大人のインダストリアル
この日訪ねたのは、ご夫婦で都内に暮らすS様邸。
専用庭のあるマンションの1階ということで、窓越しに緑が見えるのがなんとも贅沢。
その空間に、S様が新居のために選んだ家具が並び、それがまたなんともカッコいいのです。
専用庭のある物件と出会い、即決!
「CRASH GATE」「ACME Furniture」などのインテリアショップが好き、というお二人。
リノベでは、それらのショップの世界観にもつながる「インダストリアル」や「ヴィンテージ」のテイストをとり入れることがご希望でした。
それまで暮らしていた賃貸マンションでも同様のスタイルのインテリアを楽しんでいましたが、資産的な価値の面から「持ち家」を考えるようになり、「お金も借りれるうちに(笑)」と、物件を探しはじめたそう。
ところが、なかなか「これ」という物件に出会えず、およそ1年で内見まで進んだのは4軒。
こちらの物件は、大きな商店街が近いことや、専用庭のある1階というところが気に入り、即決だったとか。
雑誌などでおしゃれなリノベ事例を目にしていたこともあり、リノベで自分たちの好きなスタイルに、というのは自然な流れでした。
もともと凝り性で「調べるのが好き」というご主人は、ネットなどでリノベ会社をリサーチ。
当社を含めた3~4社に照準をしぼって相談を進めたそうです。
その数社の中から、最終的に当社を選んでいただいた理由を前のめりになってうかがったところ、「施工事例を見て、ここなら自分たちの好みを反映してくれそうだと思った」という点と、「スケルトンにする工事費が他社より安価だった」という点をあげてくださいました。
「スケルトン工事の費用が、びっくりするくらい違ったんです。SHUKEN Reさんが他社とくらべて安価だったのは、グループ会社の中に大工さんもいらっしゃるからなんでしょううね。施工事例にもなんとなく統一感があって、仕上がりが事前にイメージできたことも安心感がありました」。
ボストンをイメージした「レンガの壁」
「インダストリアル」「ヴィンテージ」と並んでもう1つ、S様邸を語るうえではずせないキーワードがアメリカの「東海岸」です。S様はご夫婦で東海岸エリアに出張に行かれることが多いそう。
特にアメリカ建国とも深くかかわる歴史ある街、ボストンの雰囲気が好きで、ボストンの雰囲気を住まいに投影したいと思っていました。
S様が住まいにとり入れた「ボストンの雰囲気」とは、ずばりレンガ!
クラシカルなレンガ造りの街並みが有名なボストンをイメージして、ダイニングの壁の一部をレンガを積み上げたようなタイル仕上げに。
S様邸の象徴的なシーンになっています。
このレンガ壁は最初から決めていたわけではなく、「最後の最後にリクエストしたものなんです。予算オーバーだったんですが、もう、行っちゃえ!って(笑)」。
ダイニング側とキッチン側の壁のどちらにするか悩んだそうですが、「どこからでも目に入るダイニング側にしてよかったです」。
リノベ前の部屋はマンション特有の梁が多く、圧迫感があったため、撤去できる部分は撤去して天井を高くしたい、というご希望もあったS様邸。
電気配線や配管をあらわしにして、インダストリアルな雰囲気満点の空間になりました。
建設関係のお仕事をしている奥様の妹さんのご主人が、こちらの天井の電気配線を見て、「めっちゃきれい」とびっくりしていたとか。
cookpadのレシピをフル活用
キッチンについては特にこだわりはなかったというお二人。
天板が白で、夫婦2人に合わせたカウンター高で、掃除がしやすい、とうい部分を意識しながらシステムキッチンを選びました。
料理はおもにご主人が担当。
レシピはcookpadをフル活用しているそうで、メニューごとの人気ランキングが見られる有料会員にもなっているそう。
「1位のレシピをつくりたいんです!」とご主人。
奥様も「全部おいしいですよ、全部1位のレシピなので(笑)」と。
ご主人いわく「調味料の量を正確にはかって、あれこれアレンジせずにレシピに忠実につくること」が大事だとか。なるほど~!
キッチンにはお二人で立つこともあるので、回遊式のレイアウトは作業がしやすいそう。
「共働きなので食洗機があるのも助かっています。これがないとケンカになりますね(笑)」。
IHヒーターのまわりは、奥様こだわりのタイル仕上げ。
「グリーンのタイルを使いたいと伝えたら、プランナーさんがサンプルをたくさん取り寄せてくれました。最終的に選んだこちらは、渋めの色味が気に入りました」。
こちらのタイル、もともとは外壁用だそうで、ちょっとレトロな感じがS様邸にぴったりですね!
キッチンの一角には食材をストックしておけるパントリーもあります。開けたままにも、ロールスクリーンで隠すこともできるのが便利だとか。
リビング←→クローゼット←→寝室
リビングの床はヘリンボーン!
天井を躯体あらわしにした武骨な雰囲気の空間にとてもよくマッチしていますね。
ご主人念願のヘリンボーン床は、第一希望だったチェリー材はあきらめたものの、樹種を変えることでコスト調整をしながら実現できました。
右手にチラリと見える白い引き戸は、クローゼットの出入り口。
リビング→クローゼット→寝室とつながる、ウォークスルーのレイアウトになっています。
ウォークスルークローゼットの手前には、デスクを造作しました。
真上に室内干し用のバーもつけたので、ここはアイロンがけのベストスポット!
