公開日:2024-11-25
社宅廃止の判断基準と注意点|売却・コンバージョンなど対策も解説
少子化が進む日本では多くの業界で人材不足が課題になっており、従業員の減少によって社宅制度を廃止する企業も増えています。
社宅は従業員のエンゲージメントを高めるための福利厚生の1つです。
しかし、入居率の低下や、維持管理負担の増加など、社宅の保有や運用が負担になっている場合は、廃止した方が良いケースも考えられます。
今回は社宅制度を廃止した方が良いケースや判断基準、従業員のエンゲージメントを維持するための対策などを詳しく解説します。
売却やコンバージョンによる転用など、社宅を廃止した後の選択肢も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
・社宅を廃止する際は、理由を明確にし、代替案を従業員に提示することが大切です。
・社宅を廃止した後のことについて、売却やリノベーションによる転用などを検討しましょう。
■社宅制度を廃止する企業が増えている背景
一昔前まで社宅は重要な福利厚生の1つで、人材確保のために多くの企業が独身寮や家族向けの社宅を保有・運用していました。
しかし、働き手の減少やワークスタイルの変化など、さまざまな原因で社宅を利用する従業員が減少傾向にあり、廃止する企業が増えています。
社宅は相場より安い家賃で借りられることが多かったため、昔は定年まで住み続ける人も少なくありませんでした。
しかし、終身雇用が崩壊した現代では、転職すると同じ社宅に住み続けられません。
マイホームの建築中や転勤中のつなぎなど、一時的な利用目的が増えたことは、社宅の利用率低下の一因と言えるでしょう。
若い世代は仕事に対する価値観が変化しており、会社と適度な距離を取ってプライベートを充実させたいという理由で社宅への入居を避けるケースも。
また、テレワークの普及をきっかっけに住む場所やライフスタイルを見直した結果、社宅ではなく自分で住居を選ぶ人が増えた傾向もあります。
働き方改革をきっかけに「同一労働同一賃金」の見直しが進み、正社員しか住めない社宅は待遇差につながるという意見も廃止が増えている理由の1つです。
このようにさまざまな理由で社宅の利用率が低下している傾向があり、維持管理にかかるコストとのバランスを考え、廃止する企業が増えているのです。
■社宅廃止の判断基準
今も社宅を利用している従業員が居る場合は、廃止すべきかどうかの判断が難しいところです。
具体的には、次のようなポイントをチェックして、社宅を廃止すべきかどうか判断してみてください。
入居率が低い
社宅を利用する従業員が少なく入居率が低い場合は、廃止して維持管理にかかるコストを削減するメリットが大きいです。
※社宅の入居率が低い原因
- 築年数が古く暮らしにくい
- 社宅規定が厳しい
- ペットを飼えない
- 勤務先から遠い
社宅の入居率が低い原因は、上記のようにさまざまなケースが考えられます。
築年数が経っている社宅は、内装や設備の古さ、防音性の低さなどの理由から、入居率が低くなるケースが多いです。
友人や恋人を呼べない、ペットを飼えない、門限が決まっているなど、社宅規定が厳しい場合も、生活の自由度が下がるため選ばれにくいです。
また、社宅と勤務先が離れている場合、通勤の利便性を重視して会社の近くに自分で家を借りるケースもあります。
このような状況に当てはまり入居率が低く、改善が難しい場合は、社宅を廃止してほかの福利厚生に力を入れるのがおすすめです。
老朽化が進んでいる
建物の築年数と維持管理コストも、社宅廃止の判断基準の1つです。
木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造など、どのような構造の社宅も、築年数と共に維持管理コストは増加していきます。
例えば築20~30年のタイミングでは、水回り設備の交換が必要になり、まとまった費用が発生します。
10年前後で必要となる外壁・屋根塗装や防水工事も、築年数が経つほど下地の補修などが発生し、メンテナンスを怠るとトラブルの原因に。
老朽化が進んでおり、今後も社宅として運用するために多額の費用がかかる場合は、廃止して負担を軽減した方が良い可能性があります。
ただし、老朽化が進んだ社宅はただ廃止しただけだと売却が難しいケースもあり、リノベーションでの転用を検討するのもおすすめです。
■社宅廃止の進め方や注意点
社宅は会社の都合で簡単に廃止することはできず、さまざまなポイントに注意しながら綿密に進める必要があります。
社宅廃止で注意すべきポイントと対策をチェックしておきましょう。
