BOOKSHELF
「す、すごい~!!」
そんな驚きの声からスタートしたこの日の取材。壁1面に造り付けた本棚が圧巻のこちらは、船橋市のNさまファミリーのお住まいです。
マンション最上階で天井高があるこちらのお部屋。勾配天井の形に合わせて本棚の高さを設定したのがポイントです。ステップ代わりの低めの部分が張り出したデザインになっているので、写真のように人がのぼることができ、高い部分にも手が届きます。
UKロックなどの音楽が好きで、CDやレコードをたくさん持っていたご主人。対して奥さまはマンガが好きで、これまたたくさん持っていたそう。
「以前からずっと壁1面の本棚に憧れがあったんです。リノベのときにあっ!と思い出したのが、以前にふたりで訪れた群馬県の『太田市美術館・図書館』でした」とご主人。
図書館のエリアで見た本棚をイメージしつつ、いろいろなサイズのものが収められるように棚板を可動式にするなど、オリジナリティもプラスしました。「各ボックスを正方形にしたり長方形にしたりして、バラバラな感じを楽しんでいます」
テレビ側の壁は、ご主人が選んだシックなグリーンの塗装仕上げ。「プランナーさんから色をつける提案があったときは正直ピンと来てなかったのですが(笑)、これはすごくよかったですね」とご主人。
奥さまのこだわりで、出入り口は廊下の天井高いっぱいの高さで設けて、あえてドアはなしに。奥に続く玄関ホールや水回りへの動線と、さりげなくつながりが感じられます。「暖房効率的にはよくないので、直近の冬は光熱費が大変でした(笑)」と奥さま。
Nさま夫妻がこちらに入居されたのは、2019年の秋のことでした。その後生まれた娘さんは現在1歳8カ月。本棚の下段がおもちゃ入れにもなっているのがお分かりでしょうか~? ご入居当時はご夫妻の趣味100%だった本棚が、ファミリー仕様に進化しているようです♪
鮮やかなブルーのソファは、デンマークの家具デザイナー、ハンス・J・ウェグナーの「デイベッド」。ご主人がヴィンテージショップで見かけて心ひかれたものの、迷っているうちに売れてしまったことから、ネットで“出物”をパトロールし続けた末に購入できたそうです。
圧巻の本棚のあるLDKは、既存のダイニング、和室×2、サンルームの合計4室の壁を撤去してワンルームにした空間です。奥の窓辺の部分はサンルームだった場所で、リビングの一部としてお子さんの遊び場や奥さまの在宅勤務用のスペースとして活用しています。
物件探しから依頼できる会社を検討
以前は都内の賃貸アパートに暮らしていたNさま夫妻。そろそろ持ち家をと思い、物件探しから当社(howzlife)にご依頼いただきました。「物件購入とリノベ工事で会社が別だと、いろいろ調整が大変かなと思って、最初からワンストップの会社に頼もうと決めていました」とご主人。
最初にコンタクトをとった会社は、打ち合わせの回数が決められていたり、紹介される物件が微妙に伝えた条件と違っていたりで、「フィーリングが合わなかった」とか。急きょ他に会社がないかネットで探し、当社を見つけてくださったそうです。
「howzlifeさんは当時はカフェ併設のオフィスで、『お茶を飲みがてらどうぞ』と声をかけていただいたので気軽にうかがえました。担当のかたもしつこくないというか(笑)、サラッとした感じで話しやすかったです」と奥さま(ありがとうございます!)
物件探しで特に重きを置いた条件は、「①天井高がある ②ご主人の勤務先へ1時間圏内 ③予算内」の3つ。天井高にこだわったのは、開放感のある住まいにしたかったからだそうです。
エリアにしばりが少なかったことから、都内や千葉県の7~8軒の物件が候補に上がりましたが、上の写真でも分かるとおり、こちらは最上階ならではのダントツに天井高のある物件。ところが、「5階建てなのにエレベーターがなかったんです……。そこにかなり悩みましたが、最上階だからこその天井高と割り切って購入することにしました」と奥さま。
エレベーターのない生活はご夫婦ふたり暮らしのときはまったく問題なかったそうですが、お子さんが生まれ、「ちょっとしんどいときもある」とか。お子さんがトントンと自由に上り下りできるようになるのが待ち遠しいですね。
雰囲気のいい外観も決め手に
取材スタッフもお部屋におじゃまする前に見惚れてしまったのですが、Nさまのお宅があるのは、ヨーロッパの集合住宅を思わせるレンガ造り風の建物。そんな素敵な外観も決め手のひとつになったそうで、秋はイチョウの木の黄色が茶色の建物に映えて、とってもきれいだそうです~。
本棚のちょうど反対側はキッチンとダイニングになっています。このシーンも天井の高さがよく分かりますね~! 壁は塗装、床はブラックチェリーの複合フローリング仕上げです。
「リビングの広さを優先したかったので、キッチンの広さはそれほど求めませんでした。オープンキッチンにしたのは、テレビを見ながら作業したくて(笑)」と奥さま。
