〈中古マンションの耐用年数と減価償却〉確定申告時の計算方法や寿命との違いを解説
リモートワークが浸透し、「中古マンションを買って自宅の一部をオフィスにする」方が増えています。
中古マンションを購入してその費用を経費にしたい方も少なくないはずです。
そこでキーワードになるのが「耐用年数」です。
中古マンションを購入して確定申告する際に重要なポイントとなります。
そこで、今回は「中古マンションの耐用年数と減価償却」について、その仕組みと確定申告する際の計算方法を紹介します。
さらに、耐用年数と実際の寿命との違いについてもお話ししますので、これから中古マンションの購入を検討し始める方は、ぜひ参考にしてください。
・「耐用年数」とは、その建物を利用し続けられる“目安”の期間であり、実際の寿命とは差が開く場合もあります。
・「法定耐用年数」は、減価償却できる期間を指し、確定申告の際に減価償却費を算出する際に用います。
・耐用年数以上に長寿命なマンションを見分けたい方には、建築的知見を持って物件探しからリノベーションまで一社に相談できるワンストップリノベーションサービスがおすすめです。
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Contents
中古マンションの「耐用年数=寿命」ではない|減価償却との関係性
中古マンションのリノベーション・リフォーム事例を見る:Case182「Cinematic」
まず知っておかなくてはいけないのが、「耐用年数=寿命」ではないという点です。
耐用年数は、あくまでも税法上で定められた「建物を利用し続けられる目安期間」であり、「耐用年数≒寿命」であっても「耐用年数=寿命」ではありません。
法定耐用年数と呼ばれる場合は、税法上、その建物の資産価値が継続する年数を指し、ほとんどのマンションが該当する鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造の建物については以下の期間に設定されています。
(用途) | (法定耐用年数) |
事務所 | 50年 |
住宅 | 47年 |
店舗 | 39年 |
工場・倉庫 | 38年 |
(出所:国税庁|主な減価償却資産の耐用年数表より一部抜粋)
なぜ、法定耐用年数が決められているか理解するためには、「減価償却」という考え方を知っておく必要があります。
税法上、事業で使う建物などの資産は経年とともにその価値は減っていくとされています。
その資産を購入した際にかかった費用を、購入年度だけで経費計上するのではなく、法定耐用年数期間で分割して経費計上できる仕組みを「減価償却」と言います。
「減価償却できる期間=法定耐用年数」です。
実際に、建て替えられているマンションは築50年を超えている物件も多く、耐用年数以上でも人がたくさん住んでいるマンションは多く現存します。
政府は、増え続ける既存マンションの長寿命化を図るために、マンション長寿命化促進税制(固定資産税額の減額)などを行い、既存マンションを改修しながら住み続ける方針を推奨しており、今後は更なる長寿命化も期待できるでしょう。(参考:国土交通省|マンション長寿命化・再生円滑化について)
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確定申告時の計算方法|自宅兼オフィスの場合はどうなる?