以前の賃貸の住まいでは、1部屋がまるまる洋服の収納部屋になってしまっていたそうで、広いウォークインクローゼットが欲しかったのだそう。
プランナーがシャツの枚数やコートの丈などを事前にヒアリングして、持ち物の量とサイズに合わせて設計した完全オリジナル仕様です!
「衣類の収納場所は1カ所にして、洗濯済みのものはすべてここに戻せばいいという流れにしたかった」と奥様。
当初、クローゼット内部の壁をカラークロスで仕上げたいという希望もあったそうですが、「プランナーさんに、洋服の色が分かりにくくなってしまうかも……とアドバイスをもらったんです。確かに!と思って壁はやめて、執念で(笑)天井に色を使ってもらいました」。
ウォークスルークローゼットを介して、リビングとつながっている寝室。
この部屋は大きく手は入れず、北側で暗いので少しでも明るくなるようにと壁の1面をブルーのクロスで仕上げました。
水回りはホテルライクに
ここからは、こだわりの詰まった居室に負けず劣らずの水回りを見せていただきましょう。
洗面室&浴室のテーマは「ホテルライク」。
使う色を控えめにしているのが大人っぽくて素敵ですね!
洗面ボウルは大きめがよくて実験用シンクを採用。
ミラーキャビネットは既存のものを生かしました。
カウンターに幅があり、夫婦2人で使える広さも気に入っているそうです。
浴室がもともと広めだったため、広さはそのままキープで設備を新しくした浴室。
こちらもモノトーン調のものを選んでホテルライクにしました。
扉を開けたとたん、思わず歓声が上がってしまったのがトイレです!
ダークグリーンのクロスがシックで、どうしてこの色に?とお尋ねすると、「ラルフローレンの表参道のショップの試着室をイメージしました」と奥様。
リノベでは、お気に入りの商業空間をイメージした内装を自宅に取り入れることも可能なんですよね。
S様邸で、とてもいいお手本を見せていただきました。
真鍮のトイレットペーパーホルダーは、千葉工作所のオンラインショップで購入。
数量限定で生産&販売されているもので、SNSで告知があると「いつも秒で売れてしまう」のだとか。
入居後しばらくはペーパーホルダーなしの生活が続き、「販売スタート時間にスタンバイして、やっと買えました。本当は2連のデザインのものがよかったのですが、そちらはなかなか販売されないのでシングル2つに」。
その柔軟な発想、さすがです!
収納たっぷりの廊下&玄関
廊下は、もともとあった収納を生かしながら、たっぷり収納を造り付けてあります。こちらには本や掃除機などをしまっているそう。
ヘリンボーン床を奮発したリビングダイニングに対して、廊下や個室は上層を無垢材で仕上げた複合フローリングを採用。
無垢材の質感は充分に感じられ、コスト調整にも貢献しました。
そうそう、コストコントロールもお見事なのがS様邸の特徴なのです。
既存の床暖房を撤去して新設はしなかったこと、総ステンレスのキッチンをやめて好みに合う天板&面材のものを選んだこと、棚板などの木部に比較的安価なラーチ合板を使ったことなど、こだわり部分はあきらめずに、メリハリのある予算配分にしたことがリノベ成功につながりました。
玄関の靴箱は、必要に応じて棚板を増やせるオープン棚に。
服だけでなく靴もたくさんあったそうですが、以前の住まいから移ってくるタイミングでかなり処分してきたそう。
来客時などに玄関が人や靴でぎゅうぎゅうにならないように、上がりかまちの部分をななめにカットすることを思いついたご主人。
「最後の最後にお願いして、反映してもらえてよかったです」。
成長につながったリノベ
S様邸を訪れた人は、テレビや雑誌に出てくる部屋みたいと皆さんびっくりされるそう。
「中古物件をリノベという選択はいかがでしたか?」とうかがうと、「自分たちの成長につながりました(笑)」とご主人。
「新築がイヤだったわけではないのですが、新築の場合、ポンと購入してそのまま住むわけで、愛着はあまりわかないですよね。リノベの場合、すべての内装材を自分たちが選んで、パーツ類もそこにつけたくてつけているわけですから、住まいに対する“愛着”が全然違うんじゃないかなって。話のネタにもなるし(笑)、大事にしようっていう気持ちにもなります」。
お二人に家の中のお気に入りの場所もうかがってみると、なんとお二人とも同じお答え! ダイニングの壁を背にした席がお気に入りの場所で、「リビングが見えて、デッキが見えて、庭が見えて……。ここから眺める景色が好きです」。
入居から1年と3カ月。
その間に新型ウイルスが発生し、世の中が大きく変化しましたが、「家にいる時間が長かったぶん、居心地のよさをより実感することができました」とご主人。
奥様からも「居心地がいいので、ずっとここにいたいなって思えます」と、ありがたいお言葉をいただきました。
取材の後半で、ご主人が今回の取材に合わせて床のワックスがけをしてくださっていたことが判明。
「体がバッキバキになりました」と笑っておっしゃっていましたが、大変でしたよね(ありがとうございました!)。
S様の住まいに対する“愛着”がひしひしと感じられて、とてもうれしい気持ちでS様邸をあとにしたスタッフ一同でした。
お忙しい中、取材・撮影にご協力いただき、ありがとうございました。
取材・文/ライター志賀朝子