フルリノベーションするなら“長期優良住宅化”がおすすめ|メリットから工事内容まで徹底解説
ご自宅のリノベーションを検討する際に、皆さんはどの点を重要視しますか?デザインや機能など、人によって優先順位は異なるでしょう。しかし、何よりも長い間快適に過ごせる住まいにしたいという方は多いはず。そこで、キーワードとなるのが「長期優良住宅化リフォーム」です。
そこで、今回は「長期優良住宅化リフォーム」の概要からメリット、工事内容、注意点などについて解説します。これからマイホーム購入を検討する方や、既にお住まいをお持ちでリノベーションを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
・長期優良住宅リフォームには、補助金利用や税控除などのメリットがある。
・申請期限や申請方法に注意しなくてはいけないため、慣れた施工会社を選ぶ必要がある。
・長期優良住宅の認定を既に受けている中古住宅もおすすめ。
Contents
長期優良化リフォームとは?利用するメリットは?
日本は地震大国ということもあり、一般住宅については“スクラップ・アンド・ビルド”の考え方が主流で、築40年程度で建て替えをしてしまうのが一般的でした。しかし、環境問題の観点などから「出来るだけ既存住宅の寿命を延ばす」という動きに変わってきています。
そのような風潮の中、国として推進しているのが「長期優良住宅化リフォーム」です。これは、内装をきれいにしたり設備機器をバージョンアップさせるような従来のリノベーションとは異なり、長きに渡って快適に過ごせるために住宅の性能を向上させることを第一目的としています。
平成20年には「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が発足され、長期優良住宅の認定や住宅性能評価に関する規定が定められ、国として住宅の長寿命化が推し進められ始めました。
では、具体的にはどのような工事が対象となるのでしょうか?主な内容は以下の通りです。
- 既存住宅の耐震性向上
- 劣化対策
- 省エネルギー化
- 維持管理及び更新(改修)の容易化
- バリアフリー化
- 可変性
つまり、これらの工事を住宅に施すことで、既存の住宅を長寿命化し、さらに住む人の快適な生活を実現することこそ、「長期優良住宅化リフォーム」の最大の目標なのです。
メリット
確かに、住宅の長寿命化は大きなメリットではありますが、それ以外に具体的なメリットはあるのでしょうか?主なメリットは下記の4つです。
- 補助金の利用
- ローンの金利が安くなる
- 減税措置
- ローン控除
まず、経済的なメリットとして「補助金の利用」が挙げられます。国土交通省は、長期優良住宅化リフォームの推進を目的として、大規模な事業を行なっています。申請条件をクリアした物件について、下記のように補助金を支給しています。
〈補助金率の上限〉
総工事費用の1/3
〈補助金限度額〉
100万円
(増改築・省エネ性能の更なる向上・三世代同居改修・子育て世代の改修などの条件によっては、最大200万円の加算あり)
ただし、この補助金は毎年予算が組まれているため、応募金額に達してしまうと終了してしまうため、必ずリフォームの計画段階から施工会社としっかり打ち合わせしましょう。
リフォームローンの金利が安くなるのも、大きな魅力です。例えば、住宅金融支援機構の商品である「フラット35リノベ」では、省エネルギー性・耐震性・バリアフリー性・耐久性・可変性の基準を満たした中古住宅のリノベーションに対して、最大年利が0.5%引き下げられるサービスを行なっております。
そして、耐震改修工事・バリアフリー改修工事・耐久性向上工事を行なった際には、それに関わる標準的工事費用額の最大10%が、その年に収める所得税額から控除されます。
(詳しくは、「長期優良住宅化リフォームに係る所得税額の特別控除」(投資型減税)をご確認ください。)
また、ローンを利用してリノベーションする場合にも、所得税のローン型特別控除が利用できます。規定で定められた省エネ改修工事・耐久性向上工事を5年以上のローン借り入れで行い、長期優良住宅の認定を受ければ、年末のローン残高の1〜2%分の所得税控除を5年間受けられます。
(詳しくは、「長期優良住宅化リフォームに係る所得税額の特別控除」(ローン型減税)をご確認ください。)
デメリット
これだけメリットがある分、あまりデメリットはないだろうと感じる方も多いでしょう。しかし、長期優良化住宅にする上で、知っておくべき点がいくつかあります。
- リフォーム工事費用が高くなる
- 申請や審査に日数と費用がかかる
- 定期的なメンテナンスが義務化される
まず、国の認定を受けるためには、ある程度ハイスペックなリフォーム工事が必要となるため、費用を最低限に抑えたい方にはあまりおすすめできません。そして、補助金を利用するために国から正式な認定を受けるためには、既存状態の調査(ホームインスペクション)を行わなくてはいけません。ですから、そのための日数と費用がかかってしまいます。
そして、長い目で見ても注意しなくてはいけない点があります。それが、「維持管理の義務」です。認定を受けるためには、住宅の性能を維持するためのメンテナンスを行う義務が発生するため、何か不具合があってから修理するという考え方は通用しません。そのため、ある程度のランニングコストも意識しましょう。
ただし、これらのデメリットは“認定を受けるため”だけではなく、“住まいを長持ちさせる”ためにも必要不可欠です。ですから、お子さんの世代・お孫さんの世代まで住み続けられると考えると、決して損ではないでしょう。長期優良住宅化リフォームを検討する際は、一時的に出る費用だけではなく、長期的視点でメリット・デメリットを検討してみてください。
認定を受けるための工事内容や条件は?
