Like a one-room
この記事の見所ポイント
- 物理的な仕切りを減らし、通気性の向上や空間の広がりを演出
- 抜けのある壁や空間の色調でゾーニング
- 家具や家電選びを同時進行で行う空間作り
- 造作カウンターがある広々キッチン
- フロアタイルを大胆に内側へ入れ込みアクセントに
住まれて半年ほど経ったIさま夫婦のお宅にお邪魔しました。都内の大通りに面したマンションにも関わらず、高層階ということもあってとても静か。角部屋で窓が多いことに加え、周辺の建物に比べ高いところにあるため、視界も開けているという好立地!そんな物件の特徴を最大限に活かしたリノベーションがされています。
結婚当初からリノベーションを希望されていたというIさま夫婦。「新築のテンプレ感やピカピカした感じが好きじゃなくて、新築ではなく中古マンションを購入してリノベしようと決めていました」と奥さま。
物件を見つけた後、選んでいただいたのがSHUKEN Reでした。
「何社か当たってプランを出してもらう中で、目線を合わせてくれたというのが決め手でした。プランも柔軟に出してくれて、現実的に可能なものに合わせてくれたのも良かったです」とご主人。
さらにこんなお褒めの言葉も!
「具体的にやりたいことや強いこだわりはなかったので、なんとなく希望を伝えたんです。SHUKEN Reさんは柔らかくこちらの意図を汲んで、ほど良き着地点を見つけてくれたことも良かったですね」
お話を伺いながら漠然としたご要望を具体的な形にしていくことはSHUKEN Reの得意とするところ。お褒めいただきありがとうございます!
物件の特徴を活かした繋がる空間
Iさま邸の特徴は“ほぼ”ワンルームであること。リビング・ダイニングに繋がる寝室、ウォークスルークローゼットと、その先にあるご主人のワークスペースとの間に扉がありません。
取り壊せない構造壁がほとんどなく、角部屋で窓の数が多いという特徴を活かすため、窓のある全ての部屋が繋がっていています。実は以前のお住まいもワンルームに近い物件だったということもあり、仕切りの少ない空間には抵抗がなかったんだそうです。圧迫感のない広がりのある空間が生まれることはもちろんですが、室内にいて感じるのは風通しの良さ。取材をしている最中も風が抜けて本当に気持ちがいいんです!
リビング・ダイニングの床を見ると、キッチンから伸びるように黒のフロアタイルがフローリングに入り込んでいます。これは夫婦がグリーンを育てるのが趣味だと知った弊社のプランナーがアクセントにと提案。インナーテラスをイメージし、黒を空間に入れることでグリーンが映えるようにしました。フロアタイルなら濡れても簡単に掃除ができるのでお手入れが簡単なのもポイント。
造作の本棚が様々な場所にあるのも特徴ですが、こちらは夫婦の要望でした。「以前は、本が床に山積みになっていたので本棚を設けて欲しいとお願いしました」とご主人。
Iさま夫婦はリノベーションの内容を検討しながら同時進行で家具も決めていました。そのため、プランナーと全体的な色合いについて細かく調整ができたそうです。家具まで決めていくのは大変ですが、置きたい家具の色合いが分かれば、家具に合う部屋全体のトーンを調整できます。
リビング・ダイニングの場合、リビングに色のある家具を設置することに加えて、本やグリーンを置くことを希望されていたので、主張しない色合いをベースにして、家具の色が映えるようになっています。ソファの青や椅子の赤が差し色になっていて素敵です!
その他のスペースも見ていきましょう!
元々和室だったところを寝室にして、リビング・ダイニングとの間には目隠しとして壁を設けました。壁の両側を空けて、寝室の一部しか見えないようにすることで違和感なく空間を分けます。「夜に寝室の電気を消してリビング・ダイニングから見ると、より奥行きを感じることができます」とご主人。壁の奥を見せることで空間の広さを出しています。
壁のリビング・ダイニング側はクランクを設けてテレビを、寝室側のテレビの裏にケーブルの収納ボックスを取り付けています。ここにも本棚が!
下部には木枠で囲った抜けを設けて、壁の圧迫感をさらに軽減させました。
寝室はオリーブグリーンの壁紙を採用しリビング・ダイニングに比べるとシックな雰囲気に。色合いを変えることで、視覚的なゾーニングがされています。控えめな色合いが寝室にぴったり。窓側の床はグリーンが置けるようにフロアタイルになっています。
窓と窓を繋ぐウォークスルークローゼット
風の通り道として重要なのが、ご主人のワークスペースに繋がるウォークスルークローゼットの流れ。湿気が溜まりがちな収納スペースの問題を、東西に分かれた窓のある部屋をウォークスルーで繋げることで解決しました。
シンメトリーな入り口に置かれたグリーンやスピーカーも素敵!スピーカーのコード類が見えないように工夫がされていて、細部への配慮も見られます。
ウォークスルークローゼットは各通路の左右が収納スペースになっていて、夫婦それぞれの持ち物が通路ごとで分かれています。実は担当プランナーが、夫婦喧嘩にならないようにと自宅のリノベーションで採用して成功した経験を活かしたアイデア。確かにこれなら場所の取り合いは無くなりそう(笑)
「自分の持ち物を可視化できたのが良かったです。収納家具が不要になったので、家具を買うなら物を捨てることにしています」ご主人もこのアイデアを気に入っていただいているようです。
リビング・ダイニング側の入り口上部に見えるカーテンレールはゲストが来た際に、カーテンで内側を隠せるようにと設置されていて、寝室にも同様に取り付けられています。まだ使ったことがないそうですが、備えあれば憂いなしですね!
