Housekeeping

この記事の見所ポイント
- 個室の数を思い切って減らし、明るく伸びやかなLDKを実現。
- リビングは将来仕切って子ども部屋が作れるように、壁の下地だけ用意。
- キッチン~クローゼット兼ランドリールーム~脱衣室を回遊できるようレイアウト。
- 洗面室は玄関ホールとつなげ、帰宅後の手洗い動線をスムーズに。
- リビングに入る前にランドセルを片づけられる専用スペースを確保。
Aさま一家はご夫妻と9歳の女の子、8歳の男の子の4人家族。今回リノベーションしたマンションは、ご主人のおばあさまから譲り受けたという物件です。
「しばらく兄一家が住んでいたのですが、私たちが住めることになって、入居する前に憧れだったリノベーションをすることにしたんです」
数年間にわたってリノベのイメージをあたためていたというAさま。ゆったりとしたリビング、お子さまたちを見守れるキッチン、可変性のある子どもスペース、家事ラクな水回りと収納――それまでの生活で感じていた不満を解消し、思い描いていた暮らしとインテリアを実現されました。
伸びやかなLDKで子どもたちを見守り
Aさま宅にお邪魔すると、まず驚くのがリビングの広さと明るさ!3つの窓からたっぷりと日差しが入り、オープンキッチンへも視線が抜けていきます。
「以前はここが3部屋に分かれていて、リビングは真ん中だけ。窓も各部屋に1つずつだったから、こんなに明るくなかったんですよ」
3部屋を仕切っていた壁をなくしたことで、明るさと開放感が一気にアップ。間取りは3LDKから1LDKになりましたが、部屋数よりもくつろぎの場の広さを重視したといいます。
「リビングはいずれ仕切って子ども部屋にできるように、壁を立てるための下地だけ準備しました。短い期間だけかもしれないけれど、本人たちが個室を欲しがるまでは、まずは広い空間を楽しみたかったんです」
リビングにはソファを置かず、床座の暮らしを楽しまれています。テレビのかわりに愛用しているのはプロジェクター。週末にご家族で映画鑑賞するのが楽しみなのだとか。
お子さまたちのおもちゃはりんご箱を使って収納。「以前住んでいたアパートには家具がほとんどなくて、このりんご箱と一緒に引っ越してきました(笑)」。シンプルながらも無垢の木の味わいが感じられ、サイズも形もおもちゃ箱にぴったりです。
素材感が魅力のキッチン&ダイニング
元のキッチンは独立型でしたが、リノベでリビングダイニングを見渡せる対面スタイルに。明るい自然光の中で家事ができ、「子どもたちに呼ばれたとき、家事の手を止めずに応えられるキッチン」という理想も叶いました。
ダイニングの一角には壁面収納をプラス。天井や床との間を空け、宙に浮いたようなデザインにしたことで、圧迫感のない収納スペースが完成しました。
チェッカーガラスが素朴な表情のリビングドアは「Panasonic」。「部材や設備はパナソニックにすると値引き率がいいですよとプランナーさんに教えてもらって、建具やキッチンはそこから選びました」
ドアの横にはスリット状の室内窓を設けて、奥の廊下に光を導いています。家族が寝室に出入りする気配がさりげなく伝わるメリットも。
キッチンカウンター下の仕上げには大谷石を採用しました。どっしりとした存在感と自然石ならではのテクスチャーが魅力です。この素材使いは、建築家の井出しのぶさんの事例を参考にしたのだそう。
「リノベにあたって事例はたくさん見ましたが、いつのまにか大谷石に目が留まるようになって。調べてみたら、産地が私の出身地の栃木県だったんです。そんな縁もあってどこかに使いたいと思い、キッチン回りに採り入れることにしたんです」
カウンターには食事ができるスペースもつくり、朝食やおやつに役立てています。スツールはデンマークの家具ブランド「WARNER」の「SHOEMAKER CHAIR」。清々しい白木の色合いが大谷石に映え、自然素材の籐を使った「YARN」のペンダントとも相性抜群です。
ダイニングテーブルは「アーコール」の「ゲートレッグバタフライテーブル」。奥さまがあたためていた「アンティーク家具が似合う住まいにしたい!」という夢が叶いました。
ハンス・ウェグナーの名作家具「Yチェア」は「ジモティー」で入手。「チェアはまだ1脚ですが、これから家族分を揃えたいと思っています」
水回りの家事動線はパーフェクト!