では、「長期優良住宅」の認定を受けるためには、どのようなリノベーション工事を行えばよいのでしょうか。また、申請する際にどのような条件があるのでしょうか。ここでは、各項目ごとに具体的な内容を紹介します。
条件① 性能基準をクリアするための改修工事
認定を受けるためには、下記の工事が必須となります。
- 構造躯体の劣化対策工事
- 耐震性向上のための工事
- 省エネルギー対策のための工事
まず、「構造躯体の劣化対策」とは、柱や梁、床などの腐朽やシロアリ被害を防止するための工事です。例えば、防蟻剤の散布や防腐剤の注入がそれにあたります。また、タイル張りの在来浴室工法からシステムバス・ユニットバスへの変更も劣化対策の一つとして認められます。
「耐震性向上」は、耐力壁の増設や屋根の軽量化(瓦屋根から金属屋根への改修など)、耐震金物の取り付けなどが挙げられます。ただし、少しでもやればいいという訳ではなく、耐震等級や地上部分各階の安全限界変形割合などの規定数値をクリアしなくてはいけません。
そして、「省エネルギー対策」としては、断熱サッシへの取り替えや高効率給湯器への取り替えが挙げられます。こちらについても省エネルギー対策等級4以上の性能が必要であるため、必ず計画を立てる際にはこれにクリアする仕様にしてもらいましょう。
条件② ホームインスペクションの実施
第二の条件として、リノベーション工事前のホームインスペクション(建物診断)は必須です。最近では中古住宅の売買時には、行われることが一般的ですが、既にお住まいの家についても申請前に行わなくてはいけません。
ここでのポイントは、あくまで調査を実施するのは第三者機関であるという点です。いくら建築のプロだからといって、リノベーションを依頼する会社では実施できません。ですから、調査機関や報告書作成に時間がかかるため、スケジュールには余裕を持っておきましょう。
下記コラムでは、ホームインスペクションについて詳しく解説しています。
〈関連コラム〉
howzlife|COLUMN|中古物件を購入する際に知っておきたい「ホームインスペクション」とは?“不要”“必要ない”というのは本当?メリット・費用について徹底解説
条件③ 維持保全計画・履歴資料の作成
長期優良住宅化のポイントは、リフォーム後も性能を維持しなくてはいけないという点にあるでしょう。そのために、メンテナンス計画の作成や改修工事の履歴を保全しなくてはいけません。
「いちいち建築士に作成してもらわないといけないの?」と疑問に思うかもしれませんが、一般の方が作成しても構いません。
Q. リフォーム計画や維持保全計画の作成は建築士が行う必要がありますか。
A. リフォーム計画や維持保全計画の作成は、建築士以外の方が実施することが可能です。当事業実施上、建築士の方が行う必要があるのは、建築士法上、建築士の独占業務に該当する行為です。・リフォーム計画が評価基準に適合していることの確認
・リフォーム後の住宅が計画通りに施工されたことの確認(以下、省略)
引用:令和2年度 長期優良住宅化リフォーム推進事業|Q&A
補助金額を増やすためのオプション工事
先ほどもお話しした通り、最低条件をクリアした上でさらに補助金額を加算するために申請できるオプション工事があります。それが、以下の3種類です。
- 三世代同居対応改修工事
- 子育て世帯向け改修工事
- 防災性・レジリエンス性の向上改修工事
では、それぞれ詳しい内容を紹介します。
〈三世代同居対応改修工事〉
こちらは、二世帯以上が生活するための設備を整えることが条件となります。例えば、リノベーション後に、キッチン・浴室・トイレ・玄関のうちの2つ以上が複数あることが必須です。
〈子育て世帯向け改修工事〉
子育てしやすい環境を整えることを目的とした工事で、例としてはケガ防止のための緩衝材取り付けや設備機器・内装材の取り替え、家庭内事故を防ぐためのキッズスペースの設置、防犯性を高めるための防犯カメラ設置などが挙げられます。