廃止理由を明確にする
社宅を廃止する場合は明確な理由が必要です。
社宅は従業員にとって重要な福利厚生の一部であり、会社の都合だけ優先して廃止すると、不利益変更にあたり違反となる可能性があります。
※不利益変更:労働条件や福利厚生などを従業員にとって不利益な内容に変更すること
利用率が低い、維持管理コストが会社の負担になっているなど、社宅を廃止する妥当な理由を用意し、従業員に説明できるようにしましょう。
代替案を用意して従業員と話し合う
ただ社宅を廃止するだけだと従業員の収入減やモチベーション低下の原因になりますので、ほかの福利厚生など代替案を用意してケアすることも大切です。
※社宅制度の代替案の例
- 住宅手当や通勤手当などで充当する
- 給与額を上げる
- 借上げ社宅に切り替える
社宅の廃止で従業員の家賃負担が増える場合は、住宅手当や通勤手当などで充当するのが代表的な代替案です。
また、社宅の売却益や削減した維持管理コストを、従業員の給与アップに回すのも1つの考え方ですね。
社宅制度廃止への反対意見が強い場合は、社有社宅から借上げ社宅に切り替える方法もあります。
従業員の不利益とならないよう、社宅に代わる福利厚生を用意し、なるべく早いタイミングで周知してしっかり話し合いましょう。
規則の変更や引っ越しの手続きを進める
社宅廃止に対して従業員の同意を得られたら、福利厚生に関する規則の変更や、引っ越しなどの手続きを進めます。
規則の変更は適切な手順を踏まないと労働契約法違反になる可能性があるため、弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談しながら進めましょう。
社宅からの引っ越しは従業員の負担になるため、会社でサポートするなどの対策も必要です。
従業員の都合も考慮しつつ、引っ越しの期日や社宅を廃止するタイミングを決めましょう。
■廃止した社宅はどうする?
社宅は廃止した後も、保有しているだけで維持管理費や税金がかかります。
社宅の廃止を検討する際は、売却や転用などその後の扱いも考えておく必要があります。
売却する
立地が良く資産価値が高い社有社宅を保有している場合は、不動産会社や投資家を対象に売却できるケースもあります。
最近は、投資の選択肢として企業が廃止した社宅を購入するケースも増えています。
ただし、社宅の売却にはある程度の時間がかかり、希望価格で売れるとは限らない点に注意が必要です。
売却が完了するまでの間も維持管理コストや税金は発生するため、なかなか売れないと経営を圧迫する可能性もあります。
資産価値が低く売却が難しい社宅は、次の章で紹介するリノベーションによる転用も検討してみましょう。
リノベーションして転用する
社宅を廃止した後、リノベーションしてほかの用途に活用するのも1つの選択肢です。
例えば、築年数が経っている社宅でも、リノベーションで新築同様に生まれ変われば、賃貸物件として家賃収入を得られる可能性があります。
立地によっては、民泊物件やホテルなどにリノベーションして運用するのも1つのアイデアです。
例えば、近年は円安やインバウンド需要の高まりを受け、東京都内のホテル宿泊料が高騰しているため、ホテルや民泊としても利益が期待できます。
こちらは、SHUKEN Reがリノベーションした宿泊施設の施工事例です。
都心やテーマパークへのアクセスが良い千葉県浦安市の立地を活かし、国内外の観光客に楽しんでもらえるよう、パイレーツ・インダストリアル・フレンチなどさまざまな内装に仕上げています。
和モダンテイストのお部屋は、日本文化を感じたい外国人観光客の集客にもつながりそうな仕上がりです。
社宅をこちらの施工事例のように丸ごと一棟リノベーションすれば、資産価値や魅力が高まり、活用方法も広がります。
社宅を一棟リノベーションする具体的な方法や費用相場については、こちらのコラムも参考にしてみてください。
〈関連コラム〉
一棟リノベーションのメリット・デメリット|費用相場と事例も紹介
■まとめ
社宅を廃止することで維持管理コストが無くなるのは、経営上の大きなメリットです。
入居率が低い、築年数が古く劣化しているなど、課題がある社宅は廃止も検討してみましょう。
ただし、社宅を廃止しても保有したままだとコストがかかるため、売却やリノベーションなど次の手を考えることが大切です。
社宅の廃止や転用をご検討の際は、私たちSHUKEN Reにご相談ください。
社宅を始め多くの一棟リノベーション実績で培ったノウハウをもとに、お客様の状況に合わせたプランをご提案いたします。