Pathway

この記事の見所ポイント
- 人と猫が快適に暮らせる家
- 多目的な和室空間
- 愛猫の居場所と逃げ場を作る
- 猫の通り道を活かして風の流れを生む
- 既存の建具を出来るだけ活用
Tさまファミリーはご夫婦と2人の娘さん、そして猫のポンズくんの5人暮らし。20年以上暮らしてきたご自宅の老朽化に加えて、コロナ禍で家族に加わったポンズくんがより快適に過ごせる空間を作りたいという想いでリノベーションを行いました。
実は戸建ての注文住宅購入を検討していたとご主人。「マンション嫌いだったんです(笑)でも、ここは庭が広くて戸建ての雰囲気があるし、両隣の方がすごく良い人たちで仲が良くて。そんな今の場所が好きで、ここにずっと住みたいとなりリノベをすることに決めました」。
そんなご主人の仕事柄、SHUKEN Reを知る機会があり弊社にお声がけいただきました。「私たちがやりたかったことは、これまで使っていた扉など愛着のある建具を活用したリノベでした。建具を全て新品にしたほうが良いと提案する会社がある中でSHUKEN Reはどうしたら既存の建具を利用できるかと、こちらの意図を考慮してプランを組み立ててくれたのが良くて選びました」と奥さま。
将来の変化に対応
全体のテイストは、奥さまが学生時代から好きだという岡山の木工家具ブランド「MOMO natural」の家具に合うナチュラルテイストな空間。木材を活かす家具に合わせ、廊下からリビング・ダイニングはハードメイプルの床に。明るい色味が軽やかな雰囲気を演出します。
色調はモノトーンで全体の壁は白で統一しつつ、リビング・ダイニングのアクセントクロスとしてグレーを採用。ご夫婦がお好きなユーカリに合う色として選ばれたそうです。
このアクセントクロスの壁に取り付けられたのがポンズくんのためのキャットウォーク。物件購入後、家族に加わったポンズくんの居場所作りはリノベの大事なテーマの一つでした。「キャットウォークにいるのを見ながら食事をすると癒されます」とご主人。
窓際の床にはサンド柄のフロアタイルを採用してインナーテラスにしています。グリーンを置くためでもありますが、一番はポンズくんがひんやりした床で寝られるようにと設置しました。
同じフロアタイルを採用しているのがキッチンです。背面の壁は後から棚などを取り付けられるよう下地をつけたと奥さま。「両親の介護を経験して、将来自分たちの生活も変化していくんだと改めて感じました。その変化に生活空間が対応できるよう工夫したり、アレンジできる余白を作っています」。全体の色調をモノトーンにしているのも変化に合わせやすいという理由から。
カフェを意識したキッチンは、「MOMO natural」の真鍮を使ったペンダントライトが合うように天井を木目調に。ペンダントライトとの相性が抜群です。
カウンターの腰壁もカフェを意識し、ヘリンボーン柄のホワイトタイルクロスを採用。
自在な空間と自由に行動できる場所
リビング・ダイニングの隣にある小上がりの和室はライフスタイルの変化を見据えて設けたと奥さま。「畳だと気軽に横になれますし、もし孫ができたらとか、自分たちが歳を重ねていったらとか将来を考えた時に、自由自在に多目的に使えるスペースが必要だなと思って」
リビング・ダイニングとの間には壁に収納できるスライドドアを設けています。全開にして一つの広い空間として見せたり、閉め切ってご夫婦の寝室として個室としても利用できるようになっています。「家族ぐるみで仲の良いお友達が来た時は、大人はリビング・ダイニングでおしゃべりして、子供たちは和室で遊んでいるとか使い分けができるのも良いですね」と奥さま。
畳の下は収納スペースになっていて季節物や大きな荷物を収納するのに便利。携帯やエアコンのリモコンを置くために設けたニッチも使い勝手が良さそうです。ご夫婦とポンズくんがここで一緒に寝ることもあり、ポンズくんがお気に入りのベットに入って撮影に応じてくれました!