〈防災性・レジリエンス性向上のための改修工事〉
常に地震や台風など自然災害の危険と隣り合わせにある日本において、防災性を高めるのは長寿命化にとっても重要なポイントです。工事例は、瓦屋根の交換や雨水利用タンクの設置、太陽光発電システムの導入、止水板の設置などです。地震災害・台風(風災害)・水害に備えて、安全の確保はもちろん、電力や水の確保が目的です。
制度を利用する際の注意点
補助金利用や税金控除を目的として、長期優良住宅の認定を受けたい場合、気をつけなくてはいけない注意点がございます。認定を検討する際には、必ず下記の点についてしっかりと認識しておきましょう。
- 補助金申請は施工会社が行う
- 申請には期限がある
- 認定通知書を受け取った後に着工しなくてはいけない
- 定期的にホームインスペクションを受けなくてはいけない
まず、補助金申請は施主様が行うのではなく、登録された施工会社が行います。ですから、急に「申請したい」と申し出ても、対応してもらえない可能性もあります。また、制度を利用するためには細かい規定や基準を理解した会社でないと難しいため、施工会社を選ぶ際には申請に慣れたところを選ぶと良いでしょう。
そして、補助金制度には申請期限があります。そのため、その期限から逆算してプランや見積もりを作成してもらわなくてはいけません。また、予算には限りがあるため、申請期限を待たずして打ち切られてしまう可能性もゼロではありません。ですから、補助金を絶対利用したいという方は、早めに打ち合わせを進めてください。
そして、申請が無事に済んだとしても、すぐに工事に取りかかれる訳ではありません。正式な認定通知書を受け取ってから着手しないと、申請が戻されてしまう場合もあるからです。ですから、引っ越しなどの時期が決まっている場合には、工期に余裕を持っておきましょう。
完成後にも気をつけなくてはいけないのが、定期的にホームインスペクション(建物診断)を受けなくてはいけない点です。10年に一度以上、定期的に調査を実施することが条件となっているためです。調査が義務付けられているのは、リフォーム後30年間なので、最低でも3回はホームインスペクションの費用がかかります。
また、結果に応じて修繕工事もしなくてはいけません。10年に一度となるとつい忘れてしまうこともあるかもしれません。ですから、調査漏れを防ぐためにも、リノベーション後も定期点検や定期訪問をしてくれる施工会社がおすすめです。
長期優良住宅の中古物件もある?
長期優良住宅化リフォーム推進事業が発足した2013年からまだ10年も経っていないため、まだまだその件数は少ないですが、実は既に認定済みの住宅が中古物件に売り出されているケースもあります。また、新築住宅においては2009年から認定が始まっているため、新築時に認定された物件もあります。
そのような物件を購入した場合は、定期点検などの義務は発生しますが、既に耐震性や省エネ性などが保証されているため、とても人気が高いです。
ただし、まだまだその件数は少ないため、競争率が高いことが予想されます。早い段階で認定済みの物件を希望することを不動産会社に伝えておくことをおすすめします。
〈新築〉 | 認定実績件数(戸建て・共同住宅合計) |
平成21〜27年度 | 平均99,887件(累計699,210件) |
平成28年度 | 109,373件 |
平成29年度 | 107,020件 |
平成30年度 | 109,386件 |
令和元年度 | 107,646件 |
令和二年度 | 101,392件 |
累計 | 1,234,027件 |
〈増築・改築〉 | 認定実績件数(戸建て・共同住宅合計) |
平成28年度 | 127件 |
平成29年度 | 296件 |
平成30年度 | 315件 |
令和元年度 | 242件 |
令和二年度 | 238件 |
累計 | 1,218件 |
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