中古マンションのリノベーション・リフォーム事例を見る:Case161「BOOKSHELF」
自宅の一部をオフィスとして使うために中古マンションを買う方も多いでしょう。
その場合も、事業用スペース分は減価償却を利用して経費計上できます。
減価償却の計算方法は「定額法」と「定率法」の2種類あり、それぞれ経費の計上方法が異なりますので注意しましょう。(参考:国税庁|No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合))
定額法
減価償却費(経費計上できる金額)
= 資産取得価額 × 定額法の償却率
定額法は、一定額を耐用年数期間に毎年経費計上する方法なので、減価償却費は毎年変わりません。
取得価額には、中古マンションの購入金額だけではなく、不動産仲介料やリノベーション費用などのコストも含まれます。
ただし、不動産取得税や登録免許税などの租税や、事業用として使うまでに発生したローンの金利などは対象外となるので注意しましょう。(参考:国税庁|No.5400 減価償却資産の取得価額に含めないことができる付随費用)
定額法に用いられる償却率は、「0.5(耐用年数2年目)〜0.022(耐用年数47年目)」まで決められているため、減価償却資産の償却率表を確認して計算します。
中古マンションを減価償却する時点の経過期間が10.8年の場合は、端数を切り捨てて10年で計算します。
また、経過期間が新築直後の築浅物件であっても、一律で耐用年数を2年とするので、注意してください。
定率法
減価償却費(経費計上できる金額)
= (資産取得価額 − 前年度までの減価償却費) × 定率法の償却率
定率法は、取得価額から毎年の減価償却費を引いた額に償却率をかけて算出する方法で、所得した初年度の負担額(経費計上できる金額)が最も多く、年々その額は減っていきます。
ただし、定率法の償却率によって算出された減価償却費が「償却保証額(※)」を下回った年度以降は、毎年同額となりますので注意しましょう。
※償却保証額:資産の取得価額に資産の耐用年数に応じた保証率を掛けた金額
定額法は耐用年数期間、毎年同額の経費を計上するため、節税効果は一定なのに対して、定率法は初年度の経費が最も多いため節税効果が高く、年々効果が薄れていく点が特徴です。
定率法に用いられる償却率は、「1.0(耐用年数2年目)〜0.056(耐用年数47年目)」までで決められており、償却補償率とともに減価償却資産の償却率表で確認できます。
ちなみに、経過年数に端数が出る場合や築浅物件の場合の考え方は、定額法と同様です。
中古マンションを自宅兼オフィスとして使う場合は、取得価額を専有面積で割り、オフィスとして使う分を減価償却します。
建物の減価償却費だけではなく、リノベーション費用や固定資産税・都市計画税、火災保険、住宅ローン金利の一部も経費計上できる可能性があるため、詳しくは税理士や管轄の税務署へご相談ください。
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耐用年数を超えた中古マンションはどうなる?
中古マンションのリノベーション・リフォーム事例を見る:Case100「ノーブル・ブルックリン」
結論から言うと、法定耐用年数を超えたからと言って住めなくなる訳ではありません。
単に、減価償却期間が終わるだけであって、その後も自宅・オフィスとして利用し続けられます。
ただし、法定耐用年数を全うできるマンションだけではない点も事実です。
新築以降の大規模修繕工事が正しく行われていなかったり、修繕金不足でメンテナンスが行き届いていなかったりするマンションは、法定耐用年数である47年を待たずに建て替えられる可能性もあります。
中古マンションを購入する場合は、価格や間取り・広さだけではなく、共用部の管理状態やこれまでの大規模修繕履歴、今後のメンテナンス計画も必ずチェックしましょう。
特に、1981年5月以前に建築確認を受けた「旧耐震基準建物」は、耐震性が現行のレベルを満たしていません。
そのため、これまでに耐震改修・耐震補強工事が行われているかが重要なチェックポイントです。
旧耐震建物でない場合も、玄関ドア・窓サッシが高断熱仕様の製品へ交換済みの物件がおすすめです。
現在、減価償却費の算出に用いられている耐用年数は、1998(平成10)年に改訂された耐用年数表がベースです。
その時点から建築技術やマンション改修技術は進歩し、脱炭素化に向けた省エネ化や増加し続ける空き家問題も相まって、既存のマンションをリノベーションして長寿命化する動きは活発化しています。
そのため、これまでの「耐用年数≒寿命」という考え方は現実とかなりかけ離れつつあるのです。
実際に、東京都公表のマンション建替え事業事例一覧を見ると、2003年以降に建て替えられたマンション事例の内、法定耐用年数47年を超えてから建て替えた事例は81件中29件にも上ります。
※平均建て替え築年数は44.98年ですが、経年劣化以外の極端に早い建て替え事例を含みます。
マンションの建替え等の円滑化に関する法律(平成14年制定)によってマンションの建て替え事例は増えているものの、大半が築50年超えの旧耐震基準建物です。