和室がワークスペースを兼ねたウォークインクローゼットと繋がっているのは、デスクに座った際の開放感を作ることとポンズくんが自由に行き来できるようにするため。もう一つ理由があるのですが、それはのちほど。
和室のクロスはリビング・ダイニングと同系色で少し変えてウォークインクローゼットのクロスと統一。ご夫婦の空間としてゾーニングしています。
ワークスペースを使うのは主に奥さま。「ダイニングテーブルに書類を広げて仕事していても、食事の時間には片付けなくちゃいけないのが手間で。今は本当に楽になりました」。
ワークスペース側面の壁には造作のシェルフ・・・
ではなく、ポンズくんのためのキャットステップでした!「特に冬は上に来る暖かい空気を求めて猫は高いところに行きたがるんです。それに人が大勢来た時に安心できる避難場所を天井近くに作りたくて」と奥さま。
猫トンネルを抜けると・・・
リビング・ダイニングにあるキャットタワーに繋がっています。「和室やウォークインクローゼットのドアが閉まっていても、出入りできるようにトンネルを作りました」とご主人。猫トンネルのサイズが絶妙!ポンズくんの顔出しに取材スタッフの顔もほころびます。
キャットタワーの下にはポンズくんの食事スペース用のニッチがあります。「SHUKEN Reは猫仕様のリノベーション事例が多いので、食事する場所を作りたいと相談しました。キャットフードなどまとまって置けるのが便利ですし、壁をくり抜いているので、視覚的にも綺麗に見えて気に入っています」と奥さま。
食事を終えたポンズくんがウォークインクローゼットにある猫トンネルをくぐっていきます。このトンネルはパントリーを通って脱衣所に繋がっており、自由に歩き回って欲しいというご夫婦のアイデアで設けました。
廊下を挟んでキッチンの向かいにパントリーがあります。「以前はパントリーがなかったので、ドリンクが入った段ボールなどがキッチンの床に出しっぱなしだったのが、今はスッキリしました。収納する時、ポンズの通り道が塞がらないように気をつけて物を置いています」とご主人。リビングドアにもペットドアが設けられていて、ポンズくんが自由に動き回れるようにという配慮がここにも見られます。
猫の通り道を活かした通風作り
猫トンネルでパントリーを抜けた先にあるのは脱衣所。床は凹凸が深く水はけが良い籐柄のフロアタイルで、ご主人が通っているジムでも使われていたことで知り採用したそうです。
玄関側にある個室のスペースの一部を使って従来よりも広くした点もこだわり。「アイロンをかけたり、服を畳めたり作業ができるスペースが欲しくて広くしました」とご主人。洗面台にこだわったのは奥さまで「女性が3人いて、お化粧などで被ることもあるので、複数人が同時に使えるように広く取りたいというのもありました」。
掃除道具やポンズくんグッズが置かれている収納スペースの下に猫トイレがあり、この裏にパントリーへ繋がる猫トンネルがあります。
洗面台の左側下部には娘さんのお部屋に繋がる猫トンネル、上部には室内窓が設置されました。猫の通り道を活かして南側のリビング・ダイニングの窓と、北側にある娘さんの部屋の窓を繋げて風の通り道を作っています。
これが和室とウォークインクローゼットを壁で仕切らなかった理由です。「自然の風を家の中に通したくて。脱衣所だけじゃなくて家全体に風が通るので気持ちがいいですね」。そんなご主人のお話を聞いていて「娘さんは反対しなかったのだろうか」と気になるところ。
実は、リノベ前の間取りでは室内窓の場所に扉があり、脱衣所と娘さんの個室が繋がっていたそうです。そのため、その辺りの配慮は以前からされていたとのこと。仲の良いご家族だからこそ実現できた猫と風の通り道なのですね!
そんな娘さんのお部屋と脱衣所を繋ぐ猫トンネルは、娘さんの部屋側で家具を使って簡単に塞げるようにしています。「お友達との電話とかプライベートな時間が必要ですし、冬は風通しが良すぎると寒いので臨機応変に対応できるような作りを考えました」と奥さま。
娘さんの部屋のクローゼットにはシルバーの星模様が可愛らしいクロスを採用し、見えないところに遊び心を加えています。
廊下の写真に映る右2枚の扉はリノベ前から使われていた物で、既存の建具などをなるべく残したかったと奥さま。「この物件は良い建具を使っていますし、猫は建物に寄り添う生き物なので、全部捨ててしまうと物凄いストレスになるんです。SHUKEN Reは活かせる物と活かせない物をハッキリ分けてくれたことも信頼できたポイントでした」。建具や洗面台の鏡など、引き続き使いたいと要望された物をなるべく残せるようプランを立てさせていただきました。
人と猫、家族全員が快適に暮らせる空間
“仕事や家事がしやすいように” “今後のライフスタイルの変化に対応できるように” など、今までの暮らしをより良くするために行われたリノベーションですが、大半はコロナ禍で家族に加わったポンズくんが快適に暮らせる空間づくりに重点が置かれました。
しかし、猫ちゃんについて笑顔で話すご主人はなんと元々猫嫌い。「変わりましたよね。マンション嫌だ、猫嫌だと言っていたのに」と奥さまもビックリ。
そんなご主人が猫愛溢れるお話をしてくれました。「猫にとって居場所が増えて自由に動ける過ごしやすい空間を目指してリノベをして、実際にポンズは快適になったと思います。それが僕たちの快適に繋がっているんですよね。ポンズが快適そうにしている姿を見ていると気持ちが良いし癒されます。結果的に人間と猫がお互い過ごしやすい場所になりました」。
取材にご協力いただき、ありがとうございました!
取材・文/ライター淺見良太
撮影/カメラマン清永洋