Clearly divide
この記事の見所ポイント
- お子さまたちが独立した後の夫婦の暮らしを考えてプラン
- お子さまたちが集まる場所になることを意識
- モノを見せないことを意識した収納と動線
- ウォークスルークローゼットを活用して作る風の通り道
- 浴槽をなくして生まれたスペースを活用
20年以上住まれたご自宅をフルリノベーションしたNさま夫婦。きっかけはご夫婦が銀婚式を迎えることと、3人の息子さんたちの野球が一段落したことでした。「息子たちが荷物をいろいろな所に置いてしまうので散らかって片付かないというのが嫌で。モノが多くて親族や友人たちを招待できない家を、大人数で集まってワイワイできる広くてスッキリした家にしたいというのが大きなテーマになりました」と奥さま。ご主人も「終の住処ですし、将来的に子供たちが集まれる場所を残してあげたいなと」。

複数のリノベ会社が主催する見学会や説明会に参加され、じっくり会社選びをしたご夫婦。リノベが初めてで、じっくり話をしたいという方向けに弊社が行っている『ふんわり相談会(詳細はこちら)』や、『リノベーション完成現場見学会』にも複数回ご参加いただいていました。「全ての会社にプランを出してもらった時に、自分たちの希望を全て綺麗に入れ込んでくれたのがSHUKEN Reでした」とご主人。「プランナーさんに何気なく話した些細なことも取り入れてくれていて、すごく信頼できると思いました。あと、素人がこんなこと聞いてもいいのかなと思うことも、しっかり聞いてくれる話しやすい雰囲気があったのも決め手でしたね」奥さまからもお褒めの言葉をいただきました。
“今”と“これから”の家族の居場所に
リノベプランは主にご夫婦で決められたそうです。「息子たちには、ここは私たちの家。いずれは独立してね。独立した後も帰ってきた時は泊まれる場所はあるよと話しました(笑)」と、お子さまたちも納得した上で進めたと奥さま。そんなやりとりができるご家族の関係って素敵ですね!
全体のテイストは和モダンで、落ち着いた雰囲気がありつつも、所々にアクセントを加え落ち着きすぎず飽きさせない工夫がされています。

元々、和室だったスペースを一つにして生まれた広々としたリビング・ダイニング。「私の実家は親戚が集まった時に全員が一緒にいられるような広いスペースがなくて、母がみんなでおしゃべりするスペースが欲しいと言っていたのが印象的で」奥さまのお母さまの想いを活かし、大勢が集まれるスペースを設けました。

天井にある高低差を利用して作った曲線の装飾がおしゃれ!実は、躯体の関係でどうしても段差ができてしまうならと、見た目を楽しめるようになされた工夫です。Nさま邸には所々に曲線があり、各所のアクセントとしてだけでなく、各所をつなげる役割も持っています。

畳敷の小上がりは、畳に座ったり寝そべったりとくつろぐ場であり、夫婦の寝室でもあります。そのため、シチュエーションに応じてリビング・ダイニングと仕切れるように天井から吊られた4枚のスライドドアを設け、開放的な空間と夫婦のプライベートな空間を共存させました。
小上がりと窓側のスペースを含むエリアは、特に和モダンを意識しており、壁は漆喰調のクロスを採用。また、全体が白くなりすぎないようにと天井は木目調にしており、リビング・ダイニングの統一感を邪魔しないゾーニングがされています。

旅館のような非日常を演出したいと、小上がりを下から照らす照明を入れたのもこだわりの一つ。「リビングから見える部分なので意匠にこだわりたいと思って」と奥さま。非日常感を自宅で味わえるのは憧れちゃいます。

小上がりと格子を挟んである、明るい茶褐色のアクセントクロスの壁が印象的なスペースは奥さまの要望で設けられました。「自分の居場所を作ってほしいとお願いしました。座ってボーっとしたり手帳を書いたり、何かかっこいいことをするわけではなくて、何気ないことをする場所が欲しかったんです。ここからリビング・ダイニングで夫や息子たちが、ワイワイしているのを見るのが好きですね」。
ここに置かれた立派な和ダンスはご主人がお母さまから受け継いだもの。「置くところがなくて奥に眠っていたので、飾れる家にしたいっていうのが自分の希望でした。それを妻が汲んでくれて、自分の空間に置いてくれたのは、ありがたいなって」とご主人。壁には、ご主人のお母さまが趣味で購入された絵も飾られており、ご夫婦の想いを両立させた象徴的な空間でもあります。
すっきりした見た目を意識した空間
ライトグレーのテラゾー調の壁が印象的なダイニング側には、テレビを置く予定だったそうです。「最後までテレビを置くか悩んだのですが、壁のタイルを見せたかったですし、見た目をスッキリさせるためにやめました」と奥さま。代わりにウォールシェルフを設置してお気に入りのものを飾る場所にしました。