築40〜50年で建て替え計画が発足し、そこから住民の承認や資金調達、建築計画をクリアして実際に解体が始まるまで、10年程度かかるのが一般的な流れとされています。
ただし、近年は「古くなったから建て替える」のではなく、「悪くなった部分を改修してできるだけ長寿命化する」という考え方が主流になりつつある点もポイントです。
旧耐震基準のマンションの耐震補強・耐震改修工事や、築30年を超える古いマンションの断熱改修が多数実施されています。
実際に、過去の研究によると、鉄筋コンクリート部材の持続年数は「120年」、適切な外装の改修を実施すれば「150年」まで延び、実際の鉄筋コンクリート造住宅(マンション含む)の期待平均寿命は「68年」、事務所ビルは「56年」とされています。(参考:国土交通省|期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について)
日本最古の分譲マンションである宮益坂ビルディング(1953年竣工)も、築63年まで現存し、同潤会三ノ輪アパートメント(1928年竣工)は、築81年でようやく建て替えられました。
このように、正しく共用部がメンテナンスされ続けるマンションは、耐用年数以上の寿命は十分期待できるということです。
長寿命なマンションの選び方
中古マンションのリノベーション・リフォーム事例を見る:Case112「じぶん価値の家」
中古マンションを購入するなら、法定耐用年数を超える長寿命な物件を選びたいですよね。
そのためには、以下のポイントをチェックしましょう。
【寿命の長いマンションの条件】
- ・新築時からこれまでの間に「12〜15年間隔」で大規模修繕工事が実施されているか
- ・旧耐震基準のマンションは、すでに耐震改修(耐震補修)工事が済んでいる、もしくは計画が進行中であるか
- ・築30年を超えるマンションの場合は、過去に玄関ドアや窓サッシ取り替えなどの断熱改修が行われているか、もしくは計画が進行中であるか
- ・今後の大規模修繕計画が建てられているか
- ・修繕積立金が新築時から定期的に値上がりしていて、今後の修繕計画に見合う額が積立られているか
- ・過去の大規模修繕計画において、金融機関からの借入金が残っていないか
- ・管理組合がきちんと運営されていて、エントランスやホール、共用廊下、ゴミ置き場、自転車置き場などの清掃が行き届いているか
- ・管理費や修繕積立金の未回収率が高くないか
- ・給排水管がコンクリートに埋没されていて交換不可な構造ではなく、各専有部分内に配管されていないか(1970年代以前竣工の物件はスラブ下配管の可能性あり)
これらのチェックポイントに多く当てはまるほど、新築以降きちんとメンテナンスされているか、今後改修によって寿命が延びる可能性の高いマンションです。
逆に、以下のポイントに当てはまる物件は建て替えの可能性があるため、注意してください。
【建て替える可能性の高いマンション】
- ・専有面積50㎡未満の部屋が多い(1970年以前に建てられたマンションにある傾向)
- ・空室率が10%を超えている(1970年以前に建てられたマンションにある傾向)
- ・高齢者率が高い(1970年以前に建てられたマンションは住民が「60歳以上のみ」の物件が40%程度)
- ・バリアフリーに対応していない(4階建て以上でエレベーターがない)
- ・これまで配管や給水設備のメンテナンスをほとんどしていない
これから中古マンションを購入する方は、長持ちするマンション・建て替えリスクの低いマンションを的確に見分けられる不動産会社へ相談することが重要になります。
また、古いマンションと切っても切り離せないリノベーションも併せて相談できる会社がおすすめです。
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まとめ:中古マンション購入時には耐用年数だけではなく寿命もチェック
中古マンションを買う際は、その耐用年数や資産性をチェックすることも重要ですが、購入後にどれくらい住み続けられるのかを確認することも忘れてはいけないポイントです。
「耐用年数=寿命」も間違いではありませんが、最近は法定耐用年数である47年を超えても多くの方が住む活気あるマンションも存在します。
ただし、古いマンションを購入する際には、建築的知見による見極めが欠かせません。
徹底的に物件の状態を確認するためには、図面などの設計図書も確認する必要があるからです。
また、古いマンションは物件購入資金だけではなくリノベーション費用も想定しなくてはいけません。
そこでおすすめなのが、物件探しから資金計画、リノベーションまでまとめて相談できるワンストップリノベーションです。
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物件が決まる前からリノベーションのプラン相談を進められるため、リノベーションに適した物件を選べて、トータルコストを把握しやすい点が魅力です。
また、建築知識を踏まえ、一般の方では分かりにくい不具合を見つけられます。
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