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Wさまがリノベすることになった建物は、閑静な住宅地に立つ一戸建て。それまではマンションにお住まいでしたが、お父さまからこの物件を譲り受けたのを機に、集合住宅から一戸建てに住み替えることになりました。
「もともとは築50年ほどの小さな平屋で、法規上建て替えができない条件だったんです。そこで柱だけを残したスケルトンリノベを考えましたが、高さ制限があるから2階建てもNG。この小さな面積の中で、夫婦2人がゆったり暮らすには…というのが、リノベの最大のテーマになりました」
4社のリノベ会社に相談したものの、条件の難しさから、なかなかいい返事をもらえなかったというWさま。そんな中、私たちがご提案したスキップフロアのプランが「まさに理想の形!」だったのだそう。
「小さな家でネックになるのは、やっぱり収納不足。でも、普通に納戸などの大きな収納をつくると、どうしても生活スペースが狭くなりますよね。それを解決してくれたのが、リビングをスキップロアにして、その床下を収納にするアイディアだったんです」
Wさまが採用されたのは、空間を立体的に使って、大型収納とゆったりしたLDKを両立させるプラン。スキップフロア下の収納は、部屋と同じくらいの広さがあることから“蔵”と名づけました。
ここからはWさま宅のルームツアーがスタート。空間のつながりが分かりやすいように、玄関からの動線に沿って、個室や水回りから先にご案内しましょう。最後に素敵なリビングが待っていますよ♪
玄関にはお仕事の打ち合わせスペースを
玄関を入った正面で迎えてくれるのは、ヴィンテージのデンマーク製キャビネット。小ぶりなサイズながらデザインが美しく、訪れた人の目を引きつけるフォーカルポイントになっています。
床はモルタル仕上げ。土間と玄関ホールには段差をつけず、ラインのあたりで靴を脱ぐようにしているそう。
壁には質感のいいフックをさりげなく。観葉植物の飾り方が素敵!と思っていたら、Wさまはお2人で造園業を営まれていました。しかも奥さまはインテリア業界で長年お仕事をされてきた方。この完成度の高いスタイリングやグリーンアレンジは、プロの手腕だったのですね。納得です★
玄関の左手には、造園のお仕事のためのオフィススペースが。土足のまま出入りでき、事務作業や打ち合わせに使うほか、ご主人の書斎としても大活躍中とか。チェアはフィンランドの名作家具として名高い「ドムスチェア」、黒いスチールのチェストは「IKEA」で。
トイレはお仕事のお客さまにも使ってもらいやすいよう、玄関ホールにプランしました。造りつけの棚にはフレームなどをディスプレイ。余白のある置き方からゆとりが伝わってきますね。ペンダントライトは「オルネ・ド・フォイユ」で見つけたそうです。
リビングドアを入ってすぐ右手が洗面室。木製カウンター+「アイカ工業」の四角い洗面ボウルでシンプルにまとめました。丸いミラーは開閉式で、内側に歯磨きグッズなどを収納しています。
ランドリースペースには乾燥機と物干しバーを完備。ここだけでお洗濯が完結するのはうらやましい!