ウォークスルークローゼットを抜けるとご主人のワークスペースがあり、ここに窓とリビング・ダイニングの窓が繋げることで全体の風通しを良くしています。
ほぼ在宅ワークだというご主人にとってワークスペースは絶対に欲しかった空間。「以前の家では部屋のくぼんだスペースにピタッとハマる感じで仕事をしていました。籠り感はあったのですが、すごく狭くて暗かったんです。今はテーブルも広くなって窓もあって明るいので満足しています」
自然光が入る広い空間になったことで、リモート会議でのご自身のカメラ映りがよくなったそうです(笑)テーブルや家具はすべて造作で、部屋の広さに合わせて作っているためピタッと綺麗に収まっています。
一番奥に写っている扉は玄関に繋がっているのですが、この扉もほとんど開けっぱなしなんだとか。「頻繁に人が来るわけではないので開けていても気にならないです」玄関からリビング・ダイニングまで全てが繋がっているのがIさま邸。“ほぼ”ワンルールというのも分かっていただけましたよね!
一色でまとめゾーニングした造作カウンター付きキッチン
リビング・ダイニングと繋がるもう一つの空間がキッチンです。明るい色調のリビング・ダイニングに対して、キッチンは黒ベースでシックな雰囲気。スペースの色を変えることで、ゾーニングと空間の変化を楽しめます。
落ち着いたトーンにグリーンが良く映えますね!
窓からリビング・ダイニングを挟んで奥にあったセミクローズドキッチンを、リビング・ダイニング側に出してオープンキッチンにしたことで、陽が当たる広々とした空間に。
LIXILのシエラSに加えて設けた造作カウンターは奥様のこだわりの一つ。「ダイニングテーブルを置くより、キッチンと連動しているカウンター型がいいなと思って提案しました。料理を出すにも、片付けるにも機能性があって気に入っています」
造作棚は置くものを事前に決めておき全てサイズを合わせて調整がされました。熱が出る炊飯器やトースターを置く棚は手前にスライドできるようになっていて、上部の棚板が傷むのを防いでいます。
キッチンに最も近い窓には造作テーブルを設けて奥様のワークスペースに。日当たりが良くて仕事がはかどりそう!ゲストが多い時はワークスペースにある椅子をそのままカウンターに持ってきて使うこともできます。
元々、玄関付近にあった洗面台はキッチンの左側に移動しました。キッチンと統一感を出すため、同じような色や素材の面材を取り付けています。同じような素材を探すのに結構苦労したそうですが、その甲斐あってリビング・ダイニングから見る黒ベースの一面がかっこいい!
下はお掃除ロボットの基地になっていて、仕切りがなくフラットな床のIさま邸で大活躍しているそうです。
洗面台の奥は脱衣所と浴室になっています。「脱衣所はシンプルにしたいというのもあり、スペースを抑えました。二人で暮らしている分には扉を閉めなくても気にならないし、開けていれば狭さは気になりません」と建具を極力使わないようにしたというご主人らしいアイデア。話を聞いていて「たしかに」と納得しっぱなしでした。
キッチンがオープンになったことで、リビング・ダイニングの窓からの採光が可能になったのも大きな変化の一つです。
玄関はホテルライクなフルフラット。土間との境界を黒の間仕切りのみでゾーニングしているのがオシャレです!吊り収納には、へこみを作って板をはめています。鍵などを置くためという実用的な面がある一方で、白い空間のアクセントとしても活きています。
洗面室があったスペースは玄関の一部になりました。こちらにはアクセントとして壁の一面だけ寝室と同じオリーブグリーンの壁紙が使われています。天井にはコートをかけるアイアンバーを設置。以前からお持ちだった姿見もサイズがぴったりで馴染んでいますね。
「グリーンを置きたいとか、絵を飾りたいとか色々考えています。照明を置いたりなんかもいいですよね」と笑顔で話すご主人。このスペースは様々な用途がありそうです。何に使おうかと考えるのが楽しそう!
緩やかに分けて繋がる
角部屋で窓が多く、構造壁が少ないという物件の特徴を最大限に活かし、なるべく仕切りを作らないことをコンセプトにリノベーションをしたIさま夫婦。以前よりもどこで何をするのか、どこに何を置くのかが明確になったことでリズムが生まれたと奥様。「朝起きて朝食の準備をして、洗濯をしてという生活のリズムがうまく回っている感じがしますね」
ただのワンルームだと“なんとなく”の連続で物が散らかり、生活動線も狂いがち。だからと言って空間を仕切りすぎると窮屈すぎる。Iさま邸は空間を完全に分けて区切らず、抜けを作って視覚的なゾーニングをしたことで、全体が緩やかに繋がっています。住む人にとって、それぞれの居場所がありながらも、なんとなくお互いの存在を感じられる場になっており、とても居心地が良かったです。
お忙しい中、取材にご協力いただき、ありがとうございました!
取材・文/ライター淺見良太
撮影/カメラマン清永洋