Memories&Future
今回のお施主さまは、もうすぐ80才を迎えられるAさま。2 年ほど前に奥さまを送られ、お1人暮らしになったのを機に、これからの生活を快適にしたいとリノベを決意されました。
ご挨拶したときは「こんなじいさんの家を見てもしょうがないですよ」とおちゃめに笑っていたAさまですが、案内していただいたリビングは――
天井が高く、マンションの最上階ということで窓からの眺めも最高です。想像以上のダイナミックさに、スタッフ一同から思わず「おお~!」と声が上がりました。
おおらかな勾配天井も最上階だからこそ。もともと勾配屋根の形状のマンションだったため、その形状に合わせて今回のリノベでぎりぎりまで天井高を上げたことで、さらに開放感がアップ。現しにした梁やコンクリート打ち放しの壁もかっこよさ満点です★
Aさま夫妻がこちらに入居されたのは、42年前の新築当時。途中で一度、水回り設備を交換したのみで、間取りを変えるようなリノベは初めてなのだそう。
「もともと3LDKの間取りだったから、小さい部屋がいくつもありまして。1人暮らしにはそんなに部屋数いらないですよね。和室もなくていいし、それよりもリビングをもっと広くしたいと思ったんです」
あとは寝室兼書斎があればいい、というのがAさまのリクエストでした。最初は大手リフォーム会社のカタログを取り寄せ、検討されたそうですが、「どれも普通の新築マンションのような提案ばかりで、触手は伸びませんでしたね」とのこと。
そんな中で、「ホームページで見つけた SHUKEN Re の『リノベするならダイナミックにいこう』というキャッチコピーに共感し、若いスタッフさん達のセンスや冒険力にも期待しましたね」とAさま。その思いを真摯に受け止めつつ、リノベ計画がスタートしました。
プロ仕様で料理を楽しめるキッチンに
独立型だったキッチンは、オープンな壁づけスタイルに。「誰かに見せるわけでもないから、きれいなシステムキッチンじゃなくてもいいかなと思って」とAさまはおっしゃいますが、厨房用のステンレスキッチンを選ばれたセンスはさすが!むき出しの配管を含め、武骨な男前キッチンにほれぼれしてしまいます。
カウンター下には扉をつけず、「ニトリ」の木製ボックスで調味料などを収納。ロゴ入りのデザインがステンレスの質感にもぴったりです。冷蔵庫やトースターなどの家電はミントカラーで統一し、レトロなアクセントを加えました。
お料理好きのAさまは調理器具もプロ仕様。シンプルな厨房用の鍋やフライパンが、ステンレスのシェルフやバーで手に取りやすく整理されていました。お得意料理は玉子焼き。築地の玉子焼き専門店で教わったこともあるのだとか。
壁はご自身でセレクトしたブルックリンタイル。ネットでサンプルを取り寄せ、プランナーにリクエストされました。リビングのテレビ裏にも同じ素材を使い、LDK全体をラフなイメージでまとめています。
リビングにはこだわりを詰め込んで
こちらがそのリビングスペース。以前は和室でしたが、間仕切り壁とふすまを撤去してダイニングとつなげ、広さを味わいながらくつろげるようにしました。
普段は1人がけのリクライニングチェアでゆったり。「飲み友達が来たときは座卓に集まります。ゆっくりできるし、人数が増えても大丈夫なので」床はブラックチェリーの複合フローリング。ややダークなカラーを選んで落ち着いた雰囲気を演出しました。
壁際のオーディオ類は、なんと自作のもの。お若い頃に作ったという真空管アンプやスピーカーがさりげなく置かれていました。ご趣味の幅広さと深さに圧倒されるスタッフ陣でしたが、実はこのあとも驚くようなご趣味が次々と・・・
その1つがモダンジャズのレコードコレクション。お気に入りのアルバムはディスプレイして楽しまれています。コンクリート打ち放しの壁と相まって、おしゃれなカフェかレコードショップのような雰囲気に♪その横に鎮座しているのは初代iMac。発売当時に愛用していたものだそうですが、今ではマニアの間で争奪戦になっているお宝です!
リビングでさらに驚くのは、こちらのバスルームです。ガラス張りのモダンなデザインと大胆なレイアウトが、まるでハイクラスなホテルのよう!場所はリノベ前とほぼ同じですが、リビング側から入れるようにしたことで使い方は一変。見た目にも楽しめる水回りが完成しました。
浴槽や水栓などはすべて「TOTO」、タイルは「LIXIL」。浴槽はリラックス効果のあるジャグジーつきを選びました。「1人暮らしだから、お風呂の入り方も自由気まま。昼間は窓から富士山が見えて、気持ちがいいんですよ」夜は毎晩、体操とエアロバイクで体を動かしたあと、お風呂で汗を流すのだとか。この健康習慣、見習いたい~!
洗面台は「サンワカンパニー」。ボウルとカウンターが一体型のミニマルなデザインで、ステンレスの質感が引き立ちます。手前のスイッチもさりげなくおしゃれ!
PCや読書に集中できる書斎を
Aさまがもう1つ希望されたのは書斎兼寝室。北側にあった2つの個室をつなげ、広い1室の中にワークスペースとベッドスペースを設けました。
ワークスペースでは造作カウンターデスクにPCがずらり。IllustratorやPhotoshopに精通していることから、マンション住人向けイベントのポスターなどを毎回制作しているのだそう。キーボードは最近始めたという新たなご趣味。「実はその前にサックスを習い始めて、鍵盤はそのための道具なんですよ。今はサックスを吹いているときがいちばん楽しいです」(!!)
床は「東リ」のフロアタイル、壁と天井は「サンゲツ」のクロス貼り。シックな雰囲気で日中も夜も落ち着いて過ごせるそうです。
蔵書が並ぶオープンシェルフも造作したもの。カウンターデスクと同じゴム集成板を使い、デザインと素材感を統一しました。「本はリノベを機にかなり減らして、お気に入りの作家のものだけ残しました」
本を読むときはこちらのライティングビューローへ。窓からのやさしい自然光で読書がはかどります。ベッドスペースのクラシックな家具は以前からの愛用品。壁のアートは奥さまが選ばれたものがメインだそう。
寝室以外でも、Aさま宅にはアートがたくさん。玄関ホールでも訪れる人を美しいアートが迎えてくれます。優雅なシャンデリアは100年以上前に作られたアンティークとか。
奥さまとの思い出とともに
ダイニングで主役となっているヨーロピアンスタイルのテーブル&チェアやカップボード。こちらもすべて奥さまが選ばれ、お2人で長年愛用してきたものなのだそう。「ヨーロッパ1周の旅をしたこともあって、こういうデザインが好きだったんでしょうね。もう40年も経って古びているけど、捨てたらかわいそうだから」
どのお部屋にもフレームに入った奥さまのお写真が飾ってあり、それを手にぽつりぽつりと思い出話を語ってくださったAさま。奥さまとの楽しい記憶を大切にしながら、新たな趣味にチャレンジされるなど、いまと未来を目いっぱい楽しむアクティブなお姿が印象的でした。
お忙しい中、取材・撮影にご協力いただき、ありがとうございました。
取材・文/ライター後藤由里子
撮影/カメラマン清永洋