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"SHUKEN Re"

INTERVIEW
お客様インタビュー|リノベのその後

Smile Kitchen House

 

 

今回訪れたのは、江戸時代から繁華街として栄えてきたエリアにあるY様邸。そして、そのリノベーションにはちょっとしたワケあり。それも素敵なワケありです。この家の住人Y様は食メディアの編集長。自宅をキッチンスタジオとしても活用するために大胆なリノベーションを計画しました。使用するキッチンはすでにIKEAのものと決まっていました。

 

つまり、howzlifeに課せられたミッションはIKEAのシステムキッチンありきでY邸をグランドデザインすること。すでに購入されていた中古マンションに仕事用のキッチンスタジオを創設しつつ、そのほかをプライベートな居住空間とする。このミッション遂行のパートナーにどうしてhowzlifeが選ばれたのかを聞きました。

 

「もともとhowzlifeのカフェは前から気になっていたんです。偶然、元同僚とhowzlifeが旧知の間柄ということで紹介してもらいました。過去の事例を見て、自分達がやりたいテイストと合うと思ったので、お願いすることにしたんです」

 

Y様は現在、旦那様・お嬢様の3人暮らし。今回のリノベで叶えたかった希望のひとつが「家族みんなでごはんをつくるためのリノベにしたい」ということ。

オフィシャルな空間とプライベート空間が共存する空間づくりの過程で、家族の希望をどう実現していったのでしょうか。

 

「依頼時に全体のコンセプトとしてまず伝えたのは、きれいめインダストリアル。黒と白のモノトーンを基調にステンレスやウッド素材を「きれいめ」に設えたいとオーダーしました。それ以外は基本、howzlifeにおまかせでしたね。私達の好みをよく理解してくださり、『これはどうでしょう』と提案してくれる素材や形を見て、その都度『あ、いいですね』と。ほとんどがその繰り返しでした。」

早速、自慢のキッチンスタジオから一緒に見ていきましょう。

 

 

解放感溢れるオープンスペース。そこでひと際、存在感を放っているIKEAのシステムキッチン。現在、ここで月4~5本の撮影が行われているそうです。三方向から自然光が入り、長時間の撮影に耐えられるため「撮れ高、いいね!」と社内でも褒められる、自慢のキッチンスタジオです。

 

撮影が終われば、即自宅に早変わり。この融通のよさを享受しつつも、スタジオ業務も兼任しているY様。オフィシャルとプライベートを行き来する生活は何かと気苦労もあるのではと思いきや、なんだかんだで「休日も人を招いてホームパーティしている」ことが多いそう。その週末のホームパーティで重宝しているのが可動式テーブル。ナラの天板に塗装した造作です。「友人がみな、褒めてくれますね」

 

主張しすぎないウオールナット合わせの配色を選択し、「きれいめインダストリアル」な仕上がりに。「せーの!」の掛け声とともにみんなでテーブルをドッキングさせる楽しさもあり、大人数のパーティでも大活躍。この可動式テーブルは家族が食事をする場所であり、撮影時の材料置き場でもあり、Y様が原稿を書いたり、ちょっとした事務作業をしたり。用途に合わせて変幻自在。

 

 

ちなみに「こちらで体操もできます」といたずらっ子のように笑うお嬢様に、旦那様がすかさず「ここで体操しないでください」とたしなめる場面もありました。

Y様夫妻のお嬢様。実はこのキッチンスタジオでモデルデビューを果たし、すでに担当連載まで持っている、人気者なんです。

 

共働きのY様夫妻は家事シェア5:5の理想的な関係。旦那様がお迎えの日は旦那様と夕食を作るのがお嬢様のルーティン。ある日ふと、卵を簡単に割れるようになったお嬢様の成長に気づき、驚いたのは奥様のほうだったとか。旦那様の得意料理が出し巻き玉子だと聞き、納得。

 

これまでの家では、台所に一人立つだけでいっぱい。いわゆるマンションキッチンだったそう。料理の記事を制作することを生業としている奥様の影響で旦那様もキッチンに立つことは時々あったものの、せいぜい「みじん切り」のお手伝いくらい。

 

「3人でごはんをつくるためのリノベにしたい」というみんなの希望にはこんな背景があったようです。

リノベ以降は「料理をしていると無になれる。いい気分転換になる」と料理の楽しさに目覚め、腕前も上がったと話す、旦那様。それはお嬢様にもしっかり引き継がれているようです。作ることが楽しいと、食べることも楽しくなる。当然、人を呼びたくなるもの自然の成り行きかもしれません。

 

 

「ワインホルダーを最初は3つくらいオーダーしたのですが、全然足りなくて増やした」という言葉通り、吊り戸棚のグラスの数がこの家に集まる人の多さを物語っています。

 

多い時は12人くらい。各々がキッチンに立って料理をしながら、飲んで食べて、思い思いに楽しい時間を過ごすことがY様ご家族の日常になったようです。

 

楽しすぎるパーティの後、居心地がよくて、ついついそのまま泊まっていく人も少なくないようで、実はこの取材当日も昨晩の居残りさんがいらっしゃいました。前日がパーティだったと聞き、後片付けが大変だったのではと恐れ入ると「おかげで自制心が保て、飲みすぎずにすみました」と旦那様は笑います。それを受けて、奥様がこう続けました。

 