右手の壁にかかっているのはアメリカ映画「ワイルドバンチ」のポスター。立てかけてあるのはアメリカの写真家、グレゴリー・クリュードソンの作品。リノベ後、ご主人は「ついに飾れるときが来た!」と、ご自身のコレクションを飾って楽しんでいます。
ダイニングは、おしゃれな食器が並んだオープンシェルフが印象的♪ 奈良方面の良質な木が使われた和家具で、以前の住まいでは奥さまのマンガを収納していましたが、リノベで壁1面の本棚が実現できたので、今は食器収納に使っています。
ダイニングテーブルとチェアはイギリスのヴィンテージ品。奥さまは丸いテーブルに憧れがあったそうで、このコーナーに“丸”がしっくりなじんでいますね。天板が伸長式なので、来客時に重宝するそうです。
リノベで自分たちに合った住まいに
奥さまはイギリスや北欧の古いものが好きとうかがい、新築ではなく中古×リノベを選ばれたことに思わず納得。「予算の都合もありましたが、既製の空間にそのまま住む新築より、自分たちの暮らしに合わせた住まいをつくれる中古×リノベがよかったんです」と奥さま。
ご主人も「リノベのほうが家に愛着を持てるんですよね。新築の場合、気に入らないところがあると『なんでこうなの!?』と思ってしまいそうだけど、自分たちで細部を考えたり選んだりした住まいなら文句は言えないです(笑)」
こちらはキッチンの背面側です。ダークグリーンのレトロなタイルは「スワンタイル」(日東製陶所)のものです。引き出し式の背面収納は「ウッドワン」。キッチン家電の定位置としてもぴったりです。造作した上部の棚を使った「見せる収納」も素敵ですね。
システムキッチンも「ウッドワン」の製品です。キッチン選びのため、ご夫妻でたくさんのショールームを回ったとか。木の質感を生かした空間に違和感なくなじむようにと、木のあたたかみを感じるキッチンを選びました。
特にステンレスのワークトップや大きめのシンクが使いやすいそう。「予算の都合で食洗機はつけなかったのですが、食器洗いは夫ががんばってくれています(笑)」と奥さま。
ここからはLDK以外のスペースを見せていただきましょう。こちらは廊下からLDKの入り口を見たところ。ドアをつけずに開口だけにした出入り口は直線デザインが美しく、奥の空間への期待感が高まります。
こちらは洗面室です。それほどこだわりはなかったとのことで、プランナーの提案をベースに洗面台は「TOTO」、壁のクロスはうぐいす色のようなグリーンを選びました。
クロスの色は、ショールームめぐりをしているときに見かけた展示スペースの壁の色を参考にしたとか。水がかりの部分に貼ったタイルもいいアクセントになっていますね。
トイレの壁は、洗面室と同じグリーンとダークグリーンのツートーン仕上げ。床も六角形のフロアタイルの2色使いになっているのがユニークです。
「小さいスペースなので少し変わった感じにしてもいいかなと思って」と奥さま。奥のシンプルな棚は、本を置けるようにとリクエストしたものです。
玄関ホールは「パナソニック」の白い靴箱でシンプル&すっきりと仕上げました。壁のフレームには、音楽だけでなく映画も好きなご主人のコレクション(映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のオマージュグッズ)が飾られていたのですが、取材スタッフにわかる者とわからない者がいて、ジェネレーションギャップが露呈してしまいました!!
ちなみに、玄関マットの幾何学模様はホラー映画「シャイニング」に登場するホテルのカーペットの柄なんだそう。すみません! これはスタッフ全員、わからなかった~。
余暇も家事も楽しめる住まいに
次の秋が来るとここでの暮らしは丸4年になるNさま夫妻。「以前の住まいとくらべると、広くなった分、とても暮らしやすいです。子どもが寝たあとにソファでちょこっとドラマを見たりする時間がいちばんリラックスできます。本当は映画を見たいんですけど、さすがに長いので(笑)」と奥さま。
コロナの影響もあるといいますが、入居後、ご主人がキッチンに立つ機会がぐんと増えたそう。ご主人いわく「リビングとキッチンが同じ空間にあるので、話しながら作業できるのがいいんですよね」
そしてNさま邸といえば、やはりこの大迫力の本棚ですよね。てっきりご入居から3年強の間にぎっしりの状態になったと思っていたのですが、よくよくうかがうと、ほとんどが以前からずっとお持ちのもので、賃貸アパート時代には段ボール箱に入れて保管していたんだそう。
お気に入りの品々が日の目を浴びて、本当によかったです! 今後こちらのLDKには、娘さんが描いた絵を飾っていきたいそう。流行にとらわれずご夫妻の「好き」を詰め込んだお住まいに、娘さんのカラーが加わっていくのが楽しみです♪
お忙しい中、取材・撮影にご協力いただき、ありがとうございました。
取材・文/ライター志賀朝子
撮影/カメラマン清永洋