キッチン内は大人が2人で立っても狭くない、ゆったりした広さ。シックなグレーの天板が目を引くキッチンは「Panasonic」の「ラクシーナ」です。
「横並びの3つ口コンロはパナソニックの特徴らしいのですが、コンロの手前のスペースが広いから、お皿を置いて盛りつけるのがラクなんです。使ってみて初めてメリットがわかりました」
背面の壁にはお気に入りの雑貨を並べられる飾り棚を。その下には既製品の収納家具を置く予定でしたが、ご親戚から近所の大工さんを紹介してもらったのを機に、オリジナルで造作することに。
サイズはもちろん、素材感も飾り棚に合わせてもらい、キッチンにしっくり馴染む収納スペースが完成しました。
キッチンの奥にはシンプルな白い引き戸が。一見するとパントリーの入口かな?と思ってしまいますが…
なんと、ファミリークローゼット兼ランドリールームに続いていました!ウォークスルー型のクローゼットの中にドラム式の洗濯乾燥機が設置してあり、「衣類の洗濯と収納を一か所で済ませたい!」というA さまのリクエストがそのまま反映されています。
「クローゼットを通り抜けると脱衣室だから、おふろの前に着替えを用意するのも、脱いだ服を洗濯機に入れるのも簡単。洗濯乾燥が終わったら、その場から動かずにパパっと収納するだけなので、本当にラクで助かっています」
さらにこちらのスペース、リビングからも出入りできるんです!キッチン横のアーチ型の入口が、このクローゼットに直結していたんですね。脱衣室を回り込む必要がないため、大人も子どもも朝晩の身支度がスピーディーにできるそう。
洗濯~収納動線がほぼゼロなうえ、その場所にキッチン、脱衣室、リビングからアクセスできるこの間取り。お仕事や子育てで忙しいファミリーにとって、最強の家事ラクプランといえるかもしれません。
水回りではやさしい雰囲気と使い勝手を両立
洗面室は玄関ホールからオープンにつなげ、帰宅後の手洗い動線をショートカット。脱衣室との間は省スペースなカーテンで仕切っています。
浴室は「タカラスタンダード」のユニットバスを選び、カウンターやアクセントパネルなどをつけずにシンプルに仕上げました。
お子さまたちは2人ともスポーツをされているため、帰宅してそのままお風呂に直行することもあるとか。汗も泥汚れもさっぱりと洗い流してからリビングへ。玄関と水回りが直結している間取りには、こんなメリットもあるんですね。
洗面室は曲線を生かした柔らかな印象の空間。オーバル型のミラーと手洗いボウルの組み合わせは、Pinterestで見つけた海外実例がお手本です。
テラゾー柄のカウンターは「STARON」、手洗いボウルと水栓は「ミラタップ」でセレクト。既製品の洗面台ではなく、自由なデザインで造作することでイメージを形にしました。
洗面台の目の前はトイレ。出てすぐに手が洗えることから、トイレ内の手洗い器を省くことができました。トイレは「TOTO」、腰壁には「LIXIL」の「エコカラット」を使って消臭効果を狙いました。
照明は「regen」、ペーパーホルダーは「ren」。どちらも真鍮にして素材感を揃えました。シェードのないペンダントはコードと電球のフォルムが引き立ち、壁に広がる柔らかな陰影も素敵です♡
玄関と洗面室の間には「どこかに使いたかった」という室内窓を設置しました。素朴な表情の木枠がアイキャッチになり、訪れたゲストにもAさま宅のやさしい雰囲気が伝わります。
子どもたちの行動にフォーカスしたプラン
玄関のかまちは斜めにカットして、土間のスペースをゆったりと。両サイドに玄関収納を設けて、家族の靴やアウター、お子さまたちのスポーツギア、外遊びのおもちゃなどをすっきりと収納しています。
リビングの入口には、お子さまたちのランドセル置き場が。低めの棚とハンガーパイプに、学校や習い事で使うものをまとめています。
「いつもリビングにランドセルを放り出したまま遊んでいたから、このスペースはどうしても欲しかったんです。通り過ぎながらポンと置くだけで、しかもリビングから見えない場所ということで、この配置がベストでした」
無理なく散らかりを防げて、翌日の忘れ物防止にも役立ちそう!家事ラクプランとともに、子育てラクのアイディアも参考になりますね。
寝室はAさま宅で唯一のプライベートルーム。現在は親子4人でやすまれています。壁面にはハンガーパイプをつけて、シーズンオフの衣類などを収納。ベッドサイドには絵本や童話がずらり!「寝る前に本を読んであげることが多いので、専用の本棚をリクエストしました」。ここにもご家族のルーティンがしっかりと反映されていました。
「考える時間が長かったぶん、プランのイメージをじっくりと固めることができて、後悔のないリノベーションになりました」と振り返るAさま。最後に、私たちSHUKEN Reを選んでくださった理由をうかがうと――
「シンプル系、ナチュラル系の事例が好みだったのはもちろんですが、何といってもスタッフさんたちの対応がやさしくて、こまやかな気遣いが感じられたんです。
ほかに相談に行ったリノベ会社さんは、熱心なのはいいけれど、情熱的すぎてついていけなかったり(笑)。きっと相性なんでしょうね。SHUKEN Reさんは私たちにとってちょうどいい温度で、『こんな暮らしができたらいいな』と描いていた住まいを作ってもらえました」
これからは古い家具をもっと増やしたい、できればリビングにアンティークのキャビネットを置きたい、とワクワクするような計画も。「今までは小さな家でバタバタした暮らしだったけれど、新しい家で家事も子育てもラクになって、やっとインテリアを楽しむ心の余裕が生まれた気がします」。
お忙しい中、取材・撮影にご協力いただき、ありがとうございました。
取材・文/ライター後藤由里子
撮影/カメラマン清永洋