Quotes
長らく賃貸マンションにお住まいだったSさまが、中古物件探しをスタートさせたのは2020年頃のこと。家賃と同じくらいの負担で自分の家が持てたら…と考え、住み替えを決められたといいます。
「狙っていたのは価格が安い古めのマンション。リノベ前提だったのでワンストップでお願いできるところをネットで探して、howzlifeさんと出会いました」とSさま。
ほかに挙げた条件は、通勤に便利なエリア、駅近、単身暮らしにちょうどよい40㎡くらいの広さなど。賃貸契約の次の更新までに、と目標を設定して、2022年にこちらのマンションを手に入れました。
「条件に合っていたのはもちろんですが、角部屋で日当たりがよく、窓から遠くまで視線が抜けるのが気に入りました。周囲に高い建物がないので夜景も楽しめるんですよ」
おっしゃる通り、ひとつの空間に窓が4カ所もあり、明るさと抜け感は抜群です♪
内装は落ちついたグレーベースに。天井を上げて梁を出したことで開放感が高まり、ちょっとハードでかっこいい雰囲気も生まれました。床は無垢のアカシア材。個性的な表情とあたたかみのある触感にひかれたそうです。
元の間取りは1LDKでしたが、リノベで間仕切り壁をなくし、リビング・ベッドスペース・ワークスペースをすべて1つの空間にまとめました。ワンルームを希望された理由をうかがうと、「ドアが嫌いなんです」という意外な?お答えが。
「家の中を移動するたびに開け閉めするのが面倒で。一人暮らしですし、本当はトイレのドアも要らなかったくらい(笑)。さすがにプランナーさんにおすすめされて引き戸をつけましたけど。ワンルームでドアがないと掃除もラクなんですよね」
こちらはリビングの一角に設けたワークスペースです。映像関係の会社にお勤めのSさまは、在宅でお仕事をすることも多く、作業に集中できるスペースがマストだったとか。2台のPCを同時に使えるように、市販のデスクをL型に配置しています。
「ソファがすぐそばなので、疲れたらすぐに一休みできます。深夜や早朝まで仕事したときはベッドへ直行。もし寝室が別の部屋だったら、ソファでそのまま寝てしまうかもしれません(笑)」と、お仕事のハードさが伝わるお話も。ワンルームにした理由に納得です!
前面の壁はSさまのお好みのくすみ系グリーン。モノトーンの内装にやわらかなアクセントを加えています。寝室にも同じクロスを採り入れ、玄関ドアの内側も同系色で塗装しました。
床はキッチンと同じフロアタイル張りに。キャスターつきチェアを使うため、フローリングが傷まないように配慮しました。同じ床材を壁に沿ってキッチンまでつなげたことで、離れた空間に自然な一体感が生まれています。
出張先で集めた雑貨をキッチンに
もともと洗面室側を向いていたキッチンは、窓側に向けてレイアウトを変更。広く明るいスペースを眺めながら料理できるようになりました。手前には簡単な食事やお茶ができるカウンターを。キッチンの壁のオープン棚はDIYで設置しました。
ステーションクロックと一緒に飾られているポップな看板は、出張先のニューヨークで購入したもの。その手前の照明のソケットはデンマークで。海外でお仕事することが多いSさまは、旅の思い出が詰まった雑貨をインテリアに生かしています。
キッチンの奥は玄関。ここでもアメリカ製のレトロな看板が目を引きます。玄関ドアの左右には収納をたっぷりと。片側は天井までの靴棚、反対側には有孔ボードを張って、帽子などの小物を掛ける収納にしています。
ドアには小さく「No day but today」の文字が。S さまがご自身で貼ったアルファベットステッカーで、「今日という日は今日しかない、だから精一杯生きよう」という意味なのだそう。
「ベッドスペースにも別のワードが貼ってありますが、好きな言葉を目につきやすい場所に書いておきたくて。玄関ドアなら出かけるとき必ず目に入りますから、今日も1日頑張ろう!と前向きになれるんです」
自分を励ましてくれる名文を、お守りのように大切にされているSさま。日々ハードなお仕事をこなされている裏側には、こんな秘密があったのですね。
通路をはさんでキッチンの向かいは洗面室。トイレを取り込んだことでゆったりした広さが生まれました。トイレは「TOTO」のタンクレスタイプ。照明はアメリカで購入したブラケットに「Amazon USA」で取り寄せた電球を組み合わせました。
カウンターと洗面ボウルは「サンワカンパニー」。六角形のタイルは、なんとロサンゼルスから持ち帰ったもので、お友達とセルフビルドで施工しました。テーマカラーのくすんだグリーンに細かな模様が入り、個性あふれる水回り空間を演出しています。
ベッドスペースにも気持ちが高まる名文を
最後にご紹介するのはベッドスペース。ここでもグリーンのアクセントクロスがやさしい雰囲気を醸し出しています。
壁面に小物を置ける段差をつけたので、ベッドはヘッドボードのないタイプを通販で探したそう。フレームが低めなので圧迫感がなく、リビングからベッドスペースへとゆるやかにつながっていきます。
ベッドサイドに置かれたミニテーブルは、なんとSさまの作品。これがハンドメイド⁉と思ってしまうような美しい仕上がりです。
「ここに引っ越してきてからレジン工作にはまって、ベランダでいろいろな小物を作っているんです。これは穴のあいた木材にレジンを流し込んで磨いて、テーブル用の脚をつけたもの。いずれリビングのローテーブルも作りたいなと思っています」
ベッドスペースにはWICを直結させました。内部にはハンガーバーを2段つけ、ワードローブをまとめて収納。掃除機の充電ができるようにコンセントも設置しました。
ドアのかわりに採用したのはロールスクリーン。普段は開けたままスムーズに出入りして、必要なときだけサッと目隠しできます。
入り口脇にあしらったステンドグラスは、1940年代に作られたイギリスのヴィンテージ。「どこかに室内窓をつけたいと思って、工事中にネットショップで探しました」
内側から見ると光が透けて、さらに美しい印象に。窓際は小さなテーブルを置いたドレッサーコーナー。レトロな照明とミラーがステンドグラスの雰囲気にぴったりです。
ベッドスペースの壁にはもう1つのワードが。「Life is not measured by the breath we take, but by the moments that take our breath away (人生で大切なのは、何回呼吸したかではなく、何回息を飲むほどの瞬間に出会えるかである)」
「アメリカのコメディアン、ジョージ・カーリンの言葉で、マイケル・ジャクソンが亡くなったときにビヨンセが贈った言葉でもあるんですよ」
ご説明を聞いて、スタッフ一同にじんわりと感動が広がりました。映像作品を通して、つねに人を楽しませているSさまならではの言葉選びです。
ワンルームの中にいくつものスペースが点在していたSさま宅。あらためて暮らし心地をうかがうと、「居場所によって気分が切り替わるのがいいですね。ワークスペースでは集中して仕事して、ソファではゆったりくつろいで、ベッドでは一日の疲れをとって…と、同じ空間の中でもしっかりメリハリがつきます。
以前は休日になると外出することが多かったのですが、引っ越してからは家で過ごす時間が増えました。最近はベランダでハンドメイドをするのも楽しみ。出張などで長く留守にしたときも、早く帰りたいと思える家になりました」と、新居への愛着を感じていらっしゃるよう。インテリアにさりげなく採り入れた名文からも、Sさまの真摯な生き方が垣間見えました。
お忙しい中、取材・撮影にご協力いただき、ありがとうございました。
取材・文/ライター後藤由里子
撮影/カメラマン清永洋