けるか」を、すごく考えてくださったと思います」
実はI様邸、間取りは既存の形からほとんど変更していません。
「全部屋に収納を」との希望は、部屋の大きさを少しずつ削るなどして対応し、「どうしてもトイレ内に欲しかった」という手洗いスペースもサイズ調整を繰り返すことで実現。
限られたスペースを無駄なく使いつつ、機能性と両立する。果てしなく続くパズルのような作業ですが、これこそがデザイナーの腕の見せ所です。「違和感なくとても使いやすい」と言う奥様の言葉が、その成果を表しているようです。
リノベーションの醍醐味は、「自分たちのスタイルにあった家」をオーダーメイドで作れること。
通常のものより大きなサイズの病院用シンクを採用した洗面室は忙しい朝に2人が並んでも広々と使いやすく、寝室の収納は「ベッドを置いてしまうと部屋がすべて埋まってしまうので、最初から布団で暮らすと決めていた」という夫妻の希望を汲んで作られたため、既存の布団幅と横幅がぴったり。無駄なスペースを一切作らず仕上げられています。
とはいえ、最初から何の問題もなかったわけではありません。
中古マンションのリノベーションを行う際、懸念されるのは「実際に解体してみないと何があるかわからない」ということ。I様夫妻も「本当にプラン通り進められるのか」心配だったといいます。
「だけど、気になる点があったらすぐに「このスペースが確保できるかわからないので、現場監督に聞いてみますね」といった感じで、常に現場や僕たちと連絡を取りつつスピーディに進めてくれました。不安な箇所も、その時々の状況がわかると安心できました」
また、I様夫妻はそのこだわりから、自ら足を運んだりネットで何時間も探したりして、扉や壁紙、ドアノブ、スイッチパネル、すりガラスなどたくさんの建具やパーツを集めていました。
実は既存住宅の場合、使用可能な建具のサイズに制限がある場合も多く、塗装の微妙なカラーリングなど、持ち込んだ建具やパーツとそれ以外の内装との調和を取るセンスも求められます。高い技術を要求される場面ではありますが、細かいディテールの積み重ねこそが全体の雰囲気を作り出すもの。持ち込まれたパーツを活かし、何度も調整を繰り返すことで、上質かつ重厚感ある空間を実現させました。I様夫妻とhowzlifeの共作とも言うべき、納得の空間です。
I様夫妻がもうひとつ不安に思っていたのは、予算について。
せっかく家を作るなら理想の家にしたいけど実際どれくらいの費用がかかるのか、初めての家づくりということもあり、わからないことだらけで不安だったそうです。
しかし当初から明確に理想のイメージがあったおふたり、やはり予算では悩んだのでは?と聞くと、「でも「ここにこれを使ったらこれくらい予算がオーバーしちゃいます」って率直に伝えてくれるので(笑)。だけど同時に、バランスを取った折衷案も提案してくれるので、妥協という感じはありませんでした」と奥様。
当初希望していた塗装壁はリビングからキッチンにかけて採用し、それ以外の箇所には壁紙を使用。床材についてもすべての部屋を無垢材で埋めるのではなく一部で合材を使用するなど、予算とデザインのバランスを考えた提案で無事クリア。とはいえ、まったく遜色を感じない仕上がりです。
できあがった家の中でいちばん気に入っているところを聞いてみたところ、奥様は「全部です」と即答。ご主人も、「玄関を開けた瞬間、ガラスパーテーションと木のフレームが目に入るたび、自分たちらしい住まいだなと思いますし、玄関からアトリエ、そしてキッチンへと目線が続いていく中で、毎日ほっとできる雰囲気が嬉しい。住み慣れても「美しい家だな」と自分でも思ってしまうくらい、本当に良い家になりました」と話します。
デザイナーとI様夫妻がチームとなって作り上げたI様邸。振り返って家づくりにおいて大切だったことは、「価値観を合わせておくこと」だと感じているそう。「長く家づくりにあたっているとだんだん大事なことが分からなくなってくることもあるので、自分たちにとって何が大事で何が絶対必要なのかを書き出し、優先順位を擦り合わせておけば、いつも最初の目的に立ち戻って考えられる」と話してくださいました。
「私たちは本当にこだわりが多かったので、すごくわがままを聞いていただきました。実際に家を作っていく中で「これは難しいかもしれない」という要望が出た時も、南部さんは「思いを形にすることが大切だから、できるだけ実現できるように相談してみますね」と軽い感じで仰ってくれましたが、実際はとても大変だったと思います。それなのに「大丈夫になったのでこのプランで進めましょう」とさらっと言ってくれて、本当にありがたかったし、ここまで親身になってくださる方はなかなかいないと思いました。
いつも私たちの要望を汲み取って、さらに考えたうえでいろいろ提案してくださったこと、本当に感謝しています。「最初から最後までありがとうございました」という気持ちでいっぱいです」
もうすぐ新しい家族が増えるというI様夫妻。
新たな生活を始めたこの家は、これから家族の思い出で、より鮮やかに彩られていきます。
取材
写真 :戸谷 信博
ライター:松永 麗美
パートナー
実施設計・施工: SHUKEN Re