テレビの代わりに設置したのはスクリーン。使わない時は目立たないようにエアコン背面の壁に収納できるようになっています。

キッチンは開放的な場所にしたいとシンクとコンロを分けた二型を採用。当初は、シンクとコンロをカウンターに集約する案もあったそうですが、油はねなどを考慮し今の形になりました。お二人が選んだのはLIXILの「リシェル」。高級感のある色合いと質感を気に入って選ばれたそうです。

カウンターの椅子を納める部分には、のみで削られたような模様を見せるなぐり加工された赤松の板が取り付けられています。照明をつけると、凹凸が生む陰影がよりはっきり出て存在感が増します。「踏んだら気持ちよさそうだなと思って小上がりの縁に使おうと思っていました。でも幅が足りなくてダメだったんですよね。それをプランナーさんが覚えていて、ここに使うことを提案してくれたんです」とご主人。

目地の見た目を考慮し、タイルの端を45度で削る調整も。これをすることで、角の目地の幅が狭くなり目立たなくなります。こういった細かなこだわりの積み重ねが質の高い空間を作っているのですね。

パントリーは奥さまのご提案。「隠せる場所がいっぱい欲しくて、キッチンにも独立して収納できるスペースを設けました」。入口のアール壁や、内側のブルーのアクセントクロスなどさりげない演出が目を惹きます。

「キッチンで作業しながらテレビが見られるのも気に入っています」と話すご主人が、小上がり側と仕切るスライドドアを動かすと右側にテレビが。押入れだったスペースの一部を活用し壁付けしたテレビを収納できるスペースを設けました。
見える場と見えない場をはっきりと
リノベーションをするにあたり大事にしたのが、見える生活の場と見えない収納の場ははっきりと差別化させること。特に今でも野球をされている3人の息子さんたちの野球道具を収納する場所を作ることは大事なポイントでした。

そこで設けたのが、玄関から入って右側にある土間。

稼働棚や有孔ボードがある土間を設けることで、汚れがちな野球道具を玄関周りに集約。天井には濡れた雨具や、来客時にはゲストの上着をかける時に使えるようにとパイプを設置しました。

土間の奥からも室内に上がれるようにしたことで、玄関に靴が溜まりがちだった問題も解消。そして、こちらもアール壁が。「パントリー入り口のアール壁と関連づけて一つコンセプトになると思ってお願いしました」とご主人。土間の入り口にはロールスクリーンがあり、来客時には中が見えないようにできる工夫がされています。


お子さまたちの部屋はネイビーのクロスを採用し、全体のテーマである和モダンというよりブリティッシュ調に。この部屋は最終的にご主人が使う予定なのだそう。「アクセントとして1カ所雰囲気の違う場所を作りたくて。ブリティッシュパブをイメージしていて、息子たちが巣立った後にバーにして、息子の野球友達のお父さんたちとくつろぐ場にしようと思っています」。

このお部屋はウォークスルークローゼットを経て小上がりにつながっています。「全体を抜ける風の通り道を作りました。両側の窓を開けると一気に風が抜けます」とご主人。ウォークスルークローゼットを利用し、風が抜けにくいマンション物件特有の問題を解消しました。

浴槽をなくしてシャワー室にしたことで生まれたスペースで、広い玄関と洗面室を作ったのも大きな特徴。「家族で話し合って、普段はシャワーで十分だねって。掃除も楽ですし、室内干しができるスペースもできてよかったです」と奥さま。

浴槽がない分、お湯を全身に浴びることができるオーバーヘッドシャワーを採用。壁はキッチンに合わせてテラゾー柄のタイルが使われています。

トイレは黒やグレーを基調とした落ち着いた雰囲気で統一。
夫婦の終の住処であり家族が集う場所

見学会に参加したり、雑誌やインターネットで施工例を見たりしていく中で、興味の幅が広がったと言います。「リビング・ダイニングにセブンチェアを置いたのですが、元々は家具に詳しかったわけではなくて、この家に合う家具を探していく中で知ったんです」とご主人。実は撮影に間に合わなかった椅子もあり、これから増える予定のデザイナーズ椅子をお子さまたちへプレゼントしようと考えているそうです。「巣立つときに、一人一脚プレゼントするのもいいかなって・・・やっぱりあげないって言うかもしれないですけど(笑)」と冗談混じりに話をしてくれた奥さま。「ここは私たちの家だから」と言ってスタートさせたものの、結果お子さまたちを含めた一家を考えたリノベーションになっており、Nさま一家の仲の良さが体現された空間がそこにありました。
取材にご協力いただき、ありがとうございました!
取材・文/ライター淺見良太
撮影/カメラマン清永洋