洗面スペースとランドリースペースの間にはロールスクリーンをつけてあり、来客時などはサッと目隠しできます。閉めてしまうと壁のように見えて、裏側に洗濯機があるとは気づきませんでした。
洗面室のお隣は寝室。面積はコンパクトですが、勾配天井の効果もあって狭い印象はありません。ヘッドボード側にはくすみカラーのアクセントクロスを。手前のドレッサーはデンマークのヴィンテージ。このサイズに合わせて窓やクローゼットの位置を決めたそうです。
寝室の入り口はオープンクローゼット。そのシーズンに着る服だけがまとめてあり、季節外の服はスキップフロア下の収納で待機しているのだそう。手持ちの服が一目瞭然で選びやすそうですよね♪
モルタル床のクールなダイニングキッチン
いよいよここからLDK。最初にご紹介するのはキッチンです。
お2人で作業しやすいよう、ゆったりしたⅡ型のレイアウトに。「床がモルタルなので、天井が白だと寒々しくなるかなと思って、板張りをリクエストしました」シックな黒のキッチンは「クリナップ」。
カウンターはぜひ採り入れたかったというモールテックス。シンク前にニッチをつくり、調味料のビンを並べています。
正面の壁はヘリンボーン柄のタイル。コンロの正面には既製品のオイルガードではなく、黒い枠の室内窓のようなイメージで造作しました。
ダイニング側から見たキッチンも素敵!モールテックスの硬質なテクスチャーと、要所に採り入れた黒が空間全体を引き締めています。
ダイニングの家具もデンマークのヴィンテージで統一。テーブルはエクステンション式で、お客さまがいらしたときは伸ばして使います。テーブル上と壁際のシェードは「アクシス」で。
洗練された雑貨がゆったりと並ぶキャビネットは、奥さまが長年愛用しているもの。「実はこの家具がリノベのイメージの原点。内装やインテリアはこれを核にして決めていったんですよ」
リビングの床はキャビネットと同じチーク材。DKの天井のレッドシダーも、赤みの中にやや黒の混じったチークの色合いを意識してペイントしました。お住まい全体にさりげない統一感があるのは、こんな工夫があったからなんですね。
開放感も味わえるコージーなリビング
最後にご紹介するのは蔵とリビング。ダイニングの奥に1.4mほどの段差があり、その下が蔵、上がリビングになっています。
蔵の中はリビングと同じ広さ。床面積に含まれない天井高にしたことで、この大型収納を実現できました。ストーブなどの季節ものからシーズンオフの衣類までゆったりとおさまり、まだまだゆとりがあります。
スキップフロアの階段を上がると、天井の高いおおらかなリビングが待っていました。ほんとうに平屋!?と思ってしまうような変化のある空間です。壁はしっくい仕上げ。光が当たると柔らかな表情が生まれます。
ソファは人気の「TRUCK」で「半年待ってやっと手に入りました(笑)。サイズが分かっていたので、背もたれの高さに合わせて窓の配置を決めたんですよ」センターテーブルはイギリスのミッドセンチュリーのもの。低いテーブルが入れ子になったネストテーブルで、こちらも来客時に便利だそうです。
「アクシス」のブラケットとコーデュロイ地のソファが、何ともいえないくつろぎ感を醸しだしていますね。窓からの光も心地よく、見ているだけで癒されるシーンです♪
リビングのコーナーには、フィンランド旅行で購入したという「Artek」のフレームが。「フィンランドはお気に入りの国で、これまでに3回くらい訪れています」
かわいいニットのスツールはお友達からのリノベ祝い とか。
ところで、ソファの横に小さな階段がありますね。この先は…?
なんと、気持ちのいいルーフテラスに続いていました。「屋上があったらいいね、とダメ元で話していたら、ほんとうにできてしまって。BBQをしたり植物の手入れをしたりと日常使いしています」正面には収納スペースがあり、BBQ用のコンロからミニ冷蔵庫まで完備。冷蔵庫にはもちろんビールが冷えています★
北欧インテリアとグリーンが映え、端正さとおおらかさがどちらも感じられたWさま宅。お伺いしたのはご入居から半年ほどの時期でしたが、住み心地はいかかでしょう?
「古くて狭い平屋だった頃を知っているので、こんなにゆったり快適に暮らせるとは思ってもみませんでした。効いているのはやっぱり蔵。プランを見たときはこんな手があったの!?と驚きましたが、大きな収納とスキップフロアのリビングを両立できたことが、リノベの成功につながったと思います」
これから犬を飼う予定なんですよ、と話してくださったWさま。蔵の中にトイレを置く予定だそうで、床をあらかじめ手入れのしやすいフロアタイルにしてあるのだそう。新しい家族を迎える準備も万端です♪
お忙しい中、取材・撮影にご協力いただき、ありがとうございました。
取材・文/ライター後藤由里子
撮影/カメラマン清永洋