「正直、ステンレスキッチンは思った以上に掃除が大変でしたが、人が頻繁に来るからこまめに掃除するし、おかげで家をきれに保てるというメリットもありますね」

 

 

Y様邸を訪れるみなさんが、上を見上げながら、よくこう言うそうです。
「それにしても、良く収まったなあ。複雑な天井だよね」と。それもそのはず。
このレンジフードから伸びたダクト。それは、それはデザイナー泣かせの代物でした。

 

いってみればIKEAから提供されたシステムキッチンは「備え付けの什器」です。間取りに合わせて臨機応変に寸法を変えることはできません。担当プランナーの南部さんは多くを語らず「天井計画は大変でした」と静かに微笑むだけでしたが、設計図を睨みつつの辻褄合わせは、まるでパズルのピースをひとつひとつ探るがごとくの合わせ技だったとか。

 

躯体表しの天井はインダストリアルの代表選手ですが、Y様夫妻のこだわりポイントは「きれいめ」。実はモルタルで塗装するかどうか、ふたりで天井を見上げながら、ずいぶん迷ったそうです。最終的に塗装することを選んだ結果、予算オーバーになってしまったものの、やっぱりモルタルで塗装して「正解でした。」

 

壁面の収納棚はIKEAで調達。「梁があって、天井の高さまでの棚を作ることができず、上下セパレートタイプの既成の棚という一択しかなかった」とのことでしたが、ダイニングキッチンとリンクして、すっきりした印象に。「一見片付いている風にできる」ので、ふいの来客にも応えることができます」とも。

 

キッチンダイニングとリビングのちょうど中間点となる頭上を見上げると、物干し竿が。

 

「撮影時は布を吊すことで控室にでもなれば」とパーテーション用に造作したものの、実際は「エアコンの前なので洗濯物がよく乾く」と室内干しとして使う機会の方が多いそう。

 

 

悩んだ末に、最後の最後で変更をしたもうひとつの箇所がそれはシンクの水栓。

 

当初、設置されたのは機能的でシンプルなデザインの水栓でしたが、「きれいめすぎて、新築マンションの備品のようだったので、せっかくならリノベ感を出したい」とギリギリで変更したのだそうです。変更後の水栓は「デザイン性がプラスされて個性がだせた」とご満悦。

 

「料理がおいしそうにみえるかどうか」を大きく左右するのが、光のあたり加減。ライティングは家族の食卓はもちろんのこと、撮影では要ともいえるポイント。Y様邸の照明器具の配置をその視点で眺めると、参考になることも多いはず。

 

 

手持ちの鏡に合わせて造作した洗面台。白のタイル貼りの壁面は目地をグレーにしてシックな仕上がりになっています。床側にミーレの洗濯機を取り付けた収納棚も「きれいめインインダストリアル」に馴染むように造作されたもの。収納棚はもともと使っていた無印良品のシリーズがぴったりはまったのでそのまま採用。流し台の水栓はキッチン同様、最後の最後で変更を。奥様曰く「こちらはもうちょっとメルヘンチックにしたかった」のだとか。

 

ここでお嬢様がバスルームの窓を開けると、秘密の場所に通じていることを教えてくれました。従ってついていくと…

 

 

 

まさに!なんて素敵な秘密基地なんでしょうか。

ちなみに床のタイルは旦那様のお父様のDIY。「夏にここでビールが飲めたら」と自ら敷いてくださったのだとか。この家の居心地のよさに、誰もが「自分の陣地」を求めて、思わず自分だけの「匂いづけ」をしたくなるのかもしれませんね。

 

 

ブラケットをかけて「いい感じ」になった照明。「明るすぎず、暗すぎず、調整できるようにしたかった」と奥様。シックなガンメタルのタイル貼りの床、手洗いカウンターを照らすほの灯り。ともに落ち着いた清潔感が自慢の、お気に入りの場所なのだそう。鏡とトイレットペーパーのホルダーも奥様セレクト。細部に個性が光ります。

 

 

白を基調としたシンプルな主寝室。クイーンベットの頭上にご注目を。「スポットライトを二方向に光を分散させたい」という奥様のアイデアが採用された自慢の照明です。

 

読書を楽しむ人、眠りを楽しむ人、と思い思いの選択ができ使い勝手にも大満足。

 

ベッドルームの脇にも秘密基地めいたベランダがあって、ここも旦那様のお父様のDIYによってタイルが敷かれていました。

 

 

リノベーションを終えて

 

「これからリノベをする方に何かアドバイスできるとすれば、それは自分達が日頃、よく目にする場所で迷いがあったら、そこは妥協しないこと。今回、躯体表しの天井を塗装するかどうか迷いましたが、モルタルで塗って正解でした。それからリノベの最終段階で既存のインターホンがどうも気になって。隠し箱を追加で作ってもらったのですが、これは傑作でした。

 

 

 

後悔があるとすれば、やっぱり床暖房にすればよかったという点。気密性が高いといわれるマンションですが、三方に窓があると意外と寒い。目につく場所ばかりに意識が向いて、こればかりは盲点でした」(旦那様)

 

「リノベしてから、カフェでちょっとお茶したり、なんとなく外食したり、が減りました。おうちのごはんがいちばんおいしいよね、って。今回のリノベに点数をつけるとしたら200点。もう大満足ですね」(奥様)

 

 

取材・文/ライター 砂塚美穂